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2020.04.22 (公開 2020.04.21) 海水魚図鑑

サンカクハゼの飼育方法~サンゴ礁で採集できる飼育しやすいハゼ

サンカクハゼは熱帯サンゴ礁に生息する底生ハゼの一種です。あまり派手な色彩ではないのですが、透明感がありよく見るときれいな魚です。ほかのハゼ同様に丈夫で飼育しやすく混泳もこなし、注意点はあるもののサンゴとの飼育も可能で初心者向きの魚ともいえます。今回はサンカクハゼの飼育方法をご紹介します。

標準和名 サンカクハゼ
学名 Fusigobius neophytus (Günther, 1877)
英名 Common fusegoby
分類 スズキ目・ハゼ亜目・ハゼ科・ハゼ亜科・サンカクハゼ属
全長 8cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッドシグマグロウなど
温度 25℃前後
水槽 45cm~
混泳 多くの魚と混泳できるが肉食性の強い魚は避ける
サンゴとの飼育 低い位置にサンゴを配置しないようにする

サンカクハゼって、どんなハゼ?

サンカクハゼはインド―太平洋に広く生息し、国内では主に琉球列島に分布しています。和名の由来は吻がとがっており頭部の形状が三角形に近いから、もしくは体の横断面が三角形に近いからのいずれかとされています。色彩的には灰褐色で地味ではありますが、透明感がありまあまあきれいな魚です。また背骨に沿って白と黒の交互に入る模様もユニークです。

ほかのサンカクハゼの仲間とは背鰭が伸びないこと、背鰭に横帯がないこと、背鰭の上縁はわずかに白っぽくなること、第一背鰭の第1鰭膜に小さな黒色点があること、尾柄部の斑紋はおおむねひょうたんのような形をしていることなどで見分けることができます。非常に丈夫で初心者であっても飼育しやすいハゼといえます。

サンカクハゼの仲間

▲カペラサンカクハゼ

サンカクハゼの仲間はインド―中央太平洋のサンゴ礁に広く分布しています。世界には10種ほどがいて、日本には9種が分布しています(書籍「日本のハゼ」では8種とされていたが、同書に記載されていたサンカクハゼ属の1種が2009年に日本初記録として報告され、カペラサンカクハゼの和名がついた)。また新大陸周辺海域に生息するCoryphopterus属の魚種の中にはサンカクハゼとよく似ているものがおり、サンカクハゼもCoryphopterus neophytusという学名が使われていたこともあります(実際に2001年に新種記載されたサンカクハゼ属魚類は新種記載された当時はCoryphopterus属とされた)。しかしのちにmt-DNAのND2領域の遺伝子解析を行った結果この2属は近縁の種ではない、とされており別属とされるべきのようです。

この仲間では大きな鰭が特徴で目立つハタタテサンカクハゼやヒレフリサンカクハゼといった種がアクアリストやダイバーに人気があります。一見テッポウエビの仲間と共生しそうですが、共生はしないとされています。

サンカクハゼ飼育に適した環境

水槽

▲サンカクハゼを飼育している水槽

幼魚は小型水槽でも飼育可能です。成魚は45cm以上の水槽で飼育するとよいでしょう。参考までに我が家でサンカクハゼを飼育している水槽は幅40cmほどの小型水槽で、この水槽にサンカクハゼやヒメカザリハゼ、テンジクダイの一種などを入れています。ただし初心者には45~60cmの水槽がよいかもしれません。幅5cmの違いは水量をかせぐという意味では意外と大きいです。

水質とろ過システム

ある程度の水質悪化には耐える丈夫で飼育しやすいハゼですが、当然ながら硝酸塩はあまり蓄積されていない環境のほうがよいです。大きいものは砂を動かすことも多く、底面ろ過装置の使用はやめましょう。おすすめは上部ろ過槽、外部ろ過槽、外掛けろ過槽のうち二つを組み合わせることです。小型水槽では外掛けろ過槽と外部ろ過槽を組み合わせますが、60cm水槽は上部ろ過槽が使えるようになるためより飼育しやすくなります。可能ならばオーバーフロー水槽もおすすめです。

サンカクハゼはサンゴ水槽でも飼育できますが、サンゴと飼育するならばサンゴを置く位置にも気をつかう必要があります(後述)。また、サンゴ飼育を目的としたベルリンシステムなどでは魚をたくさん入れるのは不向きなところがあります。

