2020.05.20 (公開 2020.05.19) 海水魚図鑑
タルボッツデムワーゼルの飼育方法~丈夫で飼育しやすくほかの魚との混泳も可能!
タルボッツデムワーゼルはスズキ目スズメダイ科・ルリスズメダイ属のスズメダイです。ルリスズメダイ属の魚は体が青系の色のものが多いのですが、このタルボッツデムワーゼルは体がピンク~ベージュ色で頭部が黄色というこの仲間としては珍しい色をしています。ほかのスズメダイの仲間同様飼育はしやすく、性格はルリスズメダイと比べて温和で大きめの水槽であれば比較的混泳もしやすいでしょう。今回はタルボッツデムワーゼルの飼育方法をご紹介します。
標準和名 | なし |
学名 | Chrysiptera talboti (Allen, 1975) |
流通名 | トールボッツダムゼル、トールボッツダムセル、トールボッツデムワーゼルなど |
英名 | Talbot’s demoiselle |
分類 | スズキ目・スズキ亜目・スズメダイ科・ルリスズメダイ属 |
全長 | 5cm |
飼育難易度 | ★☆☆☆☆ |
おすすめの餌 | メガバイトレッドなど |
温度 | 25℃前後 |
水槽 | 45cm~ |
混泳 | ルリスズメダイ属のなかでは比較的おとなしい |
サンゴ飼育 | 可 |
タルボッツデムワーゼルって、どんな魚?
スズメダイ科・ルリスズメダイ属の魚です。体は黄色っぽい頭部で、体はベージュからピンクに近い色で、背鰭に黒色斑があります。特に幼魚のうちは黒色斑の周りが青く縁どられていますがこれは身を守るためにあるようです。ルリスズメダイ属の魚は幼魚と成魚で色が異なっているものも多く、幼魚はきれいでも成魚では黒っぽくなる種もいるのですが、本種はそのようなことはなく、幼魚も成魚もあまり色彩的には差はありません。
名前
「トールボッツデムワーゼル」、もしくは「トールボッツダムゼル」「トールボッツダムセル」などと呼ばれることも多いです。デムワーゼルはdemoiselleと綴り、フランス語由来、貴婦人のことですが発音は「ドゥモワゼル」というのが近いようです。Damselも同様にフランス語が由来で、「ダムゼル」とすることもあれば「ダムセル」とすることもありますが、どちらも間違いとはいえません。ただしアクアリウム用ではない図鑑などでは「ダムゼル」表記が多いようです。例を挙げれば益田 一・ジェラルド・R・アレン共著「世界の海水魚」(山と渓谷社,1987)、加藤昌一・著「ネイチャーガイドブック スズメダイ」(誠文堂新光社, 2011)ほかがあります。
カラーバリエーション
分布域はインドネシアからフィジーまでの西太平洋と東インド洋です。しかしフィジー産のものは頭部が黄色く、体の大部分が黒いこと、腹鰭も黒いことが特徴でほかの地域のタルボッツデムワーゼルとは見分けることができます。フィジーからの便は現在は少なく、入荷もまれです。なお、この属の魚はほかにも海域によるバリエーションがいくつかある種がいます。ローランズデムワーゼル、スプリンガーズデムワーゼル、ルリスズメダイなど。もしかしたら海域によるバリエーションは今後それぞれ別種となっていくのかもしれません。
タルボッツデムワーゼルに適した飼育環境
水槽
小型水槽での飼育も可能ですが、うまく飼うのであれば45cm以上の水槽で飼育したいところです。ほかの魚との混泳ならば60cm以上の水槽が必要になります。
水質とろ過システム
スズメダイ科のほかの多くの種同様、水質悪化には強い魚です。ですがろ過をおろそかにしてはいけません。小型水槽であれば外掛けろ過槽、外部ろ過槽と外掛けろ過槽を使用し、60cm水槽なら上部ろ過槽が理想的です。もちろんオーバーフロー水槽が用意できるのであればオーバーフロー水槽で飼育するのが一番です。
タルボッツデムワーゼルはサンゴに悪影響を与えませんので、ベルリンシステムやゼオビットシステムなど、サンゴを飼育するための水槽システムでも飼育することができます。ただしこのようなシステムはあくまでサンゴを状態よく飼うためのシステムであり、魚を多く入れることはできません。
水温
原則的に25℃をキープするとよいでしょう。大体22~28℃くらいで状態よく飼育できますが、温度が頻繁に2℃以上上下するのはよくありません。水量に適したヒーターとクーラーを使用し、水温を一定に保つようにしましょう。
