2020.11.10 (公開 2018.10.30) 海水魚図鑑
コガシラベラの飼育方法~幼魚はクリーナー!色彩変化も楽しめるユニークな魚
コガシラベラはニシキベラ属のベラで遊泳性が強い魚です。幼魚・雌・雄はそれぞれ色彩が大きく異なり、水槽内でその様子を観察することもできます。ただ全長15cmを超えるためそれなりの大きさの水槽が必要になります。
性格は比較的温和で多くの種類の魚と合わせられますが、小型甲殻類との混泳は避けた方がよいでしょう。幼魚のうちはホンソメワケベラほどではないのですが、ほかの魚の皮膚や鰭についた寄生虫を食べる「クリーナー」としても知られています。
標準和名 | コガシラベラ |
学名 | Thalassoma amblycephalum (Bleeker, 1856) |
英名 | Bluntheaded wrasse, Twotone wrasseなど |
分類 | スズキ目・ベラ亜目・ベラ科・カンムリベラ亜科・ニシキベラ属 |
全長 | 18cm |
飼育難易度 | ★★☆☆☆ |
おすすめの餌 | メガバイトレッド など |
温度 | 22~25℃ |
水槽 | 60cm~ |
混泳 | 容易 |
サンゴ飼育 | 可 |
そのほか | 幼魚はクリーナー |
コガシラベラってどんな魚?
▲コガシラベラの成魚(雌)
コガシラベラはニシキベラと同じベラ科ニシキベラ属の魚です。成長するにつれ色彩が大きく変化し、幼魚のうちは体に黒い線があるくらいで地味な色彩ですが成長すると緑色になり、大きい雄は頭部が緑色で体の後半が紫色という大変派手な色彩になります。
ベラの仲間は雌雄、もしくは幼魚と成魚で別の和名がつけられていたこともあり、幼魚はかつて「ミスジベラ」という名前でよばれていました。また老成した雄の個体を「クロガシラベラ」と呼称することもあるようです。
南アフリカ東岸から中央太平洋、仏領ポリネシアのラパ島にいたるたいへん広い分布域をもち、日本でも千葉県以南の太平洋岸で夏から秋に姿を見せます。東太平洋の沿岸には分布していませんが非常によく似たコルテスレインボーラス(別名メキシカンロックラスとも)Thalassoma lucasanum (Gill, 1862)という種類がカリフォルニア湾からペルーに、Thalassoma robertsoni Allen, 1995という種がコスタリカ西岸沖合に浮かぶ仏領クリッパートン島に生息しています。このうちコルテスレインボーラスはまれに日本にも輸入されており「メキシカンロックラス」の名前でも販売されています。
コガシラベラに適した飼育環境
水槽
遊泳力が強く水槽でもびゅんびゅんと泳ぎまわりますのでできるだけ広い水槽で飼育したいところです。最低でも60cm、できれば90cm水槽以上の水槽での飼育が理想といえます。とくに大きな個体を複数入れるのであれば90×45×45cm水槽では狭いので120cm以上の大きな水槽が欲しくなります。
水質とろ過システム
できるだけきれいな水質を保ちたいものです。不潔な水だと、たとえ丈夫なベラといえど病気になってしまうことがあるからです。
ろ過は外部ろ過を用いたものよりも酸素が供給されやすい上部ろ過槽、もしくはオーバーフロー水槽が向いています。ミドリイシなどのSPSと飼育するのであればオーバーフロー水槽でのベルリンシステムが望ましいでしょうが、このシステムでは魚を多く入れることはできませんので注意が必要です。
病気予防のためには殺菌灯の設置も有効ですが、病気を防ぐためには常にきれいな水をキープすること、水温を常に一定にすることの方がずっと重要です。
水温
水温はほかのサンゴ礁の魚と飼育するのであれば25℃で問題ありません。四国沿岸でも成魚が見られ、それよりも低めの22℃くらいでも飼育は可能ですが、常に一定の水温が保たれていることが重要です。夏はクーラー、冬はヒーターを使い水温を一定にしましょう。温度の変化が大きすぎると体調を崩すこともあるため注意が必要です。
ライブロック・サンゴ岩
