2020.09.25 (公開 2018.06.22) 餌・添加剤
冷凍コペポーダを魚に与える~購入・与え方・保存の注意点
コペポーダは動物プランクトンの一種で、口が小さい魚や稚魚、陰日性のサンゴに最適な餌のひとつです。このコペポーダを冷凍したものが各地の観賞魚店で販売されています。
コペポーダを魚やサンゴに給餌する際に必要な注意点やポイントをご紹介します。
コペポーダって何?
▲コペポーダを拡大したもの。目盛は1mm
コペポーダは「カイアシ類」または「ケンミジンコ」と呼ばれる、海中を浮遊するプランクトンの一種です。エビやカニと同じ甲殻類の一種です。海中の食物連鎖ピラミッドの中では低い位置にあり、小型の海水魚や海水魚の稚魚、やや大きめの浮遊生物にいい餌となります。
コペポーダを与えたい生物
ヨウジウオなどの仲間
ヨウジウオやヘコアユは口が細いため、大きな配合飼料を食べることができません。このような魚にとってコペポーダは主食となりうる重要な餌です。
ヨウジウオの仲間は、海藻水槽などで飼育し自然に発生したプランクトンを捕食させるアクアリストもいますがこれはおすすめできません。これらの魚は意外と大食いで、それだけでは足りないからです。できるだけ毎日与えたいところですが、コペポーダは水を汚しますのでろ過もしっかりしたものを使用するべきです。
ピグミーゴビー
イソハゼ属やベニハゼ属、シマイソハゼ属の魚などの極小サイズのハゼの仲間です。この仲間もプランクトンは大好物です。
ただしこれらの魚のうち、大きめの種類は配合飼料もよく食べます。配合飼料を食べられそうなサイズであれば「メガバイトレッド」などの配合飼料を指ですりつぶして与えるのもよいでしょう。
チンアナゴの仲間
砂の中に体を埋め、水流にのって流れてくるプランクトンを餌とするチンアナゴの仲間にもおすすめの餌です。
餌を多く必要としますが、大量にプランクトンを与えると水を汚しやすいので注意します。なお、チンアナゴは静かな環境で飼育すると配合飼料も食べるようになります。
小型ヤッコ
コペポーダなどの冷凍餌は、小型ヤッコの餌付けにも使うことができます。小型ヤッコは配合飼料を最初から食べてくれるとは限らないためです。
ただし小型ヤッコにとってはコペポーダだけでは栄養不足になってしまうようで、いずれ配合飼料も食べさせなければなりません。コペポーダだけでなく、配合飼料も並行して与えるようにしたいものです。
またコペポーダは栄養的にすぐれており、DHAやEPAといった不飽和脂肪酸を多く含んでいます。幼魚にも成魚にも最適ですが、ある程度大きめの口をもつ魚でしたら、冷凍のホワイトシュリンプの方がよいかもしれません。
捕食性のサンゴ
▲陰日性サンゴの餌としても最適
イボヤギやトゲトサカなど、光からエネルギーを得ないサンゴ、いわゆる陰日性サンゴの餌としても適しています。また光からも餌からもエネルギーを得るサンゴ、たとえばヘアリーディスク、マメスナギンチャク、イエローポリプなどのイソギンチャクに近いソフトコーラルやキクメイシ、オオトゲサンゴの類、ウィスカーズコーラル、キッカサンゴなどにも与えると成長が期待できます。
与えるときには水流を止めスポイトでサンゴに吹きかけるように与えます。そうしないと水を汚すおそれがあるからです。
主なコペポーダ飼料
▲キョーリンから販売されている「クリーンコペポーダ」
日本では主にキョーリンから販売されている「クリーンコペポーダ」や、ベンリーパック食品の「冷凍コペポーダ」、デルフィスから出ている「バイタルコペ」などの商品があります。主に中国や台湾、欧州近海などで採集されたコペポーダを紫外線で殺菌してパッケージングしたものです。そのため病原菌などを持ちこむリスクも低いといえます。
容器
キョーリンの「クリーンコペポーダ」は小さなキューブ状の容器に入っており、冷凍された状態のまま容器に入れたりして使用します。デルフィスの「バイタルコペ」はスポイト状の容器に入っており、給餌の際にはスポイトの下端をカットして給餌します。
冷凍以外のコペポーダ飼料
▲BCUKアクアティクスから販売されているカラヌスペレット
海外メーカーの中には冷凍ではなく常温のコペポーダ飼料も販売されています。これらの商品は冷凍しなくてもよいのがメリットといえます。
