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2020.07.29 (公開 2017.10.18) 海水魚図鑑

オヤビッチャと似ている魚(オヤビッチャ属)の見分け方・違い

オヤビッチャはスズメダイの仲間で、夏から秋にかけて関東以南太平洋岸ならほぼどこでも見られる普通種です。そのオヤビッチャに近い仲間(オヤビッチャ属)が日本から9種類が知られており、よく似ているものも多いです。今回はオヤビッチャ属のうち本州~九州で見られる6種類を中心に見分け方などご紹介していきます。

オヤビッチャ

▲オヤビッチャの成魚。高知県

▲オヤビッチャの幼魚。千葉県の磯で採集

オヤビッチャは千葉県以南の太平洋岸ではどこでも見られ、年によっては青森県など東北沿岸でもその姿を拝むことができます。日本海岸でも少ないですが毎年流れてきます。体側には5本の横帯があり、背中の部分が黄色くなっていることが特徴ですが、まれにロクセンスズメダイのような青みがつよいものも見られます。そのようなときは尾鰭の模様をみれば簡単に見分けられます。オヤビッチャの尾鰭には黒い線がありません。

分布域は紅海・ペルシャ湾南アフリカ~ハワイ、トゥアモトゥ諸島までのインド-中央太平洋域で極めて広いです。東太平洋や大西洋には分布せず、それぞれAbudefduf troschelii (Gill, 1862) (英名Panamic sergeant major)、Abudefduf saxatilis (Linnaeus, 1758)(英名Sergeant major)という種に置き換わります。日本ではほかにシリテンスズメダイとアミメオヤビッチャが知られていますが、前者は胸鰭基部付近の黒色帯に違いがあり、後者は体側の横帯が背鰭にかからないなどの違いがあります。

なお、オヤビッチャの飼育方法については、こちらをご覧ください。

ロクセンスズメダイ

▲高知県産のロクセンスズメダイ稚魚。全長2cmほど。

▲上の写真とは別の個体で、全長4cmくらい。親と模様は変わらない

▲オヤビッチャとロクセンスズメダイの違い

学名:Abudefduf sexfasciatus (Lacepède, 1801)
全長:15cm

ロクセンスズメダイはオヤビッチャによく似た種類です。全身が鮮やかなブルーグリーンで、尾鰭に黒い線があることでオヤビッチャと比べられます。オヤビッチャやシマスズメダイに次いで分布が広く、紅海・東アフリカ~中央太平洋にいますが、オヤビッチャとは異なりハワイ諸島にはいません。

国内では三浦半島・兵庫県浜坂以南、琉球列島、小笠原諸島に分布しており、千葉ではなかなか出会えません。紀伊半島や四国、宮崎沿岸では大きいのも小さいのもいますので、越冬しているのかもしれません。大型魚は小笠原諸島などで食用になっています。

飼育は容易でほかの気が強めの魚との混泳もできます。ロクセンスズメダイの飼育方法についてはこちらをご覧ください。

テンジクスズメダイ

▲三重県産のテンジクスズメダイ幼魚

▲水族館で撮影したテンジクスズメダイ成魚

学名:Abudefduf bengalensis(Bloch, 1787)
全長:15cm

テンジクスズメダイの幼魚はオヤビッチャの幼魚に似ていますが、体側の黒色横帯の数が多く、幅も狭いので水中でもすぐに見分けられます。また背鰭、臀鰭が大きく尾鰭の後縁が丸みを帯びているのも特徴です。和名の「天竺」、学名や英語名の「Bengal sergeant」からもわかるように、この種が初めて獲れたのはインドででした。ロクセンスズメダイやオヤビッチャほど分布は広くなく、パキスタンから西太平洋までですが、内湾に多い感じがします。

日本では千葉県以南に分布し、琉球列島までみられるようですが、小笠原諸島ではまれな種とされます。やはり内湾に多く外洋の島では少ない感じでしょうか。

餌は配合飼料などもよく食べ丈夫で飼育しやすく、同じくらいの大きさの魚とであれば混泳もできます。ただそれでも温和な魚は避けた方が無難でしょう。

シマスズメダイ

▲高知県で採集したシマスズメダイの幼魚

▲鹿児島県産のシマスズメダイ成魚

学名:Abudefduf sordidus(Forsskål, 1775)
全長:20cm以上

幼魚は灰色の体で、尾部に薄い黒色斑があり、写真の個体よりすこし大きくなると背鰭が黄色っぽくなります。成長すると灰色で体高が高くなり、頭部には黒い斑点がでます。沖縄では成魚が磯で釣れ、食用となり塩焼や揚げ物などにして食べると美味です。非常に広い分布域をもち、紅海・南アフリカ~ハワイ沿岸にまでみられます。

日本においても房総半島など関東沿岸でも毎年のように幼魚がタイドプールで見られ、飼育しておられる方も多いように思います。しかしなぜか大きく育った話を聞きません。性格はきつく、海へと放流してしまうのでしょうか。もちろん、飼育しきれなくなっても海へ放流するということは慎まなければなりません。

シチセンスズメダイ

▲奄美諸島産のシチセンスズメダイ成魚

学名:Abudefduf septemfasciatus(Cuvier, 1830)
全長:20cm

シチセンスズメダイはシマスズメダイによく似たスズメダイです。しかし頭部がシマスズメダイより丸みを帯び、頭部の黒い斑点もなく、シマスズメダイの尾柄にある黒色斑も成魚にはありません。千葉県外房以南の太平洋岸で見られますが、関東の磯ではシマスズメダイよりもずっと少ない印象です。高知の磯ではたまに見ることができますが、それでもシマスズメダイよりは少ない感じがします。全長20cm近くになり大きいものは性格もきつくなると思われますので、混泳は要注意です。

イソスズメダイ

▲伊豆大島産のイソスズメダイ幼魚

学名:Abudefduf notatus(Day, 1870)
全長:15cm

イソスズメダイは幼魚期、灰色の体に黄色い尾鰭、黄色い横帯などが特徴でよく目立つ魚です。しかしこの模様はやがてグレーになり、尾鰭が黄色いのだけが目立つようになります。また鰓蓋上方に小さな黒色点があります。房総や三浦ではオヤビッチャやシマスズメダイよりも少ない感じがしますが、紀伊半島や四国、八丈島などでは多数みられます。餌付きはよく飼育しやすいです。成長すると気が荒いのは予想できますが、小さいうちはやや臆病な面を見せることもあり、いずれにせよ混泳は注意が必要です。

そのほかのオヤビッチャ属

日本産オヤビッチャ属は9種が知られており、奄美諸島以南に生息するシリテンスズメダイとアミメオヤビッチャ、西表島から記録のあるローレンツスズメダイが知られています。オヤビッチャ属は基本的にどの種も丈夫で飼育しやすいのですが、概ねどの種も気性が荒いのでその点には注意しなければなりません。

オヤビッチャ属まとめ

  • ロクセンスズメダイは尾鰭に黒い線が入りオヤビッチャと見分けられる
  • テンジクスズメダイはオヤビッチャより体側の横帯の数が多く横帯も細い
  • シマスズメダイ・シチセンスズメダイは互いによく似ている
  • イソスズメダイは黄色い線があるが成長すると白い横帯にかわる
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