フリーワード検索
海水魚の記事
サンゴの記事

2020.11.20 (公開 2020.11.19) 海水魚図鑑

サザナミヤッコの飼育方法~成長を楽しめるが成魚は巨大な水槽が必要

サザナミヤッコは、海水魚専門店ではよく見られる魚です。濃青色の体に白い横線があるものがよく販売されているのですが、これは幼魚であり、成長すると緑色の体に青い点が散らばるようになります。そして大きさも30cmを超えるので、小型水槽では終生飼育できません。飼育には大型水槽が必要です。長寿でよく慣れるのでイヌやネコを飼うような感覚で飼育できるかもしれません。今回はこのサザナミヤッコの飼育方法をご紹介します。

標準和名 サザナミヤッコ
学名 Pomacanthus semicirculatus (Cuvier, 1831)
英名 Koran angelfish, Semicircle angelfishなど
分類 条鰭綱・スズキ目・スズキ亜目・キンチャクダイ科・サザナミヤッコ属
全長 30cm(海では40cm)
飼育難易度 ★★★☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッド海藻70など
温度 25℃
水槽 120cm~
混泳 同種同士の混泳はペア以外は避ける。180cm以上でなければ混泳は難しい
サンゴとの飼育 サンゴは食べてしまうのでサンゴ水槽には向かない

サザナミヤッコって、どんな魚?

サザナミヤッコはヤッコの仲間では大型になり、俗に「大型ヤッコ」と呼ばれる種です。全長40cmほど、水槽でも30cm以上に成長します。その大きな特徴は成魚と幼魚で模様や色彩が大きく異なることです。水槽内で変化を観察するのも楽しいものですが、成魚は大型水槽が必要なので注意しなければなりません。英語では幼魚や若魚の尾鰭の模様から「Koran angelfish」と呼ばれますが、これは若い個体の尾鰭の模様がアラビア文字に似ているから、ともいわれ、イスラム教の聖典コラーン(クルアーン)の名前が付けられたようです。一方比Fishbaseでは「Semicircule angelfish」という英名もついています。これも幼魚の模様由来でしょう。

幼魚

▲いわゆる「三本線」

▲磯で採集したサザナミヤッコの子

本種は10数cmになっても幼魚の模様をしているものが多いようです。逆にすぐ模様が変化してしまうものにはイナズマヤッコなどがいますが、この種は手のひらにのるサイズでも成魚の模様をしています。ごく小さいうちは白い横線がカーブしていることもあり、タテジマキンチャクダイの幼魚(ウズマキ)と間違えられることもあります。ごく小さいうちは「三本線」とよばれ、線の数も3本なのですが成長につれて増えていきます。ただしこの三本線はやせやすく飼育しにくいので、5cmくらいのものを採集して飼うのがよいでしょう。

成魚

▲サザナミヤッコ

成魚になるとオリーブグリーンの体に青色の小さな斑点が散らばり、幼魚とはまた違う美しさとなります。また、マクロススやアズファーなどと同様に、背鰭と臀鰭の後方が少し伸びるのも特徴です。またサザナミヤッコはある程度大きくなっても横縞模様が残ることがあります。すぐ成魚の模様に変貌してしまうイナズマヤッコとは対照的です。長寿で人にもよく慣れるため、ペット的な付き合いになってくるでしょう。同じ属のロクセンヤッコは水族館で40年以上生きた記録もあるようです。なお、成魚は沖縄などでは食用となり、意外とおいしい魚です。

カラーバリエーション

セイシェルや東アフリカ沿岸の個体は色彩が日本やアジアのものとはやや異なっています。ケニア便で幼魚が日本にもたまに入ってくることがありますが、沖縄や東南アジアのものとくらべるとどうしても高価です。また、サザナミヤッコの幼魚はたまに乱れた模様を持つことがあります。

