トゲチョウチョウウオの飼育方法~餌付けも簡単!初めてのチョウチョウウオなら本種がおすすめ

トゲチョウチョウウオの幼魚

トゲチョウチョウウオはチョウチョウウオ科魚類の代表的な種です。熱帯の魚なのですが、夏から秋にかけては関東の沿岸でも見ることができます。

チョウチョウウオといえば「難しい」イメージがつきものですが、このトゲチョウチョウウオはその中では飼育しやすい魚といえます。しかし海水魚飼育初心者がいきなり本種の飼育をスタートするのはおすすめしません。ある程度の経験を積んだ中級アクアリスト向けの魚と言えます。

標準和名 トゲチョウチョウウオ
学名 Chaetodon auriga Forsskål, 1775  (詳細は後述)
英名 Threadfin butterflyfishなど
分類 スズキ目・スズキ亜目・チョウチョウウオ科・チョウチョウウオ属
全長 20cm
飼育難易度 ★★★☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッドなども食うが、最初はアサリや冷凍餌から
温度 25℃
水槽 60cm~
混泳 砂を掘る魚との混泳は注意。チョウチョウウオ同士の混泳も注意
サンゴ飼育 不可

トゲチョウチョウウオってどんな魚?

トゲチョウチョウウオ

トゲチョウチョウウオはチョウチョウウオ科を代表するといえる種類であり、「南国」をイメージさせる広告などに本種の写真が使われることもあります。体側に交差する斜線があり、体側の後方が橙色になり黒色斑があるなどの特徴があります。大きく成長すると背鰭の鰭条がよく伸びるようになります。これはほかにセグロチョウチョウウオやレモンチョウチョウウオにもみられる特徴です。

食性は雑食性で、サンゴのポリプのほか、カイメンなど岩に付着する生物、エビやカニなどの甲殻類、ゴカイ類、海藻までさまざまなものを食べます。そのためチョウチョウウオ科の魚としては比較的餌付けが容易であるということがいえます。

和名の由来は背鰭の後方が伸長することから来ていると思われます。英語名Threadfin butterflyfishも同様です。自然下では全長20cmに達し、チョウチョウウオ科としては大きく育つ種です。

紅海産の個体群

トゲチョウチョウウオは分布域が極めて広大で、南アフリカの南部モーセルベイからガラパゴス諸島までのインド-中央太平洋に広く分布しています。

ほとんどの地域の個体群は同じような色彩ですが、紅海のものだけは、背鰭軟条部にあるはずの黒色斑がなくユニークです。もし紅海のものとそれ以外の地域のものが別種と認められれば、紅海のものにChaetodon aurigaの学名があてられ、それ以外の地域のものにはChaetodon setifer Bloch, 1795という学名があてられることになるでしょう。

日本にも観賞魚として入ってきますが輸入量は少なく西太平洋産のものとくらべて高価です。

フウライチョウチョウウオとの見分け方

フウライチョウチョウウオの幼魚

▲フウライチョウチョウウオの幼魚は橙色部が狭く、白色部との境界線に黒色横帯がある

トゲチョウチョウウオは体側には斜めに入り、交差する細い線があります。この特徴をもつチョウチョウウオはトゲチョウチョウウオのほか、フウライチョウチョウウオ、インディアンバガボンドバタフライフィッシュなどがいますが、日本に分布するのは本種とフウライチョウチョウウオのみです。今回は、フウライチョウチョウウオとの見分け方をご紹介します。

トゲチョウチョウウオ

▲トゲチョウチョウウオは橙色部が広く、白色部との境界線に黒い横帯がない

フウライチョウチョウウオは体側の斑紋や背鰭軟条部に黒色斑がありトゲチョウチョウウオと見間違えられることもあるのですが、体の後方の黄色やオレンジ色の部分が狭く、黒い横帯があることにより区別できます。またフウライチョウチョウウオは成長すると黒色斑は消失してしまいます。またフウライチョウチョウウオは成長しても背鰭の鰭条は長く伸長しません。

トゲチョウチョウウオと比べるとフウライチョウチョウウオは性格がやや弱く、とくに小さいうちはほかのチョウチョウウオからいじめられることもあります。それゆえ雑食性であるにも関わらず飼育はやや難しめです。

トゲチョウチョウウオ飼育に適した環境

水槽

トゲチョウチョウウオは大きいものでは全長20cmを超えます。水槽内では流石にそれほど大型化することはないようですがそれでも60cm水槽で飼育するようにしたいものです。ほかのチョウチョウウオとの混泳を考えるのであれば120cm以上の大型水槽で飼育するのが理想といえます。

