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2020.09.22 (公開 2019.11.14) 海水魚図鑑

クモギンポの飼育方法~暖かい海をこのむナベカの仲間

クモギンポは日本の太平洋岸、琉球列島、海外では済州島などで見られる魚です。カエルウオやヤエヤマギンポと同じイソギンポ科の魚ではありますが、これらの魚とは系統的には離れているようで、残念ながら水槽の壁面やライブロックにつくコケはほとんど食べてくれません。ただ、面白い泳ぎ方や可愛い顔を楽しむことができる魚です。丈夫で飼いやすく初心者にもおすすめできます。

標準和名 クモギンポ
学名 Omobranchus loxozonus (Jordan and Starks, 1906)
分類 スズキ目・ギンポ亜目・イソギンポ科・ナベカ族・ナベカ属
全長 9cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトグリーンなど
温度 23~27度(25℃前後)
水槽 45cm以上
混泳 同じくらいの大きさの魚と混泳できる
サンゴ飼育 イソギンチャクやケヤリムシなどは注意

クモギンポって、どんな魚?

クモギンポはスズキ目・イソギンポ科の海水魚です。体は細くにょろっとしており、ドジョウなどにも似ていますが、この細い体はある種のドジョウのように、岩の隙間や、岩にあいた孔などに潜りこむのに適しているようです。大変丈夫で飼育しやすく、初心者でも簡単に飼育でき、飼育下でも何年も生きます。

分類

クモギンポはイソギンポ科のナベカ族に含まれます。そのため、同じイソギンポ科のカエルウオやヤエヤマギンポなどとは分類学的にはだいぶ離れています。また鰓孔は小さく、左右の鰓膜が連続しないという特徴もあります。食性が異なるためか、口の形もカエルウオの仲間とは大きく異なっています。

本種を含むイソギンポの分類についてはこちらもご覧ください。

ナベカとの違い

▲ナベカ

クモギンポは北海道から九州沿岸にすむナベカと近い仲間です。ナベカとの違いはまず体色で、ナベカは鮮やかな黄色なのに対し、クモギンポは体が茶色っぽいです。またナベカの体側前半には太い黒色帯がありますが、クモギンポは体に斜めの黒色帯が入ります。また、体の後方にクモギンポにはない黒色斑が多数あるのも特徴といえるでしょう。

また、ナベカは高水温に弱いらしく、琉球列島にはいないのですが、クモギンポは九州西岸、相模湾以南に分布し、琉球列島には多くいます(このほか千葉方面でクモギンポらしきものを見たことがあり)。鹿児島県種子島で採集された個体をもとに新種記載されたようです。

なお、日本産ナベカ属はこのほかにイダテンギンポ、トサカギンポ、ゴマクモギンポ、カワギンポがいます。イダテンギンポとトサカギンポは本州~九州の内湾や河口域に見られ、一方ゴマクモギンポ、カワギンポは日本国内では八重山諸島の河口域に見られます。沖縄本島ではナベカ属は本種くらいしか見られませんが、近縁属のクロギンポやカラスギンポなどを見ることができます。クロギンポ属は日本では1種しかいませんが、フィリピンなどからくる「イエローテールブレニー」と呼ばれる種はこのクロギンポ属の種です。

なお、ナベカの飼育方法についてはこちらをご覧ください。

雌雄の違い

▲クモギンポの雄と思われるもの。尾鰭の先端が長く伸びる

クモギンポには、尾鰭の上下が長く伸びるものと、長く伸びないものがいます。これは雌雄の違いだと思われます。また雄と思われるものはたまに体を黒っぽくして、背鰭にメタリックブルーの斑紋がでることもあり、格好よくなります。

クモギンポ飼育に適した環境

水槽

小型水槽でも飼育できますが、初心者は少なくても45cm水槽が欲しいところです。とくにクモギンポを複数飼育する場合は水槽は大きいものが有利になります。

水質とろ過システム

クモギンポは内湾のタイドプールに生息しているため、比較的水質悪化に耐えられるイメージがありますが、それでもなるべくきれいな水で飼育してあげましょう。外部ろ過槽や外掛けろ過槽でも飼育できますが、これらを併用するのがよいです。それより大きな水槽では上部ろ過槽を使うのがおすすめです。もちろん、オーバーフロー水槽にしてサンプでろ過すると高いろ過能力が得られるのでおすすめです。

クモギンポはサンゴ水槽での飼育も可能です。ベルリンシステムなどサンゴ飼育のためのシステムでの飼育も可能ですが、魚の入れすぎには注意が必要です。

水温

水温は25℃前後(23~27℃)を保つようにします。29℃まで耐えられることを確認していますが、水温の変動が大きいと体調を崩すこともありますのでなるべく安定した水温で飼うようにしましょう。