サザナミヤッコに適した飼育環境

水槽

▲大型魚を多数混泳させるならそれなりの水槽が必要

サザナミヤッコを終生飼育するのには小さくても120cm水槽を用意したいものです。ほかのヤッコと組み合わせるのであれば、180cm以上の水槽が欲しくなります。幼魚は小型水槽でも飼育でき、その中で餌付けを行うとよいでしょうが、成長しても小さい水槽のままだと、ヤッコにとっては窮屈になってしまい、体形が崩れてしまいやすいので、おすすめできません。

ほかの大型ヤッコもそうですが非常に長寿なため、長く付き合うことになります。水槽だけでなく、機材もしっかりしたものを用意しておきたいところです。とくに循環ポンプやクーラーといった機材は一般的な対応水量スペックよりも大きめのものを選ぶようにしましょう。それを考えると幼魚から一気に120~180cm水槽にサイズアップするのもよいかもしれません。ステップアップするうえで余計な機材を購入しなくてもよくなるからです。

水質とろ過システム

大型ヤッコの仲間はよく餌をたべ、そうなると排せつ物の量も多くなりますのでしっかりしたろ過システムが求められます。幼魚を小型水槽で飼育するときは外部ろ過槽や外掛けろ過槽を単体で使うのは避け、この二つのろ過槽を併用して使うようにします。この二つのろ過槽を併用することにより、互いの弱点を補うことができるからです。

成魚は巨大になりますのでろ過槽は現実的に上部ろ過槽をメインに使用するしかないでしょう。これに外部ろ過槽を組み合わせるのもよいですが、外部ろ過槽も相当大きなものを使用するしかありません。最もおすすめなのはオーバーフロー水槽にしてサンプでろ過する方式です。これならば圧倒的なろ過スペースを確保でき、好気性バクテリアが必要とする酸素も溶け込みやすいです。このほかに殺菌灯やプロテインスキマーなどを接続するのもしやすいのでおすすめです。

水温

サンゴ礁の魚ですので原則25℃前後を保つようにします。ヤッコの仲間は病気にかかりやすいところがあり、病気予防のためには水温が一定であることも重要ですので(後述)、夏季はクーラー、冬期はヒーターを用いるようにします。

サンゴ岩・ライブロック

大きめの魚を飼育するときは、サンゴ岩やライブロックを少なめにするのが重要です。これは遊泳のためのスペースがいきわたるようにしたいからです。ただし幼魚のうちは臆病であり隠れがちなので、穴のような隙間があったライブロックや、サンゴ岩をアーチ型に組むなどして落ち着けるような場所をつくりたいところです。

底砂は敷いても敷かなくてもかまいません。ただし大型ヤッコは排せつ物の量が多く底砂に汚れがたまりやすいことを考えると砂を敷かないほうがよいかもしれません。砂がないと掃除もしやすく、何かとメリットが多いです。砂にもぐって眠るホンベラ属やカンムリベラ属の魚と飼育するのでなければ砂は全く不要です。

サザナミヤッコに適した餌

ヤッコの仲間ですので、個体にもよりますが最初から配合飼料に餌付く、とは限りません。最初のうちは冷凍餌を与えれば餌付くことが多いのですが、たまにアサリから与えなければならないようなものもいます。冷凍餌やアサリを食べてくれるのであれば与え続けてもよいのですが、これらの餌は水を汚してしまうので、完全に餌付いたのであれば配合飼料に切り替えましょう。どうしても食わないのであればアサリや冷凍餌でそのまま飼育していきますが、栄養が偏るなど難点もありますので、できるだけ配合飼料に餌付けたいものです。雑食性ですのでキョーリンのメガバイトシリーズは「レッド」「グリーン」のどちらかではなく、できれば両方与えたいところです。またメガバイトグリーンをベースとした「海藻70」を与えるのもおすすめです。

またほかの大型ヤッコとの混泳を考えるのであれば、幼魚のうちは60cmくらいの水槽で、ある程度のサイズに育ててから混泳水槽に入れるとよいでしょう。幼魚のうちはほかの魚からの攻撃を受けやすいからです。

