ワニグチボラの飼育方法~温和で飼育しやすいが飛び出しに注意!

ワニグチボラは南方にすむボラの一種ですが、黒潮にのり夏は千葉県以南の海でもその姿を見せてくれます。銀色にピカピカ光り輝く様子は海ではよく目立ちますが、逆に波の泡に擬態しているといわれます。丈夫で飼育しやすく観賞魚として飼育されますが、いつも水面付近や表層におり、何かに驚くとジャンプしてしまうこともあるので、フタはしっかりしなければなりません。今回はこのワニグチボラの飼育方法をご紹介します。

標準和名 ワニグチボラ
学名 Oedalechilus labiosus (Valenciennes, 1836)
英名 Hornlip mulletなど
分類 条鰭綱・ボラ目・ボラ科・ワニグチボラ属
全長 20cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトグリーンなど
温度 25℃前後
水槽 60cm~
混泳 肉食魚に捕食されるおそれあり
サンゴとの飼育 イソギンチャクなどには捕食されるおそれあり

ワニグチボラって、どんな魚?

ワニグチボラはボラ目・ボラ科・ワニグチボラ属のボラの仲間です。主にインド洋からサモア諸島までのインド-中央太平洋の熱帯・亜熱帯域に生息していますが、幼魚は黒潮にのり千葉県以南の太平洋岸、兵庫県以南の日本海岸でもその姿をみることができます。形態はややずんぐりした体で、涙骨下縁にV字状の欠刻があるのが特徴です。比較的小型で全長は普通20cmほど、大きいものでは40cm近くになるともされます。

なおボラ科魚類の学名、とくに属の学名は研究者により意見の相違が甚だしいため、注意が必要です。例を挙げれば海外のFishbaseのようにPlicomugilという属の学名を使用していることがあります。今回は瀬能(2013)に従いこの属学名・属和名としています。

よく似たものにフウライボラというのがいますが、涙骨下縁の形状が大きく異なっています。フウライボラは波骨下縁が緩やかに湾入し、大きなV字状にならないことで見分けられます。また大きさもフウライボラのほうがずっと大きく、40cm以上になります。

ボラ科魚類

▲熱帯に生息するヒルギメナダ

ボラ科魚類は全世界の温帯から熱帯・亜熱帯域にすみますが、温帯より熱帯域に多くの種類が生息しています。沿岸の汽水域に生息し、河川の汽水域でも多く見られます。

ボラの仲間は食用になるものも多いです。東京湾など汚い海にすんでいるボラは臭みがありますが、水がきれいなところのボラは極めて美味しいです。またボラの胃の部分はそろばん状でこれを焼いて食べると美味しいです。また、ボラの仲間の卵巣はカラスミとして珍重されます。しかしワニグチボラは日本では数が少なく、あまり食用にはなっていないようです。成魚でも全長20~30cmほどと小ぶりなのもその理由かもしれません。

ワニグチボラに適した飼育環境

水槽

ボラの仲間では比較的小型なので、60cm水槽でも飼育できますが、よく泳ぐタイプの魚ですので、できれば90cm以上の水槽で飼育することをおすすめします。水槽は高さよりも奥行きがあるほうがよく泳ぐボラの仲間にとって適しているでしょう。

水質とろ過システム

水質悪化にはある程度の耐性がありますが、できるだけ綺麗な水で飼育します。飛び出す可能性もあるため、隙間ができやすい外掛けろ過槽はなるべく使わないようにします。単体の水槽であれば上部ろ過槽、もしくは外掛けろ過槽が最適ですが、オーバーフロー水槽にできるのであればそれが最高です。

ボラの仲間はサンゴを食べたりいたずらすることはないのでサンゴ水槽での飼育もできますが、数は少な目に保たなければなりません。

水温

基本的に暖かい海の魚ですので25℃でよいでしょう。もちろん25℃の水温を一定に保つことが重要です。水温については28℃くらいまで大丈夫ですが、それ以上は厳しいです。低い水温では21℃でも問題なく飼育できます。ただしやはり水温の変動が大きいと体調を崩して病気になってしまうことがありますので、ヒーターとクーラーを使い年中一定に保つべきです。

