2020.04.02 (公開 2017.06.24) 海水魚図鑑
“コケ取り”に欠かせないカエルウオの仲間と飼育の基礎
カエルウオの仲間は表情が豊か。眼が大きく、皮弁があったり、また泳ぎ方も可愛いものです。しかも可愛いだけではなく、水槽に生える厄介なコケを、その種類によっては食べてくれたりもするのです。
もちろん、カエルウオの仲間の飼育にも押さえておきたいポイントがあります。しかしカエルウオの仲間は基本的な海水魚飼育のポイントとここであげるポイントを押さえれば結構簡単に「飼える魚」です。
カエルウオの仲間
▲ギンポ亜目
カエルウオの仲間はスズキ目・ギンポ亜目・イソギンポ科に含まれます。イソギンポ科は4つほどの族、または2つの亜科に分けられます。カエルウオの仲間、イソギンポの仲間、ナベカの仲間、ニジギンポの仲間です。2つの亜科に分ける場合は前2者と後2者でそれぞれひとつの亜科とします。最大で80cmほどになるものもいますがほとんどは小型種、80cmになる種も細長いリボン状の体で食べるところがなく、食用にはなりません。ギンポ亜目にはほかにコケギンポ科やアサヒギンポ科、ヘビギンポ科などが含まれますが、観賞魚店ではあまり見ることができません。
ダイナンギンポはこの仲間ではない
▲ダイナンギンポの仲間はギンポの仲間ではない
磯で採集できるダイナンギンポという魚がいますが、ダイナンギンポの仲間はギンポ亜目ではなく、ゲンゲ亜目タウエガジ科の魚になります。また標準和名「ギンポ」という魚もいますが、これもゲンゲ亜目ニシキギンポ科の魚です。したがってこれらの魚とカエルウオなどギンポ亜目の魚とは全く別の仲間なので注意が必要です。ゲンゲ亜目は北の海や深海など、冷たい海で繁栄している仲間で、飼育には低水温の環境が必要です。
このほかベラギンポやトビギンポなども名前に「ギンポ」とありますがこれらはワニギス亜目の魚であり、ギンポ亜目とは関係ありません。
なぜコケ取りとして入れられるの?
▲コケを食べるカエルウオ
カエルウオの仲間は多くの種が付着藻類(いわゆるコケ)を主に食べます。水槽でもコケをよく食べてくれ、壁面などにつくコケをよく食べてくれます。しかし、種類によってはあまりコケを食べてくれなかったり、サンゴを食べてしまうような種も知られています。またコケをメインに食べていても、コケが無くなると餓死してしまうこともあります。水槽内でもコケばかり食べさせるのではなく、早いうちに配合飼料にも慣れさせたいものです。藻類を主に食う魚用の「メガバイトグリーン」や「海藻70」がよい餌になります。
フタはかならずしっかりと
カエルウオの仲間は飛び出して死んでしまうという事故がよく起こります。そのため飛び出しを防ぐためにしっかりとフタをして、小さな隙間も埋めておくくらいの気がほしいものです。カエルウオの飼育においてフタは最も重要なものです。これがないと、カエルウオの仲間を飼育するのは難しいといえます。わずかな隙間であっても飛び出てしまうため、ぴったりふさぐことが出来るサイズのフタを用意することが大事です。もし隙間があいてしまうようなら、プラ板などを隙間に敷いておき、飛び出しを防ぎます。しっかり閉めたものであっても翌日になると水槽のわきに飛び出て干からびていた…という経験をもう何度もしています。
オーバーフロー水槽での対策
▲フロー管にアクリル板でフタをしている。飛び出しを防ぐことができる
カエルウオをオーバーフロー水槽で飼育していると、フロー管をつたってろ過槽のウールボックスに落ちていたりすることもあります。カエルウオが水槽から居なくなっているようなら、ろ過槽を探してみましょう。カエルウオなどなら少しの間なら耐えられますが、長時間ウールボックスにいると死んでしまうこともあります。保険のためウールボックスにプラケースを置いておくなどの対策をとるのもよいでしょう。このほか、オーバーフローの管の上をアクリル板で塞いでしまうという方法もあります。こうすればフロー管の切れ込み以上の大きさのカエルウオは落下しません。
カエルウオの仲間の混泳
▲90cm水槽でのカエルウオとヤエヤマギンポ
カエルウオの仲間同士はケンカをすることもあるので注意します。どの種も同じ種、同じ属については組み合わせが難しいものです。とくにカエルウオ属などは気が強い魚が多いので要注意です。ただし別の属であればサイズがかなり違っていても混泳することが可能なことも多いです。
また、カエルウオの仲間は水槽が小さいものでは争うこともあるのですが、大きい水槽であればある程度は緩和されるようです。ただし、強い方が弱い方を追いかけてしまい、弱い方が飛び出たり、サンプへ落下してしまうおそれもあるため、その対策は必要になります。先ほども述べたようにフロー管にフタをしたり、フタの隙間うめもしっかりしたほうがよいでしょう。
カエルウオの仲間はタフなものが多く、ヤッコの仲間、クマノミの仲間、スズメダイの仲間の大人しめのもの、小ぶりのベラの仲間、ハゼの仲間、ハナダイの仲間など色々な魚と組み合わせることが出来ます。勿論口が大きく他の魚を食べてしまう、肉食の魚や大きな甲殻類などは避けるようにします。
