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2020.09.26 (公開 2019.10.01) 海水魚図鑑

遊泳性ハゼの混泳を考える~ハタタテハゼ類同士の混泳には注意

遊泳性ハゼはスズメダイなど同様に、初めて海水魚を飼育する際にすすめられることが多い魚です。丈夫で、飛び出しにさえ気を付ければ飼育しやすく、病気にもかかりにくいからです。ただ、ほかの魚と一緒に泳がせる「混泳」には注意が必要になります。しかし、注意点さえ押さえておけばほかの魚との混泳も楽しめます。今回は遊泳性ハゼ同士の混泳、あるいはほかの魚との混泳について注意すべきポイントをご紹介します。

遊泳性ハゼとは

「遊泳性ハゼ」は一般的にクロユリハゼやオオメワラスボの仲間をいいます。この2種はそれぞれクロユリハゼ科とオオメワラスボ科といい、若干異なる分類群の魚ですが、クロユリハゼ科はオオメワラスボ科の亜科とされることもあり、これらのハゼが近い系統にいるというのは事実のようです。これらのハゼは遊泳性が強く、サンゴ礁域の底から少し離れたところをすいすい泳いでいるのです。

ただし、遊泳するからといってもクロユリハゼ科の魚とは限りません。キヌバリやチャガラなどの種類も遊泳性が強いですが、これらはハゼ科の魚で、分類学的には天ぷらでお馴染みのマハゼに近い種とされており、今回は除外します。なお、遊泳性ハゼの分類や飼育方法などについては、こちらをご覧ください。

遊泳性ハゼの種類

一般に「遊泳性ハゼ」として販売されるクロユリハゼ科の魚は7属、約60種が知られており、この中には観賞魚として人気の魚種も多く含まれています。ふつう海水魚店で販売されているものはハタタテハゼ属とクロユリハゼ属くらいのもので、そのほかの属の魚はあまり見ることができません。ここではこの2属とサツキハゼ属の魚の混泳についてご紹介したいと思います。

遊泳性ハゼ混泳のテクニックと注意点

隠れ家をつくる

まず基本から。水槽で小魚を飼育する際には、魚が隠れられる場所が必要になります。サンゴ水槽ではサンゴの下やライブロックの隙間や下などに隠れますが、小型水槽でライブロックを複雑に組めないときなどは「ハゼ土管」などのアイテムも市販されており、そのようなものも入れてみるとよいでしょう。

飛び出し注意

この仲間は臆病で本当によく飛び跳ねます。魚に追われただけでなく、急に照明をつけたり、揺れなどがあった場合も飛び跳ねることがあります。飛び跳ねて水槽外へ出たら当然死んでしまいますので、水槽にしっかりフタをして飛び出して死んでしまうリスクを軽減しましょう。また水槽は静かな場所に置いておくことも重要です。

イソギンチャクとの飼育は危険

これも、遊泳性ハゼが臆病なことに起因します。遊泳性ハゼが何かに驚いたあと、イソギンチャクにつかまってしまうこともあります。イソギンチャクの種類も色々いますが、特にクマノミの仲間と共生するようなハタゴイソギンチャクや、イボハタゴイソギンチャクなどは毒性がかなり強くクマノミ以外の魚を捕食してしまうのです。ほかのイソギンチャクには毒性が弱めのものもいますが、それでもハゼを食べてしまうことがあります。つまり、遊泳性ハゼを飼育している水槽ではクマノミとイソギンチャクの共生を楽しむのは難しい、ともいえます。もっとも、これはクマノミを除くほとんどの魚にあてはまることともいえますが。

また、クマノミの種類によっては遊泳性ハゼを蹴散らしてしまう可能性もあります。遊泳性ハゼをクマノミの仲間と飼育するのであれば、最初に遊泳性ハゼを入れておき、慣れてきたころにハナビラクマノミなど、おとなしい小型のクマノミをいれるのがおすすめです。

