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2020.09.21 (公開 2019.04.15) 海水魚図鑑

アカネハナゴイの飼育方法~ハナゴイ飼育の入門種として最適!

アカネハナゴイはハタ科ハナダイ亜科・ナガハナダイ属の魚で、そのなかでも「ハナゴイ」とよばれるグループの魚です。ハナゴイの仲間は飼育が難しいものが多いことで知られていますが、このアカネハナゴイはハナゴイの仲間では飼育しやすい魚といえます。

ただしそれでもキンギョハナダイやケラマハナダイといった、飼育しやすいハナダイと比べると飼育難易度はやや高めです。今回はこのアカネハナゴイの飼育方法をご紹介します。

標準和名 アカネハナゴイ
学名 Pseudanthias dispar (Herre, 1955)
英名 Redfin anthias, Peach fairy bassletなど
分類 条鰭綱・スズキ目・スズキ亜目・ハタ科・ハナダイ亜科・ナガハナダイ属
全長 10cm
飼育難易度 ★★★☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッドシグマグロウなど
温度 25℃前後
水槽 60cm~
混泳 やや臆病、気が強い魚との混泳は避ける
サンゴとの飼育

アカネハナゴイってどんな魚?

▲アカネハナゴイ

▲一般的なハタ科のイメージ(タマカイ)

アカネハナゴイはハタ科の魚です。「ハタ」といえば、大きいと2m近くになる海の重戦車的なイメージがつよいのですが、ハタ科といっても色々な種類がおり、アカネハナゴイが含まれるハナダイ亜科は10~30cmほどの小型種が多く、桃色や赤、あるいは黄色というカラフルな体色が特徴です。ハナダイ亜科にはいくつかの属がありますが、その中でこのアカネハナゴイはナガハナダイ属に含まれています。

ナガハナダイ属

▲キンギョハナダイもナガハナダイ属のメンバー

ナガハナダイ属の魚はハナダイ亜科の最大のグループで、南アフリカからハワイ諸島までの広い範囲に生息しています。東太平洋沿岸やカリブ海・メキシコ湾を含む大西洋沿岸には分布していません。

この属の魚は多くの種が雌雄で異なる体色をもっています。アクアリストにお馴染みのキンギョハナダイケラマハナダイ、スミレナガハナダイはこの属の魚で、いずれも雄は赤みが強く、雌が黄色っぽい感じです。

このナガハナダイ属の魚もいくつかのグループに分けることができます。一般的にキンギョハナダイやケラマハナダイ、ナガハナダイなどのグループと、ハナゴイの仲間のグループに分けることが多いです。このほかベントラの愛称で知られるニラミハナダイもほかのナガハナダイ属とはやや異なるグループとされます。

ハナゴイの仲間

ナガハナダイ属には非常に多くの種が含まれますが、その中には従来別属とされていたものも含まれます。このアカネハナゴイは現在ではナガハナダイ属の中に含まれますが、従来はMirolabrichthys属という別属とされていました。現在でもナガハナダイ属の亜属として使用されることもあります。

このMirolabrichthys属とされていた魚たちは「ハナゴイ」ともよばれており、ハナゴイやパープルクイーン、オオテンハナゴイ、アカボシハナゴイ(通称タイガークイーン、イメルディ)といった種類が含まれています。口の形状はハナダイの仲間よりも若干とがるのが特徴です。

ハナゴイの仲間はハナダイの仲間ではやや飼育が難しいです。その中でアカネハナゴイはハナゴイの中では飼いやすい種類になります。そのため、ハナゴイの仲間を初めて飼育するのに最適といえます。

アカネハナゴイは南日本からフィリピン、インドネシア、フィジー、サモアに分布します。それより西のインド洋ではフレームアンティアス(学名Pseudanthias ignitus)に置き換わります。インド洋からたまに入るもので、飼育方法はアカネハナゴイとあまり変わりません。

アカネハナゴイに適した飼育環境

水槽

アカネハナゴイは45cm水槽でも飼育は可能ですが、うまく飼育するには60cm以上の水槽がほしいところです。成長すると10cmを超えるサイズにまで成長し、よく泳ぐため大きい水槽が有利となります。群泳をやほかの魚との混泳を楽しむなら90cm以上の水槽が必要になります。

水質とろ過システム

ハナゴイの仲間をミドリイシたっぷりのベルリン水槽で泳がせたくなりますが、ミドリイシとハナゴイの飼育には注意が必要です。ハナゴイの仲間は痩せやすく、長期飼育するのにはこまめな給餌が必要なので、水が汚れやすくなるからです。そうするとミドリイシ類の維持に重要な水質をキープできなくなることもあります。

