2022.08.09 (公開 2017.10.24) 海水魚図鑑
ミツボシクロスズメダイの飼育方法~凶暴につき混泳は要注意
ミツボシクロスズメダイは黒い体に目立つ白い点があるのが特徴的なスズメダイの仲間です。丈夫で飼育そのものは簡単、かわいい幼魚が千葉県以南の太平洋岸で採集できるため持ち帰りたくなるのですが、性格はかなりきつく、混泳が難しいため注意が必要です。正直、飼育に関してはあまりおすすめしません、といいたいものです。
標準和名 | ミツボシクロスズメダイ |
学名 | Dascyllus trimaculatus (Rüppell, 1829) |
分類 | スズキ目・スズキ亜目・スズメダイ科・ミスジリュウキュウスズメダイ属 |
全長 | 14cm |
飼育難易度 | ★☆☆☆☆ |
おすすめの餌 | 海藻70、メガバイトグリーン |
温度 | 24~26度 |
水槽 | 60cm以上 |
混泳 | 大きくなると凶暴になり他の魚との混泳は困難になる |
サンゴ飼育 | 可 |
ミツボシクロスズメダイってどんな魚?
▲ミツボシクロスズメダイの幼魚は斑紋が大きくよく目立つ
ミツボシクロスズメダイは成魚・幼魚ともに体が真っ黒で、体側に白色斑があるのが特徴の魚です。大きくなるにつれ白色斑は小さくなっていきますが、成魚でも残ります。オヤビッチャやルリスズメダイなどに比べて体高があり、迫力もありますが、性格がかなり強く、成魚は狭い水槽ではほかの魚との混泳は極めて難しいといえます。
おもにサンゴ礁の浅瀬を泳いでいますが、幼魚はイソギンチャクの合間にいることも多いです。成魚もイソギンチャクの周辺を泳いでいることがあります。ただクマノミの仲間と異なりイソギンチャクとの関係は弱いようで、サンゴや大型ウニの合間にもみられます。
よく似た種類
日本沿岸にはこの仲間は4種いますがこのミツボシクロスズメダイに似た種はいません。しかし、海外には本種に似ている種がいます。ゴールデンドミノダムゼルという種類で、体はミツボシクロスズメダイに似ていますが、腹部や腹鰭、臀鰭、尾鰭が黄色になるのが特徴です。小型個体は白色斑が特徴的なのですが、成長すると薄くなり、やがてなくなってしまうようです。この種を飼育したことはありませんが、性格はきつそうです。
またマルケサス諸島にはストラスバーグダッシラスという、ミツボシクロスズメダイに似ているがやや白っぽい色彩が特徴的な変わった種類もいます。しかしながらタヒチから1000Km以上も離れたマルケサス諸島やその周辺にのみ生息することを考えるとなかなか入荷が望めない種類といえるでしょう。
ミツボシクロスズメダイはインド-太平洋域に広く分布するとされていますが、ハワイ諸島にはいないとされています。それを補うのようにハワイアンダッシラスという種類が生息しています。体はミツボシクロスズメダイに似ていますが体の中央部が灰色っぽく網目模様が目立ちます。
ミツボシクロスズメダイに適した環境
水槽
▲60cm水槽での飼育例
ミツボシクロスズメダイの成魚は10cmを超えるため、60cm以上の大型水槽で飼育するようにします。その性格から小魚との混泳はまず無理ですので、自分よりも大きな魚とでないと混泳は困難です。そしてそのような大型魚との混泳を考えるのであれば、巨大な水槽が必要になるわけです。
水質とろ過装置
ミツボシクロスズメダイはスズメダイの仲間ですので、水質の悪化にはやや強めですが、できるだけ綺麗な水で飼育してあげるようにしましょう。ろ過装置は外掛けろ過槽や外部ろ過槽では飼育できない、なんていうことはないのですが上部ろ過槽のほうが初心者に扱いやすいでしょう。巨大な水槽では大体オーバーフロー水槽を使用しているのでより安定して飼育することができます。
ほかの魚を蹴散らしてしまうミツボシクロスズメダイですが、サンゴには基本的に無害ですので、サンゴ水槽での飼育もできます。サンゴを飼育するのであればベルリンシステムでの飼育がベターではありますが、このようなシステムでは魚は多く入れることができないので注意が必要です。
水温
ミツボシクロスズメダイはクマノミなどと同様に25℃前後の水温を保つようにします。それ以上の水温でも飼育は可能ですが色褪せなどのおそれもありますので、25℃前後で飼育した方がよいでしょう。25℃の水温であればよい、というわけではなく、大事なのはその水温で一定を保つことです。ヒーターやクーラーを用いて年中魚にとって快適な水槽にしましょう。