隠れ家

▲隠れ家を作ってあげたい

クモギンポは岩の隙間などに隠れる習性があります。水槽でもライブロックやサンゴ岩、専用の土管などで隠れ家を作ってあげるようにしましょう。

クモギンポ飼育に適した餌

クモギンポは雑食性の魚で、微小な動物などを主に食べています。飼育下では配合飼料をよく食べてくれるので、餌付けに苦労することはほとんどないでしょう。メガバイトレッドでもよいのですが、わずかに藻類も食べているようで、メガバイトグリーンなどを与えてもよいでしょう。ただし藻類を食べる、といっても、水槽のコケは残念ながらほとんど食べてくれません。

コケはほとんど食べない

クモギンポはイソギンポ科・ナベカ族の魚で、カエルウオの仲間とは分類学的にはやや離れています。そのためコケはほとんど食べません。腹が減るとコケをつつくこともありますが、積極的にコケをたべるような種ではないので、コケとりとしての役目は果たせません。

コケを食べてもらうのであれば、クモギンポではなく、ヤエヤマギンポやカエルウオ、タマギンポなどにお願いした方がよいでしょう。

クモギンポをお迎えする

クモギンポはたまに観賞魚店で販売されていますが、販売されていることは少ないです。販売されているものはほぼ100%沖縄からくるので、状態は概ね良好ですが、痩せているもの、体に傷やただれがあるもの、鰭に白い点があったり、鰭が溶けているものなどは購入してはいけません。とくに本種は小型で安価であることもあり、店舗では雑な扱いがされやすいのです。

紀伊半島や四国・九州の太平洋岸や長崎県などでは磯で採集できます。生息場所はごく浅い潮溜まりですが、くねくねと網を避けるように泳ぐため網へ入れるのに苦労することがあります。2本の網を用意すれば楽に採集できるでしょう。小さな岩孔の中に潜んでいることもあり、孔から追い出すようにして網の中に入れてもよいでしょう。

クモギンポとほかの生物との関係

同種同士の混泳

同種同士では争いますので、小さな水槽では複数飼育はやめた方が無難です。60cmくらいの大きさの水槽であれば複数飼育も可能ですが、その場合もほかの魚と組み合わせるとよいでしょう。また隠れ家も多数入れてあげましょう。

ほかのカエルウオとの混泳

▲シマギンポ。左下にクモギンポの姿も

クモギンポはほかのカエルウオの仲間とは系統的に離れており、カエルウオの仲間との混泳には問題が少ないです。我が家ではカエルウオ、ヤエヤマギンポ、アオモンギンポといったカエルウオの仲間と混泳していましたが、特に問題はありませんでした。

ほかの魚との混泳

▲クモギンポとほかの魚との混泳例

クモギンポは同種同士ては争うこともあるものの、他魚にはちょっかいを出すことは少なく、小型ヤッコ、共生ハゼ、おとなしめのスズメダイなどいろいろな魚と混泳を楽しむことができますが、バスレットの仲間など、肉食性が強い魚との混泳には適していません。クモギンポは細い体をしており、そういう肉食性の強い魚と入れると食べられてしまうからです。

サンゴ・無脊椎動物との相性

▲サンゴ水槽での飼育もできる

クモギンポはサンゴ水槽での飼育もできます。しかしLPSにペレット状の「バイタリス」などを給餌していると餌を奪ってしまうこともあります。またクマノミと共生するような大型イソギンチャクと飼育されると捕食されてしまうので一緒には飼育できません(マメスナギンチャクや小型のディスクコーラルは問題ありません)。またカンザシ系のゴカイは捕食してしまうこともあるため注意が必要です。

クモギンポ飼育まとめ

  • にょろにょろ動くドジョウのような見た目の海水魚
  • 本州~九州にすむナベカの近縁種
  • カエルウオやヤエヤマギンポとはやや異なるグループ
  • 雄は尾鰭がやや伸び背鰭に斑点が入る
  • 45cm以上の水槽で飼育したい
  • 水質悪化には強いがろ過槽はしっかりしたものを
  • 丈夫で高水温にも耐えられるが水温は一定にする
  • 隠れる場所が欲しい。複数飼育では特に重要
  • コケはほとんど食べないので配合飼料を与える
  • 磯で採集することができる
  • 同種同士でも飼えるが争う
  • ほかのカエルウオとも争うので注意
  • 肉食性の魚とは飼育できない
  • サンゴとの飼育も可能だがイソギンチャクに食われることも
  • 逆にカンザシゴカイは食べてしまうこともある
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