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2019.12.08 (公開 2017.07.23) 海水魚図鑑

遊泳性ハゼの飼育方法~餌・混泳・水質まとめ

ハゼの仲間は飼いやすく、初心者からベテランの方まで楽しめます。そんな中でも人気が高いのが、共生ハゼとこの遊泳性ハゼといえます。

温和な性格をして鮮やかな色彩をした遊泳性ハゼは水槽のスター、とまではいかないのですが海水魚水槽には欠かせない魚といえるでしょう。今回はその遊泳性ハゼ飼育の基本について解説します。

遊泳性ハゼ飼育に適した水槽

水槽

▲45cm水槽で遊泳性ハゼを混泳させている水槽。

小型のサツキハゼ属やハタタテハゼ属であれば35cm水槽でも飼育できますが、管理のしやすさなども考えますと、45cm水槽が欲しいところです。理想は60cm水槽。60cm水槽であれば複数の種が群れるところも観察することが出来ます。

ろ過装置

▲オーバーフロー水槽のろ過槽。

オーバーフロー水槽でない場合は上部ろ過槽を使うのがよいでしょう。これに外部ろ過槽を付けるとなおよいです。小型水槽ではこれらの他にも外掛け式ろ過槽や外部ろ過槽単独、底面フィルターなどを使っても飼育可能です。ただし小型水槽はすぐ満員御礼となってしまいやすく、多く入れると水が汚れやすくなるので注意が必要です。ふたつ以上のろ過槽を併用したり、外掛け式のプロテインスキマーなどを組み合わせるのもおすすめですが、狭い水槽に何匹も入れすぎないように注意します。

フタ

遊泳性ハゼの飼育全般で注意しておかなければならないのは「飛び出し」です。何かに驚いたときなどに飛び出して、死んでしまう恐れもあります。水槽にあった大きさのフタをきちんとしておきましょう。

メンテナンスのとき、給餌のときなどは特に、フタがはずれたままになっていることがありますので気をつけます。もちろん、フタのし忘れにも注意が必要です。

▲砂は厚く敷かなくてよい。

遊泳性ハゼの多くが含まれるクロユリハゼ属やハタタテハゼ属の魚は砂をあまり必要としないものが多いのですが、オオメワラスボの仲間などは砂の中に潜むものもいます。またサンゴの仲間を飼育するときには砂は必須といえます。

一般的なクロユリハゼ属魚類やハタタテハゼ属魚類を飼育するのであればパウダー状のサンゴ砂を2~3cmほど敷きつめるだけで十分といえます。あまり敷きすぎると硫化水素が発生する恐れもありますので気を付けます。

ライブロック・サンゴ岩

▲夜間岩陰で休息する遊泳性ハゼたち(奥)

ライブロックやサンゴ岩は遊泳性ハゼの飼育に重要といえます。遊泳性ハゼは危険が迫った時や夜間の就寝時にライブロックやサンゴ岩の隙間に隠れるからです。遊泳に支障が出ない程度に複雑にライブロックやサンゴ岩を組み合わせるとよいでしょう。

水温

▲深場にすむ魚や温帯性の魚は高水温に注意。

一般的な種は水温25℃ほど、シコンハタタテハゼやピンクダートゴビーなどのようにやや深場に生息する種や温帯性の種は20℃前後の低めの水温を好みます。ただし温帯域にも多いサツキハゼのように高水温に耐性がある種もいますのでそのような種は25℃前後でも問題ありません。

水質

▲河口付近の港で見られたサツキハゼの群れ。

硝酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩の蓄積には比較的耐性がありますが、できるだけ定期的に水換えを行い、綺麗な水質をキープするように心がけます。

サツキハゼの仲間は塩分(塩分濃度、という人もいますが誤り)のやや低めの汽水域にも見られますが、飼育する上では一般的に海水魚を飼育するような塩分でも問題はありません。

遊泳性ハゼの好む餌

▲冷凍コペポーダを捕食する遊泳性ハゼたち。冷凍プランクトンフードは与えすぎに注意。

遊泳性ハゼ全般に動物食性で、微小な甲殻類や、動物プランクトンを捕食します。しかし実際には動物食性向けの配合飼料もよく食べてくれます。観賞魚店には冷凍されたコペポーダやイサザアミなどの動物プランクトンを食べますが、そのような餌はよほど食いが悪いときか、おやつ程度に与えるにとどめて、配合飼料を中心に与えるようにします。口がやや小さ目のものが多いので、小粒の配合飼料を与えます。

基本的にすぐ配合飼料を食べてくれる個体が多いですが、なかなか食べてくれないのもいます。一番多いのが強い魚におびえているケースです。無理な混泳は注意すべきで、隠れっぱなしでやっと出てきたと思ったらぺらぺらになっていた、なんてこともあります。

遊泳性ハゼの選び方

▲やや痩せてしまっているオグロクロユリハゼ。

大型の専門店では常時3~4種の遊泳性ハゼを在庫していることが多いです。

背の肉がおちている、体がぺらぺらである、そのような個体は餌を食べていても初心者には厳しいです。また、ずっと浮かんでいて、なかなか沈まないような個体も避けます。しっかりと背肉がついていて、中層を遊泳しているものが安心です。なお遊泳性のハゼの仲間は岩の下などでじっと隠れているものも多く、遊泳していないからといって、選んではいけないわけではありません。しかし隠れているものは背肉の様子が見えにくいという問題もあります。

