2020.09.26 (公開 2019.08.30) 海水魚図鑑
ブラックテールクロミスの飼育方法~綺麗かつおとなしい性格で混泳も可能
ブラックテールクロミスはインド洋に生息するスズメダイの仲間です。海水魚店ではこの名前でよばれることはほとんどなく、「ヒメスズメダイ 東アフリカ産」として販売されることがほとんどです。しかしながら本種は日本から西太平洋にすむヒメスズメダイとは別種とされています。本種もヒメスズメダイ同様体に青色点が並んでとてもきれいで、模様は幼魚も成魚も大きな変化は見られません。
標準和名 | なし |
学名 | Chromis nigrurus Smith, 1960 |
英名 | Blacktail chromis |
分類 | スズキ目・スズキ亜目・スズメダイ科・スズメダイ属 |
全長 | 約7cm |
飼育難易度 | ★★☆☆☆ |
おすすめの餌 | メガバイトレッドなど |
温度 | 25度前後 |
水槽 | 45cm以上 |
混泳 | 多くの魚と組み合わせられる |
サンゴ飼育 | サンゴとの組み合わせも楽しめる |
ブラックテールクロミスって、どんな魚?
▲ブラックテールクロミス
ブラックテールクロミスは、スズメダイ科スズメダイ属の魚です。この属はスズメダイ科の中でも特に大きなグループでおよそ100種類がいるともいわれます。アクアリストにとってお馴染みのデバスズメダイやブルークロミスといったものもこの属に含まれています。小型のものは(スズメダイ科としては)おとなしい性格をしており、多くの魚と飼育することができます。本種もあまり大きくならず、ほかの魚との混泳も可能です。
うれしいことにこの種は幼魚も成魚も、ほとんど模様の変化はありません。成魚でも全長7cmほどの小型種ですが、販売されているものはもっと小ぶりのものが多いです。
ヒメスズメダイとの違い
ブラックテールクロミスは、よく「ヒメスズメダイ 東アフリカ産」なる名前で販売されていますが、日本にも生息するヒメスズメダイとは別種です。ヒメスズメダイとブラックテールクロミスの2種の違いは微妙なものですが、尾鰭の色彩が若干異なっているようです。
この2種によく似たものとしてはもう1種ラインドクロミスが西太平洋から東インド洋に分布しています。いずれにせよ、「ヒメスズメダイ 東アフリカ産」として販売されているものは間違いなく本種、といってもよいのかもしれません。
故郷・アフリカの海
ブラックテールクロミスはインド洋(東アフリカ~モルディブ、セイシェル、モーリシャス、ココスキーリング)に広くいますが、ケニアなど東アフリカの海域に多く生息しています。アフリカは東岸がインド洋、北~西岸が大西洋や地中海、エジプトやスーダンなどは紅海に面しており、それぞれ生息している魚が大きく異なっています。
東アフリカの海では日本の近海で見られるような魚も多くいますが、本種とヒメスズメダイの関係のように、見た目はよく似ているが別種、という魚もいます。またサザナミヤッコなどは日本のものと若干趣が異なります。ヤッコではほかにイヤースポットエンゼルフィッシュやセダカヤッコ(マクロスス)などもこの海域に生息しています。また東アフリカ沖に浮かぶ島国モーリシャスには固有の珍しい魚がいろいろ生息していますが、便数が少なく入荷は極めてまれで、入ってきても驚くほど高価です。
西アフリカは喜望峰やスエズ運河に阻まれ、インド洋の魚はそれ以上分布を広げることができません。しかしながら変わった魚が多く、チョウチョウウオではロブストバタフライフィッシュやマルセラバタフライフィッシュ、ヤッコではアフリカヌス、ハタの仲間でカラフルなユカタハタの仲間のブルースポッテッドハインドなどが生息していますが、魚種は多くはありません。エジプトやスーダンなどの紅海沿岸にはゴールデンバタフライフィッシュやソハールなど固有種が多く分布し、黒い点のないトゲチョウチョウウオもこの海域だけで見られるユニークなものです。
ブラックテールクロミス飼育に適した環境
水槽
ブラックテールクロミスは45cm以下の小型水槽でも飼育できますが、初心者であれば水量が多く安定して飼育できる60cm以上の水槽での飼育がおすすめです。
水質とろ過システム
