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2020.10.11 (公開 2017.09.26) 海水魚図鑑

フグを飼育する前に知っておきたいこと~毒・混泳・餌のまとめ

フグの仲間は愛嬌がありかわいいため、アクアリストに人気が高い魚の仲間です。しかしながら「可愛い」と衝動買いをしてしまっては上手く飼育することは難しく、またフグが放出する毒により、一緒に飼育している魚が死んでしまう恐れもあります。

まずフグの仲間を飼育するまえに、フグの仲間について知っておきましょう。

フグの仲間たち

(↑クリックで拡大)

フグ目は海水魚の仲間でも大きなグループで、3亜目、10科、およそ440種が知られています。フグの仲間は食用となるもの、フグ提灯をつくるもの、観賞用に向くものなど、人間とのかかわりが深いものが多いです。

そのうち観賞魚としては、深海性のベニカワムキ科魚類はほとんど流通せず、モンガラカワハギ亜目に含まれるものとフグ亜目に含まれるものが流通します。一般に「フグ」といえば、フグ亜目の魚を指しますが、モンガラカワハギ亜目のハコフグ科やイトマキフグ科の魚もフグ科の魚と飼育方法が似ており、今回ご紹介したいと思います。

なお、フグ目の魚にはほかに、カワハギやモンガラカワハギなどの魚も含みますが、これらの魚はやや飼い方が異なりますので、今回は省きます。またフグ科の魚の中には淡水に生息する種類もいますが、これらも今回は省きます。水族館の人気者であるマンボウはフグ亜目に含まれますが、巨大になり遊泳力も強いため、家庭の水槽での飼育は困難です。

フグの体

▲ウミスズメの体。硬い甲に覆われている

「フグ」の名の由来はいくつかありますが、そのうちの一つは「膨れるから」ということから来ています。フグの仲間は胃の下面にある嚢に水や空気を吸い込み、体を膨らませることができます。それにより、捕食者から身を守ろうとしているといわれています。

しかし水槽内で膨らませようとすると、フグにはストレスになってしまうことがあるようです。あまり膨らませないように注意しながら飼育したいものです。

ハコフグやイトマキフグの仲間の体は骨質の硬い甲に覆われ、ハリセンボンの仲間は顕著な強い棘で覆われています。これらも捕食者から身を守るのに使われるようです。

フグの「毒」について

▲海産のほぼすべてのフグ科魚類には毒がある

「フグ」といえば「毒」を思い浮かべる方も多いでしょう。当然、観賞魚として販売されているフグの仲間にも毒があります。

しかしその毒は、フグの種類によって異なります。ハコフグの仲間はパフトキシンという毒をもち、危険が迫ると皮膚から毒を放出します。

フグ科の魚はテトロドトキシンという毒をもちます。こちらの毒は強力なもので、ヒトを死に至らしめることもあります。もちろん魚に対しても有毒で、他の魚を殺してしまうおそれがあります。

対策としては、フグの仲間が弱っているときにはフグを別の水槽に移し、その後、水槽内の水を全換水します。

フグの餌と水質

フグには配合飼料を与えます。口は小さいので、フレーク状のものよりは、ペレット状のものが向いています。

この餌を中心にクリル(乾燥オキアミ)などを与えます。フグやハコフグは餌を口に入れたり出したりしながら食するという、独特の食べ方をするので、水を汚しやすいという特徴があります。それに対応するため強力なろ過装置と、排せつ物や残り餌を勢いよく水槽から取り除くプロテインスキマーの設置をおすすめします。

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フグの病気

フグはクマノミやスズメダイ、遊泳性のハゼと比べると白点病などの病気になりやすいといえます。

病気になりにくいように、常にきれいな環境で飼育するようにします。病原菌を殺す殺菌灯や、餌や排せつ物を勢いよく取り除くプロテインスキマーなども有効ですが、水質が上下しないように常に水温を安定させることも大事です。

特に水温の寒暖の差が激しくなる春と秋は要注意で、ヒーターとクーラーは必需品ともいえます。

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販売されている主なフグ

ハコフグ科の魚やフグ科の魚は人気があり、海水魚専門店でも多くの種類を見ることができます。

ミナミハコフグ

ミナミハコフグはハコフグ科の代表的な種。黄色い体に黒い斑点が特徴ですが、このような色彩は幼魚のときのみで、成魚は黄色が薄くなったり、青くなったりします。

日本では沖縄などで見られ、幼魚は南日本の太平洋岸にもみられますが、幼魚のうちは近縁種であるハコフグと見分けるのは難しいです。動きは遅く、他の魚と一緒にしない方がよいでしょう。また皮膚から出す毒にも注意が必要です。全長25cm、自然下では45cmまで成長します。

コンゴウフグ

ハコフグ科の種で、小さいときはサイコロの様な形をしていますが、大きくなると眼前方と臀鰭付近に1対の大きな棘が出てくるのが特徴です。成魚は尾鰭も長くなりますが、一般的に販売されているものは稚魚から若魚で、独特な風貌の成魚はなかなか入ってきません。大きいものは全長40cmにもなります。皮膚から毒を出します。

ハコフグ科のフグは25種が知られ、このほかにも雄が派手なクロハコフグ、五角形の断面をしたラクダハコフグ、コンゴウフグよりも小型で派手なシマウミスズメなどの種類が販売されています。

