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2020.09.25 (公開 2019.08.06) 海水魚の採集

【関東編】盛夏の海で出会える魚と磯採集の注意点

盛夏は磯が一番賑やかになる季節。休日ともなれば、子供が沢山磯にあふれ、大人も魚を追いかける姿はどこの磯でも見られます。そして海の中ももっともにぎやかなのがこの季節。チョウチョウウオの仲間やスズメダイ、ベラの仲間など、黒潮が熱帯から運んできてくれたさまざまな魚と出会えます。今回はこの盛夏に現れる魚、そして盛夏の採集時の注意などをご紹介します。

なお、磯採集の基本についてはこちらをご覧ください。

盛夏の磯の特徴

海藻は少なくなる

▲潮溜まりには海藻が少ない(7月下旬、外房)

▲水深2mほどの海藻場(7月下旬、外房)

春から初夏に比べてアオサなどの海藻の類は少なくなりますが、それでも滑りやすいところはありますので足元には注意が必要です(とくに小さな子供は要注意)。ただ、潮溜まりには海藻が少なくなるものの、干潮時でも2mあるような場所へ行くと海藻の森が姿を現します。潮溜まりよりも水温が低いことが多く、やや低めの水温を好むキヌバリなどの姿も見られます。

生物の種数が多くなる

▲死滅回遊魚のフウライチョウチョウウオとミヤコキセンスズメダイ。ともに幼魚である

夏になると黒潮にのって南方から小さな熱帯性の魚たちが関東近辺の磯にもたらされます。しかしこれらは夏から秋に関東の磯で見られても、冬になると寒さに耐えられずに死んでしまう、いわゆる「死滅回遊魚」です。この死滅回遊魚を目指して、関東地方在住のアクアリストは、夏から秋に磯を目指すのです。

盛夏の磯で出会える魚

チョウチョウウオの仲間

▲極小サイズのものは飼育しにくい

▲チョウチョウウオの仲間たち。6人で採集したもので今回はすべてリリース

この季節の磯を象徴するもので、チョウチョウウオと会うために磯を訪れる採集家も多いのです。房総半島では「トゲチョウチョウウオ」「フウライチョウチョウウオ」「チョウチョウウオ(通称ナミチョウ)」、そして「チョウハン」の4種を「房総4種」とよぶアクアリストもおり、この4種にはほぼ毎年出会うことができます。

また年によっては房総半島でもアケボノチョウチョウウオ、セグロチョウチョウウオ、ウミヅキチョウチョウウオ、スダレチョウチョウウオ、ミスジチョウチョウウオ、シラコダイなどにも出会えます。ハタタテダイは磯で採集することもできますが、防波堤や漁港などで採集するのがしやすいようです。

採集しやすいのは親指の爪くらいのサイズですが、このくらいのはこまめに餌を与えなければならないなど、飼育はやや難しいところがあります。もう少し大きいと餌付けに手こずることがありますが、飼育は幾分楽になります。

サザナミヤッコ

▲夏の終わりに出会えるサザナミヤッコ

サザナミヤッコは関東でも8~9月に少しだけ見られるキンチャクダイ科の魚です。俗に「3本線」と呼ばれているものは沢山餌を食べさせる必要があるため、初心者にはあまり向きません。初心者にはもう少し大きくなったものがよいでしょう。いずれにせよサザナミヤッコは成長すると40cmほどと、大きく成長することを考えて飼育する必要があります。

ソラスズメダイ

▲ソラスズメダイの幼魚

ソラスズメダイは関東の浅瀬で見られる唯一の青いスズメダイです。越冬している可能性もありますが、鮮やかな青い色彩は「熱帯魚」のイメージそのもの。ただし外房では浅いところで群らがっているなんていうことはなく、ぽつぽつと見られる感じです。丈夫で長生きし、飼育も容易ですが、性格がキツいのがたまにキズ、というところです。飼育方法についてはこちらもご覧ください。

オヤビッチャの仲間

▲オヤビッチャの幼魚。成魚も模様は大して変わらない

オヤビッチャは秋になったら関東地方の太平洋岸のあちこちで見られるスズメダイ科の普通種です。丈夫で飼育しやすいのですが、性格がきつめでおとなしい魚との混泳には注意が必要です。オヤビッチャに似た魚(オヤビッチャ属)のうち、イソスズメダイやシマスズメダイ、テンジクスズメダイ、ロクセンスズメダイといった種も流れてきます。シマスズメダイは潮溜まりの波打ち際付近、テンジクスズメダイは内湾よりの潮溜まりや漁港などで多く見られます。オヤビッチャの仲間については、こちらもご覧ください。

ミヤコキセンスズメダイ・イチモンスズメダイ

▲ミヤコキセンスズメダイの幼魚

▲イチモンスズメダイ幼魚

ミヤコキセンスズメダイ・イチモンスズメダイはともにスズメダイの仲間ですが、背鰭の付け根に大きな黒色斑があるため、チョウチョウウオの仲間と間違えられることがあります。分類学的にはどちらもルリスズメダイやスプリンガーズデムワーゼルなどと同様、ルリスズメダイ属の魚です。どちらも分布域は千葉県以南で、分散能力がベラやチョウチョウウオなどよりも低いスズメダイの仲間としてはかなり広い範囲に生息する種です。

