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2020.12.09 (公開 2019.03.26) 餌・添加剤

海水魚にアサリを与える~チョウチョウウオやヤッコなど餌付きにくい魚に最適

アサリは日本近海に生息する二枚貝で、ヒトが食用にするほか、魚や甲殻類にとっても重要な食糧です。もちろん飼育している海水魚もアサリをよく食べます。とくにチョウチョウウオや小型ヤッコなどの、配合飼料に餌付きにくい面がある海水魚の最初の餌付けによく用いられます。今回は、アサリを海水魚の餌に与える方法をご紹介します。

アサリを海水魚に与える

▲アブラヤッコがアサリを食べる

アサリは日本沿岸に広く分布している軟体動物門・腹足綱・マルスダレガイ科の二枚貝です。蒸し物や味噌汁、佃煮など、大昔から人間が食用にしてきた貝ですが、昔からチョウチョウウオやヤッコなど、なかなか配合飼料を食べない魚の餌として使用されてきました。また、アサリのほかに餌付きにくい魚によい餌があったとしても、入手性がよくなく、なかなか購入できないものであれば意味がありません。その点アサリはスーパーマーケットにもよく並んでおり、入手性にも優れているといえます。

アサリを与えた方がよい魚

チョウチョウウオの仲間

▲トゲチョウチョウウオの幼魚がアサリを食べる様子

チョウチョウウオの仲間にはアサリを最初に与えるのが最適です。トゲチョウチョウウオ、チョウハン、アミチョウチョウウオ、フウライチョウチョウウオ、セグロチョウチョウウオ、ゲンロクダイなどの雑食性や底生小動物食のチョウチョウウオは最初からアサリを食べてくれる可能性が高く、徐々に切り替えていけば配合飼料にも餌付きやすいといえます。

逆に配合飼料に餌付きにくいのはポリプ食性のチョウチョウウオで、ウミヅキチョウチョウウオ、ミカドチョウチョウウオ、ミスジチョウチョウウオ、ヤスジチョウチョウウオなどです。ただしポリプ食性といっても、トノサマダイやウミヅキチョウチョウウオは(比較的)配合飼料にも餌付きやすく、ポリプ食性のチョウチョウウオの中では飼育しやすいといえますし、逆にクラカケチョウチョウウオやゴマチョウチョウウオ、チョウチョウウオ(ナミチョウ)などは雑食性のチョウチョウウオですが、温和で神経質な種類を餌付かせるのは難しいといえます。

配合飼料に餌付かせるのが特に難しいのはハナグロチョウチョウウオ、オウギチョウチョウウオ、ハクテンカタギの3種で、これらはあらゆるチョウチョウウオの中でも飼育がもっとも難しい種ともいえます。どうしても餌付かない場合はアサリだけで飼育していくしかありません。一方ハタタテダイやカスミチョウチョウウオなど、甲殻類やプランクトン食性の強いチョウチョウウオの仲間は餌付きやすく、種類によってはアサリでなく、そのまま配合飼料を食べる個体もいるようです。

ヤッコの仲間

餌のカイメンを食べるアブラヤッコ

▲アブラヤッコはなかなか配合飼料を食べてくれない。まずはアサリから

ヤッコの仲間で難しいのは小型ヤッコ(アブラヤッコ属)のアブラヤッコ、ソメワケヤッコ、ヘラルドコガネヤッコ、エイブルズエンゼル、ゴールデンエンゼルなどのケントロピーゲ亜属、シマヤッコ属(パラケントロピーゲ)などで、このほかキンチャクダイ属のチリメンヤッコなどもアサリでの餌付けからはじめた方がよい種といえます。これらはチョウチョウウオに比べて頑なに配合餌を拒むようなことは少ないといえますが、それでもアサリから配合飼料への移行は難しいものもいます。

このほか、どのヤッコにも共通していえることではありますが、マックスサイズに近い成魚の個体は餌付きにくいということがいえます。好奇心旺盛な小型個体のほうが餌付きやすいといえますが、あまりにも小さすぎるのは初心者には向きません。小型ヤッコの稚魚には頻繁な餌やりが必要だからです。

アサリの与え方

まずアサリを餌として与える前の注意として、アサリを魚に与える前に一旦冷凍しなければなりません。アサリは河川の河口や干潟などに生息し、有害な菌や寄生虫などがついている可能性もあるため、一旦冷凍してこれらを死滅させるようにします。

1.そのまま与える

▲包丁で殻を開いてそのまま与える

アサリを自然解凍して殻を開き、殻つきでそのまま与えます。これでもヤッコやチョウチョウウオの最初の餌付けには十分でしょう。

2.アサリをミンチにして与える

殻つきで与えてもよいのですが、冷凍したものを一旦解凍し、ミンチにして殻の中に戻して冷凍するのもよい方法です。与えるときはそのまま落としてあげればよいでしょう。

この方法のメリットは、ミンチにしたアサリを食べ残してしまっても残り餌を取り除きやすいこと、ほかの餌を混ぜることができて栄養の偏りがなくなることなどがあげられます。デメリットとしては殻つきのアサリをそのまま与えるよりも手間がかかること、アサリの身が散らばりやすいことなどです。