カエルウオの仲間たち
ヤエヤマギンポ属
▲ヤエヤマギンポ
▲シマギンポ
日本の海水魚店ではほぼ必ず見られるといってもよいヤエヤマギンポの仲間です。コケ取り能力は高めですが、ヤエヤマギンポはやや大きく育つので注意が必要です。沖縄や東南アジアから頻繁に輸入されるため、入手は難しくありません。体色は地味なものが多く、灰褐色、もしくは暗色の体に白い斑点が多いのが特徴です。
種一覧(★は日本に分布する種)
★ヤエヤマギンポ Salarias fasciatus (Bloch, 1786)
★シマギンポ S. luctuosus Whitley, 1929
★ヒレナガカエルウオ S. sinuosus Snyder, 1908
ホワイトスポッテッドブレニー S. alboguttatus Kner, 1867
セラムブレニー S. ceramensis Bleeker, 1853
ブレストスポットブレニー S. guttatus Valenciennes, 1836
ブラックストリークドブレニー S. nigrocinctus Bath, 1996
オブスカーブレニー S. obscurus Bath, 1992
パッツナーズブレニー S. patzneri Bath, 1992
スターリーブレニー S. ramosus Bath, 1992
セグメンテッドブレニー S. segmentatus Bath & Randall, 1991
スポルディングブレニー S. sexfilum Günther, 1861
シボガブレニー S. sibogai Bath, 1992
エリグロギンポ属
ヤエヤマギンポ属によく似ていますが、背鰭起部に黒い皮弁があるので区別することができます。コケとりとして入れられますが、飼育したことはなく、その能力は不明です。日本では琉球列島にすみ、海外では西太平洋とトンガに見られ、インドネシアなどから入ってきます。エリグロギンポのみが知られています。
種一覧(★は日本産種)
★エリグロギンポ Crossosalarias macrospilus Smith-Vaniz and Springer, 1971
カエルウオ属
▲カエルウオ
▲センカエルウオ
細長い体をしていて、岩にはえたコケなどをおもに捕食しています。水深1mほどの、干潮時潮溜まりになるような場所に見られることが多いです。15種が知られ、うち日本には4種が分布しています。以前はもっと多くの種が知られていたのですが、1994年に整理され、ハナカエルウオ属が復活しそこへ入れられたりしています。インド-中央太平洋域に広く分布しますが、大西洋や東太平洋では見ることができません。
コケはよく食べてくれます。カエルウオやニセカエルウオは採集も飼育も容易ですが性格がきつめなのでほかのカエルウオとの飼育は要注意です。また飛び出しにも注意しなければなりません。
種一覧(★は日本産種)
★カエルウオ Istiblennius enosimae (Jordan and Snyder, 1902) (※)
★ニセカエルウオ I. edentulus (Forster and Schneider, 1801)
★センカエルウオ I. lineatus (Valenciennes, 1836)
★カエルウオモドキ I. dussumieri (Valenciennes, 1836)
ビューティフルロックスキッパー I. bellus (Günther, 1861)
コールズロックスキッパー I. colei (Herre, 1934)
コモンネームなし I. flaviumbrinus (Rüppell, 1830)
ピーコックロックスキッパー I. meleagris (Valenciennes, 1836)
ミューラーズロックスキッパー I. muelleri (Klunzinger, 1879)
スカーフェイスロックスキッパー I. pox Springer and Williams, 1994
コモンネームなし I. rivulatus (Rüppell, 1830)
スポッテッドロックスキッパー I. spilotus Springer and Williams, 1994
コモンネームなし I. steindachneri (Pfeffer, 1893)
パリドロックスキッパー I. unicolor (Rüppell, 1838)
ゼブラブレニー I. zebra (Vaillant and Sauvage, 1875)
(※)Istiblennius enosimaeはFishbaseなど海外サイトではI. edentulusのジュニアシノニムとされていることが多いが、藍澤・土居内(2013)によれば両種は有効種とすべきだという。したがって今回は両種を有効種とした。
ハナカエルウオ属
▲ハナカエルウオ
ハナカエルウオ属は従来カエルウオ属の中に入れられてきましたが、現在では独立した属となっています。インド-中央太平洋の熱帯・亜熱帯域に広く分布しています。コケはカエルウオの仲間ほどは食べてくれないようですが、ホホグロギンポなどはそこそこ食べていました。