成魚は互いに全く異なる色彩をしていますが、幼魚はどちらも同じような色彩をしています。ミヤコキセンスズメダイの鰓蓋には体色よりも明るい黄色域があるのに対し、イチモンスズメダイの鰓蓋にはそれがないことで区別できます。しかしながら同定は難しいものです。大きく育ててどのようになるか変化を楽しむのもよいですが、この種はどれも性格がきつくなります。そのため、本当に持ち帰るべきかよく考えなければいけません。飼育自体は丈夫で飼いやすい魚ですが、小さいうちはほかの魚につつかれることもあるので注意します。

ハゼの仲間

▲褐藻の茂みで見られたキヌバリ

ハゼの仲間のうち、イソハゼやアゴハゼ、クモハゼといった種はほぼ周年見られますが、中にはクロユリハゼなどのようにこの季節にしか見られない南方系の種類もいます。一方春に多かったチャガラやキヌバリといった種は潮溜まりではなかなか見られなくなり、やや水温が低い、海藻の茂みなどで見られるようになります。

ギンポの仲間

▲磯で普通に見られるヘビギンポ

関東地方ではイソギンポ科の魚はあまり多くは見られませんが、ホシギンポやカエルウオといった種類はよく見られます。コケギンポ、ヘビギンポといった魚も見られます。ヘビギンポは周年見かける種類ですが、磯ではこの時期、全身を真っ黒にし、白いラインが目立つという、婚姻色をあらわしたヘビギンポも見られるかもしれません。ヘビギンポは丈夫で飼育しやすいですが、若干肉食が強い傾向があり、酸欠にも弱いため持ち帰るときは注意が必要です。

ベラの仲間

▲ニシキベラ

ベラの仲間も種類がたくさんいますが、関東の磯で多く見られるのはホンベラ、ニシキベラ、カミナリベラなどの温帯性のベラで、ある程度種数は限られてしまいます。ただしコガシラベラやオトメベラなど南方系の種類も少しは見ることができます。

ニザダイ(ハギ)の仲間

▲ニザダイの幼魚

ニザダイの仲間は稚魚が長く浮遊生活をするからか、分布域が広くなるようです。黒潮にのって毎年夏から秋にかけてたくさんの稚魚が関東の浅瀬で見られるようになります。房総半島でも全身が真っ黄色の(成魚は色が変わる)モンツキハギをはじめ、シマハギ、クロハギ、テングハギ、ニザダイといった種類を採集することができます。種類や個体、採集した状況によっては餌付きにくいこともあるため、天然の海藻フードなどで餌付けるようにしたいものです。

そのほかの魚

▲カゴカキダイの群れと、それにまざるイシダイ

▲コバンヒメジ

春の磯ではまだまだ透明感のある体だったカゴカキダイも大きく成長して群れで泳ぎ回るようになります。カゴカキダイはチョウチョウウオに似た見た目ですがメジナなどに近い仲間です。イシダイもこのくらいのサイズは容易に採集できますが、結構性格はきつく成長も早いので、持ち帰る前に飼育できるかどうかよく考えましょう。海では80cmにまでなり、水槽でも50cmほどになることもあります。

またこのころになるとヒメジの仲間の幼魚も出現します。ホウライヒメジ、コバンヒメジ、ヨメヒメジが多いですが、年によってはオオスジヒメジやオジサンも出現することがあります。飼育はやや難しめで、採集しても水から出さないなどの工夫が必要になります。

採集するときの注意

熱中症に注意!

夏の磯採集の「大敵」といえるのが熱中症です。熱中症にならないようにするためにはこまめな水分補給が必要です。また水分だけでなくミネラルなども補給したいものです。普通の飲料水でなく水分とミネラルの両方を摂取できるようなものがおすすめです。

密漁と間違われないように

▲禁止事項は掲示板で確認する

この時期は魚だけでなくイセエビなども磯で多く見ることができますが、このような生き物は獲ってはいけません。くれぐれも地元の漁師さんがバケツを開けたらイセエビやアワビ、サザエなどがごっそり出てきた、なんていうことがないように注意しましょう。

採集魚は日陰に置いておく

採集した魚は日陰に置いておくようにします。太陽が照りつけるような場所では水温が急上昇して魚が弱ったり、酸欠で死んでしまったりします。また、締め切った車の中に入れておいても水温の上昇を招き、魚が全滅する危険があります。風通しのよい日陰に置いておくようにしましょう。

採集した生き物はバケツの中に投げ込みろ過槽などを入れて、乾電池で動くエアーポンプを用いて運ぶのですが、車で運ぶときは車内クーラーを使用するなどして、水温が上がりすぎないように調整しましょう。

危険生物に注意

これは盛夏に限ったことではないのですが、この時期はさまざまな生物が見られます。ゴンズイやハオコゼなどのほか、アイゴも小さいものはこのころ多く見られ、「デンキクラゲ」とも呼ばれるカツオノエボシなどが出現するのもこのシーズンです。あらかじめ危険生物についてはチェックしておきましょう。知らない生き物には触らないように注意します。

盛夏の関東磯採集まとめ

  • 盛夏には多くの魚が見られる
  • 海藻は春よりは少なくなる
  • チョウチョウウオの仲間を磯で見かけるように
  • サザナミヤッコに出会える可能性も
  • スズメダイの仲間もいろいろ見られるが持ち帰るべきかよく考える
  • ハゼやギンポの仲間は周年見られるものも多い
  • ベラは意外と種類が少なく、ニザダイの種類は多い
  • カゴカキダイは春よりも大きく成長している
  • 熱中症には十分に警戒を
  • イセエビやサザエなどを採集することのないように
  • 獲れた魚を入れたバケツは日陰に置く
  • 危険な生物も多く見られるので注意する

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