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2020.09.25 (公開 2019.08.28) 海水魚図鑑

スズメダイ同士の混泳を考える~隔離・パワーバランス・水槽サイズなど

スズメダイはその派手な色彩からチョウチョウウオやヤッコ、ハギ(ニザダイ)とならび、アクアリストに古くから親しまれてきた魚といえます。カラフルで人気で、色も青や黄色、そのツートーンカラーなどいろいろいますが、中には成長すると色が変わってしまうようなものも多いのです。そして、色が変わってしまうだけならまだマシなのですが、スズメダイの中には凶暴化してしまう種類も存在します。今回はスズメダイの仲間同士の混泳を行う際、どのようなところに注意するべきかまとめました。

※この記事につきましては主に筆者の経験をもとに執筆していますが、混泳の是非については魚種ごとの大まかな性格、水槽の大きさや混泳相手だけでなく、魚それぞれの性格もかかわってきます。そのため、「混泳はこうすれば100%安全!」という組み合わせはありませんので、ご留意ください。

スズメダイの仲間の特徴

スズメダイは鮮やかな青や黄色など、カラフルな色彩をしたものが多くいます(ただし幼魚のみ綺麗な色で成魚になると地味な色彩になってしまうようなものもいます)。小さくてカラフルであり、かつ丈夫で飼育しやすく、安価なため、水槽にたくさん入れたくなるものですが、性格はかなりきつく、混泳には注意が必要です。

なお、スズメダイの仲間の詳細についてはこちらをご覧ください。

パワーバランスを理解しよう

スズメダイの仲間は性格がとてもきついものと、逆に温和なものがいます。これらのパワーバランスを理解することによって、うまくスズメダイを混泳させることができるかもしれません。

性格がきついスズメダイ

▲ヒレナガスズメダイの幼魚

▲ヒレナガスズメダイの成魚。同じ種とは思えないほど色や模様が変わる

▲クロスズメダイ幼魚

▲クロスズメダイの未成魚。この後大きくなると完全に紺色の体色になる

スズメダイの仲間は性格が非常にきついものがいるので、気をつけなければなりません。特にきつのはミツボシクロスズメダイ、クロスズメダイ、ヒレナガスズメダイ、デビルダムゼル、シマスズメダイ、ミヤコキセンスズメダイなどで、これらは狭い水槽では必ず「暴君」となってしまいます

とくに幼魚が綺麗なクロスズメダイやヒレナガスズメダイは初心者アクアリストが購入してしまいがちですが、これらは成魚になると黒や茶色などの褐色系に変化していくだけでなく、非常にキツい性格になりますので、大型水槽以外では飼育しない方がよいでしょう。ただ、そのようなスズメダイも幼魚のうちは臆病な性格をしているものもおり、幼魚のうちからほかの大きな魚と混泳させるといじめられるおそれもあるので注意が必要です。

比較的温和なスズメダイ

▲クロオビスズメダイは比較的温和

温和なスズメダイは、スズメダイ属のデバスズメダイ、コビトスズメダイ、ヒメスズメダイ、クロオビスズメダイなどです。これらの種類はスズメダイ科としてはフレンドリーで多くの魚との混泳を楽しむことができます。ただし同じスズメダイ属の魚であってもアマミスズメダイやキオスズメダイ(サンシャインクロミス)といった魚は大型に成長し、性格もややきつくなるので注意が必要です。

ほかにオキナワスズメダイ属やヤノリボンスズメダイといった種も比較的温和な性格をしており、ほかの魚との混泳に適しています。

スズメダイ混泳テクニック

まずお店の水槽では…

▲複数種のスズメダイが飼育されている観賞魚店の水槽

観賞魚店では同じ水槽で複数のスズメダイが飼育されていることがあります。ですが、この光景を家庭の水槽で再現するのは難しいです。観賞魚店ではスズメダイが弱ったら他の水槽へ移すなんていうことも簡単にできますが、家庭の水槽ではそうはいきません。そのため、自宅の水槽でスズメダイの混泳は難しくなってしまいます。また、観賞魚店のスズメダイ水槽でも、水槽の底の方や岩の下などを見てみるとスズメダイの仲間の遺骸がある、ということもあります。つつかれた魚が傷をおいそこから感染症にかかり死んでしまい、その遺骸をほかのスズメダイがつついて突いたスズメダイも感染症にかかってしまう…ということが起こりうるので、スズメダイの遺骸をほったらかしにしているようなお店の水槽では購入しない方が無難かもしれません。

