テンジクスズメダイの飼育方法~丈夫で飼育しやすいが性格はややきつい

テンジクスズメダイはオヤビッチャに似た小型のスズメダイです。体側には7本の細い横帯が入ることでよく似たオヤビッチャと見分けることができます。きれいでついつい持ち帰りたくなるものですが、成長するにつれ性格はきつくなり、またそれなりに大きくなるため最低でも60cm以上の水槽で飼いたいスズメダイといえます。今回はテンジクスズメダイの飼育方法をご紹介します。

標準和名 テンジクスズメダイ
学名 Abudefduf bengalensis (Bloch, 1787)
英名 Bengal sergeantなど
分類 条鰭綱・スズキ目・スズキ亜目・スズメダイ科・オヤビッチャ属
全長 15cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトグリーンなど
温度 25℃
水槽 60cm~
混泳 性格きつめなので混泳には注意が必要
サンゴとの飼育 サンゴには無害だが、水質にデリケートなサンゴとの飼育は避けたい

テンジクスズメダイって、どんな魚?

▲テンジクスズメダイの成魚

テンジクスズメダイはスズキ目・スズメダイ科・オヤビッチャ属の海水魚です。全長15cmになり、スズメダイ科としては大きく育つ種です。薄い緑色の体に黒色の横帯が入るのが特徴でオヤビッチャに似ていますが、成長すると背鰭の軟条部が長くなり見事ですが、そのシルエットはなぜか淡水魚のティラピアの類を思わせます。名前の由来については、種の標準和名は「天竺」、英語名、学名もインドのベンガル湾からきていますが、この種のタイプ標本がベンガル湾で採集されたことにちなむものと思われます。余談ですが、現在(2020年7月)知られている日本産魚類の学名をアルファベット順にならべるとイトヒキオキハギ、オキハギ、ツチフキ、ツマジロオコゼ、カササハオコゼ、ハマダツに次ぐ7番目となります。

テンジクスズメダイとオヤビッチャの違い

▲テンジクスズメダイの横帯は7本

▲オヤビッチャの横帯は5本

テンジクスズメダイは、オヤビッチャに近いスズメダイの仲間で、テンジクスズメダイの幼魚はオヤビッチャの幼魚に非常によく似ています。しかし、体に7本の横帯があり、その幅はオヤビッチャよりも細くなりますので容易に見分けられるでしょう。

成魚は尾鰭の端が丸くなるなどの特徴もあります。また背鰭や臀鰭などもオヤビッチャと比べると明らかに形が変わっています。なお幼魚のころにあった体側の7本の横帯のうち最も後ろのもの(尾鰭に近い)は点状になることが多いようです。

なお、同じように体側に7本の横帯をもつ種としてはシチセンスズメダイやローレンツスズメダイがいますが、シチセンスズメダイは頭部の形が丸く、幼魚は尾鰭の付け根に目立つ黒色斑があります。さらに帯の様子も大きく異なっています。一方ローレンツスズメダイのほうは、テンジクスズメダイによく似たシルエットをしている魚ですが、最後の黒色横帯(尾柄部にある)は大きな黒色斑状となるので、ほかの同属魚類とは容易に見分けることができます。またローレンツスズメダイは日本国内では西表島からしか知られていない種です。

テンジクスズメダイに適した飼育環境

水槽

テンジクスズメダイは15cmを超え、スズメダイ科としては大型種です。水槽での飼育下ではそれほど大きくなることはありませんが、最低でも60cm以上の水槽で飼育してあげるべきです。また成長すると性格もきつくなっていくため、ほかの魚との混泳を考えるなら最低でも90cm水槽が欲しくなります。もっとも本種との混泳に適した魚は多くありませんが(後述)。

水質とろ過システム

テンジクスズメダイは魚の多い、硝酸塩濃度の高い水槽でも飼育することができます。しかしながら、あまりに硝酸塩が多い状態で飼育するのはあまりよくありません。少なくとも成魚は上部ろ過槽か、オーバーフロー水槽での飼育が最適です。

テンジクスズメダイは性格がきつめですが、サンゴには無害なのでサンゴ水槽で飼育することもできます(後述)。しかし、ベルリンシステムなどで飼育するのであれば魚を多数入れることはできないので注意が必要です。また、テンジクスズメダイは大型になり成魚は排せつ物の量もそれなりに多くなります。したがってベルリンシステムなどでの飼育はあまり向いていないかもしれません。

水温

極めて浅い場所に生息しており、30℃前後の高い水温への耐性もありますが、できれば22~25℃の水温で飼育してあげたい魚といえます。もちろん水温が一定であることが重要です。これは水温の変動が大きいといくら丈夫なテンジクスズメダイであっても体調を崩して白点病などの病気になってしまうこともあるからです。ヒーターやクーラーを使用し、常に一定の水温をキープするようにします。

