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2020.09.26 (公開 2019.09.17) 海水魚図鑑

ロクセンスズメダイの飼育方法~オヤビッチャに近縁で飼育しやすい

ロクセンスズメダイは、オヤビッチャによく似たスズメダイの仲間です。関東地方周辺ではあまり見られませんが、紀伊半島や四国ではよく見られる魚です。性格は比較的おとなしく、多くの魚との組み合わせができますが、それでも弱い魚や、ミツボシクロスズメダイなどの大きくなる種とは組み合わせない方がよいでしょう。今回はこのロクセンスズメダイについてご紹介します。

標準和名 ロクセンスズメダイ
学名 Abudefduf sexfasciatus (Lacepède, 1801)
分類 スズキ目・スズキ亜目・スズメダイ科・オヤビッチャ属
全長 15cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッド
温度 23~26度(25℃前後)
水槽 60cm以上
混泳 同じくらいの大きさの魚と混泳できる
サンゴ飼育

ロクセンスズメダイって、どんな魚?

ロクセンスズメダイはスズキ目・スズメダイ科・オヤビッチャ属のスズメダイです。よく熱帯の海で行う、シュノーケリングやダイビングなどのアクティビティを提供する業者が使っている広告でよく写っているのが本種です。分布域は広く、東アフリカ(紅海含む)~中央太平洋までの広い範囲に分布しますがハワイ諸島では見られません。

なお標準和名と学名の種小名は「6つの横帯」という意味になりますが、体側の黒い帯は5本しかありません。頭部上方の黒い帯も含めて6本になるのでしょうが、これは出ていないことも多く、注意が必要です。英語名のScissortail sergentはハサミのような尾、ということで尾鰭の模様をあらわしています。

沖縄や小笠原諸島では塩焼にして食べます。筆者は本種は食べたことはないのですが、オヤビッチャやシマスズメダイ同様、美味なものと思われます。

オヤビッチャとのちがい

▲上がロクセンスズメダイ、下がオヤビッチャ

ロクセンスズメダイは、一見すると同属のオヤビッチャによく似ています。しかし背中の色と尾鰭を見ればふたつの種を見分けることができます。

背部の色彩

▲警戒して全身真っ黒になったオヤビッチャ

ロクセンスズメダイは水中や水面から見ると青緑色が綺麗です。一方オヤビッチャが背中の部分が黄色くなります。ロクセンスズメダイも卵を守っている個体など背中や体表が黄色くなることがありますが、オヤビッチャほど明瞭ではありません。またオヤビッチャも興奮したりすると体が黒っぽくなり、背中の黄色が失われることがありますので注意が必要です。

尾鰭の模様

▲ロクセンスズメダイの尾鰭

▲オヤビッチャの尾鰭。尾鰭後端までの黒色線がない

ロクセンスズメダイは英名にもあるように、尾鰭にハサミのような黒い線が入るので、尾鰭に目立つ模様がないオヤビッチャとは容易に見分けることができます。この模様は死後・固定後も明瞭で、本種とオヤビッチャを見分ける重要なポイントです。ただ後述するように稚魚(1.5cmくらい)の個体ではこの特徴は縁に少し出る程度で、明瞭には出ません。

なお、オヤビッチャの飼育方法についてはこちらをご覧ください。

名前「だけ」似ているシチセンスズメダイ

▲シチセンスズメダイ

ロクセンスズメダイと名前が似ているものに、シチセンスズメダイという魚がいます。しかしシチセンスズメダイは灰色の体で、尾部の黒い線もなく、ロクセンスズメダイよりもむしろシマスズメダイに似ています。ロクセンスズメダイとシマスズメダイの見分け方も尾鰭の黒いラインにより見分けるのが簡単で確実です。稚魚はそれほどでもないですが、成長すると気がかなり強くなります。

シチセンスズメダイを含めた日本産オヤビッチャ属魚類の見分け方はこちらをご覧ください。

なお、南西インド洋沿岸(モーリシャス、レユニオン、マダガスカル、南アフリカ東岸)にはロクセンスズメダイによく似たナタールサージャントというのがいます。これはロクセンスズメダイに酷似しますが、黒い横帯がロクセンスズメダイよりもあきらかに太くて横帯の数もロクセンスズメダイが5本あるのに対してナタールサージャントは4本しかないなどの違いがあります。

成長にともなう斑紋の変化

▲ロクセンスズメダイの稚魚

ロクセンスズメダイは幼魚も成魚も色彩的にはほとんど差がありません(オヤビッチャ属自体、成長に伴う斑紋の変化は少ない)。ただし水槽内で成長したものは海で大きくなったものと比べ青みが弱いように思います。光の都合なのか、それとも食べている餌の問題なのかはわかりません。ロクセンスズメダイの稚魚(1.5cm)は尾鰭の特徴的な模様がありませんがそれでも尾鰭の上・下端に黒い線が入り、オヤビッチャと見分けられます。