日本産ハナカエルウオ属魚類は7種ですが、そのうちコトジハナカエルウオ・アワユキハナカエルウオ2種は南鳥島産なのでなかなか出会う機会がありません。インド-太平洋に9種が分布しています。ただ中央太平洋のほかの地域から輸入されてくる可能性はあります。
種一覧(★は日本産種)
★ハナカエルウオ Blenniella periophthalma (Valenciennes, 1836)
★モンツキカエルウオ B. chrysospilos (Bleeker, 1857)
★アオテンギンポ B. caudolineata (Günther, 1877) (※)
★ホホグロギンポ B. bilitonensis (Bleeker, 1858)
★コトジハナカエルウオ B. paula (Bryan and Herre, 1903)
★ジュズダマギンポ B. interrupta (Bleeker, 1857)
★アワユキハナカエルウオ B. gibbifrons (Quoy and Gaimard, 1824)
ストライプトロックスキッパー B. cyanostigma (Bleeker, 1849)
レパードブレニエラ B. leopardus (Fowler, 1904)
(※)従来アオテンギンポにはBlenniella cyanostigmaという学名が使用されてきたが学名が変更されている。この学名はインド洋産の種に充てられるべきとされる。
タネギンポ属
▲タネギンポ
タネギンポ属はカエルウオ属に似ていますが腹鰭軟条数が多いことなどからことなる属とされています。代表的な種はタネギンポで、主に紀伊半島以南の磯で採集することができます。観賞魚店で販売されることはほとんどなく、「カエルウオミックス」として販売される程度です。コケはよく食べてくれますが、配合飼料もよく食べます。カエルウオ同様フタをしっかりしないと脱走してしまうこともあるので注意が必要です。
種一覧(★は日本産種)
★タネギンポ Praealticus tanegasimae (Jordan and Starks, 1906)
★タマギンポ P. bilineatus (Peters, 1868)
★カブキギンポ P. striatus Bath, 1992
ブラックマージンロックスキッパー P. caesius (Seale, 1906)
デイロックスキッパー P. dayi (Whitley, 1929)
クレニュレートリップロックスキッパー P. labrovittatus Bath, 1992
パーリーロックスキッパー P. margaritatus (Kendall & Radcliffe, 1912)
ラインドフィンロックスキッパー P. multistriatus Bath, 1992
ナタルロックスキッパー P. natalis (Regan, 1909)
ジャバロックスキッパー P. oortii (Bleeker, 1851)
マリアナロックスキッパー P. poptae (Fowler, 1925)
レンベロックスキッパー P. semicrenatus (Chapman, 1951)
トライアングルロックスキッパー P. triangulus (Chapman, 1951)
タマカエルウオ属
カエルウオの仲間に似ていますが、尾鰭軟条は分岐せず、腹鰭は1棘4軟条です。ヨダレカケの仲間に似ていますが、下顎は吸盤状ではありません。岩礁性の海岸で、岩の上などで本種をみることができます。インド-太平洋域に分布し、日本にはタマカエルウオが分布します。
種一覧(★は日本産種)
★タマカエルウオ Alticus saliens (Forster, 1788)
コモンネームなし A. anjouanae (Fourmanoir, 1955)
パシフィックリーピングブレニー A. arnoldorum (Curtiss, 1938)
カークスブレニー A. kirkii (Günther, 1868)
コモンネームなし A. magnusi (Klausewitz, 1964)
コモンネームなし A. monochrus Bleeker, 1869
モンタノスロックスキッパー A. montanoi (Sauvage, 1880)
ガーランデッドロックスキッパー A. saliens (Forster, 1788)
マルケサンロックスキッパー A. simplicirrus Smith-Vaniz and Springer, 1971
ヨダレカケ属
タマカエルウオ属に似ていますが、下唇に吸盤をもっているのが特徴です。水を嫌うのか、岩礁性海岸の陸地で見られますが、危険が迫ると海へ飛び込んでしまいます。飼育でもこの習性が問題となりますので、フタの隙間埋めなどもしっかりしておかなければなりません。東インド-西太平洋域に6種が分布し、日本産は2種で、一般的に採集できるのはヨダレカケのほうです。
種一覧(★は日本産種)
★ヨダレカケ Andamia tetradactylus (Bleeker, 1858)