プロテインスキマーはアカネハナゴイが食べ残してしまった餌や排せつ物、デトリタスなどを強力に水槽から取り除いてくれますので、できるだけ設置したほうがよいでしょう。もちろん、ミドリイシなどを飼育するためのベルリンシステムでは必須の装備といえます。

魚と丈夫なサンゴを飼育するのであれば、強制ろ過を用いたろ過システムが最適です。外掛けろ過槽はパワーが足りなく、外部ろ過槽は酸欠になるおそれがあります。上部ろ過槽の使用か、外部ろ過槽と外掛け式スキマーの併用も考えられますが、上部ろ過槽と外部ろ過槽の併用、またはオーバーフロー水槽にしてサンプでろ過する方式が確実でしょう。オーバーフロー水槽であればプロテインスキマーを設置したり、殺菌灯を設置したり、これらの器具を隠す、といったことがしやすくおすすめです。

水流

ハナゴイの仲間はほかの魚と比べ強めの水流の場所を好むようで、水槽内でもポンプを使って水流を作ってあげましょう。餌を与えるときもそのまま手でぱらぱらと撒くよりも、水流に乗せて与えるとよいでしょう。

水温

アカネハナゴイはハナダイの仲間としては浅場に生息する種類ですので比較的高水温には耐えられますが、できるだけ25℃をキープするように心がけましょう。もちろんクーラーとヒーターを使用し、周年、大きな水温の変動がないよう心がけたいものです。

隠れ家

夜間の睡眠時や、ほかの魚に追われたりした時などは岩の陰に隠れることが多いですので、ライブロックやサンゴ岩を使って隠れ家を作ってあげましょう。

アカネハナゴイに適した餌と添加剤

配合飼料

▲幼魚にもおすすめの小粒の配合飼料「シグマグロウ」

アカネハナゴイの成魚はメガバイト レッドのSサイズはよく食べますが、幼魚にとってはメガバイト レッドのSサイズは大きすぎるのか、口に入れても吐き出してしまうことがよくあります。そのようなときは手で軽くすりつぶして与えるとよいでしょう。また、より粒が小さ目の配合飼料「シグマグロウ」などに変えてもよいかもしれません。

このほか最近は「バイタリス」などからサンゴ用の粉末フードも発売されていて、それを与えるのもおすすめです。ただしこのような小粒の配合飼料は一日に何度かに分けて与えないと、ハナゴイのお腹を満たすことはできません。そしてお腹を満たすために何度かあげていたら水を悪くしてしまうこともあります。これがハナゴイの飼育が難しい、といわれる理由の一つといえるでしょう。

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冷凍餌

コペポーダやホワイトシュリンプ、ブラインシュリンプ、イカやエビなどをミンチにして混ぜた冷凍配合飼料などがあります。飼育初期で、とくにまだ配合飼料になれていないときにはこのような餌を与えるとよいでしょう。しかしながらこれらの餌は配合飼料と比べて水を汚しやすいので、与えすぎないように注意が必要です。

添加剤

▲魚にとっても重要な成分であるヨウ素

ヨウ素は海水魚にも必須な成分です。とくにサンゴを飼育していたり、あるいはろ過の補助のためにプロテインスキマーを使用すると、ヨウ素を水槽から取り除いてしまいますので、定期的な添加が重要となります。このほか餌の嗜好性を上げるため、餌に「ガーリックパワー」などの添加剤を添加し嗜好性を高めるのもよい方法といえます。

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アカネハナゴイをお迎えする

アカネハナゴイはスズメダイやハゼの仲間と比べて若干飼育が難しい魚です。状態がよければ長期飼育もしやすいのですが、状態がイマイチだと長期飼育は困難になってしまいます。採集することはできなくはないのですが、潮溜まりでは採集できない種なので、購入に頼ることになるでしょう。

個体をよく見る

▲水槽の隅でじっとしている個体。背肉が落ちている

購入する際には魚の体と泳ぎ方を見るようにします。まず痩せていて背中の肉が落ちてしまっているのは避けます。これはハナゴイの仲間は痩せやすく、いったん痩せると回復させにくいからです。このほか鰭が溶けていたり裂けているもの、体表や鰭に白い点がついているのも避けましょう。泳ぎ方としては、水槽内をゆったりと泳いでいる個体が理想です。浅場のハナダイなのであまり減圧症は見られませんが、頭を下にして逆立ち泳ぎしているもの、体表を岩などにこすり付けているもの、水槽の隅でじっとしているものは避けましょう。ただし夜間は水槽の隅でじっとして眠っていることがあります。