混泳メンバーをよく考える

混泳メンバーについても十分な検討が必要です。とくに気が強いスズメダイやメギス、大型ヤッコの仲間やハゼを食べてしまう肉食性の魚との混泳は困難です。それ以外の魚であれば混泳相手のサイズの調整などでカバーできることもあります。

まずは遊泳性ハゼを最初に入れ、落ち着いてからほかの魚を追加する、という方法です。遊泳性ハゼは概ね丈夫で飼育しやすいため、最初に水槽に入れる魚として最適です。ほかの魚を水槽に入れる前にしっかり餌付けておきましょう。

複数匹入れる

▲複数匹入れるとよいことも

クロユリハゼ属の仲間は群れる習性があるものが多く、クロユリハゼやイトマンクロユリハゼなどの幼魚は浅瀬で大きな群れをつくって泳いでいます。複数匹入れてあげると1匹だけ入れるよりずいぶん安心し、早くなれるように思います。我が家ではスズメダイやベラなどさまざまな魚が入っている中にスジクロユリハゼを入れましたが、そのときは3匹入れ、そのほかにヒメユリハゼやイトマンクロユリハゼを同時に追加しました。その結果、ほかの魚が多数入っている中でも早くよく出てくれるようになりました。

ただ写真のようにカクレクマノミとオグロクロユリハゼの混泳では、先にオグロクロユリハゼを入れておき、その後カクレクマノミを追加したことによりうまくいきました。一方カクレクマノミを最初に泳がせ、その後オグロクロユリハゼを入れたら岩の下にひきこもりがちになり、死んでしまいました。やはり水槽に入れる順番も大事なようです。

遊泳性ハゼ同士の混泳

ハタタテハゼ属同士の混泳

▲ハタタテハゼとアケボノハゼの混泳例。上にはサツキハゼの姿も

丈夫で飼いやすい」として初心者にすすめられることの多いハタタテハゼ。ハタタテハゼ属は比較的強健なものが多く、カクレクマノミなど多くの種の魚との混泳ができます。しかしその一方、小型水槽で同種同士を複数飼育していると争うこともあります。

写真は60cm水槽でハタタテハゼとアケボノハゼを飼育している様子です。ろ過槽は外部ろ過槽と上部ろ過槽。ふたつのろ過槽を組み合わせることにより、高いろ過能力を発揮します。ハタタテハゼとアケボノハゼの組み合わせでは、先にハタタテハゼを入れ、慣らしてからアケボノハゼを追加するようにします。これはアケボノハゼがハタタテハゼよりも気が強いことが多いからです。ほかのクロユリハゼ属やサツキハゼ属には概ね無関心で容易に混泳できます。

クロユリハゼ属同士の混泳

▲クロユリハゼ(左4匹)とサツキハゼ

クロユリハゼ属も多くが観賞魚として販売されています。どの種も温和で同種同士の混泳はどの種においても問題ありません。ただハナハゼなど大きくなるものはほかの遊泳性ハゼの脅威になることもあるため、同じくらいの体サイズの個体同士のほうが混泳するのによいでしょう。またハナハゼは比較的大きくなるため90cmなど大きめの水槽での飼育が望ましいです。

サツキハゼ属同士の混泳

▲サツキハゼは同種同士の混泳が容易

サツキハゼ属もクロユリハゼ属同様に同種、同属同士の混泳が容易にできます。他属の遊泳ハゼとの混泳も可能ですが、この属のものは小型種が多いので体サイズには注意が必要です。長いこと水槽の奥のライブロックなどに引きこもり「死んでしまったのかな」と思っていても何週間くらいたった後に出てくる…なんていうこともあります。

遊泳性ハゼとほかの魚との混泳

遊泳性ハゼは同種や同属同士の混泳は比較的容易にできるものの、ほかの魚との混泳には注意が必要となります。とくに気が強い魚との混泳にはあまり適していないところがあります。