シマキンチャクフグ

フグ科のキタマクラ属のフグです。この仲間のフグは通称「キンチャクフグ」と呼ばれ、三大洋の熱帯域に36種が知られており、観賞魚として人気があるものが多く含まれます。本種はフィリピンやインドネシアにも生息する種で、安価で入手できます。本種も有毒種で、カワハギの仲間のノコギリハギという種は本種に擬態していることが知られます。大きくても10cmほどで、飼育向きといえます。

サザナミフグ

フグ科の仲間では比較的大きくなり、自然の海では全長40cmを超えます。幼魚は黒く、成魚は灰色で、体側に白い斑点が、腹部に白色の線が入るという面白い模様を持ち、人間にもよく慣れ、かわいい魚です。インド-太平洋の熱帯域に生息し、日本でも各地の海で見られ、太平洋岸では夏から秋に幼魚が採集できます。強い毒をもち、大型になるため小型水槽での飼育や混泳はあまり向いていません。

スポッテッドグリーンパファー(ミドリフグ)

スポッテッドグリーンパファーは通称「ミドリフグ」とよばれ、淡水の熱帯魚として紹介されていることも多い種類ですが、本来は汽水域から海水域に生息する種類で、飼育には若干の塩分を必要とします。海水水槽でカクレクマノミなどと一緒に飼育されることもありますが他魚の鰭をかじることがあり注意が必要です。有毒と思われますが毒性は不明。全長15cmほどになります。

淡水の熱帯魚として販売されるフグの仲間には本種のように塩分を必要とするものと、逆に必要のない純淡水のものがいます。純淡水性のフグを海水魚水槽で飼育することはできませんので注意が必要です。

ハリセンボン

ハリセンボン科。水族館でお馴染みの魚で、体は300本~400本前後の小さな棘で覆われています。棘は意外と強く、取扱いには注意が必要です。分布域は広く、三大洋の広い範囲に分布し、日本でも各地の海岸でみられますが、観賞魚としてはカリブ海産のものが多く流通しています。無毒の種とされ、沖縄では汁物などにして食べます。全長30cmほどになります。

ハリセンボン科の魚にはほかにもイシガキフグやヒトヅラハリセンボンなど色々おり、観賞魚として入ってきますが、本種が最もポピュラーなようです。

フグの購入時・運搬時における注意点

フグの仲間、とくにミナミハコフグやコンゴウフグのベビーサイズは人気が高く、つい購入したくなるのですが、衝動買いは失敗につながりやすいものです。

ハコフグの仲間は痩せてしまうこともありますが、その特徴的な身体つきから痩せているかどうかを見極めることは難しく、これも初心者におすすめしにくい理由といえます。お店でよく餌を食べていて、元気そうな個体を選ぶようにします。

購入したら早く帰るようにしますが運搬中に振動や衝撃などをあたえると、毒をだしてしまうことがあり、ハコフグ自身が弱ってしまうこともありますので静かに運びます。

採集したハコフグの仲間を他の魚と一緒にバケツに入れている人もいますが、これはおすすめできません。ハコフグが毒を出すと他の魚も死なせてしまいますので、ハコフグだけ他のバケツに移してから持ち帰るようにします。また、フグ科の魚の中にも皮膚から毒を出す種がおり、他の魚と一緒に持ち帰るのは避けた方がよいでしょう。

フグは他の魚と混泳できる?

他の魚との混泳もできなくはありませんが、フグ、とくにハコフグの仲間は泳ぐスピードや餌を食べるのは遅いため、スズメダイやニザダイ(ハギ)の仲間など、餌を食べるのが早い魚との飼育はあまり適しているとはいえません。

ハコフグの仲間同士との混泳はあまり問題ありませんが、熱帯の海を好むミナミハコフグやコンゴウフグと、温帯性のハコフグなどのように種類によっては組み合わせにくい魚もいますので、注意が必要です。

オーストラリアからは、上の写真のホワイトバードボックスフィッシュや、ショーズカウフィッシュなど綺麗なフグも輸入されますが、これらは水温が低めの海域にすむ種で、熱帯性の魚やサンゴとの飼育は無理です。

フグとサンゴ・無脊椎動物と一緒に飼える?

フグの仲間は雑食性のものが多く、微細な藻類から海藻、大きいものは小魚まで、さまざまなものを食します。カイメンなどは食してしまい、種によってはサンゴもつつくことがありますので、サンゴ水槽での飼育はあまりおすすめできません。

また先ほども述べたとおり、フグは水を汚しやすく、その点もあまりサンゴ水槽には向いていないといえます。

甲殻類などは種類によっては捕食してしまうことがあります。特にモヨウフグの仲間やハリセンボンのような大型種は、かなり噛む力が強いので注意しなければなりません。小型のキンチャクフグの仲間も、エビの仲間を食べてしまう恐れがあります。

フグ飼育のまとめ

  • 身を守るために体を膨らませたり、棘を持ったり、硬い甲をもつものがいる
  • 皮膚から毒を出したり、内臓に強い毒をもつものもいる
  • 餌はペレット状の配合飼料やクリルなど
  • 水を汚しやすいので強力なろ過装置が必要
  • 病気になりやすくきれいな水と安定した水温が重要
  • 毒を出すこともあるので輸送は慎重に
  • 他の魚との混泳は避ける
  • 無脊椎動物との飼育は注意
日本産フグ類図鑑

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松浦 啓一
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