2019.12.08 (公開 2018.05.14) 海水魚図鑑
ナベカの飼育方法~採集も飼育も容易だが餌に注意
ナベカは鮮やかな色彩が特徴的なイソギンポの仲間です。
派手な色彩から熱帯魚と思われがちですが温帯性の魚で、沖縄などの亜熱帯の海では見ることができません。
標準和名 | ナベカ |
学名 | Omobranchus elegans (Steindachner, 1876) |
分類 | スズキ目・ギンポ亜目・イソギンポ科・ナベカ族・ナベカ属 |
全長 | 7cm |
飼育難易度 | ★☆☆☆☆ |
おすすめの餌 | メガバイトレッド、冷凍イサザアミ |
温度 | 24~26度 |
水槽 | 30cm以上 |
混泳 | 小型ハゼは注意 |
サンゴ飼育 | 基本的に可 |
ナベカってどんな魚?
ナベカはイソギンポ科の魚です。イソギンポ科の魚は種類が多く、フタイロカエルウオ、カエルウオ、テールスポットブレニー、モンツキカエルウオ、セダカギンポ、ヒゲニジギンポなど観賞魚として、あるいは水槽の壁面などに生えるコケを食べてくれる「掃除屋さん」としてよく知られているものが多くいます。
ただしイソギンポ科とはいえ、コケ取り魚ともされているカエルウオとは若干離れたグループのようで、付着藻類を主食としているカエルウオと異なり雑食性のようです。
ナベカ属の魚はおよそ20種類が知られています。いずれもインド-西太平洋に生息しており、大西洋では南アフリカ周辺にのみ生息していましたが、日本を含むインド-西太平洋に生息するイダテンギンポが西大西洋にも進出して外来魚となっています。
ナベカの魅力は何と言っても鮮やかな黄色の体です。この体色から熱帯魚と間違えられることもありますが、温帯性の魚で関東の磯でも周年見られます。卵は貝殻などに産み付けられ雄は卵を保護する習性をもっています。
ナベカに適した環境
ナベカを含むイソギンポ族・ナベカ族の飼育方法では基礎的なものを以前ご紹介しました。こちらの記事もご参照ください。
水槽
ナベカは大きくても10cm以下で、小型水槽でも終生飼育できます。他の魚と飼育するのであれば45cm以上の水槽で飼育するとよいでしょう。初心者であれば、45cm水槽で飼育すれば管理も楽です。
水質
水質にはあまりうるさくはありませんが、できるだけ硝酸塩濃度を低く保つようにしたいものです。外部ろ過槽よりは上部ろ過槽、小型水槽であれば外部ろ過槽と外掛けろ過槽の併用、もしくは小型プロテインスキマーを併用するのがおすすめです。基本的にはたいへん丈夫で飼いやすい魚といえます。
水温
温帯性の魚ですが、25℃でも飼育できます。我が家でも水温25℃で飼育していますが、特に体調を崩したようなことはありません。ただそれより水温が上がってしまったり、短期間で大きく水温の変動があるようではよくありません。クーラーやヒーターを使用し、年中25℃で飼育するようにしましょう。
隠れ家
ナベカは自然下では岩の隙間などに隠れています。水槽で飼育する場合もアクセサリなどを入れてあげましょう。サンゴ水槽で飼育すると、枝状サンゴの中に隠れたりします。小型水槽ではおすすめしませんが、複数飼育するのであれば大量に隠れ家を入れてあげましょう。
市販のもののほか、カキの殻などもよい隠れ家です。漁港で潮が引いたとき、干上がりそうなカキの殻の中に入っていたナベカを採集したこともあります。
ナベカに適した餌
雑食性で餌付きもよく、適した水温で飼育し、状態さえまともであればすぐに配合飼料を食べてくれるはずです。配合飼料は水に沈みやすいペレットフードがおすすめでよく食べてくれます。どうしても食べない場合は、冷凍のホワイトシュリンプやブラインシュリンプなどを与える必要があります。
カエルウオの仲間はコケを掃除するために入れられることがありますが、同じイソギンポ科の魚であるナベカは水槽に付着するコケはあまり食べてくれません。
ひとくちに「イソギンポ科」といっても、食性はさまざまです。たとえばサツキギンポやヒゲニジギンポは動物プランクトン食性、ニセクロスジギンポなどは他の魚の皮膚を食いちぎったりプランクトンを食べます。ニラミギンポ属の仲間はコケを食べたりプランクトンを食べたりします。カエルウオ属やモンツキカエルウオの仲間は付着藻類を主食とし、ガラスなどに生えたコケも食べてくれます。セダカギンポなどのように生きたサンゴを捕食するものまでいます。
