2020.06.15 (公開 2020.06.15) メンテナンス
KH (炭酸塩硬度)とは?海水魚・サンゴ飼育に重要な数値について
KHは炭酸塩硬度ともいわれているもので、海水魚やサンゴを飼育する上で重要な数値です。魚やサンゴを飼育しているときはpHの維持やバッファー剤として重要で、炭酸塩はカルシウムと結合することによりサンゴの骨格形成に重要な成分です。今回はこのKHの役割と上昇・安定させる方法をご紹介します。
KH(炭酸塩硬度)とは
KHは炭酸塩硬度、もしくはアルカリ度ともいいます。ただし、これはアクアリウム関係のみで使われるもののようです。本来、炭酸塩硬度やアルカリ度はそれぞれ異なるものなのですが、海水魚水槽では同じようなものとして考えられていますので、ここでもそのように使用します。注意すべき点としては、単位には「dKH」や「meq/l」を使用するので、それぞれの単位が混同しないように注意しなければなりません。
KHの数値がなぜ重要なのか
pHとの関係
▲海水魚の場合pHは8.1~8.5くらいがよい
KHはpHと深い関係があります。KHは緩衝の役目をしており、pHの数値変動を緩やかにする効果があります。当然ながらpHの変動が大きすぎると魚やサンゴにストレスになりますので、できるだけ一定の値になるようにしたいところです。KHを上昇させることをうたう添加剤は「バッファー剤」ともよばれています。添加剤メーカー(ブライトウェルアクアティクス)によれば大体7~12dKH(2.5~4.3meq/L)の間でアルカリ度を維持するのがpHを希望の範囲にとどめておくポイントとされます。
サンゴに吸収される
▲ミドリイシを飼育するならKHの値にも気を付ける
炭酸塩とカルシウムを結合させたアラゴナイトはサンゴの骨格の90%を占めるというデータもあります。造礁サンゴの骨格にも使用されているので、ハードコーラル、とくにミドリイシを飼育するのであればKHは非常に重要なものになっています。低すぎるのも高すぎるのもよくありません。カルシウムリアクターを使ったり、レッドシーやブライトウェルアクアティクスから出ている添加剤を使用してKHを保つ必要があります。とくにミドリイシはKHが低すぎると白化してしまいます。なお、レッドシーが展開する「リーフケアレシピ」によればミックスドリーフ(ソフト&ミドリイシ以外のハードコーラル)であれば11.5dKH、SPSドミナント(一般的なベルリンシステムでのSPSの飼育)であれば8dKH、超低栄養塩システムであれば7dKH(ゼオビットでは6.5~7.5dKH)、魚のみの水槽であれば同じく7dKHというのが理想です。ただし、数値に振り回されるのではなく、サンゴや魚の様子を見ながら調節していきましょう。
KHを計測する方法
KHを計測するのであればレッドシーやセラから出ている専用のテストキットがおすすめです。レッドシーから出ているpH/アルカリニティはKHの数値だけでなくpHを計測することもできます。とくに先述のようにpHとKHの数値は密接にかかわっているため、両方をはかることができるのでとてもよい製品といえます。またより正確に計測するなら同じくレッドシーから出ている「KH/アルカリニティ」を使えばより正確に計測することができます。
KHを上昇・安定させる
KHを上昇・安定させるのには一般的に以下のような方法があります。
水かえする
一番簡単な方法は水をかえることです。水かえはただ単に古くなり硝酸塩・リン酸塩・ケイ酸塩が多く含まれる海水を、これらの少ない新しい水とかえる、というだけのことではなく、人工海水に含まれる成分を再構築するという目的もあります。もちろんKHやpHのバランスを再構築する、というのもその中に含まれています。
添加剤を使用する
▲アルカリン8.3(ブライトウェルアクアティクス)
KHを上昇させる簡単な方法は、添加剤を使用することです。よく知られた商品でいればブライトウェルアクアティクス(マーフィード)の「アルカリン8.3」、レッドシーの「リーフケアプログラム ファンデーションB」、国産品もデルフィスの「ライブシー バッファーペーハーアルカリ」などがあります。もちろん添加剤を使用する場合は、説明書をよく読み、添加すべき量をしっかり計り、入れすぎないように注意しなければなりません。とくにリーフケアプログラムのものは正確に測ることが望ましいです。なおリーフケアプログラム専用のテストキットも市販されていますので、使用してみるとよいでしょう。
添加剤には液体状のものとパウダー状のものがあります。ブライトウェルアクアティクスのアルカリン8.3は液体状のものですが、デルフィスのものはパウダー状のみです。レッドシーのものは液体状とパウダー状のものがあります。なお、アルカリン8.3についても姉妹品としてパウダー状の「アルカリン8.3-p」と呼ばれるものが海外で販売されていますが、日本では並行輸入しか手に入れることはできません。もちろん説明も日本語のものではなく、ヘタに使うと崩壊のおそれもあります。
カルシウムリアクターを使用する
▲グローテックのカルシウムリアクター
カルシウムリアクターは名前に「カルシウム」とついていることからもわかるように、カルシウムを水槽に供給するものと思われがちですが、サンゴの飼育に必要で、サンゴに吸収されやすいKHを維持するという意味合いも強いです。カルシウムリアクターの仕組みとしてはアラゴナイトなどを筒の中に入れ、それを二酸化炭素で溶かし、溶け出した水を水槽に供給するというものです。ミドリイシの飼育においてはカルシウムリアクターが登場して飼育しやすくなったといえ、かつては必需品とまでいわれていたこともありました。
ただし近年は添加剤の質が上がったり、添加方法の理解がすすみ、その一方でカルシウムリアクターについては別途二酸化炭素のボンベが必要であるなどの理由でリアクターを使用せずに、添加剤だけでKHを上昇させているアクアリストも多いようです。ただしその場合もKHやpHはしっかり計測しながら添加しなければなりません。
KHまとめ
- 炭酸塩硬度ともよばれ、海水魚やサンゴにとって重要な値
- pHの値の変動が緩やかになる
- 炭酸塩がサンゴに吸収され、骨格の素材になる
- 魚中心、低栄養塩システムなら7dKH前後が理想
- ゼオビットでは6.5~7.5dKHが理想
- SPSでは8dKHが理想
- LPSやソフトコーラルの「ミックスドリーフ」では11.5dKHが理想
- 専用のテストキットでKHを測定できる
- 添加剤やカルシウムリアクターを使用してKHを調整する