2020.09.22 (公開 2019.10.21) 海水魚図鑑
オヨギイソハゼの飼育方法~丈夫で飼いやすい小型ハゼ
オヨギイソハゼは、ハゼ科イソハゼ属の小型魚です。イソハゼの仲間は岩やサンゴの上などで這っていることが多いイメージですが、このオヨギイソハゼはほかのイソハゼの多くの種とことなり、サンゴ礁の枝の間やサンゴの上を遊泳していることが多いです。意外と丈夫で飼育はベニハゼ類と比べて簡単ではありますが、混泳相手には注意が必要となります。また大きい水槽だとどこへ行ったか分からなくなることもあるため、あまり大きな水槽で飼育しない方がよいでしょう。
標準和名 | オヨギイソハゼ |
学名 | Eviota bifasciata Lachner and Karnella, 1980 |
英名 | Twostripe dwarfgoby |
分類 | スズキ目・ハゼ亜目・ハゼ科・イソハゼ属 |
全長 | 3.5cm |
飼育難易度 | ★★☆☆☆ |
おすすめの餌 | コペポーダ、シグマ・グロウB、小型海水魚用の配合飼料など |
温度 | 25℃前後 |
水槽 | 35cm~ |
混泳 | ハゼなどおとなしい魚と混泳できる。肉食魚は不可 |
サンゴ飼育 | 可 |
オヨギイソハゼって、どんなハゼ?
▲オヨギイソハゼ
オヨギイソハゼはハゼ科イソハゼ属のハゼです。イソハゼほどではありませんが、全長3.5cmになり、ピグミーゴビーの類としては比較的大きくなります。体には赤い2本の縦帯があり、雄は尾鰭の先端の軟条が糸状にのびるのも特徴的です。
生態的な特徴としてその名前の通り「遊泳性が強い」というところがあります。サンゴの周辺を群れをつくって泳いでいます。これは岩やサンゴの上にいることが多いイソハゼやナンヨウミドリハゼなどとは異なる特徴です。
オヨギイソハゼ飼育に適した環境
水槽
▲小型オーバーフロー水槽での飼育
大きい水槽だとどこへ行ったか分からなくなってしまうこともあり、小型水槽での飼育がおすすめされることもあります。しかし初心者にはあまり大きな水槽をすすめにくいものです。ジェックス「グラステリアAGS」など小型オーバーフロー水槽や、大型水槽と接続できるJUNの「スレンダーオーバーフロー水槽」などを使用するのもおすすめです。なお、筆者はこのオヨギイソハゼをニッソー製の小型水槽(底がプラ板)をオーバーフロー水槽に加工したもので飼育していました。現在は大型水槽にセットできるような小型オーバーフロー水槽の既製品などもあり、このようなアイテムを使用するのもよいでしょう。
水質とろ過システム
イソハゼの仲間はベニハゼ属よりも水質悪化には強いように思いますが、それでも綺麗な水質で飼育したいものです。小型水槽でオーバーフロー水槽や背面ろ過を採用していないものであれば、外部ろ過槽が使いやすいですが、外部ろ過槽だとろ過バクテリアが外部の空気に触れにくいという欠点もあるため、外掛けろ過槽もいっしょに使用して飼育するのがおすすめです。外掛けろ過槽はパワーが低いため、ほかのろ過槽と使う必要があります。また小型水槽で海水魚を飼育するということで、魚の入れすぎにも注意が必要です。
サンゴには影響を与えないためベルリン水槽での飼育もできますが、小型水槽でのベルリンシステムは初心者には難しいです。もちろん魚の入れすぎにも注意しなければなりません。
水温
水深数10m以深に多いベニハゼ類とは異なり、サンゴ礁の浅場に生息する種のため水温25℃前後で飼育できます。ただ22~25℃であればいいというものではなく、温度が常に安定していることも重要になります。
隠れ家
オヨギイソハゼが隠れるための隠れ家を入れてあげましょう。サンゴ岩や飾りサンゴ、イミテーションのサンゴ、ライブロックなどが最適です。
オヨギイソハゼに適した餌
