体に縦縞のあるテンジクダイの仲間の見分け方(同定)

テンジクダイの仲間も最近は観賞魚として人気がありますが、種類が多く同定も難しいものも多くいます。また、体に縞模様があるテンジクダイの仲間は磯や防波堤でよく釣れるのですが、種の同定が難しいものもおり、複数種が混同されているようです。とくに伊豆諸島、四国沿岸、琉球列島などではさまざまな種類のテンジクダイが見られ、体に縞模様があるものだけでも10種ほどいるようです。今回は体に縞模様があるテンジクダイの見分け方をご紹介します。

魚の縞模様(縦帯・横帯)について

▲魚の縞模様

まず、縦縞模様のテンジクダイについて語る前に、魚の体側にある縞模様について説明します。これは体の軸を垂直にした時の視点でいうもので、わかりやすくいえば、イシダイなど魚の背部から腹部にかけて入る縞模様は横帯(横縞)になり、キンセンイシモチやオオスジイシモチなど、魚の頭部から尾部に入る縞模様は縦帯(縦縞)ということになります。なお、以下の項目の「体側にある縦帯の数」は背鰭基部付近にあるものも含めます。画像の中の数字は、背鰭基部付近にあるものを含めた縦帯の数です。

縞模様のあるテンジクダイたち

キンセンイシモチ

学名:Ostorhinchus wassinki (Bleeker, 1861)

▲キンセンイシモチ

観賞魚店でも、四国や九州、沖縄の釣りでもおなじみのキンセンイシモチです。キンセンイシモチは従来、頭部から腹方の横帯が銀色っぽい斑点列状になるタイプ(ドット型)と、直線状になるタイプ(ライン型)に分けられましたが、現在は前者がスジオテンジクダイ、後者がキンセンイシモチと呼ばれています(ただしスジオテンジクダイは学名が確定していない)。また、スジオテンジクダイは第4縦帯が尾鰭後縁にまで達するのも特徴です。

コスジイシモチなどに似ているのですが、キンセンイシモチの尾鰭の付け根には黒色斑がないのが特徴です。尾鰭の付け根に赤色斑があるのはアカホシキンセンイシモチOstorhinchus rubrimaculaという別種になっています。琉球列島から西太平洋に広く分布しています。

キンセンイシモチの飼育方法についてはこちらをご参照ください。

オオスジイシモチ

学名:Ostorhinchus doederleini (Jordan and Snyder, 1901)

▲沖縄県で採集したオオスジイシモチ。5本の黒色縦帯が特徴

オオスジイシモチは房総半島~琉球列島までの岩礁やサンゴ礁で見られる普通種(ただし沖縄では多くない)です。また数は少ないものの日本海岸にも分布しており、タイプ標本の産地は長崎県です。海外では西太平洋からオーストラリア沿岸に分布しています。この種の体側には背鰭基底のものを含めて5本の縦帯があります。また尾鰭基部に明瞭な黒色斑があるのも特徴です。コスジイシモチに似ていますが黒色縦線の数は少ないので容易に見分けられます。本州~九州の防波堤で釣れる、縞模様のあるテンジクダイといえば、この種がもっとも多いでしょう。

コスジイシモチ

学名:Ostorhinchus schlegeli (Bleeker, 1855)

▲三重県で釣れたコスジイシモチ

コスジイシモチはオオスジイシモチ同様温帯域に多い種で、分布は千葉県館山・兵庫県香住~琉球列島、伊豆―小笠原諸島ですが、琉球列島では少ないです。体側にはオオスジイシモチよりも多い7本の帯があり、結構カラフルです。キンセンイシモチにも似ていますが、尾の付け根に大きな黒色斑があることにより見分けられます。やや深所にすむとされますが、水深2~3mの場所でも釣れることがあります。また船釣りではカワハギ釣りの外道としてもお馴染みです。ただ浅場では数はあまり多くはないようです。

なお、本種の学名はApogon endekataeniaもしくはOstorhinchus endekataeniaとされることも多いのですが、どうやらこの種とは別種で、Ostorhinchus schlegeliの学名があてられるべきとされます。O. endekataeniaは東南アジア沿岸やタイランド湾などに生息します。

ヤクシマダテイシモチ

学名:Ostorhinchus chrysotaenia (Bleeker, 1851)

▲ヤクシマダテイシモチ(右)

