2020.09.21 (公開 2019.04.16) 海水魚図鑑
フタイロカエルウオの飼育方法~あまりコケは食べてくれないので注意
フタイロカエルウオはカエルウオの仲間で、前半分が黒っぽく、後半分がオレンジ色(色彩には若干変異あり)の体色が特徴で人気があります。しかしながら近い仲間のカエルウオやヤエヤマギンポほどコケは食べてくれず、やや大きく成長し、成長するにつれ性格もきつくなるので注意が必要です。
標準和名 | フタイロカエルウオ |
学名 | Ecsenius bicolor (Day, 1888) |
英名 | Bicolor blenny, Two-colour combtoothなど |
分類 | 条鰭綱・スズキ目・ギンポ亜目・イソギンポ科・カエルウオ族・ニラミギンポ属 |
全長 | 10cm |
飼育難易度 | ★☆☆☆☆ |
おすすめの餌 | メガバイトグリーン、海藻70など |
温度 | 25℃前後 |
水槽 | 45cm~ |
混泳 | 性格がきつめ、狭い水槽では同じカエルウオの仲間とは飼い難い |
サンゴとの飼育 | イソギンチャクは不可。サンゴが弱ったら共肉をつつくこともあるため注意 |
フタイロカエルウオってどんな魚?
フタイロカエルウオはイソギンポ科・ニラミギンポ属の魚です。ニラミギンポ属の魚の中では大きくなる種類で、全長10cmを越えます。
色彩バリエーション
フタイロカエルウオの色彩にはいくつかのバリエーションが知られています。体の前半分が黒く、後ろ半分がオレンジ色であるものがよく図鑑などに掲載されていますが、このほかにも、前半分が黒く後ろ半分が黄色で、1本の縦帯があるもの、あるいは一様に灰褐色のものまでいます。また、もともとの模様に関係なく、体側に白いまだら模様を出すことがあります。色彩的には黒とオレンジ色のツートーンカラーのものが人気です。
なお、学名と英名のBicolorは「2つの色を持つ」という意味で、和名も同様です。
そっくりさん
▲ナベカの仲間イエローフィンブレニー
フタイロカエルウオが含まれるニラミギンポ属は50種以上が含まれる大きな分類群ですが、その中でもニラミギンポという種とよく似ています。ニラミギンポは暗色の体で、尾の付近が黄色っぽくなる魚です。フタイロカエルウオとは背鰭に欠刻がないなどの特徴により区別できます。また、ニラミギンポは和歌山県以南に分布しており(フタイロカエルウオは屋久島以南)、磯採集で出会えるチャンスがありそうですが、水深5~20mの環境で見られるため、潮溜まりでは見られません、
また、イエローテールブレニー、もしくはイエローフィンブレニーと呼ばれている種がいます。全身が黒く尾鰭付近や体側後半部が黄色になるのが特徴です。これはカエルウオ族ではなく、ナベカ族クロギンポ属の魚ですので、あまりコケ取りの効果はないのですが、かわいいので水槽に入れられることもあります。入荷量は少ないのですが、分布はフィリピン、インドネシア、シンガポールなど東南アジアですので高価ではありません。
コケは食べてくれる?
フタイロカエルウオを「コケ取り」として水槽に入れることがあります。微小動物や藻類を食う雑食性の種で、全くコケを食べないわけではないのですが、カエルウオほどは食べてくれません。また性格はきつく、コケを食べてくれる小型のカエルウオを駆逐してしまうおそれもあるため、要注意です。なお、カエルウオをコケ取りとして入れるのであればカエルウオやヤエヤマギンポがコケをよく食べてくれますので、本種ではなくこれらの種を入れるようにしましょう。
フタイロカエルウオ飼育に適した環境
水槽
フタイロカエルウオは小型水槽でも飼育できますが、水槽内を泳ぎ回ることもあり、成長すると全長10cmにもなります。できれば45cm以上の水槽での飼育がおすすめです。60cm水槽であればほかの魚との混泳が楽しめます。
水質とろ過システム
フタイロカエルウオは比較的水質悪化に強い種類ではありますが、それでも汚い水で飼い続けるのはよくありません。外部ろ過槽だけ、あるいは外掛けろ過槽だけ、というのでは能力が不足しやすくなります。60cm水槽で飼育するならば上部ろ過槽がおすすめです。上部ろ過槽が使えないような、60cm未満の小さい水槽であれば外部ろ過槽と外掛けろ過槽の組み合わせが最適です。もちろんオーバーフロー水槽で飼育するのもおすすめです。
魚の数を少なく抑えられるならばベルリンシステムやゼオビットシステムなどのサンゴ水槽で飼育することもできます。
水温
水温は22~26℃が適温で、25℃くらいで飼育するとよいでしょう。ただし、水温が大きく変動するといくら丈夫なカエルウオであっても病気になったり体調を崩してしまうおそれがあるのでよくありません。ヒーターとクーラーを使用して年中同じ水温をキープしましょう。
フタ
意外と遊泳力があって水槽内を泳ぎまわることもあり、カエルウオやタネギンポの仲間ほどではないのですが水槽から飛び出してしまうおそれもありますので、フタはちゃんとしましょう。