ヒカリ (Hikari) ひかりプレミアム海藻 70 M サイズ

ヒカリ (Hikari) ひかりプレミアム海藻 70 M サイズ

1,045円(11/27 00:08時点)
Amazonの情報を掲載しています

サザナミヤッコの病気対策

サザナミヤッコはリムフォシスティス病や白点病などにかかることがあります。また肌があまり強くないのか、細菌感染症にかかったりすることもあります。病気予防の方法もいくつかあります。

常にきれいな海水で飼育

きれいな海水と汚い海水では当然ながらきれいな海水で飼育したほうが病気にはなりにくくなります。きれいな海水で飼育するのにはこまめな水かえが重要となります。また先述のようにプロテインスキマーの設置も効果的です。

病気予防=殺菌灯と思い付きがちですが、基本的なことをしっかり行うことが重要になります。殺菌灯を使用していても汚い海水、温度の急変などでは病気になってしまう可能性が高いです。殺菌灯ももちろん病気対策によいのですが、基本的なことをしっかり押さえてから使用するようにしましょう。また魚病薬や活性炭を使ったり、汚い海水で飼育していたりするとHLLE(頭部および側線浸潤)を引き起こしやすいので注意しなければなりません。

水温の安定

これも重要な要素です。海水魚はおおむね水温が一定のサンゴ礁の海を泳ぎ回っているのです。そのため水温の変動が大きいと体調を崩してしまいやすいのです。どんな魚でもそうなのですが、とくにサザナミヤッコを含むヤッコの仲間や、チョウチョウウオの仲間は病気になりやすいため、水温の安定はとくに重要な要素といえるのです。また殺菌灯や殺菌灯を動かすポンプ自体も水温の上昇を招きやすいので、クーラーの増強が必要になることもあります。

同様に病気になる要素を少しでも減らすのであれば、砂を敷かないベアタンクでの飼育(砂に有害物質が蓄積しやすい、また白点病の原因になりうる原生生物がいることがある)、白点病を招きやすいチョウチョウウオとの混泳を避ける、餌の単食を避ける、などもあげられます。

抵抗力を高める

▲ガーリックエキスを餌に添加するとよい

海水魚用の添加剤を使用して病気に対する抵抗力を高める方法もあります。有名なのがブライトウェルのガーリックパワー、コンティニュアムアクアティクスのバイオガーリックなどに代表されるガーリックエキスの添加剤です。このガーリックエキスの成分が魚の抵抗力を高める効果があるとされるので配合飼料などに添加して与えるとよいでしょう。また魚の体表に寄生虫が見られたときに使用すると状態が改善するという報告もありますが、「薬品」ではないので効果が得られないこともあるため注意しましょう。

サザナミヤッコをお迎えする

採集する

▲10月の潮だまり。2本の網でサザナミヤッコを追う

8月の終わりから10月にかけて、千葉県以南の太平洋岸で本種の幼魚に出会えることがあります。ほぼ毎年のように流れては来ますが、死滅回遊魚と呼ばれるもので越冬はほぼできません。浅い場所で採集できることもありますが、極小サイズで「三本線」などと呼ばれるものは先述のようにやせやすいので初心者には向きません。掌サイズのやや大きいものがよいのですが、よほどウデがよくないと採集はできません。

購入する

サザナミヤッコは海水魚専門店であればどこでも在庫されているでしょう。人気は餌付けのよい幼魚に集中します。小型水槽でも飼えるからという点での人気もありそうですが、小型水槽で終生飼育はできませんので注意が必要です。さすがに少ないと思われますが、ごくまれに「三本線」が売られることもあるようですが、三本線も初心者には全く向いていません。

選ぶときの注意点はほかの多くの海水魚と同様で、おおむね上記の図通りですが、このほか鰭が妙に白っぽくなっていないこと、動くものによく反応すること、ゆったり泳いでいる(泳ぎ方がおかしくない)ことなども見てほしいところです。また入荷後時間が経過していないものも購入をやめたほうが無難です。