スズメダイの仲間は丈夫で、水質悪化にも比較的耐えられますが、本種はその中では敏感かもしれません。できるだけ綺麗な水で飼育しましょう。ろ過は60cm未満の水槽であれば外部ろ過槽をメインにし、外掛けろ過槽か小型のプロテインスキマーをつけます。外部ろ過槽は酸欠になりやすいところがありますので、そこをほかのろ過槽もしくはプロテインスキマーでカバーするのです。
60cm以上の水槽であれば選択肢は増えます。上部ろ過槽、もしくは上部ろ過槽をメインにして外部ろ過槽を使用する方式でも十分飼育できます。
もちろんオーバーフロー水槽でも飼育できます。サンゴを飼うようなベルリンシステムやゼオビットシステムなどでの飼育もよいでしょう。ただし、これらのシステムはサンゴを飼育するためのシステムであり、魚を飼育するシステムではないことに注意します。ブラックテールクロミスはサンゴにダメージを与えることはなく、サンゴ水槽によく似合う魚といえます。
水温
水温は25℃前後をキープします。もちろん水温が大きく上がったり下がったりするようでは白点病などの病気になってしまうことがあります。本種はスズメダイのなかでは白点病にかかりやすいようで注意が必要です。予防のためには殺菌灯の設置も有効ですが、常に一定の水温をキープして病気を予防します。
ブラックテールクロミスに適した餌
▲配合飼料もよく食べてくれる
自然下では動物プランクトンや魚卵、底生小動物など微細な餌を捕食しています。飼育下ではすぐに粒状の配合飼料を食べるため、餌付けについてはあまり問題はありません。どうしても配合飼料を食わないときは冷凍コペポーダなどを与えますが、このような餌は水を汚すことがあるので、量はひかえめにします。
ブラックテールクロミスをお迎えする
日本には分布しておらず、購入に頼る必要があります。
日本から遠く離れたケニア便などで入ってくるため、着状態が不安定なこともあります。長旅の疲れが十分癒え、餌をよく食べているものを選ぶようにします。なお、鰭や体表にただれや傷、白点があるものや、鰭が溶けているようになっているものは選んではいけません。ぼろぼろに裂けているものも選ばない方がよいでしょう。
ほかの生物との相性
ほかの魚との混泳
▲我が家での混泳例。我が家ではヤエヤマギンポ以外にも多くの魚と飼育している
ブラックテールクロミスはスズメダイの仲間としては温和ですので、多くの魚との混泳を楽しむことができます。もちろんブラックテールクロミスを捕食してしまうおそれがある魚、たとえばカサゴの仲間、ハタの仲間、カエルアンコウなどとの混泳は避けます。
性格はスズメダイの仲間では温和な方ですが、自分よりも大きめのヤノリボンスズメダイ、イエローフィンダムゼル、ソラスズメダイ類などにも物怖じしません。ただしミツボシクロスズメダイなど、かなり気が強いスズメダイとの混泳は避けるべきかもしれません。
サンゴ・無脊椎動物との相性
サンゴには無害ですので、多くの種類のサンゴと組み合わせられます。浅場から30mくらいまで見られるようで、ミドリイシなどのSPS、ハナガタサンゴやキクメイシなどのLPS、ソフトコーラルいずれも似合います。ただしイソギンチャクのうち、クマノミの類と共生するようなものには食べられてしまうおそれもあるため、組み合わせない方がよいでしょう。
甲殻類はスズメダイを捕食しないものと組み合わせます。サンゴヤドカリ、アカシマシラヒゲエビ(スカンクシュリンプ)、シロボシアカモエビ(ホワイトソックス)、サラサエビやサンゴモエビの類は問題ありません。大きめのカニや大きめのヤドカリ、イセエビなどは小魚を食べてしまうおそれがありますので組み合わせない方がよいです。クリーナーシュリンプはオトヒメエビの仲間の大きなものは小魚を食べてしまうことがあるのでおすすめできません。
ブラックテールクロミス飼育まとめ
- 東アフリカに生息するスズメダイの仲間
- 「ヒメスズメダイ 東アフリカ」として販売されるがヒメスズメダイとは別種
- 幼魚も成魚も大きな色彩や斑紋の変化はない
- 60cm以上の水槽で飼育するのがおすすめ
- 水質悪化にはやや敏感な印象、しっかりしたろ過装置を
- 水温は25℃で安定させる
- 配合飼料もよく食べる
- 入荷直後の個体は購入してはいけない
- 鰭や体表にただれがあるものや白い点がついているのも避ける
- スズメダイの仲間だがさまざまな魚との混泳が楽しめる
- サンゴとの関係も良好。甲殻類の大型のものは避ける