3.配合餌を混ぜる

ミンチにしたアサリにパウダー、もしくは粒状の配合飼料を混ぜて冷凍し、魚に食べさせるときに冷凍庫から取り出して与えます。このようにして徐々に配合飼料に慣らしていきます。配合飼料の種類としてはキョーリン「メガバイト」などのペレットフードがよいでしょう。私はこのほかにイカやエビのミンチを混ぜ合わせています。

4.添加剤を添加する

▲餌に添加するガーリックパワー

アサリを解凍して与えるときに添加剤を添加して与えるのもよいでしょう。ブライトウェルアクアティクス(マーフィード)の「エンジェリクサー」を添加すればアミノ酸やタンパク質をチョウチョウウオに届け、餌の嗜好性も高めます。同じブライトウェルから出ている「ガーリックパワー」を添加すればガーリックエキスの効果により餌の嗜好性を高め同時に魚の抵抗力も高めてくれるでしょう。

アサリを与えるデメリット

ビタミン破壊酵素

アサリにはビタミンを破壊する酵素が含まれており、多量に与え続けているとビタミンが欠乏して死んでしまうということがあったようです。しかし、アサリだけで長期飼育できているという例もありますので、過度に心配しなくてもよいでしょう。気になる場合はクビレズタ(ウミブドウ)などの海藻や、ほかの生餌も一緒に与えることをおすすめします。特に我が家のアブラヤッコは海藻も好んで食べてくれます。

水を汚す

▲食べ残しの餌は早いうちに水槽から出したい

▲アブラヤッコが残したアサリを食べるサラサエビ

アサリなどの貝の身に限らず、生の餌は腐敗してしまうと水を著しく汚してしまいます。ですから、食べ残しは腐る前に取り除いてあげるようにします。与える前にミンチにしたのであればスポイトで取り除くだけですので楽ですが、そのまま与えたのであればアサリの殻ごと水槽から取り除くようにします。腐敗するのを防ぐのには、甲殻類に食べ残しを食べてもらうのもよい方法です。

魚の体表などにつく寄生虫を食べるクリーナーとして有名な「スカンク」ことアカシマシラヒゲエビなどは残り餌も食べてくれるのでヤッコなどとの飼育に最適です。ただこの手のエビは白点病を食べるということはないので注意が必要です。このほかゴンベの仲間など、脱皮直後のエビを襲って食べてしまうような魚もいますので注意しましょう。

アサリ以外の生餌

アサリの他にもチョウチョウウオやヤッコなどの餌付けに使うことができる餌をいくつかご紹介します。

イカ

イカもアサリと同じく軟体動物門の生物です。我が家の魚ではウツボなどが好んで捕食します。成魚に与えるときは小さく切って与え、チョウチョウウオやヤッコに与えるときにはミンチにしてあたえます。。ただしアサリほどエキスが出ず、食いが悪いことがあります。そのようなときはアサリと一緒に与えるようにします。

エビ

食用甲殻類であるエビは色々な魚の餌になります。ヤッコやチョウチョウウオなどは元気なスカンクシュリンプを襲うことはあまりないのですが、弱ったものや死んでしまったエビなどは好物です。各地のスーパーなどで販売されているため入手は極めて容易です。

なお、エビと姿形が似ているものにはエビの仲間ではない生物がいます。例えばクリルはオキアミのことで、エビとは別の種です。チョウチョウウオやヤッコなどにクリルを与えすぎると体調が悪くなることもあり、注意が必要です。ホワイトシュリンプというものは「シュリンプ」、つまり「エビ」と名前についていてもエビではなく、イサザアミのことです。

イワシミンチ

我が国ではマイワシ、カタクチイワシ、ウルメイワシ、キビナゴなどイワシの仲間が分布しています。そのまま1匹を大型魚に与えるほか、イワシの肉をミンチにして小魚の餌にすることもできます。

イワシを与えるメリットとしては安価でどこでも入手できること、青魚ですので魚の成長に必須な脂肪酸が多く含まれているところですが、こればかり食べていると栄養が偏る可能性があり、さらに致命的な欠点として水槽の水を汚してしまうことがあります。

冷凍ホワイトシュリンプ

先ほども述べたように「シュリンプ」と名前についていてもエビの仲間ではなく、微小な甲殻類の一種であるイサザアミの仲間です。アサリをミンチにしてその中に混ぜ合わせることもできます。なお、冷凍ホワイトシュリンプについては以下の記事も参照してください。

冷凍ブラインシュリンプ

ブラインシュリンプ(アルテミア)の耐久卵を孵化させ、大きく育てたものを冷凍したものです。ブラインシュリンプは栄養的に欠陥があるとされていますが、近年販売されている冷凍ブラインシュリンプの中にはDHAやEPAなどの脂肪酸やビタミン類を添加したものもあります。ホワイトシュリンプと同様にアサリミンチの中に混ぜ合わせるのもよいでしょう。

まとめ

  • ヒトの食料としてもよく知られる二枚貝
  • スーパーマーケットなどでもよく販売されており入手しやすい
  • チョウチョウウオやヤッコの餌付けに最適
  • まずアサリを給餌する前に必ず一度冷凍する
  • 解凍して殻を開いてそのまま水槽へ入れる
  • 次にアサリをミンチにしその中に配合飼料を混ぜる
  • 添加剤を加えてもよい
  • アサリにはビタミンを破壊してしまう酵素が含まれるので欠乏に注意
  • 食べ残しは必ずとりのぞくこと
  • エビなどを入れておくと食べ残しを食べてくれる
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