★カンムリヨダレカケ A. reyi (Sauvage, 1880)
コモンネームなし A. amphibius (Walbaum, 1792)
コモンネームなし A. cyclocheilus Weber, 1909
コモンネームなし A. expansa Blyth, 1858
イーストインディアンロックスキッパー A. heteroptera (Bleeker, 1857)
ロウソクギンポ属
▲ロウソクギンポ
西太平洋から5種類が知られている小さなグループです。項部の皮弁を欠き、背鰭棘条数は12(まれに11)であることから、マツバギンポ属やHirculops属と区別することができます。分布域はマレーシアのティオマン島からアメリカンサモアにまでおよびますが、インド洋には見られません。日本ではロウソクギンポのみが和歌山県以南の太平洋岸で採集できます。
種一覧(★は日本産種)
ロウソクギンポ Rhabdoblennius nitidus (Günther, 1861)
コモンネームなし R. nigropunctatus Bath, 2004
パプアンブレニー R. papuensis Bath, 2004
バーチンブレニー R. rhabdotrachelus (Fowler and Ball, 1924)
スノウロックスキッパー R. snowi (Fowler, 1928)
マツバギンポ属
背鰭棘数が通常13でHirculops属と区別することができます。日本産ではロウソクギンポに似ていますが、背鰭棘数が多いことのほか、項部に皮弁があります。浅い岩礁域に生息しており、インド洋に6種が知られ、そのうちの1種マツバギンポは日本や台湾、香港、インドネシアにまで分布が及びます。
なおカスブレニーとルシブレニーは同じ文献で記載されていますが、その中の「カス」と「ルシ」はそれぞれカリフォルニア科学アカデミーと、ロードス大学J.L.Bスミス研究所のアクロニムです。
種一覧(★は日本産種)
★マツバギンポ Mimoblennius atrocinctus (Regan, 1909)
カスブレニー M. cas Springer and Spreitzer, 1978
フリンジドブレニー M. cirrosus Smith-Vaniz and Springer, 1971
コモンネームなし M. lineathorax Fricke, 1999
ルシブレニー M. rusi Springer and Spreitzer, 1978
ヤイトギンポ属
▲ヤイトギンポの標本。生時は透明感がつよい
ヤイトギンポのみが知られます。項部に皮弁があり、眼上にも皮弁がありますが微小です。サンゴ礁域にすみ浅い潮溜まりでも採集することができますが、飼育経験はありません。
種一覧(★は日本産種)
★ヤイトギンポ Glyptoparus delicatulus Smith, 1959
ヒナギンポ属
▲ヒナギンポ
この属も1属1種で、屋久島以南、琉球列島、西太平洋、オーストラリア、インド洋のクリスマス島に分布します。項部に皮弁があり、眼上にも皮弁がありますが、眼上の皮弁は短くなく、ヤイトギンポと見分けられます。頭部腹面には大きな黒色斑があるのも特徴です。サンゴ礁の浅い潮溜まりで採集することができますが、長期飼育経験はありません。
種一覧(★は日本産種)
★ヒナギンポ Nannosalarias nativitatis (Regan, 1909)
シシマイギンポ属
頭部に多くの皮弁があるのが特徴です。この属も1属1種で、よく似たものにMedusablennius属がいますが、眼窩骨の数や歯の数などに違いがあります。日本では屋久島以南、小笠原諸島に分布し、海外ではインド-中央太平洋に広く分布しているようです。
種一覧(★は日本産種)
シシマイギンポ Cirrisalarias bunares Springer, 1976
スジギンポ属
▲アオモンギンポ
▲ホシギンポ。普段はもっと灰色っぽい
カエルウオ族の中でも種類が多く、27種・亜種が知られています。基本的に項部に皮弁があり、眼の上にも目立つ皮弁があります。おもに波の荒いサンゴ礁海岸の浅瀬に多く、潮溜まりでも見られることが多いです。日本には7種類が知られ(ただし、このうちイレズミスジギンポは日本では南鳥島からのみ知られる)、採集することができますが、流通はほぼなく、購入することはできません。丈夫で飼育しやすいですが、痩せてしまうと回復は難しいです。岩やライブロックのコケはよく食べてくれますが、ガラス壁面のコケはあまり食べてくれませんでした。
この属はインド-中央太平洋だけでなく、東太平洋や大西洋にも分布しています。この族の中では最も広い分布域をもつものといえましょう。
種一覧(★は日本産種)
★アオモンギンポ Entomacrodus caudofasciatus (Regan, 1909)
★スジギンポ E. striatus (Valenciennes, 1836)
★ケショウギンポ E. niuafoouensis (Fowler, 1932)