日本においては2004年ごろから写真記録がありましたが、2019年にようやく日本初記録として報告された種です。体側には茶褐色の縦帯が多数あり、尾鰭付け根の暗色斑も不明瞭であるなどの特徴はキンセンイシモチにも見えますが、縦帯はやや不明瞭なこともあり、さらに第2背鰭が大きいことによっても同属他種と容易に見分けられます。

ヤクシマダテイシモチについてはこちらもご覧ください。

スジイシモチ

学名:Ostorhinchus cookii (Macleay, 1881)

▲喜界島で採集したスジイシモチ

スジイシモチはインド-西太平洋のサンゴ礁域に広く分布し、日本では千葉県以南の太平洋岸、長崎県、琉球列島、小笠原諸島に分布しますが、やや南方系で本州ではミスジテンジクダイの方が多いような気がします。オオスジイシモチに比べて縦帯の数は多く6本ある(写真では6番目の縦線が分かりにくい)ことで見分けられ、ミスジテンジクダイとは黒色斑が明瞭であること、3番目の縦帯は長く伸びることで見分けられます。喜界島では大きな潮溜まりで普通に見られる種類です。性格は概ねややきつめです。

ミスジテンジクダイ

学名:Ostorhinchus taeniophorus (Regan, 1908)

▲ミスジテンジクダイ成魚

▲ミスジテンジクダイ幼魚。上の個体と同一個体

ミスジテンジクダイはインド-中央太平洋に分布し、スジイシモチ同様に日本では千葉県以南の太平洋岸、長崎、小笠原諸島、琉球列島に広く分布しています。本州~九州沿岸では本種の方が多いかもしれません。体側には6本の縦帯がありスジイシモチに似ていますが、スジイシモチの第3番目の縦帯は長く伸びるのに対し、ミスジテンジクダイでは鰓蓋までしか達しません。また4番目の縦帯末端は黒色斑状になりますが、スジイシモチほど明瞭ではないです。写真の個体は頭部、とくに下顎が黄色っぽくなっていますが、スジイシモチでも同様の色彩になることがあるため、注意が必要です。なお、4番目の黒色帯後方が尾鰭後端にまで達するのはミスジテンジクダイL型、とよばれ別種とされます。今後の研究がまたれます。

性格はややきつめで、同じくらいのサイズのキンセンイシモチを攻撃することもありました。ほかのテンジクダイとの混泳は注意が必要ですが、温和なスズメダイや小型のベラなどとの混泳は問題ありません。

ミナミフトスジイシモチ

学名:Ostorhinchus nigrofasciatus (Lachner, 1953)

▲沖縄県で採集したミナミフトスジイシモチ

ミナミフトスジイシモチはインド-太平洋、紅海に生息するテンジクダイの仲間です。日本では静岡県以南に分布していますが本州では稀で琉球列島以南に多い種です。本種の特徴は名前の通り体側の縦帯が太いこと、尾鰭の基部に明瞭な斑紋がないことなどです。また口の部分はスジイシモチなどよりもややとがった感じです。

本種の特徴的なところは、体側にある白色線が黄色くなることがある、というところです。ゴンズイなどへの擬態でしょうか。全長8cmに達し動物食性が強く、沖縄では夜釣りなどで出会う機会が多い種です。飼育はほかの熱帯性スジイシモチ属と同様と思われますが、飼育経験はありません。

タスジイシモチ

学名:Ostorhinchus novemfasciatus (Cuvier, 1828)

▲タスジイシモチ

タスジイシモチは紀伊半島や高知県からの記録もありますが、個体数は少なく、奄美大島以南の琉球列島で見られる種です。体には背鰭基部と腹部を含め5本の縦帯がありますが、3本目の縦帯が尾鰭の後端にまで達し、第2・第4番目の縦帯も尾鰭に達するのが特徴ですまた、第3番目の縦帯は幅が一定ではなく、幅が広い部分があることが多いです。吻部はスジイシモチなどよりもシャープな感じです。全長10cm弱と小型種でその分性格もおとなしめで、混泳には注意が必要です。ただ口に入るような魚は食べてしまうことがあります。

ヒラテンジクダイ

学名:Ostorhinchus compressus (Smith and Radcliffe, 1911)

ヒラテンジクダイは鰓蓋上方の縦線が短い(その上の線とY字状につながることが多い)のと、青く光る眼が特徴的なテンジクダイの仲間です。小さいうちは尾鰭の付け根が黄色くなり、飼育してみたくなる魅力的な種ではありますが、奄美大島以南に分布する種で本州~九州で採集することはできません。沖縄本島では夜釣りで容易に採集できますが、全長10cmほどの大型個体が多いです。幼魚は観賞魚としてフィリピンから入ってくることもあります。英名ではBlue-eye cardinalfishとよばれ、青く輝く眼に因むようです。