大型水槽で飼育する

家庭でスズメダイの仲間を複数種混泳するのであれば、小さくても60cm、できれば90cm以上の水槽が欲しいところです。狭い水槽ではスズメダイが縄張りをつくれず、ライバルの姿が常に見えるようになり、激しく争うことになります。逆に小さな水槽に多数入れれば縄張りをつくろうにもつくれなくなるためよい、という考えもあるのですが、家庭の小型水槽では現実的ではありません。大量に入れてしまうとろ過が追い付かなくなり、急に水質が悪化するおそれもあるからです。大型水槽で、しっかりしたろ過装置(上部ろ過槽もしくはオーバーフロー水槽)を使用して飼育するようにしましょう。

スズメダイより大きめの魚を一緒に入れる

▲大型ヤッコやハギとの混泳でも動じないヨスジリュウキュウスズメダイ

スズメダイよりも大きくて強い魚を入れる方法です。ヤッコの仲間やニザダイなどを混泳している大型水槽にスズメダイの仲間を入れるというもの。

スズメダイとの混泳に最適な魚は中型~大型ヤッコ、ハギの仲間です。これらの魚はかなり強めの性格をしているものの、スズメダイを捕食したりすることがないのでおすすめです。一方ハタの仲間、ウツボの仲間、モンガラカワハギ、サメ、エイ、ナポレオンなどはスズメダイをバリバリ食べてしまうことがありますので一緒にいれないようにします。またハギの仲間であっても頭部に大きなツノ状突起があるテングハギの仲間は大きく成長し遊泳性も強いため家庭の水槽では飼育しにくいので注意が必要です。家庭水槽ではナンヨウハギなど(ニザダイの仲間としては)やや小型の種が適しているでしょう。

この方法の欠点は大きな水槽が必要になることです。大型ヤッコは90cmではやや厳しく、小さくても120cmくらいの水槽で飼育するようにしましょう。

なお、スズメダイの仲間はほとんどの種がサンゴに無害です。ただしアツクチスズメダイという種はサンゴを食べるので注意が必要です。ほかスカンクシュリンプやホワイトソックスといった大きめのクリーナーシュリンプとは混泳可能なことが多いですがサイズ差が大きいようではいけません。

隔離ケースを使用する

▲巨大な「ビックフィッシュハウス」。隔離に最適

ほかのスズメダイが飼育されている水槽で隔離ケースを浮かべます。透明な隔離ケースの中に新入りのスズメダイを入れてお見合いさせたり、あるいは以前から飼育しているスズメダイを入れて新入りのスズメダイを慣れさせたり、争いがおさまらないときに強い方もしくは弱い方を隔離したりします。

ただし隔離ケースは長期間の隔離にはあまり適していませんので注意が必要です。使うのであれば定期的に隔離ケースの底にたまった排せつ物やデトリタスなどは定期的に取り除いてあげましょう。

隔離ケースはさまざまなメーカーから販売されていますが非常に大きくて水槽に浮くしかけがついている「ビックフィッシュハウス」(アズージャパン)などが適しています。このケースは非常に大きく、小型水槽では使えないのですが、そもそも小型水槽ではスズメダイの混泳は難しいのです。円筒形の隔離ケースはスズメダイにとっては狭くて泳ぎにくいため、水槽での隔離はあまりおすすめできません。採集してバケツの中に入れて隔離するであれば円筒形のものがよく、逆にビックフィッシュハウスではそのような用途では使用できません。このように隔離ケースも用途によって使い分ける必要があります。

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仕切り板を使用する

▲90cm水槽を仕切って魚を飼育する

水槽を二つに分ける「仕切り板」も観賞魚の混泳ではよく使われています。これは水槽の中央に仕切り板を置き、左右で魚を飼育するというものです。争う魚を隔離するときに使うほか、いっしょに泳がせたい魚の相性などを見るための「お見合い」にも使います。

ただし仕切り板を水槽に置くと水の流れが悪くなりますので水流ポンプをうまく使用し、水槽によどみをつくらないようにしたいものです。また仕切り板も隔離ケースと同様にコケがはえたりデトリタスがたまったりすることがあるので、定期的に洗浄するようにしたいものです。

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スズメダイ混泳まとめ

  • スズメダイはきれいで飼いやすいが性格がきつく混泳が難しいものも
  • クロスズメダイ、ヒレナガスズメダイ、ミツボシクロスズメダイなどはかなり性格がきつい
  • スズメダイ属の小型種やオキナワスズメダイなどは比較的温和
  • お店の水槽でのスズメダイ群泳には理由がある
  • 大型水槽で大型ヤッコなどとの混泳もおすすめ
  • 隔離ケースや仕切り板で隔離する方法も
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