2020.12.28 (公開 2020.12.28) 海水魚図鑑
ペパーミントシュリンプの飼育方法~カーリー対策におすすめ!
ペパーミントシュリンプは十脚目(エビ目)・モエビ科のエビの一種です。赤くてきれいなだけでなく、水槽内にはびこりサンゴに悪影響をあたえる「カーリー」を捕食してくれます。ただし個体によってはあまりカーリーを捕食しなかったり、サンゴを啄むこともあるため、注意が必要です。
標準和名 | なし |
学名 | Lysmata wurdemanni (Gibbes, 1850) |
英名 | Peppermint Shrimp |
分類 | 軟体動物門・軟甲綱・真軟甲亜綱・十脚(エビ)目・抱卵亜目・モエビ科・Lysmata属 |
全長 | 10cm |
飼育難易度 | ★☆☆☆☆ |
おすすめの餌 | 粒状の配合飼料(メガバイトレッドMなど) |
添加剤 | アイオディオン、カルシオンなど |
温度 | 22~23℃ |
水槽 | 45cm~ |
混泳 | 肉食性の強い魚とは組み合わせにくい |
サンゴとの飼育 | サンゴの種や状態によっては啄むことも |
ペパーミントシュリンプってどんなエビ?
赤い体に細かい模様が入る美しいエビで、大西洋やその沿海であるカリブ海に生息しています。ただしひとくちに「ペパーミントシュリンプ」といっても、何種類かいるようです。大西洋には6種ほどおり、Lysmata wurdemanniという学名の種が一般的にペパーミントシュリンプとされているようです。いずれも模様が非常に似通っており、見分けるのが難しいエビたちです。
近縁種
▲宇和海で採集したアカシマモエビ
日本には生息していないペパーミントシュリンプですが、同じ属に含まれ、よく似ているアカシマモエビは日本近海でもよくみられるエビです。数は多いとは言えませんが、沿岸の藻場や岩礁域で採集することができます。このほかにも先述したように西大西洋には本種に似たものが何種かいます。
なお、このLysmata属にはほかにもさまざまなエビが含まれます。サンゴ礁域で大型魚のクリーニングを行うアカシマシラヒゲエビ(通称スカンクシュリンプ)や、赤い体が美しいシロボシアカモエビ(同ホワイトソックス)などもこの属のエビです。ただし本種はほかの魚の体表をクリーニングすることはあまりないようです。
カーリー駆除
ペパーミントシュリンプは、カーリー(セイタカイソギンチャク)を捕食するので、カーリー対策として入れられることがあります。カーリーは強い毒をもち、サンゴ水槽で飼育しているとサンゴがダメージを受けることもあります。そして非常に繁殖力が強く、あっというまに水槽中に広まっている、なんてこともあります。ペパーミントシュリンプはサンゴをカーリーから守るために水槽に入れられますが、弱っているハードコーラルやマメスナギンチャクなどを啄んで食べてしまうこともあり、注意が必要です。また個体によっては、カーリーを食べないようなもののいるようです。
カーリーを駆除する方法にはほかにフチドリカワハギなどを入れる方法がありますが、この種はサンゴも食べてしまうおそれがあります。このほか薬剤を使用してカーリーを駆除する方法があります。もちろん、薬剤を使う場合は、使用方法などをきちんと守ることが大事です。
ペパーミントシュリンプ飼育に適した環境
水槽
基本的に海水魚を飼育できるのであればどんな水槽でもよいのですが、水質の急変には弱いため、水質が安定しやすい60cm以上の水槽で飼育するのがおすすめです。
水質とろ過システム
水質悪化には比較的耐えられますが、水質の急変には弱いです。そのため、安定した水質で飼育するのが重要といえます。上記のようにやや大きめの水槽し、ろ過槽も大きめのものを使うようにしましょう。上部ろ過槽を中心にし、このほか外部ろ過槽やプロテインスキマーを利用するのもよいでしょう。おすすめはオーバーフロー水槽で、安定性は格段に増します。
水温
経験上では25℃を超えるような環境でも調子が悪くなるということはありませんでしたが、大西洋やカリブ海に生息する種であるということを考えると、あまり高めの水温は苦手です。22~23℃前後で飼育するとよいでしょう。また、水温もなるべく一定に保つようにしたいものです。ヒーターとクーラーを使用し、水温が一定になるようにしましょう。
