オヤビッチャの飼育方法~餌・水温・混泳のポイント
オヤビッチャは夏から秋にかけて、関東のタイドプールでも特に多く見られるスズメダイの仲間です。体に5本の黒い縞模様があり、背中が黄色いのでよく目立つ種類です。
飼育自体は容易で、体も丈夫、餌もよく食べますが、性格はやや強めなので混泳には注意が必要です。
標準和名 | オヤビッチャ |
学名 | Abudefduf vaigiensis(Quoy and Gaimard, 1825) |
分類 | スズキ目・スズキ亜目・スズメダイ科・オヤビッチャ属 |
全長 | 20cm |
飼育難易度 | ★☆☆☆☆ |
おすすめの餌 | メガバイトグリーン、冷凍イサザアミ |
温度 | 23~26度 |
水槽 | 30cm以上 |
混泳 | 気が強い魚とは注意が必要 |
サンゴ飼育 | 可 |
オヤビッチャってどんな魚?
▲オヤビッチャの幼魚
▲オヤビッチャの成魚
▲近縁種のロクセンスズメダイ
オヤビッチャはスズメダイの仲間で、全長20cmを超える大型種です。
分布域はかなり広く、東アフリカからハワイ、マルケサス諸島に至るインド-中央太平洋の極めて広い範囲に生息しています。ただ、アメリカ大陸の西海岸にいるもの、アメリカの東海岸や西アフリカの大西洋に生息するものはオヤビッチャに酷似しているのですが、別種とされています。日本では津軽海峡以南の各地から報告され、紀伊半島以南ではほぼ周年見ることができる普通種です。
沖縄や小笠原諸島では本種やその近縁種であるロクセンスズメダイを食用としています。脂がのっており、塩焼や唐揚げなどにして美味しい魚です。
スズメダイ科魚類飼育の基礎についてはこちらもご覧ください。
オヤビッチャの飼育に適した環境
水槽
▲60cm水槽での飼育例
オヤビッチャは他のスズメダイ同様、小さいうちは30cmほどの小型水槽での飼育も可能ですが、いずれ大きくなることや遊泳スペースなどを考慮すると、できれば60cm以上の水槽で飼育することが望ましいと言えます。
60cmは初心者には大きすぎるように感じますが、その分管理は楽になります。
ろ過装置
▲外部式ろ過槽の単独使用はおすすめしない
一般に「パワーフィルター」と呼称される外部式フィルターでのオヤビッチャの飼育も可能ですが、外部式フィルターは密閉式で、酸欠に陥りやすいリスクがあるため単独での使用はあまりおすすめできません。
しかしこれに上部フィルターを組み合わせることにより、ろ過バクテリアにも多くの酸素がいきわたり生物ろ過が活発に行われるようになります。また排せつ物やデトリタスなどを水槽から取り除くプロテインスキマーは、水槽内に酸素を供給するという役目もあり、これを組み合わせるのもよい方法です。丈夫で飼いやすいスズメダイの仲間ですが、水槽のキモであり心臓であるろ過をおろそかにしては上手く飼育することはできないのです。
水温
▲2月に釣れたオヤビッチャの成魚。低水温にもある程度耐えられる
オヤビッチャは低温にもよく耐え、冬でも磯で見かけることがありますが、できれば水温20℃以上で飼育してあげたいものです。理想は23~26℃で、冬はヒーター、夏はクーラーを使い水槽の温度を一定に保つようにしましょう。
それ以上の水温にも耐えられ、水温30℃近いお湯のようになった潮溜まりでも見ることができますが、水槽での飼育は色があせやすいなどのリスクがあり、ベストな状態とはいえません。
飾りサンゴ・ライブロック
天敵の多い自然下では大群で見られることも多いオヤビッチャですが、水槽内に何匹も入れると争いが発生しやすいものです。飾りサンゴやライブロックなどを複雑に組み合わせ、それぞれの個体が縄張りを主張できるようにしてあげます。もちろん、狭い水槽にぎゅうぎゅうに入れるのはNGです。
オヤビッチャに適した餌
▲稚魚には手で餌をすりつぶして与える
オヤビッチャは丈夫で飼いやすく、配合飼料にもすぐに慣れてくれます。ただし、全長1cmほどの個体はメガバイトのSサイズでも大きすぎますので、指ですりつぶしてから与えるなどの配慮が必要になることもあります。