★イレズミスジギンポ E. sealei Bryan and Herre, 1903
★キカイカエルウオ E. decussatus (Bleeker, 1858)
★ゴテンカエルウオ E. thalassinus thalassinus (Jordan and Seale, 1906)
コモンネームなし E. thalassinus longicirrus Springer, 1967
★ホシギンポ E. stellifer stellifer (Jordan and Snyder, 1902)
ライトブレニー E. stellifer lighti (Herre, 1938)
ウェストアフリカンロックホッパー E. cadenati Springer, 1967
チャップマンズブレニー E. chapmani Springer, 1967
ロックブレニー E. chiostictus (Jordan and Gilbert, 1882)
コーネリアスロックスキッパー E. corneliae (Fowler, 1932)
パシフィックロックスキッパー E. cymatobiotus Schultz and Chapman, 1960
フリンジリップロックスキッパー E. epalzeocheilos (Bleeker, 1859)
コモンネームなし E. lemuria Springer and Fricke, 2000
ビッグスポットロックスキッパー E. macrospilus Springer, 1967
ロックスキッパー E. marmoratus (Bennett, 1828)
パールブレニー E. nigricans Gill, 1859
コモンネームなし E. randalli Springer, 1967
ロフェンロックスキッパー E. rofeni Springer, 1967
コモンネームなし E. solus Williams and Bogorodsky, 2010
ストラスブルグブレニー E. strasburgi Springer, 1967
テクスタイルブレニー E. textilis (Valenciennes, 1836)
バーミキュレイテッドブレニー E. vermiculatus (Valenciennes, 1836)
ロックプールブレニー E. vomerinus (Valenciennes, 1836)
ウィリアムズロックスキッパー E. williamsi Springer and Fricke, 2000
ツマリギンポ属
波の荒いサンゴ礁域に生息します。眼上、項部には小さいですが皮弁をもちます。スジギンポに似ていますがやや寸詰まりな体形が特徴です。観賞魚として販売されてもよいと思うのですが、いまだに流通はないようです。
種一覧(★は日本産種)
★ツマリギンポ Stanulus talboti Springer, 1968
★ヒメツマリギンポ S. seychellensis Smith, 1959
ニラミギンポ属
▲テールスポットブレニー
▲フタイロカエルウオ
観賞魚として飼育されるカエルウオの仲間としてはもっともよく知られたグループでしょう。フタイロカエルウオも、ヒトスジギンポも、イシガキカエルウオもこの仲間です。
インド-太平洋域から50種以上が知られていますが、観賞魚として入ってくる種はそれほど多くありません。模様が変わっているものも多く、コレクションしたくなりますが、小型水槽での複数飼育はなるべく避けた方が賢明です。とくにフタイロカエルウオやニラミギンポなど大きくなる種は要注意です。餌はよく食べ丈夫で飼いやすいですが、配合餌に慣れればコケはあまり食べなくなってしまうこともあります。またヒトスジギンポなど一部の種は弱ったサンゴの外皮を食べてしまうこともあり注意しなければなりません。
種一覧(★は日本産種)
★フタイロカエルウオ Ecsenius bicolor (Day, 1888)
★ニラミギンポ E. namiyei (Jordan and Evermann, 1902)
★イシガキカエルウオ E. yaeyamaensis (Aoyagi, 1954)
★ヒトスジギンポ E. lineatus Klausewitz, 1962
★ゴイシギンポ E. oculus Springer, 1971
★ハナダイギンポ E. midas Starck, 1969
フォーラインブレニー E. aequalis Springer, 1988
アレンズコームトゥースブレニー E. alleni Springer, 1988
アロンズブレニー E. aroni Springer, 1971
オーストラリアンコームトゥースブレニー E. australianus Springer, 1988
アクセルロッズコーラルブレニー E. axelrodi Springer, 1988
バンダコームトゥース E. bandanus Springer, 1971
バスコームトゥース E. bathi Springer, 1988