隠れ家
▲岩にあいた孔から顔を出すフタイロカエルウオ
フタイロカエルウオが隠れられるように、ライブロックやサンゴ岩などを入れてあげるとよいでしょう。小さな孔が多数開いているようなタイプが好みで、そのような隠れ家を入れると孔の中から顔を出している様子を観察することができます。小型個体であれば「ハゼ土管」など専用の土管が販売されているので、こういうものを使ってもよいでしょう。
フタイロカエルウオに適した餌
フタイロカエルウオは雑食性で、コケはほかのカエルウオの仲間ほどは食べないのですが、粒状の餌などはよく食べてくれます。藻類食が強い魚用の配合飼料には色々ありますが、キョーリンから出ている「メガバイトグリーン」や「海藻70」の各Sサイズが望ましいでしょう。
フタイロカエルウオをお迎えする
フタイロカエルウオは日本国内では屋久島以南に分布していますが、潮通しのよい水深20m以浅のサンゴ礁に生息し、潮溜まりでは見られないようです。そのため採集するのは難しく、購入に頼ることになりそうです。
分布域はインド-太平洋の熱帯域に及びますが、観賞魚としてはフィリピンやインドネシアから来ることが多いです。そのため高価ではありませんが、状態の見極めが重要です。
まずは入荷して間もない個体は購入してはいけません。また、痩せてがりがりな個体は餌を食べていない可能性があります。長生きしないことも多いので、これも購入してはいけません。このほか体に傷があったり、鰭がぼろぼろの個体も購入するのは避けます。カエルウオの仲間は高価な魚ではなく、雑な扱いをされやすいので購入の際はほかの魚よりも確り状態を見極めたいところです。
東南アジアのほか、沖縄からも来ることがあります。沖縄産の個体は東南アジア産と比べると若干高めではありますが、東南アジアのものよりも状態よく届くことが多いのでおすすめといえます。ただし、それでも入荷直後の個体は避けた方がよいでしょう。
フタイロカエルウオとほかの生物との関係
同種同士・ほかのカエルウオとの混泳
狭い水槽では同種同士やほかのカエルウオとの混泳は難しいです。これはフタイロカエルウオはやや性格がキツイからです。またフタイロカエルウオは最大で全長10cmになり、大型水槽であっても小型のカエルウオとの混泳は注意が必要です。ヤエヤマギンポやインドカエルウオなど大きめの種がよいでしょう。
ほかの魚との混泳
▲オコゼなど肉食魚との混泳は禁物
カエルウオ以外のほかの魚と争うことはあまりなく、しかもタフな性格をしているため多くの魚との混泳に適しているといえます。カクレクマノミ、スズメダイの仲間(ただし大人しめのもの)とは一緒に飼育できますが、イソギンチャクとクマノミの共生を再現した水槽ではフタイロカエルウオの飼育は難しいです(後述)。ヤッコの仲間も小型・中型ヤッコはもちろん、成魚であれば大型ヤッコ相手でも混泳できます。
ただし肉食性のバスレットやカサゴ、オコゼ、ウツボ、フエダイやハタなどには食べられるおそれがあるので注意しましょう。メギスの仲間も肉食性が強く、捕食されなくても、体形が似た魚を攻撃することがあるので注意が必要です。
サンゴ・無脊椎動物との相性
サンゴはLPS、SPS、ソフトコーラルいずれも飼育できます。ハードコーラルの骨格にコケなどが生えていると個体によってはコケだけでなく共肉を食べてしまうこともまれにあるようですので注意が必要です。
またイソギンチャクなどの捕食性の生物には食べられてしまうおそれもあります。イソギンチャクはヤッコ、ハナダイ、ベラなど色々な魚を捕食してしまうおそれがありますが、カエルウオやハゼ、ネズッポなど底生魚やタツノオトシゴなど動きが遅い魚は特にイソギンチャクに食べられやすいといえますので、一緒に飼育するのはやめましょう。それ以外の無脊椎動物でもイカやタコはもちろん、大きなエビ・カニ・ヤドカリなどに捕食されてしまうおそれがあるので一緒に飼育するのはやめた方がよいでしょう。また小型の無脊椎動物であっても、オトヒメエビはスローな魚を捕食してしまうことがありますので要注意です。
フタイロカエルウオ飼育まとめ
- 黒とオレンジの体色が特徴だが変異も多い
- コケも食べるが「コケ取り」といえるほどの働きはしない
- 45cm以上の水槽で飼育したい。混泳なら60cm以上
- 水質悪化には強いがろ過槽はきちんとしたものを選びたい
- 水温は25℃前後で安定していることが重要
- フタはきちんとする
- 孔の中に隠れるため隠れ家を入れる
- 植物質の餌を与えるとよい
- 入荷直後の個体やがりがりの個体、鰭や体表に異常があるものは避ける
- 小型水槽ではほかのカエルウオとの飼育は避ける
- ほかの魚とは概ね問題ないが肉食魚との混泳は禁物
- 骨格にコケが生えたサンゴは要注意
- イソギンチャクには食べられやすい
- 大型の甲殻類に襲われる可能性も