コペポーダやホワイトシュリンプ、ブラインシュリンプの幼生といった冷凍プランクトンフードもよく食べます。海ではオヤビッチャの仲間はこのような餌を好んで捕食しているので、餌付きが悪い個体や単食を避けたいのであれば配合飼料と併用して与えることをおすすめします。ただし、これらの冷凍餌の与えすぎは水を汚す恐れがありますので、ほどほどにしましょう。
オヤビッチャをお迎えする
▲高知県で釣れたオヤビッチャ
▲太平洋岸のほか、九州北岸でも幼魚が採集される。福岡県産のオヤビッチャ
オヤビッチャは観賞魚専門店で販売されていることはほとんどありませんので、自分で採集するとよいでしょう。小型個体は初夏から秋に本州から九州の太平洋岸、年や場所によっては日本海岸でもみられ、遊泳力の弱い幼魚は容易に網で掬うことができます。手網が2本あれば、簡単に網に入ってくれるでしょう。また、磯だけでなく流れ藻など浮遊物についていることもあり、この方法ではより容易に採集できるでしょう。
全長10cm前後のやや大きめの個体は、釣りで採集するのがよい方法です。サヨリ針の先端にオキアミをつけるだけで、容易に釣れる種類です。高知などへ行きますと、このオヤビッチャが餌をとるので他の魚が釣りにくいほどです。
オヤビッチャの色彩
▲釣り上げられて黒っぽくなったオヤビッチャ
オヤビッチャは普段は薄く緑を帯びた白っぽい体で、体側に5本の横帯があり、背鰭が黄色くなります。しかし、怯えたとき、ストレスを感じたときなどは黒っぽい色に変化してしまいます。また夜間にも黒っぽい色に変化します。しかしそのような黒い色彩に変化しても、飼育環境に慣れればまた美しい色彩に戻ります。
オヤビッチャの混泳
オヤビッチャは自然の海では群れていることが多いのですが、水槽という狭い環境では同種同士ケンカをすることも多く、家庭における水槽では混泳をおすすめできません。
60cmほどの水槽であれば、同種ではなく他種との混泳を楽しむのがよいでしょう。幼魚のうちは同種同士の飼育も可能ですが、成長するにつれ争うようになります。
オヤビッチャと他魚との混泳
▲水族館の大型水槽でオヤビッチャが他の魚と混泳している例
オヤビッチャは小さな水槽での混泳はあまりおすすめできません。60cm以上の水槽であれば他の魚との混泳を楽しめます。多くの魚との混泳が可能ですが、大きく育った個体は小魚をいじめることがありますので十分に観察しましょう。逆に大きな口の肉食魚には捕食されるおそれもあります。
オヤビッチャとサンゴ・無脊椎動物との相性
オヤビッチャはサンゴを捕食することはありませんので、ソフトコーラル・ハードコーラル、LPS・SPS問わず、さまざまな種類のサンゴとの組み合わせが可能です。
無脊椎動物との組み合わせとしては、イセエビなどのように、他の魚に危害を加える恐れのある甲殻類との組み合わせはよくありません。スカンクシュリンプ、ホワイトソックス、サンゴヤドカリなどとの混泳は可能で、大型個体はオトヒメエビなどとの組み合わせも可です。ただ大きい個体は気が強く、キャメルシュリンプなどを捕食してしまうこともあるので気をつけます。
オヤビッチャ飼育まとめ
- 幼魚が関東以南の磯で見られる
- 丈夫で飼育しやすいスズメダイの仲間
- 近縁のロクセンスズメダイやシマスズメダイなども磯で見られる
- 水槽は60cm以上の水槽を推奨
- ろ過装置は上部フィルターか、上部フィルターと外部フィルターを併用
- 水温は23~26℃。低水温・高水温にも耐えられるがおすすめしない
- ライブロックや飾りサンゴを複雑に組む
- 餌付きはよくすぐ配合飼料を食べる
- 小型個体は網で、大きめの個体は釣りで採集できる
- 採集直後やストレスを感じたとき、夜間の睡眠時など体が黒くなる
- 成長するにつれて気が荒くなる。小魚は注意
- サンゴには無害。甲殻類との混泳には注意
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