ミツボシクロスズメダイに適した餌
ミツボシクロスズメダイはよほどひどい状態でなければ、ペレット、フレーク問わずすぐに配合飼料を食べてくれるはずです。動物プランクトンなどを主食としている魚ですが、藻類なども捕食していますので、植物食性の海水魚用の餌も与えたいところです。キョーリンが販売している「メガバイト」シリーズや「海藻70」などが最適です。
ミツボシクロスズメダイを入手する
ミツボシクロスズメダイは南アフリカからピトケアン諸島までのインド-中央太平洋の熱帯域に広く分布します。観賞魚としてはほかの一般的なスズメダイの仲間と同様で東南アジアから輸入されることが多いです。しかし最近は海水魚専門店ではあまり見ないような気もします。気が強く持て余してしまうことがあるからでしょうか。
日本では千葉県以南の太平洋岸に幼魚が晩夏~秋にかけてかわいい幼魚が出現し、磯で採集することもできますが、ここで何回もいってきたようにこの種は大きくなると大変に凶暴になりますので、家にもって帰るかどうかはよく考えてからにした方がよいでしょう。購入およびお持ち帰りはおすすめしません。
ミツボシクロスズメダイの混泳
ミツボシクロスズメダイは餌をよく食べ丈夫で飼いやすいといえます。しかし大変に気が強いので、混泳は非常に難しいのです。
ミツボシクロスズメダイと他魚との混泳
▲大型水槽でほかのスズメダイと飼育している海水魚店の水槽
繰り返しになりますが、ミツボシクロスズメダイは大きくなると凶暴になり、他の魚との混泳は困難になります。
幅数mほどの巨大な水槽で、キンチャクダイ科(ヤッコ)やハギの仲間(ニザダイ)などの大型種など気が強い魚と一緒に飼育するほかに混泳はすすめられません。スズメダイの仲間でも気が強く、ソラスズメダイなども鰭をぼろぼろにされてしまいます。
水族館ではチョウチョウウオやゴンベなど他の魚と飼育されるケースがありますが、これは水槽が家庭の水槽とは比べ物にならないほど大きな水槽であり、他にもたくさんの魚が飼育されて攻撃の対象が分散されているからで、家庭の水槽ではとても真似できるようなものではありません。
スズメダイの仲間は多くの種類が縄張りをもち、その縄張りに他の魚が入ってくるから攻撃します。ですから、縄張りを主張できるスペースが狭い小型の水槽ほど、争うといえます。
ミツボシクロスズメダイとサンゴ・無脊椎動物との相性
混泳が難しいミツボシクロスズメダイですが、サンゴを捕食することはありませんのでサンゴ水槽での飼育は可能です。
ミツボシクロスズメダイはクマノミほどではないのですが、イソギンチャクと戯れる習性があり、海中でも大きなイソギンチャクの周辺に見られます。イソギンチャクは初心者には飼育しにくい面がありますので、人工イソギンチャク「いそぎんちゃくん」などを使用するとよいでしょう。ただし、確実に入るわけではありません。もちろん飼育するのにイソギンチャクは必ずしも必要ではありません。
甲殻類との混泳は種類によってはミツボシクロスズメダイに捕食されてしまうので注意が必要です。スカンクシュリンプやホワイトソックスなどクリーナーとの飼育は可能です。大型個体ならオトヒメエビもよいでしょう。
ミツボシクロスズメダイの飼育が困難になったら(持て余したら)どうする?
▲放流ダメ、ゼッタイ。
ミツボシクロスズメダイは大きくなると非常に気が強くなり持て余してしまいがちな魚です。しかし、飼いきれなくなっても、たとえ採集した場所であっても海へ逃がすようなことはしてはいけません。日本の本州沿岸にも生息する本種ですが、寄生生物の問題などもあるからです。
持て余してしまったら水族館や観賞魚店に引き取ってもらうのがベターといえます。ちなみに私が以前飼育していた個体はある施設に譲りました。
ミツボシクロスズメダイの飼育まとめ
- 幼魚はかわいいが成魚は大きく凶暴
- 60cm水槽で飼育。混泳を考えるならもっと大きな水槽を
- ろ過装置もしっかりしたものが必要
- 水温は25℃
- 丈夫ですぐに餌を食べてくれる
- 小魚との混泳は無理
- 大型水槽で大型魚とでないと混泳は難しい
- サンゴ水槽での飼育も可能
- 持て余しても海に逃がしてはいけない