水質とろ過システム

ろ過システムはしっかりしたものを使用するべきです。基本的には上部ろ過槽と外部ろ過槽の併用が適していますが、外部ろ過槽や外掛けろ過槽だけというのはおすすめできません。前者は密閉式のろ過槽ですので酸欠になりやすく、外掛けろ過槽は海水魚用に使用するのであればパワー不足だからです。

予算が許すのであれば、オーバーフロー水槽にしてサンプでろ過を行う方式がおすすめです。この方式だと、ほかのろ過槽よりも圧倒的なろ過能力があるからです。

一方でベルリンシステムなど、ナチュラルシステムはあまり適していません。理由はベルリンシステムは主にサンゴを飼育するためのシステムであり、サンゴを食べてしまうチョウチョウウオは入れにくいし、生のアサリなどを餌として多く与える必要があるなど残餌を出したり排せつ物を多くする魚はシステムのバランスを崩してしまうので不適当だからです。

またサンゴを捕食するチョウチョウウオは魚水槽で飼育することになりますがそのような水槽では砂を敷かない方が汚れなどもたまりにくく掃除もしやすいです。

水温

水温は原則25℃をキープします。水温が上昇したり下がったりするようでは魚が調子を崩してしまい病気になりやすくなりますので、水温はできるだけキープするようにしなければなりません。また殺菌灯はチョウチョウウオの病気予防に効果がありますが水温を上げてしまうというデメリットもありますので注意が必要です。クーラーも使用して水温を常に一定に保ち病気を防ぐようにします。

殺菌灯

チョウチョウウオの病気予防のためにぜひとも用意しておきたい器具です。殺菌灯は紫外線で病気のもとになる菌や微生物などを殺す装置で、病気の予防に最適です。ですが殺菌灯を過信してはいけません。たとえ殺菌灯をつけていても汚い水だったり水温の変動が大きければ病気になってしまうこともあるので注意が必要です。

その他必要なもの

ほかの魚との混泳では飾りサンゴやライブロックなどを水槽に入れて隠れ家を作ってあげるようにしましょう。砂は敷いてしまうと病気の原因となる微生物などを増殖させてしまうので魚混泳水槽では敷かないほうがよいでしょう。

トゲチョウチョウウオに適した餌

プランクトンフードを食べるトゲチョウチョウウオの幼魚

▲プランクトンフードを食べるトゲチョウチョウウオの幼魚

いくら餌付きやすいトゲチョウチョウウオといっても、最初から配合飼料を食べることはあまりないので、まずはアサリを与え徐々に配合飼料に切り替えていくのが一般的な給餌方法です。アサリは与える前にいったん冷凍しなければなりません。これは寄生虫や菌を死滅させるためです。

しかし、アサリにはある種のビタミンを破壊する酵素をもっており、アサリ以外の餌も与えるようにします。例えばコペポーダなどがよいでしょう。しかしコペポーダだけではチョウチョウウオのお腹を満たすことはできないため、この二つの餌を併用して与えるようにしたいものです。

ただしトゲチョウチョウウオはフウライチョウチョウウオやチョウチョウウオ(俗にいう「ナミチョウ」)などと比べるとずっと配合飼料に餌付きやすく、そういう意味ではチョウチョウウオを初めて飼育するアクアリストにおすすめといえます。

添加剤

添加剤エンジェリクサー

▲チョウチョウウオの餌付けを助けてくれる添加剤エンジェリクサー

日本国内ではマーフィードが展開する「ブライトウェルアクアティクス」からは無脊椎動物用だけでなく、魚用の添加剤がいくつか市販されています。その中でも「エンジェリクサー」という添加剤はチョウチョウウオやヤッコ、ツノダシなどの餌付けに大きな助けとなってくれるでしょう。

このエンジェリクサーは水槽に入れた直後の餌付けに使うもので、配合飼料にこの添加剤をしみこませておくと餌の嗜好性が揚がったりタンパク質を魚に供給できたりします。125mLあたり5000円(希望小売価格)と高価な添加剤ではありますが、それだけの価値があります。

このほか同じブライトウェルからは「ガーリックパワー」という添加剤も販売されています。これはガーリックエキスで餌の嗜好性を高めるだけでなく魚の抵抗力も上げてくれるすぐれものです。

また、海水魚水槽ではpHが下がりやすいため、バッファー剤などを使用してpHを上昇させるのもおすすめです。ほかヨウ素はサンゴだけでなく海水魚にも有益な成分のため添加しておくとよいでしょう。

