2020.01.23 (公開 2017.08.30) 海水魚図鑑
ユビワサンゴヤドカリの飼育方法~餌や混泳のポイント
ヤドカリの仲間は甲殻類の中では飼育しやすく、サンゴに無害なものが多いのでマリンアクアリストには人気があります。その中でもとくに人気なのがこのユビワサンゴヤドカリで、青と黒の縞模様はアクアリストに衝撃を与える美しさです。飼育は簡単なのですが、性格がきつめなため、ほかのヤドカリとの飼育は注意が必要です。今回は、このユビワサンゴヤドカリの飼育方法をご紹介します。
標準和名 | ユビワサンゴヤドカリ |
学名 | Calcinus elegans (Milne-Edwards, 1836) |
英名 | Elegant hermit |
分類 | 節足動物門・十脚目・ヤドカリ科・サンゴヤドカリ属 |
全長 | 1.5cm |
飼育難易度 | ★☆☆☆☆ |
おすすめの餌 | メガバイトグリーンなど |
温度 | 25℃前後 |
水槽 | 45cm~ |
混泳 | ヤドカリを食べるような魚やヨウジウオ系はさける。弱いヤドカリは駆逐してしまうことも。 |
サンゴとの飼育 | ハサミや脚でサンゴを落下させることもある。しっかり接着したい |
ユビワサンゴヤドカリはどんなヤドカリ?
サンゴヤドカリ属のヤドカリはカラフルなものが多いのですが、このユビワサンゴヤドカリはとくにカラフルです。脚の部分が鮮やかな青色で、それに黒い帯が入るというものです。一方鋏の部分は緑色で、触覚の部分は黄色っぽいのが特徴です。一方、小さいうちは白っぽく、何のヤドカリかわからなかったものの、脚に青い模様が出てきて驚いたことがあります。
ハワイ諸島に生息するユビワサンゴヤドカリは脚部は青くなくオレンジ色と黒で、トラのような縞模様が特徴的で、本当に同じ種類なのか疑問視する意見もあるようです。
海産ヤドカリの基本的な飼育方法はこちらもご参照くださいませ。
ユビワサンゴヤドカリ飼育に適した環境
水槽
小型水槽でも飼育できますが、初心者には少なくとも45cm水槽が欲しいところです。ほかのサンゴヤドカリと飼育するのであれば少なくとも60cmは欲しいところです。
水質とろ過システム
硝酸塩が蓄積された水槽でも飼育できるのですが、できるだけきれいな水で飼育してあげたいものです。45cm水槽では上部ろ過槽(種類が少ない)を使うか、外掛けろ過槽と外部ろ過槽の両方を使用するのがベストといえます。60cm水槽であれば上部ろ過槽を使用するのがよいでしょう。予算が許せばオーバーフロー水槽で飼育すれば高いろ過能力を得ることができます。
ユビワサンゴヤドカリはサンゴを食べることはないので、サンゴ水槽での飼育も可能です。しかし歩いたり鋏でサンゴを落下させることもあるので、サンゴはライブロックやサンゴ岩にしっかり接着させなければなりません。本種のように大きくなる種であれば特に注意しなければなりません。またベルリンシステムのようなろ過槽をもたないナチュラルシステムでは、魚や甲殻類は多く入れられません。
水温
水温は25℃で飼育します。20~28℃くらいで飼育できますので、一緒に飼育する魚に合わせてもよいのですが、ハワイ産のものはやや低めの22℃前後がよいかもしれません。また水温は安定していることが重要で、ヒーターとクーラーを用いて水温を一定に保つようにしましょう。
宿かえ用の貝殻
▲マガキガイに入っているユビワサンゴヤドカリ
ヤドカリの仲間は「宿かえ」を楽しむことができます。ヤドカリの「住まい」となる貝殻ですが、ヤドカリが成長するにつれて貝殻がきつくなってしまうことがあります。
ヤドカリのサイズにあった貝殻を入れておきましょう。貝殻が小さすぎるとヤドカリは入れない、または入りにくく、逆に貝殻が大きすぎるとヤドカリは入れず、入っても動きにくくなります。貝殻が少ないのに多数のヤドカリを入れるのはあまり良くありません。貝殻の奪い合いがおこりやすく、貝殻を奪われたヤドカリは柔らかい身が露出し他の魚やエビなどに襲われてしまうこともあります。逆に貝殻を手に入れるため、生きている貝を襲ってしまうこともあります。
フタ
サンゴヤドカリの種類はコード類やチューブなどをつたって水槽の外に出てしまうような種類もおり、フタはするようにします。