ハタタテハゼ属と他魚の混泳

▲ハタタテハゼとカクレクマノミ

この仲間では一番強健で、カクレクマノミや、温和なスズメダイとの混泳もこなします。アケボノハゼはハタタテハゼよりも結構強めな性格をしているものが多く、比較的混泳はさせやすいといえます。ただし、もちろん、ほかの属も同じようなことがいえますが遊泳性ハゼを捕食してしまう可能性のある肉食魚との混泳はできません。カサゴ、オコゼ、カエルアンコウ、ウツボといった明らかに「肉食」といえるような魚だけでなく、バスレットの仲間なども体サイズによってはハゼを襲って食べてしまいます。またチョウチョウウオ科のハタタテダイなどはハタタテハゼの自慢である長い鰭をつつくこともあるので注意が必要です。

クロユリハゼ属と他魚の混泳

▲イトマンクロユリハゼ・スミゾメハナハゼとカクレクマノミとの混泳

クロユリハゼは遊泳性ハゼの仲間でも臆病なものの一つです。ゼブラハゼやイトマンクロユリハゼといった種は強健なほうですが、オグロクロユリハゼやスジクロユリハゼなどは極めて臆病で引きこもって出て来ずそのまま死んでしまう、というケースがあります。

スズメダイの仲間や、カクレクマノミなど気が強めの魚を後から追加するとこのようなことが起こりやすいので。なるべくおとなしい魚と一緒に飼育することが望ましいです。イトヒキテンジクダイや共生ハゼ、小型のハナダイなどがおすすめです。面白いことにに共生ハゼとテッポウエビの共生を楽しんでいるところにハナハゼなどを一緒に飼育していると、ハナハゼは共生ハゼとエビの関係に割り込んでくることもあります。ハナハゼ以外の種も共生ハゼとの関係は概ね良好ですが、共生ハゼの口に入るサイズのクロユリハゼの幼魚などは捕食されることもあるので注意が必要です。

サツキハゼ属と他魚の混泳

▲サツキハゼ(中央の2匹)とほかの小型ハゼの混泳

▲条件次第でカクレクマノミとの飼育も可能

サツキハゼ属の魚は体のサイズが小さいので、幼魚はほかの魚との混泳は避けるのが無難です。4~5cmほどに育ったものであればほかの魚との混泳もできますが、肉食性の強い魚との混泳は厳禁です。テンジクダイの仲間も種類によってはサツキハゼ属の魚を襲って食べてしまうこともあります。混泳はピグミーゴビー、小型共生ハゼ、ヨウジウオ系などにしておいたほうが無難かもしれません。ただしタツノオトシゴはサツキハゼ属魚類のサイズが小さいと食べてしまうこともあります。

上の写真ではカクレクマノミと一緒に飼育しています。この水槽では1.最初のうちはサツキハゼだけを飼育していた、2.サツキハゼをある程度の大きさまで飼育していた、3.サツキハゼを多数飼育していた、4.隠れ家が豊富、5.慣れたあとにカクレクマノミを追加する、という条件でした。なお、この混泳をマネするときには、もしカクレクマノミに追い回されてサツキハゼが引きこもってしまった場合に対応できるよう、予備の水槽を持っておくことをおすすめします。

遊泳性ハゼ混泳まとめ

  • 丈夫で飼育しやすく初心者にもすすめられることが多い
  • 驚くと飛び跳ねることがあり。水槽にはしっかりフタをする
  • 混泳メンバーにも注意。強いスズメダイやメギス、肉食魚は厳禁
  • ほかの魚と混泳するときは最初に遊泳性ハゼを泳がせてならす
  • 同じ種類を群れで泳がせるのもよい
  • クロユリハゼ属・サツキハゼ属は同種同士の混泳は問題ない
  • ハタタテハゼ属は同種・近縁種同士で争うが他属の種には無関心
  • クロユリハゼ属ではゼブラハゼやイトマンクロユリハゼが比較的強健
  • サツキハゼもカクレクマノミとの混泳は条件次第で可能
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