ツインスポットコーラルブレニー E. bimaculatus Springer, 1971
ブルーベリーブレニー E. caeruliventris Springer and Allen, 2004
コレッツコーラルブレニー E. collettei Springer, 1972
デンテクスブレニー E. dentex Springer, 1988
ツーコートコーラルブレニー E. dilemma Springer, 1988
フィジーコーラルブレニー E. fijiensis Springer, 1988
ブラックストライプトコームトゥースブレニー E. fourmanoiri Springer, 1972
スムースフィンブレニ― E. frontalis (Valenciennes, 1836)
レッドシーミミックブレニー E. gravieri (Pellegrin, 1906)
コモンネームなし E. isos McKinney and Springer, 1976
カーツコーラルブレニー E. kurti Springer, 1988
ブルーアンドゴールドブレニー E. lividanalis Chapman and Schultz, 1952
ラボックスコーラルブレニー E. lubbocki Springer, 1988
クィーンズランドコームトゥースブレニー E. mandibularis McCulloch, 1923
イエローアイドコームトゥース E. melarchus McKinney and Springer, 1976
コモンネームなし E. minutus Klausewitz, 1963
モノクルコーラルブレニー E. monoculus Springer, 1988
ナロロブレニー E. nalolo Smith, 1959
ニウエブレニー E. niue Springer, 2002
オキュラーコーラルブレニー E. oculatus Springer, 1988
アイスポットブレニー E. ops Springer and Allen, 2001
コミカルブレニー E. opsifrontalis Chapman and Schultz, 1952
パルダスブレニー E. pardus Springer, 1988
スポッテッドバックコーラルブレニー E. paroculus Springer, 1988
ホワイトラインドコームトゥース E. pictus McKinney and Springer, 1976
ドテッドコーラルブレニー E. polystictus Springer and Randall, 1999
ポルテノイブレニー E. portenoyi Springer, 1988
ストライプコーラルブレニー E. prooculis Chapman and Schultz, 1952
ガルフブレニー E. pulcher (Murray, 1887)
ランドールブレニー E. randalli Springer, 1991
シュローダーズコーラルブレニー E. schroederi McKinney and Springer, 1976
サドルブレニー E. sellifer Springer, 1988
シャーリーズコーラルブレニー E. shirleyae Springer and Allen, 2004
グレートバリアリーフブレニー E. stictus Springer, 1988
テールスポットブレニー E. stigmatura Fowler, 1952
ホワイトラインドブレニー E. taeniatus Springer, 1988
ニューカレドニアブレニー E. tessera Springer, 1988
タイガーコームトゥース E. tigris Springer, 1988
トリカラーコーラルブレニー E. tricolor Springer and Allen, 2001
スリーラインドブレニー E. trilineatus Springer, 1972
インドカエルウオ属
インドカエルウオ属はインド-西太平洋に2種が知られています。大きな背鰭と臀鰭をもつのが特徴で、インドカエルウオでは尾鰭軟条が分岐しません。ホソカワインドカエルウオは1999年に新種記載された種で、背鰭後端と尾鰭が鰭膜でつながるのが特徴です。コケはよく食べてくれますが、やや大きくなるため混泳相手には注意が必要です。
種一覧(★は日本産種)
ブラックブレニー Atrosalarias fuscus fuscus (Rüppell, 1838)
★インドカエルウオ A. fuscus holomelas (Günther, 1872)
★ホソカワインドカエルウオ A. hosokawai Suzuki and Senou, 1999
セダカギンポ属
