“コケ取り”に欠かせないカエルウオの仲間と分類 | 海水魚ラボ

“コケ取り”に欠かせないカエルウオの仲間と分類

カエルウオの仲間は表情が豊か。眼が大きく、皮弁があったり、また泳ぎ方も可愛いものです。しかも可愛いだけではなく、水槽に生える厄介なコケを、その種類によっては食べてくれたりもするのです。

もちろん、カエルウオの仲間の飼育にも押さえておきたいポイントがあります。しかしカエルウオの仲間は基本的な海水魚飼育のポイントとここであげるポイントを押さえれば結構簡単に「飼える魚」です。

標準和名:カエルウオ 学名:Istiblennius enosimae (Jordan and Snyder, 1902) 分類...

カエルウオの分類

一般的にカエルウオの仲間は、スズキ目・ギンポ亜目・イソギンポ科・カエルウオ族(赤い枠)に含まれる魚の総称であり、ナベカ族の仲間の種も「カエルウオの仲間」として販売されることがありますが、これは正しいものではありません。

ギンポ亜目の別科の魚であるコケギンポ科の魚も「カエルウオの仲間」として販売されることもありますが、これも正しいものではありません。コケギンポの仲間は主に大西洋と東太平洋に生息しているもので、ユニークな姿かたちのものが多いですがやや高価です。

なお、磯釣りで釣れることもある「ダイナンギンポ」や、天ぷらでおなじみの「ギンポ」は、「ギンポ」と名前がついていますがゲンゲ亜目と呼ばれる別の仲間であり、混同しないように注意が必要です。とくにゲンゲ亜目の魚は温帯~寒帯に生息する種、または深海を好み、カクレクマノミなど熱帯性魚よりもずっと低い水温を好みますので、一緒に飼育することは難しいものです。夏はクーラーが必須です。

▲磯遊びで見つかるダイナンギンポの仲間は、「ギンポ亜目」のメンバーではない。

初心者におすすめのカエルウオの種

▲サンゴとカエルウオ

カエルウオの仲間はインド-太平洋域、大西洋に広く分布しますが、初心者にお勧めの種はインド-太平洋の浅海に生息する種類です。大西洋産、あるいは東太平洋に生息するような種もまれに輸入されるのですが、これらは高水温に弱いので気を付けます。

また食性の問題もあります。例えばセダカギンポなどは藻類を食べないどころかサンゴを食べてしまうのでサンゴ水槽に入れることはできませんし、飼育も難しいのです。ここではサンゴの食害がなく、飼いやすいものをご紹介します。

ニラミギンポ属 Ecsenius

▲ハナダイギンポ。カエルウオの仲間では遊泳性が強い

インド-西太平洋から50種以上が知られるグループです。日本には6種が知られているのみですが、フィリピンやインドネシア、インド洋から大量に輸入されてきます。

種類が豊富で集める楽しみもありますが、この仲間では比較的大型のニラミギンポやフタイロカエルウオはかなり気が強めなので小型種と入れるのは止めたいものです。またこの属の魚はカエルウオの仲間としては中層を遊泳するものもおりますので、遊泳するためのスペースが欲しいところです。

主な種(★がついているものは日本に分布する種)

★フタイロカエルウオ Ecsenius bicolor (Day, 1888)

★ヒトスジギンポ E. lineatus Klausewitz, 1962

★イシガキカエルウオ E. yaeyamaensis (Aoyagi, 1954)

★ゴイシギンポ E. oculus Springer, 1971

★ハナダイギンポ E. midas Starck, 1969

★ニラミギンポ E. namiyei (Jordan and Evermann, 1902)

テールスポットブレニー E. stigmatura Fowler, 1952

ホワイトラインドコームトゥース E. pictus McKinney and Springer, 1976

ツインスポットブレニー E. bimaculatus Springer, 1971

ヤエヤマギンポ属 Salarias

▲ヤエヤマギンポ

インド-中央太平洋に分布するヤエヤマギンポ属も観賞魚として人気があります。色彩は灰色で地味なのですが、まつげのような皮弁や、可愛い顔、水槽内のコケをよく食べてくれるなどがその理由です。

近年はフィリピンからスターリーブレニーの様な美種も来るようになりました。デメリットは大きくなると体長10cmを超えるような大型種も多いこと。ヤエヤマギンポも大きいものでは体長12cmを超えます。シマギンポなどは体長5cmほどの小型種ですので、小型水槽にはそのような種を入れるとよいでしょう。ただし、シマギンポなどは観賞魚として滅多に入ってこないため、自分で採集するのが早いです。和歌山県以南の太平洋岸にいます。

標準和名:ヤエヤマギンポ 学名:Salarias fasciatus (Bloch, 1786) 分類:スズキ目・ギンポ亜目・イ...