ペパーミントシュリンプに適した餌と添加剤
餌
カーリーをよく食べてくれますが、いつもカーリーばかり食べているわけではないようで、魚の残り餌などもよく食べてくれます。餌がいきわたっているか心配ならば、ペパーミントシュリンプが活発に動き、ほかの魚が眠っている夜間に粒状の餌を水槽の底の方に撒いてあげます。沈降スピードが早い大きめの粒の餌がおすすめです。
添加剤
エビ、カニなどをうまく飼育するにはヨウ素やカルシウムなどを添加するとよいでしょう。ヨウ素の不足は脱皮不全にかかわるともされます。またカルシウムもすべての生物の骨格を形成するのに不可欠なものですので、添加するようにしましょう。もちろんミドリイシなどのサンゴを飼育するのであればカルシウムなどの添加は不可欠です。
ペパーミントシュリンプをお迎えする
ペパーミントシュリンプは日本には生息していないので、購入に頼ることになります。海水魚専門店で販売されていることが多いですが、クリーナーシュリンプとはことなり、「常時いる!」というものではないようです。
体表に傷があるものや、眼玉がないもの、体が濁っているようなものは選んではいけません。脚は1本2本とれているだけなら問題ないことも多いのですが、脚の大部分がなくなっているようなものは避けた方がよいでしょう。また、海水魚と同様、入荷してから時間がたっていないものも避けた方が無難でしょう。また、水槽に入れる前にはじっくり時間をかけて水合わせをしてから水槽にいれることも忘れないようにしましょう。
ほかの生き物との相性
ほかのエビとの関係
ほかのエビ、たとえば同属のクリーナーシュリンプや、サラサエビの仲間との混泳は問題ありません。テッポウエビとの飼育もできますので、共生ハゼとテッポウエビがくらす水槽のカーリー退治を行うこともできます。なお、同じペパーミントシュリンプ同士でも飼育することができます。
ただし、大型になるイセエビやセミエビ、大きなハサミをもつオトヒメエビなどには捕食されたり、襲われたりすることもあるので一緒に飼育するのはやめた方がよいでしょう。逆に小さなグラスシュリンプなどもやめた方がよいかもしれません。
魚との混泳
▲大きめのテンジクダイも注意が必要
ペパーミントシュリンプはカーリー退治をしてくれたり、魚の残り餌などを食べてくれますが、魚のクリーナーとしてはほとんど役に立ちません。そのため大きな魚には襲われてしまいます。ベラは甲殻類が大好物ですので注意しましょう。とくに大きめのタキベラやモチノウオ系などは要注意です。このほか、ゴンベの仲間や大きめのバスレット、テンジクダイなどは本種を襲うことがあります。とくにテンジクダイは夜間活発に泳ぎますので、エビが活発に活動する時間とかぶります。そのため注意が必要となります。
テンジクダイの仲間でも小型のマンジュウイシモチやキンセンイシモチなどであれば混泳しやすいですが、シボリやヤライイシモチ、オオスジイシモチなど肉食性が強いものや大きくなるものは避けましょう。上記のイエローストライプカーディナルフィッシュ(ハイフィンカーディナルとも)は口に入るようなエビを食べてしまい、我が家でもペパーミントシュリンプを食べられてしまいました。
サンゴとの関係
ペパーミントシュリンプの飼育で注意したいところは、サンゴとの相性があまりよくないということです。とくにハナガタサンゴやオオバナサンゴ、ウミバラなどのLPSの共肉をむしってしまう個体もいるので、注意しなければなりません。ダメージを受けたサンゴは隔離ケースなどの中で隔離しておくようにしましょう。ソフトコーラルもマメスナギンチャクなどを食べてしまうことがあるので注意が必要です。逆に大型のイソギンチャクなどはペパーミントシュリンプを食べてしまうことがあります。
ペパーミントシュリンプ飼育まとめ
- 大西洋に生息するモエビ科のエビ
- アカシマシラヒゲエビやシロボシアカモエビと同属
- カーリー対策として飼育されることが多い
- 60cm以上の水槽で飼育したい
- 水温はやや低めがよい
- 配合飼料もよく食べる
- ヨウ素やカルシウムを添加したい
- 体に傷があるもの、色が妙に白っぽいもの、入荷してすぐのものは購入しない
- 水合わせは慎重に
- 肉食性の魚との混泳は避ける
- サンゴの種類によっては食べてしまうことも