トゲチョウチョウウオの入手方法

磯採集

タイドプール

▲タイドプールでも採集できる

トゲチョウチョウウオは夏から秋にかけて磯で採集することができます。浅いタイドプールなどでも見られるのですが動きがかなり素早く採集しにくいです。また防波堤にもみられることがあり、網を使って掬うこともできます。主に千葉県以南の太平洋岸で採集できますが年によっては山陰や山口県、福岡県など日本海岸で採集されることもあります。

四国や九州南部、沖縄まで行くとトゲチョウチョウウオの成魚を浅場で見ることができます。小さな針に餌をつけて釣ることもできますが大型個体は小型個体よりも環境の変化に対する適応力に乏しく飼育しにくいといえます。これはヤッコの仲間にも同様のことがいえます。なお沖縄では大型の個体は食用にもします。

購入する

トゲチョウチョウウオは観賞魚店でもよく販売されています。産地はフィリピンなど東南アジアのものが多く、沖縄産や近海産のものもありますが、多くの場合1000~3000円ほどで購入できます。ただし、紅海のタイプは輸入量が少なく高価といえます。

おすすめは沖縄産や近海産のものですが、できれば入荷された後時間が経過し、よく餌を食べている個体を選んだ方がよいでしょう。お店で餌を食べているからといって自宅の水槽でも餌を食べるとは限らないのですが、このような個体は内臓の病気や吻部を傷つけた、などで餌を食べられないというわけではないので、餌を食べているものを選ぶのがよいということになります。

個体の選び方はほかのチョウチョウウオと同様です。つまり、体表や鰭、吻に傷やただれがないもの、白い点が付着していないもの、眼が濁っていないもの、鰭がぼろぼろになっていないもの、泳ぎ方がおかしくないもの、餌をよく食べているものがよいでしょう。

トゲチョウチョウウオの混泳

他の魚との混泳

チョウチョウウオの混泳では本種やミゾレチョウチョウウオなどは気が強くなるため注意が必要です。チョウチョウウオ混泳の水槽を考えるのであれば最後に入れるのが望ましいと言えますが、それでもデリケートな種類との混泳は避けた方がよいでしょう。

一方スズメダイやメギスの仲間、大きめのバスレットの仲間は性格が強くトゲチョウチョウウオをいじめたりするおそれがありますのでできれば避けた方が無難です。

意外と相性が悪いのはベントス食性のオトメハゼやミズタマハゼ、アカハチハゼなどのベントス食のハゼ、大きめのホンベラ属などの魚です。

これらの魚は底砂を巻き上げてしまうおそれがあります。そうすると砂の中の病原菌などが舞ってしまうことがあります。底砂を敷かなければよいのですがこれらのハゼやベラなどの魚は底砂がないと餌を探したり夜間睡眠をとれずストレスを感じることになりますので、混泳は避けた方が無難でしょう。

サンゴ・無脊椎動物との相性

トゲチョウチョウウオ

▲サンゴは食べてしまうので一緒にしない方がよい

トゲチョウチョウウオは雑食性でポリプのほかさまざまな餌を食べていますが、水槽内ではサンゴがあれば突いて食べてしまいますので、サンゴとの相性は最悪といえます。一緒に飼育するのはやめましょう。サンゴのほか、イソギンチャクやサンゴに準ずる生物であるシャコガイやケヤリムシの類、カイメン、ホヤなども捕食してしまうのでだめです。

甲殻類は多くの種類と組み合わせられますが、オトヒメエビやイセエビ、大型のカニやヤドカリなどは避けた方が無難です。また貝の仲間はチョウチョウウオが突いて捕食してしまうことがありますので、これもなるべく避けた方が無難といえる例です。

トゲチョウチョウウオの飼育まとめ

  • 雑食性でチョウチョウウオとしては比較的飼育しやすい
  • 性格は強めでほかのチョウチョウウオとの飼育は要注意
  • ろ過はしっかりしたものを選ぶ
  • 殺菌灯は出来れば設置したい
  • 病気予防のために水質の維持や水温の安定も重要
  • 比較的餌付きやすいが初期はアサリや冷凍餌から
  • 磯で採集することもできる
  • 購入するときは入荷してから時間がたったものがよい
  • ハゼやベラなど砂を掘り起こす魚との混泳は避ける
  • サンゴはもちろん貝類やケヤリムシ、カイメン、ホヤなどもNG

この記事にコメントをする

入力エリアすべてが必須項目です。メールアドレスが公開されることはありません。

内容をご確認の上、送信してください。

海水魚を探す
サンゴを探す
フリーワード検索
    もっと読む