主な種(★がついているものは日本に分布する種)

★ヤエヤマギンポ Salarias fasciatus (Bloch, 1786)

★シマギンポ S. luctuosus Whitley, 1929

★ヒレナガカエルウオ S. sinuosus Snyder, 1908

スターリーブレニー S. ramosus Bath, 1992

セラムブレニー S. ceramensis Bleeker, 1853

セグメンテッドブレニー S. segmentatus Bath and Randall, 1991

ハナカエルウオ属 Blenniella

▲モンツキカエルウオ

インド-太平洋から9種が知られます。日本産はそのうちの7種ですが、日本では南鳥島にしかいないものも2種います。代表的な種はモンツキカエルウオ。このほかに数種が混じりで入ってきます。ジャンプする力が強いので飛び出しに注意します。もちろん、飼育の際にはふたは必須です。

主な種(★がついているものは日本に分布する種)

★モンツキカエルウオ Blenniella chrysospilos (Bleeker, 1857)

★ハナカエルウオ B. periophthalma (Valenciennes, 1836)

★ホホグロギンポ B. bilitonensis (Bleeker, 1858)

★ジュズダマギンポ B. interrupta (Bleeker, 1857)

★アオテンギンポ B. caudolineata (Günther, 1877)

★コトジハナカエルウオ B. paula (Bryan and Herre, 1903)

★アワユキハナカエルウオ B. gibbifrons (Quoy and Gaimard, 1824)

カエルウオ属 Istiblennius

▲宮崎県日南海岸で採集したカエルウオ

▲カエルウオと同じ場所で採集したセンカエルウオ

インドー中央太平洋に15種、そのうち日本には4種います。

カエルウオは兵庫県以南の日本海岸、千葉県以南の太平洋岸に生息し、磯で採集することも可能です。カエルウオとニセカエルウオは非常によく似ており、同種とする考えもあります。主にコケとり用ですが、カエルウオやニセカエルウオは大きめの種で、性格も強めなので注意が必要です。またタイドプールにいて、ジャンプして逃げますので、フタは必須です。

主な種(★がついているものは日本に分布する種)

★カエルウオ Istiblennius enosimae (Jordan and Snyder, 1902)

★ニセカエルウオ I. edentulus (Forster and Schneider, 1801)

★センカエルウオ I. lineatus (Valenciennes, 1836)

★カエルウオモドキ I. dussumieri (Valenciennes, 1836)

スジギンポ属 Entomacrodus

▲熊本県天草で採集したホシギンポ

インド-中央太平洋の他、東太平洋や大西洋に見られる広域分布の属で、世界で27種、うち日本には7種が分布しています。観賞魚として入荷することは殆どありませんが、磯で採集することもできます。代表的な種はホシギンポで、新潟県以南の日本海岸、三浦半島以南の太平洋岸、天草沿岸、瀬戸内海、琉球列島で採集することができます。ジャンプ力が強くふたが必要なタイプです。

小さくて可愛いものが多く、今後観賞魚としての入荷を期待します。

主な種(★がついているものは日本に分布する種)

★ホシギンポ Entomacrodus stellifer stellifer (Jordan and Snyder, 1902)

★スジギンポ E. striatus (Quoy and Gaimard, 1836)

★ケショウギンポ E. niuafoouensis (Fowler, 1932)

★ゴテンカエルウオ E. thalassinus thalassinus (Jordan and Seale, 1906)

★キカイカエルウオ E. decussatus (Bleeker, 1858)

★アオモンギンポ E. caudofasciatus (Regan, 1909)

★イレズミスジギンポ E. sealei Bryan and Herre, 1903

その他のカエルウオの仲間

▲自家採集もできるロウソクギンポ

カエルウオの仲間はその他にもユニークなキャラクターが多くそろっています。ヨダレカケやタマカエルウオの仲間は「水が嫌いな魚」としても知られ、水から這い上がって生活しています。面白い魚なのですが、しっかり蓋をして飛び出さないように注意する必要があるほか、隙間もプラスチック板などを使って塞ぐようにします。

主な種(★がついているものは日本に分布する種)

★タマカエルウオ Alticus saliens (Lacepède, 1800)

★ヨダレカケ Andamia tetradactyla (Bleeker, 1858)

★カンムリヨダレカケ Andamia reyi (Sauvage, 1880)

★タネギンポ Praealticus tanegasimae (Jordan and Starks, 1906)

★タマギンポ Praealticus bilineatus (Peters, 1868)

★カブキギンポ Praealticus striatus Bath, 1992

★ツマリギンポ Stanulus talboti Springer, 1968

★ロウソクギンポ Rhabdoblennius nitidus (Günther, 1861)

★マツバギンポ Mimoblennius atrocinctus (Regan, 1908)

★エリグロギンポ Crossosalarias macrospilus Smith-Vaniz and Springer, 1971

★ヤイトギンポ Glyptoparus delicatulus Smith, 1959

★ヒナギンポ Nannosalarias nativitatis (Regan, 1909)

★シシマイギンポ Cirrisalarias bunares Springer, 1976

★インドカエルウオ Atrosalarias fuscus holomelas (Günther, 1872)

★ホソカワインドカエルウオ Atrosalarias hosokawai Suzuki and Senou, 1999

カエルウオの仲間を飼う水槽

カエルウオの仲間を飼うための水槽で重要なことはフタの隙間をなくし、カエルウオが外に出て干からびて死んでしまうことを防ぐようにすることです。

水槽サイズ

小型のカエルウオは35cm位の小型水槽での飼育も可能ですが、複数飼育なら60cm以上の水槽が望ましいと言えます。大きめのホホグロギンポやヤエヤマギンポなどを複数飼育するなら90cm以上の水槽が欲しいところです。

水槽はフロー管を持つオーバーフロー水槽でも、量販店で売られているガラス水槽でも良いのですが、オーバーフロー水槽でカエルウオの仲間を飼育するときには注意すべきポイントもありますので後程述べます。

ふた(最も重要!)