他の魚と同様に入ってきて間もないもの、体に傷がついている、体表に血がにじんでいる、鰭が大きく破れたり溶けたりしているものは選んではいけません。この仲間はあまり病気の心配はありませんが、皮膚につく俗にハダムシと呼ばれる生物が寄生していることがあります。

遊泳性ハゼと混泳できる魚

▲遊泳性のハゼと他魚との混泳を楽しむ水槽

▲ベラ類は注意。ただしホンソメワケベラとの混泳は可能。

▲カクレクマノミの仲間も注意が必要

遊泳性ハゼは臆病なので、混泳は遊泳性ハゼのことを第一に考えましょう。メギスやスズメダイなど気が強い魚との混泳は避けるべきです。もちろん、カエルアンコウの仲間、ミノカサゴ、オコゼの仲間などのような魚食魚との飼育もできません。ハナダイ類、デバスズメダイ、テンジクダイ類、小型のバスレット、カエルウオなどとの飼育は可能で、種類によっては小型ヤッコや、小型のベラの仲間との混泳も可能です。

底生ハゼの仲間、あるいは共生ハゼの仲間など、ハゼの仲間との混泳は問題ないことが多いです。ダテハゼ、ネジリンボウなどの共生ハゼやテッポウエビを入れ共生関係が出来た後に遊泳性ハゼを入れると、共生関係に割り込むおもしろい習性を観察することができます。また同種の遊泳性ハゼ同士の組み合わせは、ハタタテハゼ属の一部を除き小競り合いはあるものの大きな問題にはならないことが多いです。別種であればほとんど問題はありません。

カクレクマノミなどのような強い魚の存在はプレッシャーになりやすいので注意します。できればカクレクマノミなどの強い魚をいったん水槽から出して、水槽内のレイアウトを大きく変えてから、遊泳性ハゼを入れるようにします。サツキハゼの仲間はサンゴ岩などが入っていると、強い魚が入っていなくてもずっと隠れたままになっていることがあります。数か月も隠れっぱなしになっていることがあり、諦めていると出てきた、なんてこともあります。

ベラの仲間は要注意です。イトヒキベラ属やクジャクベラ属の小型のもの、ソメワケベラの仲間、カミナリベラの仲間、クギベラ属の幼魚、ミゼットラスなどの種類であれば問題ないように思うのですが、小型であってもかなり気が強いニセモチノウオやキツネベラの仲間は気を付けます。モチノウオやタキベラの仲間の大型種は遊泳性ハゼを食べてしまう恐れがあり一緒に飼育するべきではありません。

カクレクマノミ(などの強い魚)とクロユリハゼ属の組み合わせのポイントです。カクレクマノミを飼育している水槽からカクレクマノミを出して別の水槽で隔離飼育します。その間にライブロックなどのレイアウトを変更し、追加した後、遊泳性ハゼを水槽にいれます。遊泳性のハゼが水槽になれたらカクレクマノミを再度水槽に導入します。

別の水槽で隔離するといっても、きちんとしたろ過装置がなければカクレクマノミが死んでしまいますし、そうなっては隔離の意味がありません。できれば投げ込み式フィルターではなく外掛け式のフィルターを用いましょう。安価な水槽セットが販売されているので、一時的な隔離に用いる用途であればそのような水槽セットでもよいかもしれません。

遊泳性ハゼとサンゴの相性

▲遊泳性ハゼは海藻にもサンゴにも無害。

遊泳性のハゼはサンゴにいたずらをすることはないのでソフトコーラル、ハードコーラル問わずほとんど全てのサンゴと飼育することができます。陰日サンゴなど餌を必要とするサンゴと小型の遊泳性ハゼとの飼育では、小型ハゼが陰日サンゴにいきわたらなかった餌を食べてくれるので腐敗して水質が悪化するのを防ぐことが出来ます。ただし陰日サンゴは初心者には飼育が難しい種類ですし、その中のウチウラタコアシサンゴなどのように魚を捕食してしまうようなものとは飼育しにくいです。

遊泳性ハゼには痩せやすいものもおり、そのような種にはこまめに餌をあげたいのですが、多量に餌をあげすぎると水質が悪化する恐れがありますので、特にミドリイシの仲間やトサカの仲間など、デリケートなサンゴを飼育しているときには注意が必要です。

このほか注意するべき刺胞動物としてはイソギンチャクの仲間があげられます。イソギンチャクの仲間はクマノミ以外のほとんどすべての魚を餌にしてしまうおそれがありますので、一緒に飼育するのは避けます。

サツキハゼの仲間など内湾にすむ種はサンゴだけでなく海藻や海草と一緒に飼育するのも面白いでしょう。この仲間は海藻・海草にも悪さをしませんのでこのような水槽で飼育するのにも適しています。

遊泳性ハゼ飼育まとめ

  • 温和な性格の魚が多く、同種同士でも飼育可能なものが多い。
  • 45cm以上の水槽で飼育するのに適している。それ以下の水槽では窮屈。
  • 死因で多いのは飛び出しと痩せによるもの。混泳相手には注意。
  • 夜間はライブロックの隙間に眠る。複雑に組み合わせよう。
  • 水温は25℃。深場にすむ魚はもっと低い水温で。
  • 配合飼料に餌付きやすい。
  • おとなしいので他の魚との組み合わせには十分注意。
  • 痩せた個体を選ばないように注意。
  • サンゴや海藻・海草には無害。
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