ネンブツダイ

学名:Ostorhinchus semilineatus (Temminck and Schlegel, 1842)

▲伊豆大島で釣れたネンブツダイ

本州~九州の釣りではお馴染みの種です。クロホシイシモチとはよく混同されていますが、本種は体側の背部、そして眼を通る帯があるためクロホシイシモチとは容易に見分けられます。ただし、眼を通る帯は鰓蓋にまでしか達しません。東北地方では局所的で、山形県・千葉県~九州までの各地沿岸で見られ、とくに関東以南の太平洋岸に多い種です。琉球列島では慶良間諸島などでいますが少ないようで、温帯に適応しているといえます。海外ではフィリピンやインドネシア、オーストラリアなどに生息しているようです。ただ高水温には注意が必要です。

ネンブツダイの飼育方法についてはこちらをご覧ください。

テッポウイシモチ

学名:Ostorhinchus kiensis (Jordan and Snyder, 1901)

▲愛媛県で採集したテッポウイシモチ

テッポウイシモチはネンブツダイに似ていますが、眼を通る帯が鰓蓋の後方を通り尾鰭にまで達するのが特徴です。浅瀬では極めてまれな種で、多くは水深50~70mの海底をひく底曳網で漁獲されています(写真の個体も底曳網で獲れたもの)。分布域は千葉県小湊・島根県から鹿児島県、東シナ海にまで及びます。海外では台湾、中国、朝鮮半島、フィリピン、インドネシアなどに及びますが、この種もいくつかの種を含んでいるともいわれ、今後の分類学的研究がまたれます。なお本種は一般に練り製品の原料とされています。よく見たらきれいで飼育したくなる魅力あふれた種ですが、底曳網で獲れるため飼育に耐えうるような個体は採集できません。

よく似たテンジクダイの仲間に、フウライイシモチというのがいます。テッポウイシモチに似ていますがやや南方性で内湾にすみ、第1背鰭に7棘あります。

採集するときの注意

▲「水作エイト」など投げ込み式ろ過装置の使用がおすすめ

ここであげた縞模様があるテンジクダイは夜釣りなどで釣れることがありますが、夜の防波堤や磯は足元が悪いことも多いため注意しましょう。またほかの魚を狙っているときにテンジクダイの仲間が大量に釣れることがありますが、釣れても防波堤の上などに捨てていくのはやめましょう。テンジクダイだって生きている魚ですので、持ち帰らない時はリリースするようにします。

テンジクダイの仲間はスレ傷や水質悪化に弱く、飼育するために持ち帰るのであれば採集後のケアが重要です。すぐに綺麗な水の入ったバケツの中にいれ、防波堤の上に置いておくことのないようにします。釣りで採集した魚を飼育するのであれば、釣れた魚のケアをしなければなりませんが、テンジクダイの場合は特に重要といえます。運搬中は「水作エイト」などの投げ込みろ過器で常にきれいな水質を保つようにしましょう。

縞模様があるテンジクダイまとめ

  • キンセンイシモチは橙色の縦帯があり、尾鰭基部に黒色斑がないのが特徴
  • オオスジイシモチは5本の縦帯があり尾鰭基部に黒色斑がある。本州~九州ではよく見られる種
  • コスジイシモチは7本の縦帯があり尾鰭基部に黒色斑あり、オオスジイシモチよりも深場に多い種
  • ヤクシマダテイシモチは縦帯が不明瞭になることも。黒色斑も不明瞭で第2背鰭が大きい
  • スジイシモチは第3縦帯が長く伸び尾鰭基部の黒色斑が明瞭でミスジテンジクダイと見分けられる
  • ミスジテンジクダイは第3縦帯が短く縦帯末端が黒色斑状になりスジイシモチと見分けられる
  • ミナミフトスジイシモチは黒色斑がなく帯が太い
  • タスジイシモチは3番目の縦帯に幅が広い部分があることが多く黒色斑はない
  • ヒラテンジクダイは鰓蓋上方に短い縦帯があり幼魚は尾鰭基部が黄色い
  • ネンブツダイは縦帯が2本で眼を通る帯は鰓蓋にしか達しない。黒色斑がある
  • テッポウイシモチは眼を通る縦帯が尾鰭後端にまで達し、黒色斑がない

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