ロクセンスズメダイ飼育に適した環境

水槽

水槽は45cm、できれば60cm水槽を用意してあげましょう。ロクセンスズメダイは小さくても遊泳性が強いからです。終生60cm水槽での飼育可能ですが、ほかの魚と混泳するのであれば90cmオーバーフローが有利になります。

水質とろ過システム

ロクセンスズメダイは比較的悪い水質でも耐えられますが、きれいな水で飼育してあげたいものです。ろ過槽のおすすめは上部ろ過槽で、ろ過能力を向上するなら補助的に外部ろ過槽をつなげるとよいでしょう。掃除が面倒くさくてもいいのであれば底面ろ過槽でもかまいません。

一番おすすめなのは、オーバーフロー水槽にしてサンプでろ過を行う方法です。高価でありますが、ろ過能力がほかのろ過槽よりもずっとすぐれており、魚を多数泳がせたい、というときも安心です。ミドリイシなどを飼育するためのベルリンシステムでも飼育できますが、ベルリンシステムはサンゴをメインに飼育するためのシステムであり、このシステムでは魚を多く入れることはできませんので注意が必要です。

水温

水温は25℃をキープします。あまり変動が大きいと丈夫なロクセンスズメダイであっても病気になってしまうことがあるので、水温は一定に保たなくてはなりません。

隠れ家

オヤビッチャ属ではおとなしめな性格ですが、それでもほかの魚を追いかけることもあり、ほかの魚が隠れられるように隠れ家を作ってあげましょう。逆に大きく性格がきつい魚と一緒だと、ロクセンスズメダイが追いかけまわされることもありますので、そういう意味でも隠れ家は必須といえます。

ロクセンスズメダイに適した餌

ロクセンスズメダイは雑食性で、動物プランクトンや藻類を主に捕食します。そのため配合餌にならすことは容易ですが、たまにコペポーダやホワイトシュリンプなどの冷凍餌を与えるのもよいでしょう。ただし、冷凍餌は水を汚すので与えすぎには注意しましょう。

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ロクセンスズメダイをお迎えする

▲三重県の磯で採集したロクセンスズメダイ

関東の磯ではオヤビッチャと異なり極めてまれな種といえますが、伊豆や紀伊半島、四国の太平洋岸、宮崎、琉球列島などでは数は比較的多いといえます(ただし年により変動がある)。小さいものは漁港などに浮かぶブイなどに付着していることがあり、手網を使って容易に採集することができます。少し大きくなったものは小さな針に餌をつけて釣りで採集するのが容易です。一方、観賞魚店では近海産ハンドコートに強いお店を除き、販売していることは少ないといえます。

ロクセンスズメダイとほかの生物との関係

同種・近縁種同士の混泳

▲オヤビッチャとの混泳例

ロクセンスズメダイはオヤビッチャ属の魚としては比較的同種同士の混泳をこなせますが、それでも小さい水槽では激しく争うこともありますので、小さくても90cm以上の大型水槽で混泳させるようにしましょう。同じ属の魚であっても、シマスズメダイなどは気が強いためできれば避けたいところです。

ほかの魚との混泳

▲ロクセンスズメダイとほかの魚との混泳例

ロクセンスズメダイは同じ属のシマスズメダイやイソスズメダイよりは協調性があるのか、同じようなサイズの魚とであれば多くの魚と混泳を楽しむことができます。同じくらいの大きさのスズメダイとの混泳も問題ないことが多いのですが、ミツボシクロスズメダイなど大きくなり、かなり気が強いスズメダイとの混泳は避けなければなりません。

サンゴ・無脊椎動物との相性

▲サンゴには無害だが、入れすぎ注意

ロクセンスズメダイはサンゴに害を与えることもないため、サンゴ水槽での飼育もできます。生息環境を考えるとLPS、SPS、ソフトコーラル水槽いずれもよく似合いますが、ロクセンスズメダイが大きく育つと排せつ物の量も多くなりますので水質悪化には注意したいところです。入れすぎには注意しましょう。雑食性で付着藻類も食べますが、海藻には害がなく海藻水槽での飼育もできます。

甲殻類はロクセンスズメダイに食べられない、かつロクセンスズメダイを襲うことがないもの、水温などの条件がロクセンスズメダイと同等のものであれば一緒に飼育できます。各種クリーナーシュリンプやサラサエビ、サンゴヤドカリなどであれば飼育できます。大型のカニ、大型のヤドカリ、イセエビなどは一緒にしないようにします。オトヒメエビは小魚を食べてしまうことがあるので注意が必要です。

ロクセンスズメダイ飼育まとめ

  • オヤビッチャに近縁だが色彩や尾鰭の模様が異なる
  • シチセンスズメダイは名前以外あまり似ていない
  • 60cm以上の水槽で飼育する
  • ろ過槽は上部ろ過槽かオーバーフロー式がおすすめ
  • 水温は25℃で安定していることが大事
  • 雑食性で配合飼料もよく食べる
  • あまり販売されていないので自分で採集する
  • ほかの魚との混泳も可能
  • サンゴや無脊椎動物には無害
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