テンジクスズメダイに適した餌

▲おすすめはキョーリンの「メガバイト」シリーズ

テンジクスズメダイは海の中では雑食性で、藻類や小型の甲殻類、流れてくる動物プランクトンなどを食べています。水槽内では配合飼料もよく食べてくれるので心配は不要といえます。コペポーダやホワイトシュリンプといった餌は与えればよく食べますが、これらの餌は水を汚しやすいのでほどほどにしましょう。なおテンジクスズメダイは藻類食でもあるので藻類の成分を強化した餌がよいかもしれません。個人的におすすめなのはキョーリンの「メガバイト グリーン」です。メガバイトグリーンにはサイズの異なる3種がラインアップされていますが、テンジクスズメダイの体サイズによって使い分けるようにしましょう。ただし餌の単用はあまりよくないのでメガバイトレッドなど、ほかの餌もたまに与えてあげるとよいでしょう。

テンジクスズメダイをお迎えする

▲テンジクスズメダイのいるタイドプール

テンジクスズメダイは海水魚店ではほとんど販売されていません。とくに幼魚の販売は皆無といえます(成魚は飼いきれなくなった個体が引き取られて販売されていることがある)。幼魚は磯に見られますが、外洋に面した荒磯よりも濁ったタイドプールに多いような印象を受けます。筆者は宇和海のかなり奥の磯、オヤビッチャさえほとんどいないような場所でも採集したことがあり、内湾性という印象が強いです。分布域は相模湾以南から九州の太平洋岸で、案外沖縄や小笠原諸島ではあまり見ません。東~南シナ海には多く生息しているようで、大陸沿いを中心とした分布なのかもしれません。

見つけたら2本の網で囲むように採集するのが簡単ですが、採集しても持ち帰るべきかどうかはよく考えてからにしましょう。飼育できる水槽がない、60cm(できれば90cm)水槽を置けないという人や、小さいのを採集して大きくなってから逃がせばいいやと思っているのであれば、飼育してはいけません。

テンジクスズメダイとほかの生物の関係

ほかの魚との混泳

▲幼魚はほかの魚との混泳が可能だが

ほかのオヤビッチャ属の多くの種も同様ですが、幼魚のうちはおとなしく、多くの魚と混泳できます。しかしある程度大きくなると縄張りを主張し、ほかの魚を蹴散らすようになってしまうので、同じようにタフなスズメダイの仲間、ニザダイ類や大型ヤッコくらいしか適した混泳相手がいなくなります。ハタの仲間は口がかなり大きく、サイズによっては捕食されてしまうこともあるので注意が必要です。

サンゴ・無脊椎動物との相性

▲コモンサンゴとテンジクスズメダイ

先ほども述べたようにテンジクスズメダイはサンゴには無害ですので、サンゴ水槽での飼育も可能です。内湾の浅場に生息するということで、浅場のコモンサンゴやキクメイシとの飼育が楽しいでしょう。ミドリイシとの飼育もできないわけではないのですが、大きくなり排せつの量も多く、性格もきつい(ほかの魚をいれにくい)テンジクスズメダイとの相性はよくないといえるでしょう。イソギンチャクはクマノミ以外の魚を食べてしまうので、テンジクスズメダイとの飼育には向きません(マメスナギンチャクやディスクコーラルは問題なし)。

そのほか無脊椎動物ではサラサエビなどを食べてしまうことがあり、逆に大きなイセエビの類、大型のカニ、大型のヤドカリには襲われてしまうことがあります。甲殻類の中で一緒に飼育できるのはサンゴヤドカリやベニワモンヤドカリ、各種クリーナーシュリンプですが、オトヒメエビは大きなハサミを持っており、テンジクスズメダイの幼魚を襲って食べてしまうことがあるのでなるべく一緒にしないほうがよいでしょう。

テンジクスズメダイ飼育まとめ

  • オヤビッチャに似ているが体側に7本の横帯がある
  • 成長すると鰭の形が特徴的になる
  • 飼育するなら最低でも60cmは欲しい
  • ろ過槽は上部ろ過槽もしくはオーバーフローが最適
  • 高水温にも耐えられるが25℃がベスト、安定していることも重要
  • 雑食性だが配合飼料もよく食べる
  • 販売されることはほとんどないので採集するしかない
  • 採集しても持って帰るかどうかはよく考えるべき
  • 幼魚は多くの魚と混泳できる
  • 成魚は大型魚でないと混泳は難しい
  • サンゴには無害だが水を汚しやすい

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