水温

水温は25℃を保つようにすればよいでしょう。それよりも若干高め、もしくは若干低めの水温でも飼育できますが、水温が一定に保たれている必要があります。病気の予防のためにも一定の水温をキープすることを心がけます。

底砂

底砂を敷くとほかのハゼの仲間同様に落ち着きますので敷いてあげるとよいでしょう。厚く敷く必要はありません。厚く敷いてしまうと硫化水素が発生する危険性もありますので、2~3cm程度砂を敷く程度にします。パウダーから細目の砂が最適でしょう。

サンカクハゼに適した餌

サンカクハゼの餌としては配合飼料をすぐ食べてくれますのであまり心配はいりません。魚の体サイズに合わせて餌のサイズを使い分けます。サンカクハゼ幼魚ならメガバイトレッドのS。成魚であればMという感じで選びましょう。シグマグロウであれば幼魚はB、成魚はCを選ぶとよいです。ほかのハゼ同様、フレークタイプの餌よりも底に沈むタイプのほうが食べやすいようです。

サンカクハゼをお迎えする

採集する

サンカクハゼはサンゴ礁周辺の砂地で採集することができます。沖縄などであれば干潮時水深1~2mほどの場所でみることができます。動きは素早くないので容易に採集できます。「カクレクマノミと混泳させるような大きめのが欲しい!」というのであれば漁港などで釣るのもおすすめです。

なおアクアリストが採集できるサンカクハゼ属の魚は本種、ヒレフリサンカクハゼだけといえます。ほかの種類については5mの深さまで潜らなければ見られないようで、よほど潜水技術が優れていないと出会うことはできないでしょう。

購入する

サンカクハゼはめったなことでは輸入されることなく、沖縄産のものがたまに入ってくることがある程度です。沖縄便に強い海水魚店では購入できますが、それ以外のお店では購入できません。購入する際はほかの魚同様、鰭が溶けていないか、体や鰭の一部が赤くなっていないかなどチェックが必要です。また状態のよいものは透明感のある色彩ですが、体全体が妙に白っぽいようなものも購入してはいけません。

サンカクハゼとほかの生物との関係

ほかの魚との関係

▲サンカクハゼ(右)とヒメカザリハゼ(左)

サンカクハゼはほかの魚との混泳も可能です。写真は同じ場所で採集したヒメカザリハゼとのツーショットです。ヒメカザリハゼは小型種であり比較的おとなしめの性格のようですが、同属のクツワハゼなどはやや大きくなり、性格もきつくなるので注意が必要です。成魚はさまざまな魚との混泳に適していますが、大型魚やスズメダイ・メギスなど気性の激しい魚、肉食魚との飼育はいけません。ハゼの仲間は体が細めのものが多く、肉食魚に捕食されるおそれもあるからです。成魚に近いサイズのものであれば、カクレクマノミなどとの混泳もできます。

サンゴ・無脊椎動物との相性

基本的に問題ありません。ただしサンカクハゼの大きい個体は尾部をひねって砂を撒き散らかすことがありますのでサンゴを水槽の底のほうに配置するのは避けたほうがよいでしょう。イソギンチャクはハゼやカエルウオを食べてしまうので同じ水槽で飼ってはいけません(ただしディスクコーラルの小ぶりのものや、スナギンチャク系は問題なし)。また大型の甲殻類(大型のエビ、大型のカニ、大型のヤドカリ、オトヒメエビなど)はハゼを襲うことがあるので入れないようにします。とくにオトヒメエビはカラフルな色をしていて入れたくなりますので注意が必要です。

サンカクハゼ飼育まとめ

  • 地味ながら透明感のある色が特徴的なハゼ
  • 体の断面が三角形なのが特徴
  • 共生ハゼのように見えるがテッポウエビと共生しないとされる
  • 小型水槽でも飼育できるが45cm以上の水槽が最適
  • 小型水槽では外掛けろ過槽と外部ろ過槽を使用、60cm以上では上部ろ過槽かオーバーフローが最適
  • 水温は25℃
  • 砂を敷いてあげると落ち着く
  • 餌は最初から配合飼料を食べるがペレットフードが適している
  • 沖縄便に強いお店で販売していることが多い
  • 多くの魚と混泳させられるが、肉食魚はだめ
  • サンゴには基本的に無害だが、尾部で砂をまき散らすことも
  • イソギンチャクや大型の甲殻類はだめ
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