隠れ家
タルボッツデムワーゼルは縄張りをつくるタイプのスズメダイです。水槽内にはライブロックやサンゴ岩などの隠れ家を入れてあげましょう。
タルボッツデムワーゼルに適した餌
食性は雑食性で微小動物や動物プランクトン、藻類などを食べます。飼育においては餌は配合飼料を与えるようにします。タルボッツデムワーゼルもほかのスズメダイ同様、配合飼料をよく食べてくれるので助かります。口の大きさなど考えますとキョーリンの「メガバイト」シリーズであればSサイズがよいです。メガバイトにはレッド、グリーンの2種類がありますが、藻類も食べるようですのでメガバイトグリーンのほうがよいでしょう。
たまにコペポーダやホワイトシュリンプなどのプランクトンフードを与えるのもよいのですが、この手の餌は水を汚しやすいため与えすぎは水質の急激な悪化につながることがありますので注意します。
タルボッツデムワーゼルをお迎えする
タルボッツデムワーゼルは日本には分布しておらず、飼いたいのであれば購入するしかありません。タルボッツデムワーゼルは多くの海水魚店で販売されている魚で、非常に安価な魚です。しかしそれゆえ、あまりいい扱いをされていないこともあるため、購入時は注意が必要です。また産地もインドネシアであることが多く、大量に来る分、状態もあまりよくないことがあります。その一方やや高価なフィジーなどのものも輸送時間が長いためか状態を落としている個体もいるようですので注意が必要です。
購入する際のポイントとしては、入荷してすぐの個体や、岩陰でじっとしている個体は避けるようにします。もちろん魚の体のようすもチェックするのを忘れないようにします。例えば鰭がぼろぼろになっているものや溶けているもの、体表や鰭に白い点がついていたり赤くただれているもの、口のところが白くなっているものなどは危ないです。このようなスズメダイは安くて丈夫だから、と通販での購入をおすすめされることがありますが、安価な魚だからこそしっかりと様子を見て購入したいところです。
タルボッツデムワーゼルとほかの魚との相性
ほかの魚との混泳
▲タルボッツデムワーゼルとほかの魚との混泳例
ルリスズメダイ属の魚ですが、その中では比較的おとなしめな性格をしているように思います。ただしそれでもほかの魚との混泳は注意が必要で、最低でも60cm以上の水槽で混泳させたいものです。もちろん極端に臆病な魚(遊泳性ハゼなど)や、逆に非常に気が強い魚(大型のスズメダイ、大型のメギスなど)、肉食魚(オコゼ、カサゴ、カエルアンコウなど)は避けます。同種同士の飼育はある程度広い水槽では可能ですが、小型水槽ではけんかしやすいので避けます。
サンゴ・無脊椎動物との相性
スズメダイ科の魚はほかの魚とは争うことがあるものの、サンゴには無害で多くのサンゴと組み合わせられます。水深30m以浅に生息しており、サンゴはLPS、SPS、ソフトコーラルいずれの組み合わせも似合います。ただしクマノミと共生する大型のイソギンチャクの仲間は魚を捕食することがありますので避けたほうが無難でしょう。
一方甲殻類については、スズメダイの仲間を攻撃するようなもの、例えば大きなエビ、大きなカニ、大きなヤドカリなどは一緒に飼育してはいけません。クリーナーシュリンプはおおむね無害ですが、オトヒメエビは小さな魚を強大なハサミで襲うことがありますので、おすすめできません。
タルボッツデムワーゼル飼育まとめ
- ルリスズメダイに似ているが黄色い体が特徴的なスズメダイ
- 丈夫で飼育しやすいため初心者にもおすすめ
- フィジーなどでは体の後方が黒っぽいバリエーションも見られる
- 「トールボッツデムワーゼル」などの表記も見られる
- 小型水槽での飼育もできるが初心者には45cm以上の水槽が安心
- 丈夫で飼育しやすいが高いろ過能力のあるろ過槽が欲しい
- 水温は25℃前後を一定に保つようにする
- ライブロックやサンゴ岩などの隠れ家を入れてあげたい
- 餌付きはよくすぐ配合飼料を食べてくれる
- 安価な魚であるが購入時は状態に注意。来たばかりの個体もだめ
- ほかの魚との混泳もできるが弱い魚や逆に強すぎる魚との混泳は避ける
- サンゴとの相性は良好