2021.01.31 (公開 2018.08.16) 海水魚図鑑
オグロクロユリハゼの飼育方法~購入時と飼育時の注意
「青い体の海水魚」といえば、ルリスズメダイやナンヨウハギ、スミレヤッコなどが思いつきますが、このオグロクロユリハゼも青い体がきれいです。
しかもルリスズメダイやナンヨウハギといった魚は性格がきつかったりすぐに大きくなってしまい、スミレヤッコはLPSをつついてしまうこともありますが、オグロクロユリハゼは温和な性格で成長しても10cmを超える程度、そしてサンゴにも無害というところがよい魚です。
しかしオグロクロユリハゼはゼブラハゼやハタタテハゼなど、ほかの遊泳性ハゼよりは若干臆病で、追われると引きこもりがちになること、飛び出して死んでしまうことがあるので特に「混泳」において意が必要です。
標準和名 | オグロクロユリハゼ |
学名 | Ptereleotris heteroptera (Bleeker, 1855) |
英名 | Blacktail goby, Spot-tail dartfish, Indigo dartfishなど |
分類 | スズキ目・ハゼ亜目・クロユリハゼ科・クロユリハゼ属 |
全長 | 10cm |
飼育難易度 | ★★☆☆☆ |
おすすめの餌 | メガバイトレッドS など |
温度 | 23~26度 |
水槽 | 60cm~ |
混泳 | おとなしい魚との混泳が向く。同種同属同士も◎ |
サンゴ飼育 | 可 |
そのほか | 飛び出すおそれあり。フタは確実に |
オグロクロユリハゼってどんな魚?
オグロクロユリハゼはハゼ亜目・クロユリハゼ科の遊泳性ハゼです。同じ属のイトマンクロユリハゼやゼブラハゼと比べると体高が低く、体側には横帯がありません。ハナハゼに似ていますが尾鰭の鰭条は伸びません。そして最大の特徴は、尾鰭の中央部に黒い点があることです。これにより、ほとんどすべての同じクロユリハゼ属魚類と見分けられます。体色はゼブラハゼやイトマンクロユリハゼ、ハナハゼなどよりも鮮やかな青色をしています。
青色がきれいな海水魚はルリスズメダイ、シリキルリスズメダイ、ナンヨウハギ、スミレヤッコなどの魚がいますが、これらの魚は性格がかなりきつかったり、LPSをつついて食べてしまうことがあります。そのためほかの魚やサンゴとの組み合わせには注意が必要です。しかしこのオグロクロユリハゼはどんなサンゴ水槽でも飼育でき、他の魚との飼育も可能です。逆におとなしすぎて注意が必要なほどです。
遊泳性ハゼについては、こちらの記事もご覧ください。
紛らわしい名前の「オグロヒメユリハゼ」
よく似た名前の魚に「オグロヒメユリハゼ」というものがいます。「日本のハゼ」など各種魚類図鑑に写真が掲載され、古くからその存在は知られていましたが、日本から標本に基づく初記録として報告されたのは2015年のことでした。
その名前に「ヒメユリハゼ」とあるようにオグロクロユリハゼよりもヒメユリハゼに近いとされています。ヒメユリハゼとは背鰭二つが分離する(ヒメユリハゼではつながる)こと、尾鰭が丸い(湾入する)などの特徴により区別できます。
南アフリカ、マリアナ諸島、琉球列島、そして南日本の太平洋岸に見られますが、水深50m以深に多く生息しており、おそらく観賞魚としての入荷はないであろう種です。しかしメタリックブルーの体色は美しいのでぜひとも流通してほしいものです。
オグロクロユリハゼ飼育に適した環境
水槽
▲しっかりフタができる水槽が望ましい
小型水槽でも飼育できますが、複数飼育や混泳のことを考えると、できるだけ60cm以上の水槽で飼育するとよいでしょう。できるだけ水槽上部に枠、もしくはフランジがついているものを選ぶようにします。これはフタを置きやすくし、オグロクロユリハゼが水槽から飛び出して死んでしまう事故をふせぐためです。
水質とろ過システム
硝酸塩の蓄積にはある程度耐性がありますが、できるだけきれいな海水で飼育したいところです。とくにサンゴもいっしょに飼育するのであれば、しっかりしたろ過システムが必要となります。上部ろ過槽やオーバーフロー水槽での飼育が適しているといえるでしょう。外掛けろ過槽では水槽上部に隙間ができてしまうため、飛び出して死んでしまうおそれもあるためあまり望ましいとはいえません。
オグロクロユリハゼはサンゴには無害ですのでミドリイシとベルリンシステムで飼育することもできます。ただし餌をあげすぎたり魚の数が多すぎると水が汚れやすくなってしまうので注意が必要です。
水温
ほかの一般的な熱帯性海水魚と同様、25℃前後で問題ありません。もう少し低い22℃ほどでも大丈夫なようです。ただし病気などを防ぐのに水温が一定であることが重要なので、ヒーターと水槽用クーラーを使用しましょう。
ライブロック・サンゴ岩
▲夜間岩の陰で眠るオグロクロユリハゼとゼブラハゼ
水槽にはライブロックやサンゴ岩、ライブコーラルなどを配置してオグロクロユリハゼの隠れ家をつくってあげましょう。
ほかの魚に追われた時などの隠れ家になります。隠れ家としてだけでなく夜間は岩の下などに潜って眠ります。ですからいつも遊泳しているところを見たい、といっても何も隠れ家を入れないのはよくありません。
フタ
水槽の「フタ」はオグロクロユリハゼだけでなく、遊泳性ハゼの飼育には必要なものです。遊泳性ハゼの仲間は肉食性、もしくは気が強い魚に追いかけられたとき、勢い余ってジャンプしてしまうことがあります。その際、運が悪いと水槽から飛び出してしまうこともあります。