オヨギイソハゼは主に動物プランクトンを捕食していますが、水槽では配合飼料にもすぐ餌付いてくれるはずです。ただし小ぶりの個体はメガバイトのSサイズでも大きすぎることがあり、メガバイトよりも小粒のどじょう養殖研究所「シグマ・グロウ」のBサイズなどを与えたり、メガバイトをすりつぶすなどして与えるようにするとよいでしょう。
栄養強化された冷凍コペポーダなどもたまに与えるとよいのですが、冷凍の餌は水を汚すので与えすぎないように注意が必要です。また栄養強化されていてもコペポーダだけではオヨギイソハゼの腹を満たしにくいので、配合飼料も一緒にあたえましょう。
オヨギイソハゼをお迎えする
オヨギイソハゼは西太平洋(フィリピン、インドネシア、パプアニューギニア、バヌアツ、グレートバリアリーフなど)に生息していますが、観賞魚としてはおもに沖縄からやってきます。そのため状態が安定していることが多いのですが、それでも状態はしっかりチェックしておきます。体に白い点がついている個体、鰭がぼろぼろ、もしくは溶けているようなものは選んではいけません。またオヨギイソハゼの体は生時透明感がありますが、妙に白っぽくなっているものなども選んではいけません。また国内産が多いとはいえ、入荷直後の個体は弱っていることも多いのでかならず入荷してある程度時間が経ち、状態が落ち着いたものを購入しましょう。
オヨギイソハゼとほかの生物の関係
ほかの魚との相性
▲オヨギイソハゼとサツキハゼの混泳
オヨギイソハゼは同種同士の混泳が可能です。小競り合いをしますが、ヤッコやスズメダイと異なり激しい争いはしません。ほかの魚との混泳は同じように小型のベニハゼ類やイソハゼ類、あるいはキイロサンゴハゼやヒレナガネジリンボウ、ヤシャハゼなどと混泳するのに適しています。またキャンディケインピグミーゴビーよりも大きいのでそれよりも大きく育つハタタテハゼやアケボノハゼ、小型テンジクダイや同じくプランクトンなどを捕食する小型のハナダイ類などとの混泳も可能です。
ヤッコの仲間と飼育しているアクアリストもいるようですがヤッコの存在に怯えていないか、十分チェックしましょう。個人的にはあまりおすすめできない組み合わせといえます。またハタ、バスレットなどは肉食性が強く、口に入る魚は食べてしまったりすることもあり、スズメダイの仲間はオヨギイソハゼを攻撃してしまったりするので、これらの魚とも一緒に飼育することはできません。
サンゴ・無脊椎動物との相性
オヨギイソハゼはサンゴに害を与えることはなく、サンゴ水槽での飼育がおすすめです。浅いサンゴ礁の枝間に見られる魚のため、ミドリイシやショウガサンゴ、トゲサンゴなどの枝状サンゴとの飼育が最適です。サンゴの枝間を泳ぐので、サンゴの枝間にコケが生えたりしにくくなるという効果も期待できるようです。しかしこれらのサンゴの飼育は初心者には難しいですので、初心者はトサカやウミキノコといったソフトコーラルの水槽で飼育するとよいでしょう。給餌が必要な陰日性ヤギなどと飼育し、ヤギの食べ残した餌などを食べさせるために入れられることもありますが、陰日性ヤギの飼育は極めて難しいので注意が必要です。また魚を捕食してしまうようなイソギンチャクなどはやめた方が無難です。
甲殻類は小型のサンゴヤドカリなどであれば問題はないですが、大きくなるエビ、カニ、ヤドカリなどはオヨギイソハゼを食べてしまいますので一緒に飼育すべきではありません。
オヨギイソハゼ飼育まとめ
- イソハゼ属の中では遊泳性が強い
- 比較的丈夫で飼育しやすい
- 小型水槽だと観察しやすいが、入れすぎやろ過には注意
- 水温は25℃をキープ。常に安定していることが大事
- ライブロックなどで隠れ家を作ってあげたい
- プランクトンフードは与えすぎに注意
- 沖縄から入ってくることが多いが、それでも入荷直後のものは避ける
- 体が妙に白っぽいものや鰭がぼろぼろ、ただれや白点が付着しているものも避ける
- 小型ハゼやテンジクダイなどおとなしい魚との飼育が適している
- バスレットなど気が強い魚や肉食魚との混泳は避ける
- サンゴとの相性はよいがイソギンチャクは注意
- 甲殻類には捕食されることもある