項部に櫛状の皮弁を持つこと、体高が高いこと、体にヒョウ柄のような斑紋があること、下顎に皮弁がないこと、犬歯を持たないことが特徴です。インド洋のコシロックスキッパーは本種に似ていますが下顎に皮弁がなく、犬歯があります。南アフリカからマルケサス諸島(ハワイ諸島にも分布)に至る広い分布をもち、日本でも和歌山県串本以南の太平洋岸、琉球列島、小笠原諸島でみられます。
本種はサンゴ礁のサンゴの枝間に見られ、主にサンゴの表皮やポリプを食べます。そのため藻類は食せず、飼育も難しく、サンゴ水槽では飼育できません。
種一覧(★は日本産種)
★セダカギンポ Exallias brevis (Kner, 1868)
タテガミカエルウオ属
項部に櫛状の皮弁があるためこの名前がついたのだと思われます。サンゴ礁域に生息し、サンゴの周辺の藻類や、時にはサンゴの表皮も食べるようで、あまり初心者向きとはいえません。日本では琉球列島や小笠原諸島に多く分布しているようですが、四国などでも採集されます。観賞魚としてはまれに輸入されています。日本には8種が分布します。
種一覧(★は日本産種)
★ミノカエルウオ Cirripectes polyzona (Bleeker, 1868)
★マーカスミノカエルウオ C. quagga (Fowler and Ball, 1924)
★タテガミカエルウオ C. castaneus (Valenciennes, 1836)
★アミメミノカエルウオ C. imitator Williams, 1985
★イナズマタテガミカエルウオ C. stigmaticus Strasburg and Schultz, 1953
★オボロゲタテガミカエルウオ C. filamentosus (Alleyne and Macleay, 1877)
★ベニツケタテガミカエルウオ C. variolosus (Valenciennes, 1836)
★スジタテガミカエルウオ C. kuwamurai Fukao, 1984
ブラックブロッチブレニー C. alboapicalis (Ogilby, 1899)
キンバリーブレニー C. alleni Williams, 1993
ブラックフラップブレニー C. auritus Carlson, 1981
レディマスグレイブブレニー C. chelomatus Williams and Maugé, 1984
スポッテッドブレニー C. fuscoguttatus Strasburg and Schultz, 1953
ギルバーツブレニー C. gilberti Williams, 1988
イエローテールブレニー(※) C. heemstraorum Williams, 2010
ハッチンスブレニー C. hutchinsi Williams, 1988
コモンネームなし C. jenningsi Schultz, 1943
ガルガンチュワブレニー C. obscurus (Borodin, 1927)
フレーミングブレニー C. perustus Smith, 1959
ランドールズブレニー C. randalli Williams, 1988
スプリンガーズブレニー C. springeri Williams, 1988
スカーフェイスブレニー C. vanderbilti (Fowler, 1938)
ロブストブレニー C. viriosus Williams, 1988
(※)クロギンポ属に同じ名前で流通する種がいる。混同しないように注意が必要。
Alloblennius属
インド洋に特産のカエルウオの仲間です。項部の皮弁を欠き、眼の上や鼻孔周辺に皮弁があるのが特徴です。大きくても全長5cmほどといった小型種が多い属です。5種が知られています。
種一覧
コモンネームなし Alloblennius anuchalis (Springer and Spreitzer, 1978)
リーフブレニー A. frondiculus Smith-Vaniz and Allen, 2012
ジャグラーブレニー A. jugularis (Klunzinger, 1871)
ドワーフブレニー A. parvus Springer and Spreitzer, 1978
コモンネームなし A. pictus (Lotan, 1970)
Antennablennius属
眼上に皮弁はなく、前鼻孔に皮弁があるのが特徴です。Antennablennius bifilumという種は項部に長い皮弁をもっているのも特徴です。この属には9種が知られますが、すべてインド洋や紅海の産で日本近海には見られません。また輸入された実績も不明ですが、面白い顔をしているものもいるので是非とも入荷を期待したいところです。
種一覧
アデンブレニー Antennablennius adenensis Fraser-Brunner, 1951
マスタッチロックスキッパー A. australis Fraser-Brunner, 1951
ホーンドロックスキッパー A. bifilum (Günther, 1861)
セイロンロックスキッパー A. ceylonensis Bath, 1983
アラビアンブレニー A. hypenetes (Klunzinger, 1871)