D.ヴァンホーテンから「オーシャンプライム コペポーダ」というユニークな商品が販売されています。ほとんどのコペポーダは冷凍された状態で販売されますが、この商品は常温で販売されます。無菌の海水で洗浄されてパッキングされており、そのまま給餌可能です。開封後は冷蔵保存すれば1週間ほど、冷凍すれば3か月ほど使用可能です。ただ量はそこそこあるので、一度に使い切るのが難しく、結局その後冷凍することが多いかもしれません。また冷凍コペポーダと比べやや高めなのもデメリットといえます。
BCUKアクアティクス製の「カラヌスペレット」「カラヌスフレーク」「カラヌスフリーズドライ」「カラヌスパウダー」という4つの商品がLSS研究所より販売されています。「フリーズドライ」はコペポーダをフリーズドライしたもの、「ペレット」は沈降性の餌、「フレーク」は文字通りのフレークフード、「パウダー」は微細な餌でごく小さな魚や捕食性ソフトコーラルなどにも使用できます。
コペポーダを通信販売で購入する注意点
通信販売でコペポーダを購入するときには注意点があります。それは生きものや器具との同梱は不可ということです。
コペポーダはほとんど冷凍された状態で販売されており、クール便を使用する必要があるからです。ですから、ヨウジウオなどを購入して冷凍コペポーダも一緒に…というわけにはいきません。乾燥コペポーダ、もしくはオーシャンプライムを同梱してもらうか、別便で送ってもらうことになります。
コペポーダの与え方
コペポーダのブロックのまま水槽に入れて餌を与えるというのは、あまり賢い方法とはいえません。コペポーダが水の中にちらばり、餌のロスが大きかったり、水を汚してしまうおそれがあります。
適当な大きさの容器を用意します。100円ショップで販売されている小型のビーカーなどでよいでしょう。
容器にコペポーダを入れます。キョーリンの「クリーンコペポーダ」ならば直接コペポーダに触れることがなく衛生の面ではほかのコペポーダよりも優れています。
シート状で販売されているものであれば、冷凍状態のまま端の部分を折って使いましょう。いずれの商品も入れ終わったら速やかに冷凍庫に戻すようにします。
コペポーダを入れた容器に水槽の海水を入れ、コペポーダを解凍します。
容器を回したりしてコペポーダを溶かします。この時に添加剤を入れるのもよいでしょう。今回はブライトウェルの「ガーリックパワー」を添加しています。ガーリックパワーは栄養強化、魚の免疫力向上に効果があるようです。
いよいよ給餌となりますが、オーバーフロー水槽であれば給餌前に循環ポンプを停止させます。ろ過槽に落ちてしまうともったいないです。ただし外掛け式や外部式フィルターを給餌中にストップさせるのは面倒くさいですので、停止させないほうがよいでしょう。
スポイトを使用して餌を与えます。魚やサンゴの目の前に落として直接与えてもよし、水流ポンプやろ過槽からの流れに乗せて与えるのもよしです。ただし水流に乗せてコペポーダを与えると散らばりやすく水を汚してしまうおそれがあるので注意が必要です。
オーバーフロー水槽で給餌前に循環ポンプを停止させたのであれば、給餌後必ずポンプの電源を再始動させなければなりません。これを怠ると魚やサンゴは全滅してしまうこともあります。
コペポーダの保管方法
▲冷凍庫で保管する
コペポーダもホワイトシュリンプなどほかの冷凍餌と同様に冷凍庫で保管する必要があります。一度開封してしまったものは劣化がすすんでしまうため、早めに使い切るようにします。とくにシートの状態で販売されているものは注意が必要です。
なお解凍したコペポーダは再度冷凍保存しないほうがよいとされています。これは劣化して水槽の水を汚しやすくなるためです。
冷凍コペポーダ メリットとデメリット
メリット
- 口が小さい魚に適している
- 食いつきがよい
- 栄養価が高い
- UV殺菌されているものが多く、病原菌を持ちこまない
デメリット
- 冷凍庫で保管する必要がある
- 口が大きい魚には食べにくい
- 水を汚しやすい
- 通販では生体との同梱不可
コペポーダまとめ
- ケンミジンコとも呼ばれ、食物連鎖ピラミッドの低い位置にある
- ヨウジウオやチンアナゴ、小型ハゼなどプランクトン食の魚に最適
- 陰日性サンゴなどの餌としても最適
- 大きな口をもつ魚はホワイトシュリンプの方が適していることも
- 冷凍のほか乾燥や洗浄されたコペポーダも市販されている
- 水を汚さないように直接スポイトで給餌するとよい
- オーバーフローの循環ポンプを止めるときは必ず再始動させる
- 必ず冷凍庫で保管する
- 解凍したコペポーダは再度冷凍保存しないほうがよい