2020.04.02 (公開 2020.04.01) 海水魚図鑑
ホホグロギンポの飼育方法~餌や混泳の注意点
ホホグロギンポは紀伊半島、高知県、琉球列島以南のサンゴ礁に生息するカエルウオの仲間です。本種は「カエルウオミックス」としてタネギンポやタマギンポなどとともに入ってくることが多いです。体には斑紋がなく、同じ属のモンツキカエルウオやハナカエルウオと比べると地味な種類ですが、雄の体には細い縦線が多数入り求愛の時には格好いい色彩になります。今回はこのホホグロギンポの飼育方法をご紹介します。
標準和名 | ホホグロギンポ |
学名 | Blenniella bilitonensis (Bleeker, 1858) |
英名 | Biliton rockskipper |
分類 | スズキ目・ギンポ亜目・イソギンポ科・カエルウオ族・ハナカエルウオ属 |
全長 | 10cm |
飼育難易度 | ★☆☆☆☆ |
おすすめの餌 | 海藻70など |
温度 | 25℃前後 |
水槽 | 45cm以上 |
混泳 | 細身の体なので大型魚に捕食されることもある |
サンゴとの飼育 | 可 |
ホホグロギンポって、どんな魚?
ホホグロギンポはスズキ目イソギンポ科・カエルウオ族・ハナカエルウオ属の魚で広い意味ではカエルウオの仲間になります。また昔はカエルウオ属のものとされていたこともあります。体はヤエヤマギンポなどと比べると体高が低いためか細長く見えるのが特徴です。なお写真の個体は雌と思われます。雌の体には黒い四角い斑点がならび、その下に黒い横帯が入ります。雄は正中線に大きな皮弁があり、体には雌にもあるような斑紋のほかに細い縦線が多数入るようになります。また求愛時はグレーメタリックの体になり、体側の細い縦線がより明瞭になります。
種の標準和名の由来は鰓蓋が黒くなることからとされますが、求愛時の雄の色彩からでしょうか。一方学名の種小名については本種の基産地であるインドネシアのビリトン島にちなみます。英名も同様です。
ハナカエルウオ属
▲ハナカエルウオ
本種が含まれるハナカエルウオ属は上述のようにカエルウオに近い仲間です。日本には7種が分布し、うち5種が磯で採集できます。ただし南方性のものが多く、九州以北にはほとんど見られず、和歌山や高知にもいるホホグロギンポが採集できるのみです。観賞魚として人気があるものはオレンジ色の斑点が鮮やかなモンツキカエルウオやハナカエルウオくらいで、ほかのカエルウオの仲間はめったに見られませんが、本種は他種の混じりにより沖縄などからやってくることがあります。
ホホグロギンポに適した飼育環境
水槽
全長10cm以上と、カエルウオの仲間としては比較的大きく育つ種ですので最低でも45cm水槽、できれば60cm水槽で飼育するのがよいでしょう。ほかの魚との混泳であれば60cm以上の水槽で飼育するのが安心といえます。
水質とろ過システム
ほかの多くのカエルウオの仲間と同様、水質悪化には強いのですが、ろ過をおろそかにしてはいけません。外掛けろ過槽はパワーが低く、外部ろ過槽などほかのろ過槽と併用するか、2台使うかしないと満足できないこともあります。また、構造上、水槽上にフタをしていても隙間ができやすい(飛び出しやすい)というデメリットもあります。おすすめは上部ろ過槽で、隙間ができにくく、ろ過能力も高いからです。ただし小型水槽では使いにくいでしょう。
ホホグロギンポはサンゴ水槽での飼育も楽しめます。サンゴ飼育に有用なシステムといえばベルリンシステムなのですが、このシステムで飼育するなら魚の数は絞らなければなりません。
水温
水温は22~28℃くらいです。ホホグロギンポは水温の変動が大きいタイドプールなどに生息しており、ある程度水温の変動には強い魚ですが、水温の変動が大きすぎると体調を崩してしまう可能性もあるからです。
フタ
カエルウオの仲間であり、飛び出すおそれもあるためフタが重要です。見栄えは悪くなってしまいますが隙間をしっかり埋めておくと脱走対策に効果的です。本種は採収しても網からぴょんと跳ねて逃げ出すこともあり、フタは重要です。