写真の個体は背中の肉が落ちてしまい、水槽の隅っこでじっとしており、翌日には死んでしまいました。

アカネハナゴイの混泳

同種同士の混泳

▲観賞魚店で飼育されていたアカネハナゴイ

アカネハナゴイは自然の海では群れていることが多く、水槽内でも群れを再現することができます。ただし雌同士での複数飼育はも可能ですが、雄同士での複数飼育は避けた方が賢明といえます。幼魚を5匹ほど購入して泳がせるとやがて大きいものが雄になります。なお、同種同士の複数飼育を考えるのであれば、90cm以上の大型水槽で飼育することをおすすめします。狭い水槽では強い1ペアのみが残りがちです。

ほかのハナダイとの混泳

▲バートレットアンティアスはアカネハナゴイに似るが性格がかなりきつめ

アカネハナゴイは先ほども述べたようにハナダイの仲間でもデリケートな種ですので、もし混泳を考えるのであれば、できるだけ広い水槽を用意し、先にアカネハナゴイを入れてアカネハナゴイが落ち着いてからほかのハナダイを入れれば混泳可能となるケースもあります。それでもキンギョハナダイ、ケラマハナダイといった気が強い大型種との混泳は避けるべきです。バートレットアンティアスはアカネハナゴイに似た外見ですが性格はかなり異なり、ほかのハナダイを駆逐してしまうおそれもあるので注意が必要です。

ほかの魚との混泳

▲ほかの魚(左:マッコスカーズラス、右:テールスポットブレニー)との混泳例

強い魚との混泳は避けなければならないのですが、アカネハナゴイを脅かさないような魚であれば混泳可能です。カクレクマノミなどもよいのですが、なるべくアカネハナゴイを先に水槽に入れ、落ち着いた頃にカクレクマノミなどを入れるとよいでしょう。カクレクマノミの大きさはアカネハナゴイよりも若干小さいものを選ぶとよいでしょう。

小さい魚でもスズメダイやハマクマノミ、メギス、ゴンベの仲間は気性が荒く混泳は避けた方が無難です。もちろんカエルアンコウやカサゴ、オコゼなどにはよい餌になってしまうので混泳させてはいけません。

サンゴ・無脊椎動物との相性

▲ソフトコーラルやLPSとの飼育が望ましい

アカネハナゴイ自体はサンゴにいたずらしませんので多くのサンゴと飼育できます。しかし、ハナゴイの仲間は多くの給餌を必要としますのでミドリイシなどの硝酸塩の蓄積に敏感なサンゴとの飼育はあまりおすすめできません。

飼育には若干の硝酸塩があったほうがよいともいわれているソフトコーラルの仲間やLPSとの相性は良好です。また同様にプランクトンを捕食している陰日性トサカやヤギなどとの飼育にも適しています。ただし陰日性サンゴは初心者はもちろんベテランでも難しいので注意が必要です。

甲殻類は同じ水温で飼育でき、アカネハナゴイを襲わないものであれば概ね問題ありません。ただし、イセエビや大型のカニ・ヤドカリ、シャコの類、オトヒメエビなどはアカネハナゴイを襲うこともありますので避けた方が無難です。もちろんイソギンチャクなども魚を捕食するおそれがあるため、一緒に飼育するのは避けましょう。

アカネハナゴイ飼育まとめ

  • ナガハナダイ属の中で「ハナゴイ」と呼ばれるグループの魚
  • ハナゴイの仲間は飼育が難しい。その中では飼育しやすい種
  • 60cm以上の水槽で飼育するのがおすすめ
  • 外掛けろ過槽や外部ろ過槽は単用を避ける
  • オーバーフロー水槽が一番おすすめ
  • 水流用ポンプで水槽に流れを作ってあげたい
  • 水温は25℃をキープしたい
  • ほかの魚から逃れるための隠れ家も入れる
  • 幼魚は大きな粒餌を食べることが難しい。小粒の餌がいい
  • 冷凍餌も併用して与える
  • ヨウ素など添加剤も添加してあげたい
  • 背肉が落ちてやせているもの、水槽の隅でじっとしているものは購入しない
  • もちろん鰭が溶けたり白い点があったりするもの、入荷直後のものも避ける
  • 大型水槽であれば同種同士の混泳もできる
  • 気が強い魚との混泳は不可。キンギョハナダイなどとの混泳も避ける
  • サンゴには無害。イソギンチャクなどには捕食されるおそれがある
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