ユビワサンゴヤドカリの餌と添加剤
特にヤドカリ専用の餌を与える必要はありません。食性は雑食性で、一般的な海水魚向けの餌、とくに底に沈んだ残餌やコケを食べてくれますが、フレーク状の水に浮く餌はヤドカリにとっては食べにくい餌なので、ペレットフードを与えるとよいでしょう。ペレットフードを容器に取り、海水を加えてスポイトでヤドカリのそばに給餌してあげるのもよい方法です。
添加剤の中で特に添加したいのはヨウ素です。ヨウ素が不足していると脱皮不全などを起こしてしまうおそれがありますので、定期的に添加したいものです。他にはビタミン・アミノ酸や微量元素などがあるとよいでしょう。もちろんサンゴ水槽で飼育するときは、そのサンゴにあった添加剤を添加する必要があります。
ユビワサンゴヤドカリをお迎えする
▲ハナヤサイサンゴの枝の間に潜んでいる
ユビワサンゴヤドカリは南日本の太平洋岸や琉球列島で採集することができます。写真はハナヤサイサンゴで、サンゴの枝の間にある貝殻の中にいました(写真左上の方にいる)。ただし採集の際にはサンゴの枝を壊さないように注意しましょう。このようなサンゴの周辺に小さな巻貝もいくつかあり、その中にユビワサンゴヤドカリの小さな個体もいました。
購入する場合は脚や鋏脚、触覚、あるいは眼といったものが欠けていないもの、よく這い回っているものを選ぶようにします。買ってきたユビワサンゴヤドカリが動かない、という声も聞かれますが、海水魚やサンゴが上手く飼えている水槽であれば、しばらくすれば水槽の底を歩き回るはずです。
ユビワサンゴヤドカリと他の生物との飼育
ヤドカリだけを飼育するのも楽しいですが、ほかの生物と飼育するのも楽しいものです。しかしながら他の生き物と飼育する上で注意しなければならないポイントがあるので紹介します。
ユビワサンゴヤドカリと他のヤドカリとの相性
▲ウスイロサンゴヤドカリ
ユビワサンゴヤドカリはかなり気が強い性格で、他のサンゴヤドカリを襲ったりする恐れがあります。できれば他の強いサンゴヤドカリと飼育するようにします。シロサンゴヤドカリやスベスベサンゴヤドカリ、セグロサンゴヤドカリなどは同様に気が強めで一緒に飼育できます。一方ウスイロサンゴヤドカリや、アカツメサンゴヤドカリなどは温和なので注意が必要です。
逆にコモンヤドカリなど、大型になる種類と飼育するのはおすすめできません。もちろんオカヤドカリなど、水棲の種類でないヤドカリと飼育することもできません。
魚との相性
▲ミヤケヘビギンポとユビワサンゴヤドカリ
基本的にユビワサンゴヤドカリは丈夫な種なので、多くの魚と混泳することができます。ただし大型のベラやフグ、モンガラカワハギといった肉食性が強い魚とは一緒に飼育することはできません。餌になってしまいます。
このほかに相性が悪いのはヨウジウオやタツノオトシゴの類で、自慢のハサミでこれらの魚を挟んで傷つけることもあります。一緒にしない方がよいでしょう。
サンゴ・無脊椎動物との相性
ユビワサンゴヤドカリはサンゴには悪影響を与えにくいため、先述のようにサンゴ水槽で飼育することができます。甲殻類などとの相性は先ほどのべたサンゴヤドカリ類を除けばイセエビなど大型のエビや大型のカニ、大型のヤドカリとの相性が悪いです。ただし一般的に飼育されるアカシマシラヒゲエビ(スカンクシュリンプ)、シロボシアカモエビ(ホワイトソックス)、サラサエビの類などとの飼育は問題ありません。
ユビワサンゴヤドカリ飼育まとめ
- サンゴヤドカリのなかでもとくにカラフルで人気がある
- ハワイ諸島のユビワサンゴヤドカリは色が異なる
- 小型水槽でも飼えるが初心者は45cm以上の水槽がほしい
- 硝酸塩蓄積に耐えられるができるだけ綺麗な水で飼育したい
- 水温は25℃前後、ハワイ産はやや低め
- 海水魚の残り餌をよく食べる。沈むペレットフードが最適
- フレークフードは食べにくい
- 脱皮不全を防ぐためヨウ素も添加してあげたい
- 南日本の太平洋側で採集できる
- 購入するときはよく動いている個体を選ぶようにしたい
- ウスイロサンゴヤドカリなど温和なサンゴヤドカリとの飼育には向かない
- 肉食性の強い魚との飼育はだめ
- 大型の甲殻類との飼育も避ける