ホホグロギンポに適した餌
ホホグロギンポは岩や死サンゴにつく藻類を主に食べます。海藻は食べません。主に藻類食性魚向けの配合飼料を与えます。キョーリンから販売されている「海藻70」などがベストです。しかし、ほかに強い魚がいるような水槽では餌を食べないこともあります。最初のうちは静かな環境で餌に慣れさせることも大事といえるでしょう。
また最初のうちはコケもよく食べるのですが、配合飼料に慣れてしまうとコケを食べなくなることもあるので注意が必要です。
ホホグロギンポをお迎えする
▲カエルウオミックスの中に入っていたホホグロギンポ
分布域は和歌山県、高知県、琉球列島、西太平洋のサンゴ礁におよびます。和歌山などの磯採集でまれに採集できることもあるようですが九州以北ではまれなものです。琉球列島の潮だまりではごく普通にみられるものですが素早いので二つの網をもち、片方に追い込むなどしなければ採集が難しいこともあります。夜間には容易に採集することができますが、必ず複数で行動するようにします。夜の磯は非常に危険だからです。干潮時水深10cmくらいの場所でよく見られます。
海水魚店でもしばしば販売されるホホグロギンポですが「ホホグロギンポ」の名前で販売されることはまずありません。タネギンポやタマギンポなどとともに多くが「カエルウオミックス」「カエルウオsp.」などの名称で販売されています。またチャームの「カエルウオミックス」という名前で販売されているものは複数種いるものと思われますが、サンプル写真になっているのはこのホホグロギンポです。
購入する時には入荷して時間がたっているもの、状態がおちついているものを選びます。入荷直後の個体は避けるようにします。また背肉が落ちた(やせた)もの、体に白い点がついているもの、鰭が溶けているものなどは購入を避けます。
ホホグロギンポとほかの生物との関係
ほかの魚との混泳
おとなしい魚であれば混泳はできます。小型のハゼ、小型のベラ、小型のハナダイなどであれば混泳も難しいことはありません。ただし大きな口をもつ魚はカエルウオを含む小魚を捕食してしまうこともあるので混泳は避けるべきです。また性格がきついスズメダイの仲間や、自分に似た魚に攻撃を仕掛けるメギスの仲間も混泳相手としては適切ではないといえます。
ほかのカエルウオ類との混泳
▲カエルウオは性格きつめ。混泳注意
ほかのカエルウオの仲間との混泳は注意が必要です。ホホグロギンポはやや臆病なところがあるようで、カエルウオやタネギンポなど、自分より大きく強いカエルウオの仲間との混泳にはあまり適していないといえそうです。我が家ではホホグロギンポよりも小さなシマギンポ2匹と混泳していますが、現状では問題なさそうです。またカエルウオの仲間は雌同士を複数入れて問題ないことが多いですが、雄同士は争いが起きやすいので混泳は避けるようにします。
サンゴ・無脊椎動物との相性
ホホグロギンポはサンゴには無害なので、サンゴ水槽での飼育もできます。ただ巨大なディスクコーラルや、クマノミと共生するようなイソギンチャクには捕食されることもあるので、一緒に飼育するのは避けます。甲殻類との相性は悪くはないのですが、小魚を食べてしまうような大型のもの、例えばイセエビなどは避けましょう。またオトヒメエビの類も性格がきついので避けたほうが無難です。サンゴヤドカリの類やアカシマシラヒゲエビ(スカンクシュリンプ)などであれば問題ないことが多いです。
ホホグロギンポ飼育まとめ
- モンツキカエルウオなどと同じハナカエルウオ属の魚
- カエルウオミックスとして販売されることが多い
- 雌雄で色や斑紋が異なる。雄には皮弁もある
- 45cm以上の水槽で飼育したい
- できれば上部ろ過槽を使用する
- 水温は25℃がベスト。一定の水温をキープする
- フタはしっかりすること
- 海藻70など藻類食魚用の餌を与える
- やせてるものや体に異常があるもの、入荷直後のものは避ける
- ほかの魚との混泳もできるが性格がきつい魚はだめ
- カエルウオやタネギンポなどとは争うので避ける
- 捕食性の強いサンゴやイソギンチャク、大きくなる甲殻類もだめ