最も重要なものです。これがないと、カエルウオの仲間を飼育するのは難しいといえます。ぴったりふさぐことが出来るサイズのフタを用意することが大事です。もし隙間があいてしまうようなら、プラ板などを隙間に敷いておき、飛び出しを防ぎます。

ろ過装置

これもきわめて大事なものです。カエルウオの仲間は常に餌となる藻類をはみ、排せつをします。その排せつ物をバクテリアに分解して、生物ろ過をしてもらうために大きなろ過槽を持つ上部ろ過槽などが良いでしょう。小型水槽と外掛けろ過槽や外部ろ過槽というパターンは隙間が多くなりがちなので蓋を加工するなどの対策が必要となる場合があります。オーバーフロー水槽でこの仲間を飼育するときも注意するべきポイントがあります。

ろ過には大きく分けて二つあります。まずはウールマットなどを使ってフンや食べ残しを取り除く物理ろ過。 そしてもう一つは、排泄物や残り餌を...

水温

熱帯の陽光がガンガン照りつけるような場所に生息するカエルウオの仲間ですが、水槽で飼育するときの水温は25℃前後をキープするようにします。本州沿岸で採集してきたカエルウオも、同じくらいの水温で飼育可能です。他に飼育する魚に合わせて調整しましょう。

底砂・ライブロック

カエルウオの仲間は底砂よりも岩組の方が重要なことが多いです。ライブロックをサンゴ岩やレプリカライブロックなどと組み合わせて複雑な岩組を作りますが、組み合わせすぎると魚の泳ぐスペースがなくなったり淀んだ場所が出来たりするので気を付けます。魚の隠れ家を多くつくり、かつ水がよく流れるようなレイアウトを心がけるようにします。

水中ポンプ

カエルウオの仲間はサンゴ礁の浅い波打ち際のような場所に生息していますので、水中ポンプを使って水流をつくるのもよいでしょう。小形の水流ポンプがあればよいのですが、コードが通る隙間も塞ぐように気をつけます。

オーバーフロー水槽で飼育するときの注意

▲矢印のボックスに小さなプラケースをおいておくなど工夫しよう。

カエルウオをオーバーフロー水槽で飼育していると、フロー管をつたってろ過槽のウールボックスに落ちていたりすることもあります。カエルウオが水槽から居なくなっているようなら、ろ過槽を探してみましょう。カエルウオなどなら少しの間なら耐えられますが、長時間ウールボックスにいると死んでしまうこともあります。保険のためウールボックスにプラケースを置いておくなどの対策をとるのも良いでしょう。

カエルウオの仲間の餌

▲コケを食むカエルウオ

藻類を好んで食うものが多く、水槽のコケとり要因として水槽に入れられることが多いのですが、意外なほどよく食べるので、植物質の配合飼料も与えないと痩せてしまいます。キョーリンから販売されている国産配合飼料 ひかりプレミアム「海藻70」はカエルウオの仲間などのような藻・草食性海水魚にお勧めの餌です。このほかに動物質の配合餌も少し与えるようにします。

カエルウオと他の魚との混泳

▲大人しい魚と一緒に飼育しているセンカエルウオ

カエルウオの仲間同士はケンカをすることもあるので注意します。どの種も同じ種、同じ属については組み合わせが難しいものです。とくにカエルウオ属などは気が強い魚が多いので要注意です。ただし別の属であればサイズがかなり違っていても混泳することが可能なことも多いです。

カエルウオの仲間はタフなものが多く、ヤッコの仲間、クマノミの仲間、スズメダイの仲間の大人しめのもの、小ぶりのベラの仲間、ハゼの仲間、ハナダイの仲間など色々な魚と組み合わせることが出来ます。勿論口が大きく他の魚を食べてしまう、肉食の魚や大きな甲殻類などは避けるようにします。

カエルウオは磯で採集もできる

▲カエルウオの仲間が多数みられた宮崎県日南海岸の潮溜まり

南日本太平洋岸、種類によっては日本海岸の磯でもこの仲間と出会うことが出来ます。とくに琉球列島のタイドプールではさまざまな種類のカエルウオの仲間に会うことができます。

▲奄美諸島で採集したスジギンポ

琉球列島で出会えるような種の中には、観賞魚として流通することが殆どないような魚も多数見ることができます。サンゴ礁の礁湖の中を探すより、荒磯の波打ち際に発達した潮溜まりで出会えることが多いです。ただし足元が不安定になりやすいので採集の時には十分気を付けるようにします。

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