コモンネームなし A. sexfasciatus (von Bonde, 1923)
シモニーブレニー A. simonyi (Steindachner, 1902)
オレンジドテッドブレニー A. variopunctatus (Jatzow and Lenz, 1898)
コモンネームなし A. velifer Smith, 1959
Dodekablennos属
インド洋に生息するカエルウオの仲間で、1属1種です。属名は「12」にちなみ、背鰭が12棘・胸鰭が12軟条であるということに因むようです。外見はカエルウオ属などに似ており、臀鰭後端軟条が尾柄と鰭膜でつながらないところなども似ていますが、眼窩やうなじの部分の皮弁を欠くようです。タイプ産地はモーリシャスで、このほかレユニオンにもいますが、これらの島から来る魚はみな高価であり、本種も高価なのは間違いないでしょう。
種一覧
コモンネームなし Dodekablennos fraseri Springer and Spreitzer, 1978
Hirculops属
Antennablennius属によく似ているのですが、眼の上に大きな極めてよく目立つ皮弁があるのが特徴です。ロウソクギンポ属やマツバギンポ属に近いようで、背鰭棘数は13です。ロウソクギンポとは項部に小さな皮弁があり見分けられます。インド洋に分布し、1属1種が知られている小さなグループです。その皮弁のようすから「ラビットブレニー」なるあだ名もあります。南アフリカからペルシャ湾、紅海に生息します。
種一覧
ハイブローロックスキッパー Hirculops cornifer (Rüppell, 1830)
Litobranchus属
1属1種で、フィリピンやインドネシアに生息しています。見た目はロウソクギンポをさらに細長くしたような感じで、雄の体にはロウソクギンポに見られるような青白い線がはいっています。生息地は浅い岩礁や潮溜まりなどです。
種一覧
ファウラーズロックスキッパー Litobranchus fowleri (Herre, 1936)
Medusablennius属
1966年に新種記載された1属1種のカエルウオの仲間です。吻部に多数の皮弁があり、シシマイギンポ属に近いと考えられていますが、歯の数や眼窩骨数が少ないなどの違いがあるようです。中央太平洋のツアモツ諸島から採集されているのみです。
種一覧
コモンネームなし Medusablennius chani Springer, 1966
Paralticus属
1994年につくられた属で、1種のみを含みます。インドネシアやニューギニアにのみ生息している種です。
種一覧
アンボンロックスキッパー Paralticus amboinensis (Bleeker, 1857)
Pereulixia属
南アフリカの東岸からパキスタンまでのインド洋にのみいます。項部に櫛状の皮弁があり、タテガミカエルウオやセダカギンポに近い種とされていますが、下顎に犬歯状歯をもつところが異なっています。Pereulixia kosiensisの1種のみが知られ、全長20cmに達するとされる大型種です。
種一覧
コシロックスキッパー Pereulixia kosiensis (Regan, 1908)
Ophioblennius属
タテガミカエルウオ属によく似た見た目をした一群ですが、項部の皮弁は櫛状でないことにより見分けられます。カエルウオの仲間はインド-中央太平洋に広く分布しますが、この属のものは大西洋や東太平洋にのみ生息しているグループです。餌はおもに藻類や小動物を捕食する雑食性のようです。ごくまれですが観賞魚として入荷した例があります。
種一覧
アトランティックブレニー Ophioblennius atlanticus (Valenciennes, 1836)
コモンネームなし O. clippertonensis Springer, 1962
レッドリップブレニー O. macclurei (Silvester, 1915)
ラージバンデッドブレニー O. steindachneri Jordan and Evermann, 1898
コモンネームなし O. trinitatis Miranda Ribeiro, 1919
Scartichthys属
全長20cmを超える大型種が含まれます。4種類が知られていますが、どの種も中南米から南米の太平洋岸に生息しています。見た目はイソギンポに似ていますが異なるグループとされています。中南米の磯ではよく見られる種のようです。スペイン語名ではBorrachos(酔った~)といい、卵を食べると酔っぱらったようになります。
種一覧
コモンネームなし Scartichthys crapulatus Williams, 1990
ジャイアントブレニー S. gigas (Steindachner, 1876)
コモンネームなし S. variolatus (Valenciennes, 1836)
コモンネームなし S. viridis (Valenciennes, 1836)