このイソギンポ科やチョウチョウウオ科などのように、ひとつの科の中でも種類により食性が大きく異なるものを飼育するときは、図鑑などで食性をあらかじめ調べておく必要があります。
ナベカの入手方法
ナベカは日本の広い範囲に生息しますが、先ほども述べたとおり、沖縄や奄美など亜熱帯の地域では見られない魚です。また海外では朝鮮半島や中国の一部に分布するのみです。
入手方法は自分で採集する、または近海魚に強い観賞魚店で購入する、の二通りがあります。
採集する
▲初夏の千葉県の磯。海藻が多い潮溜まりでナベカを採集した。
▲日本海側で採集したナベカ
▲暖かい海をこのむクモギンポ
岩礁に生息する種で、水深1m以下の潮溜まりでも多くみられる種類ですので、採集は難しくありません。温帯性の魚ですので、ほとんど一年中採集することができます。岩の下などに隠れていることも多く、岩棚の下を探したり、岩をひっくり返したりして探します。探し終わったら岩を元通りにしておきましょう。
日本海側や太平洋側、瀬戸内海沿岸に見られますが水温が高い場所ではあまり見られないようです。水温が高い和歌山や高知の潮溜まりでは本種とよく似たクモギンポという種がみられます。飼育方法はナベカと同様ですが、高水温にかなり強いです。ただ色彩はナベカと比べて地味です。
購入する
▲ナベカ購入時のポイント
近年は観賞魚店でも販売されていることがあります。近海海水魚に強いお店であれば、在庫していることも多いです。購入するときは、体表が赤くなっていないか、鰭がぼろぼろになっていないか、体表や鰭に細かい白い点がついていないかなど、注意してみてみましょう。鰭の基部にある大きな白点は斑紋ですので、気にしなくてもよいでしょう。もちろん、入荷して間もないものも購入は避けるべきといえます。
入荷もしくは採集直後を除き、病気にはあまりかかりにくく飼いやすい魚といえます。小魚ですが4~5年ほど飼育することができます。
ナベカと他の生き物との相性・混泳
ナベカは同種同士で争うこともありますので、小型水槽では1匹のみにとどめておくのが無難といえます。他の魚との混泳が楽しいでしょう。
他の魚との混泳
▲ナベカとヒレナガネジリンボウの争い
ナベカは25℃くらいの水温でも長期飼育が可能ですので、熱帯性魚類との混泳も可能です。温和なスズメダイやカクレクマノミなどの小型のクマノミ属、カエルウオの仲間、小型ヤッコなどと混泳できます。
ただしやや性格がきつめですので小型ハゼなどと混泳するときは注意が必要です。逆に大型のスズメダイなど気が強すぎる魚との混泳はやめた方がよいでしょう。またハタの仲間やカサゴ、オコゼ、カエルアンコウと飼育するとナベカが餌になってしまうおそれがありますのでやめましょう。
問題が発生したらナベカを隔離ケースで飼育するとよいでしょう。一旦飼育した個体には寄生虫などがついているおそれがあるため、採集した場所に逃がすこともしてはいけません。
サンゴ・無脊椎動物との相性
▲ゴカイ類との飼育は注意
サンゴとの飼育は可能ですが、ケヤリムシなど環形動物の仲間などは突いてしまうこともありますので注意が必要です。また甲殻類なども極小サイズのものは捕食してしまうおそれがありますので気をつけましょう。
一方細身な体をしており、大きなエビ・カニ類、あるいはイソギンチャクの仲間の餌になってしまうおそれがありますのでこれらの生き物との飼育は避けなければなりません。経験上はサンゴヤドカリの仲間、フシウデサンゴモエビ、サラサエビなどとは同居も可能です。クリーナーシュリンプは概ね大丈夫ですが、オトヒメエビの仲間は大きなハサミでナベカやハゼなどの動きが遅い魚を餌にしてしまいますので危険です。
ナベカの飼育方法まとめ
- 熱帯魚に見えるが温帯性の魚。沖縄などにはいない
- 小型水槽での飼育も可能だが45cm以上の水槽がおすすめ
- 水質にはあまりうるさくないが、硝酸塩が蓄積されすぎるのはよくない
- 水温は25℃で問題ないが、それ以上上がるようならクーラーが必要
- 岩の下や隙間などに隠れる。隠れ家を作ってあげたい
- 配合飼料をよく食べる。コケはカエルウオほどは食べない
- 本州の磯でも採集できる。関東では周年見られる
- 近海魚に強い海水魚店で販売されていることも
- 同種同士は争うので注意
- 性格は若干きつめ。小型のハゼとは争うことも
- 逆にスズメダイ科の大型種や肉食魚との混泳は危険
- ゴカイ類はつつくことも
- カニやエビ、イソギンチャクなども要注意