ほかの生物との相性

大型ヤッコ同士の混泳

▲サザナミヤッコとタテジマキンチャクダイの争い

大型ヤッコ同士の混泳はよく行われています。ただし大型ヤッコを複数飼育するのであれば巨大な水槽が必要になります。最低でも150cm、できれば180cm以上の水槽で飼育したいものです。大型ヤッコは大きくなるだけでなく喧嘩するため「逃れる場所」を作ってあげたいのと、争いを緩和するために3匹の大型ヤッコを混泳することもあり、そうなると当然巨大な水槽が必要となってくるからです。また、サザナミヤッコはタテジマキンチャクダイよりも神経質なところもあるようで、無理のない混泳が重要となります。

どうしてもうまく混泳がいかないときはあきらめる勇気も必要です。この場合ヤッコの仲間をショップに引き取ってもらうしかありません。もちろん海へ逃がしたりしてはいけません。

小型ヤッコとの混泳

幼魚を小型ヤッコと組み合わせたくなりますが、できるだけ避けたいところです。小型ヤッコと大型ヤッコの同じくらいの大きさのものでは小型ヤッコが成魚、大型ヤッコは幼魚となり、弱い立場になりやすいからです。成魚を小型ヤッコと混泳させるのであれば、シマヤッコなどの繊細な種は避け、ココスピグミーエンゼルやフレームバック系の強健な種を選ぶようにした方がよいでしょう。

ほかの魚との混泳

▲サザナミヤッコとトカラベラの組み合わせは避けたほうがよいかも

サザナミヤッコは魚食性ではなく、よほど小さい魚でない限り食べることはほとんどありません。ただしハナゴイや遊泳性ハゼなど臆病すぎる魚は岩陰などに引きこもって死んでしまうこともありますので、混泳は避けましょう。

混泳させるのであればスズメダイやベラなどのような、小さくても比較的タフな種類がおすすめです。ニセモチノウオやキツネベラの仲間は混泳相手がデカくても怯えることはありません。コガネキュウセンやトカラベラ、ツユベラなども丈夫ですが、これらのベラは夜間砂に潜る習性があるため、砂を敷いた水槽で飼育するようにします。ただし、大型ヤッコは排せつ物の量が多く、管理を楽にするために砂は敷かないほうがよい、ということを考えると、砂に潜る習性のあるベラの仲間との混泳はあまりおすすめできません。

サンゴ・無脊椎動物との相性

大型ヤッコはLPSをつつくことが多いのでLPS水槽には入れてはいけません。また大型ヤッコは大食漢で排せつ物の量も多く、硝酸塩が蓄積しやすいので、そういう意味でもサンゴとの飼育には向いていません。またカイメンの仲間などはヤッコの大好物で捕食してしまうおそれがあります。

甲殻類は種類によっては餌になってしまうおそれもありますが、スカンクシュリンプ、ホワイトソックスならば問題はないでしょう。オトヒメエビはサザナミヤッコが幼魚であれば襲ってしまいますが、成魚であれば問題はありません。

まとめ

  • 大型ヤッコの一種であり大型水槽が必要になる
  • 幼魚と成魚で模様が大きく変化する
  • 「三本線」と呼ばれる極小サイズの個体は飼育が難しい
  • 成魚は120cm水槽がいる。混泳なら180cm水槽が欲しい
  • 上部ろ過槽かオーバーフローが現実的な選択肢
  • 水温は25℃をキープしたい
  • サンゴ岩やライブロックで隠れ家をつくるが遊泳スペースも確保したい
  • 砂はしかないほうが管理しやすい
  • 幼魚は冷凍餌はよく食うが配合飼料に慣れさせたほうがよい
  • 配合飼料は複数種与えたほうがよい
  • 常にきれいな水で飼い水温も安定させて病気を防ぐ
  • よく販売されているが状態はよく観察したい
  • 大型ヤッコとの混泳は種によっては難しいことも
  • サンゴはつついたりしてしまうのでおすすめできない
  • クリーナーシュリンプとの飼育はおおむね問題ない

協力

コーラルタウン

HN.クマノミさん

この記事にコメントをする

※がついている箇所は必須項目です。メールアドレスが公開されることはありません。

フリーワード検索
海水魚の記事
サンゴの記事
    もっと読む