まるで煮干しのようになってしまったオグロクロユリハゼと対面することのないように、フタはきちんとしなければなりません。
オグロクロユリハゼに適した餌と添加剤
▲プランクトンフードはたまに与える程度
海では主に動物プランクトンなどを捕食しているオグロクロユリハゼですが、水槽で動物プランクトンを与えるのは水を汚す原因となるため注意が必要です。冷凍コペポーダなどのプランクトンフードはたまに与えるくらいでちょうどよいでしょう。
一般的に観賞魚店で販売される全長7~8cmくらいの個体はメガバイトのSサイズであればよく食べてくれますが、幼魚は手で餌をすりつぶして与える必要があります。
餌もただ与えるのではなくビタミン剤などを添加してあげると栄養を魚に届けることができるのでおすすめです。
オグロクロユリハゼの入手方法
オグロクロユリハゼは自分で採集することも不可能ではないのですが、購入して入手するのが確実です。同種同士ではほとんど争わず、数が多い方が落ち着くようですので、何匹か同時購入するとよいでしょう。
購入時の注意点
オグロクロユリハゼは日本では本州中部太平洋岸~琉球列島、海外ではインド-太平洋域に分布し、観賞魚としてはマニラ、セブやバリなど東南アジアから来ることが多いです。流通量が少ないというわけではないのですが、たまにまとまって入ってくることがあり、その時期を逃すと入手が難しいこともあります。そのため入手したら購入したくなるものですが、衝動買いは厳禁です。
購入するときの注意点はほかの海水魚と同様ですが、痩せてしまいやすいので妙に細長いものは避け、少しふっくらしたようなものを選ぶとよいでしょう。背中に肉がついておらず、体に線のようなものがでている個体は避けるようにします。もちろん鰭や体表に白い点がついている、鰭や体表にただれがあるなどの個体も選んではいけません。
このほかお店のストック水槽もチェックする必要があります。ストック水槽で強めの魚といっしょに飼育されているとライブロックの中からなかなか出て来ず、餌もなかなか食べられずやせ細ってしまいます。そのような個体は長生きしないので、ストック水槽の様子もよく観察したいものです。そのためストック水槽のチェックが難しい通販で購入するのは避けるべきかもしれません。
この購入時の注意点は同様に痩せやすい遊泳性ハゼであるハナハゼやその近縁種についても同じことがいえます。
オグロクロユリハゼと他の生物との相性
同種・近縁種との混泳
▲ゼブラハゼとの混泳
オグロクロユリハゼは、自然下では複数匹で暮らしていることも多く、水槽内でも容易に複数飼育が楽しめます。同じクロユリハゼ属のゼブラハゼやイトマンクロユリハゼなどともとくに問題なく一緒に飼育することができます。もちろんサツキハゼ属やハタタテハゼ属などほかの遊泳性ハゼとの混泳も概ね問題ありません。
他の魚との混泳
ほかの魚と飼育するときは、オグロクロユリハゼは温和で臆病な魚であることを常に考えなければなりません。となると混泳相手には同様に温和なハナダイの仲間や大人しいテンジクダイの仲間、小型のカエルウオなどがベストといえます。
避けたいのはスズメダイの仲間やニザダイ(ハギ)の仲間など、性格がきつめの魚です。カクレクマノミはスズメダイ科の魚としてはまだ温和な方ではありますが、後からオグロクロユリハゼを追加してしまうとひきこもってしまうこともありますので要注意です。大型ヤッコなどとの組み合わせもオグロクロユリハゼにとってはプレッシャーになってしまいますのでよくありません。
もちろんハタや大型のバスレット、カサゴ、フエダイなどの肉食性の魚も避けます。細いからだのオグロクロユリハゼはほかの魚に捕食されやすいのかもしれません。幼魚は大きな共生ハゼなど、意外な魚に襲われてしまうこともありますので注意が必要です。
サンゴ・無脊椎動物との相性
オグロクロユリハゼはサンゴに対しては全く無害ですのでサンゴ水槽での飼育もできます。ただし水質の悪化に弱いミドリイシなどと飼育するときは餌の与えすぎや魚の入れすぎに注意が必要です。LPSや陰日性サンゴなど、プランクトンを捕食するサンゴが向いているでしょう。ただし陰日性のサンゴは飼育がやや難しく初心者には向いていません。
無脊椎動物は大型のエビ・カニなどの甲殻類はオグロクロユリハゼを襲って食べてしまうのもいるので注意が必要です。サンゴヤドカリやペパーミントシュリンプなどとであれば一緒に飼うことができます。クリーナーシュリンプは概ね大丈夫ではありますがオトヒメエビは気が強く大きなハサミで小魚を襲うこともあるので注意が必要です。
オグロクロユリハゼの飼育まとめ
- ゼブラハゼやイトマンクロユリハゼよりも青みが強く美しい
- 性格はおとなしく、大きく強い魚との混泳には向かない
- 丈夫で水質については耐性があるがしっかりろ過できる水槽が望ましい
- 水温は25℃を確実にキープ
- 夜間の休息場所や隠れ家を作ってやることが重要
- 購入時痩せていないかよくチェックしたい
- 追われて引きこもっていないかストック水槽も要チェック
- 同種やおなじ遊泳性ハゼとの混泳は問題ないことが多い
- 気が強い魚との混泳は極力避ける。カクレクマノミもおすすめできない
- サンゴには無害
- 魚を襲うおそれがある大型の甲殻類との飼育は避ける