コガシラベラもニシキベラ属の魚ですので夜間は基本的に砂に潜らず、岩陰や岩にあいた穴の中などで休息します。ですから砂を敷く必要はありませんが、夜間の寝床や隠れ家としてライブロックやサンゴ岩で休息場所を作ってあげるようにしましょう。入り組んだサンゴの隙間などはよい寝床になるようです。
フタ
遊泳性が非常に強く、なにかに驚いたときなど、そのはずみで水槽の外に飛び出してしまうことがあります。そのような事故を防ぐためにフタはしっかりとしておきましょう。
コガシラベラに適した餌
小型の甲殻類や動物プランクトン、魚卵などを捕食する動物食性です。基本的にはすぐにメガバイトレッドなど小粒の配合飼料を口にしてくれます。コペポーダなどの冷凍餌を食べさせるのもよいですがこのような餌は水を汚しやすいので与えすぎは禁物です。
幼魚のうちはホンソメワケベラと同じように、他の魚の体表などにつく寄生虫を食べてくれる「クリーナー」としても知られています。しかし白点病など原生生物による病気は食べてくれないので注意が必要です。
コガシラベラをお迎えする
▲釣りで採集された個体
コガシラベラは観賞魚店でも販売されているようですが、自分で釣る、もしくは網を使って採集するのが手っ取り早いといえます。
私はコガシラベラを何度か採集したことがあります。紀伊半島では朝、まだ寝ているところを採集することができました。大きめの個体はサヨリ針にオキアミをつけた仕掛けで釣ることもできます。ただしコガシラベラがいる場所にはほかのベラもいることが多く、コガシラベラだけ狙って釣るのは難しいところがあります。
幼魚はタイドプールでもよく見られるのですが、動きがかなり素早いため採集するのに苦労します。また使用する網の目が大きすぎると、網の目をすり抜けてしまうこともあります。2本の網で追い込んで獲るのが一番確実でしょうか。
コガシラベラと他の生物との相性
他の魚との混泳
▲カクレクマノミとの混泳例
コガシラベラは細みの体で他の大型魚に襲われることもあります。そのため肉食性のハタやバスレットなどとの混泳は避けたいところです。
小型ヤッコやカクレクマノミ、あるいはハナダイといった、アクアリストに人気の多くの魚と組み合わせられますが、強いスズメダイなどは小型水槽では避けたほうがよいでしょう。フタホシキツネベラなどのキツネベラ系やニセモチノウオも性格がきつめですのでコガシラベラの幼魚と組み合わせるのは避けましょう。ある程度育った個体はより大きな魚、たとえば中型ヤッコやクマノミなどとも組み合わせできます。
サンゴ・無脊椎動物との相性
▲大きなハサミをもつオトヒメエビは魚を捕食することも
コガシラベラはサンゴにいたずらすることもないので、多くの種類のサンゴと飼育することができます。浅いサンゴ礁に生息しており、SPSやソフトコーラルはよく似合いますが、初心者にはSPSは難しいので、LPSとの組み合わせがよいでしょう。ウチウラタコアシサンゴやイソギンチャクには捕食されてしまうおそれがありますので要注意です。
やはりベラですので甲殻類との混泳はおすすめできません。クリーナーシュリンプなどは大丈夫ですが、小さな甲殻類はコガシラベラの飯になってしまいます。逆に大きすぎる甲殻類との飼育はコガシラベラを捕食してしまう可能性もありますので避けた方がよいでしょう。
オトヒメエビも気が強く大きなはさみで、夜間寝ているベラの仲間を襲うことがありますので混泳はしないほうが無難です。
コガシラベラの飼育まとめ
- ニシキベラの仲間で遊泳性が強い
- よく泳ぐので幼魚でも60cm水槽が必要。できれば90cm以上の水槽で飼育したい
- 常にきれいな水をキープしたい。ろ過装置も強力なものを
- 水温は22~25℃で一定に
- 夜は砂の中に潜らず岩陰で休息する
- 飛び出し対策にフタは必須
- 餌は配合飼料をよく食べる。コペポーダなども食する
- 大型魚、とくに肉食性の魚との混泳避けた方が無難
- サンゴにはいたずらしない
- オトヒメエビなど大型の甲殻類との飼育は避ける