フタ

▲表層を泳ぐワニグチボラ

ワニグチボラは表層や水面下スレスレを泳いでいることが多いです。何かに驚き飛び出してしまう事故も多いですので、フタはきちんとしましょう。

ワニグチボラに適した餌

▲メガバイトグリーンがおすすめ

ワニグチボラはは動物プランクトンや藻類などを食べている雑食性のようで、餌も小粒の配合飼料が適しています。藻類食の傾向もありますので「メガバイト グリーン」がよいでしょう。Sサイズの餌でも食べられないような幼魚には餌をすりつぶして与えたり、さらに小粒の餌を与える必要があります。適切に餌を与えるとあっという間に10cm前後に成長します。ワニグチボラが小さいままのがよいといって、餌を絞るのはよくありません。

ワニグチボラをお迎えする

ワニグチボラは近海魚に強いお店で販売されていることもありますが、あまり流通しない種類ですので、自分で採集するしかありません。

夏になると浅いタイドプールで泳ぎ回っており、より小さいものは銀ピカの体をして水面に浮かんでいます。これは波による泡への擬態ともいわれています。私は千葉県房総半島南部、伊豆大島、和歌山県南、足摺宇和海などで本種を採集、または目撃しています。すべて幼魚で、ごく浅いタイドプールを素早く泳いでいるのを採集しています。採集したら素早くフタつきのバケツに入れるようにします。先ほども述べたとおり、ボラの仲間は飛び出すおそれがあるからです。

ワニグチボラとほかの生き物の関係

ほかの魚との混泳

▲ワニグチボラとほかの魚の混泳例

ボラの仲間小さいうちはほかの魚に食われるおそれがあるため、できるだけ本種のみ、またはカエルウオなど、ワニグチボラに害を与えない生き物だけで飼育した方がよいでしょう。

ある程度成長してもほかの魚に害を与えることはほとんどなく、ほかの魚と混泳させることができます。90cmの大型水槽で飼育しており、スズメダイ類(クマノミ、イエローリップダムゼル、ロクセンスズメダイ、ロイヤルデムワーゼルなど)と混泳できていますが、小さな水槽では襲われる危険性があるため注意が必要です。

サンゴ・無脊椎動物との相性

ボラの仲間はサンゴには害がないので、組み合わせることができます。ただし、捕食性のサンゴやイソギンチャクはワニグチボラを食べてしまうおそれがあるので一緒にはしない方がよいでしょう。生息環境的にはミドリイシなどのSPSやソフトコーラルが最適ですが、初心者にはミドリイシの飼育は難しいです。

無脊椎動物は大型のエビ・大型のカニ・大型のヤドカリなどはワニグチボラを食べてしまうことがあるので一緒に飼うことはできません。アカシマシラヒゲエビ(スカンクシュリンプ)や、サラサエビの仲間、サンゴヤドカリの仲間、ベニワモンヤドカリ、ケブカガニなどの種類は経験上10cm弱に育ったワニグチボラとの混泳は心配ないのですが、2~3cmほどの幼魚はこれらの甲殻類にも食べられてしまうおそれがあるので注意が必要です。

ワニグチボラ飼育まとめ

  • 熱帯・亜熱帯海域に生息するボラの仲間
  • ボラの仲間ではやや小型
  • 60cm水槽でも長期飼育できるが、90cm水槽で奥行きがあるタイプがおすすめ
  • ろ過槽は上部ろ過槽、またはオーバーフロー
  • 飛び出すおそれがあるのでフタはしっかり
  • 22~28℃で飼育できるが安定していることが大事。25℃前後が理想
  • 藻類食の傾向があるのでメガバイトグリーンがおすすめ
  • 夏に潮溜まりで採集できる。ピカピカした体の個体が浮かんでいる
  • 多くの魚と混泳できるが、肉食性が強い魚はだめ
  • サンゴには無害だが捕食性が強いサンゴとの飼育は避ける
  • 大型の甲殻類との飼育も避けた方がよい

文献

瀬能 宏. 2013. ボラ科. pages 636-637 in 中坊徹二編. 日本産魚類検索 全種の同定 第三版. 東海大学出版会. 秦野.

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