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2020.03.16 (公開 2017.06.25) 海水魚図鑑

ヤエヤマギンポの飼育方法~餌・混泳の注意点

ヤエヤマギンポは眼の上のまつ毛のような皮弁が可愛いカエルウオの仲間です。可愛い眼や口なども魅力的。体は灰色っぽくて派手とは言い難いのですが、かわいらしさ、そして水槽に生えるコケを食べてくれるということにより、どこの海水魚店でも見られる人気の魚になりました。カエルウオの仲間では比較的大きくなり、体長10cmを超えます。

標準和名 ヤエヤマギンポ
学名 Salarias fasciatus (Bloch, 1786)
分類 スズキ目・ギンポ亜目・イソギンポ科・カエルウオ族・ヤエヤマギンポ属
全長 10cm超
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 海藻70メガバイトグリーン
温度 23~27度
水槽 45cm以上
混泳 多くの魚と飼育できる
サンゴ飼育

ヤエヤマギンポって、どんな魚?

▲ヤエヤマギンポ

ヤエヤマギンポはサンゴ礁に生息する普通種で、カエルウオの仲間ではやや大きくなり、全長10cmを超えます。眼の上にある「まつ毛」のような皮弁が特徴ですが、色彩は灰色っぽく、淡色や赤褐色の体色がある程度で、あまり派手な魚ではありません。

ヤエヤマギンポ属の魚は13種が知られており、みなインド-太平洋域に生息し、東太平洋や大西洋には生息していません。うち日本には3種が生息し、本種のほかにシマギンポとヒレナガカエルウオが分布しています。しかし観賞魚としては流通が少ないのが残念なところです。

近縁種シマギンポ

▲ヤエヤマギンポ

▲シマギンポ

ヤエヤマギンポによく似たものにシマギンポという種が知られています。琉球列島以南のインド-西太平洋に分布するヤエヤマギンポと異なり八丈島・和歌山県以南に分布する日本固有種です。大きさはヤエヤマギンポよりも小さく、胸鰭基部付近に大きく目立つ斑が一つあること(青矢印、ヤエヤマギンポでは小さ目の白斑が二つほどある)、体側の腹方の斑紋が細長いこと(赤矢印、丸みを帯びる)、雌雄ともに正中線皮弁をもつこと(雌雄ともに持たない)、眼上方の皮弁は分岐しない(分岐し「まつ毛」に例えられる)などの違いがあります。

ヤエヤマギンポ飼育に適した水槽

水槽

ヤエヤマギンポはカエルウオの仲間では大きくなるもので、体長10cmを超えます。小ぶりのものも販売されていますが、できれば45cm以上の水槽で飼うようにしましょう。他のカエルウオの仲間や他魚との関係も考えると、60cm以上の水槽で飼育するようにしたいものです。

水質とろ過システム

やや水質悪化への耐性がありますが、できるだけ綺麗な水で飼育してあげたいところです。ろ過システムは上部ろ過槽やオーバーフローがおすすめです。底面ろ過槽もよいでしょう。外掛けろ過槽は手軽ではありますがろ過能力は低く、外部ろ過槽は多くのろ材を入れられますが密閉式のろ過槽で酸欠になりやすいので、ほかのろ過槽と組み合わせるべきです。

サンゴに悪戯することもなく、ベルリンシステムなどサンゴ中心の飼育システムでも飼育することができます。ただしサンゴ中心のシステムでは多くの魚を入れることができないので注意が必要です。

水温

ヤエヤマギンポは熱帯・亜熱帯の炎天下になるようなサンゴ礁域にも生息していて、30℃近くの場所でも耐えられるようですが、水槽飼育ではもう少し低い水温の方が良いでしょう。23~27℃くらいが適温です。また水温の変動が激しいといくら丈夫なヤエヤマギンポといえど弱って病気になってしまうこともあるので、水温を確実にキープします。

フタ

浅海のタイドプールに生息していますがカエルウオほどジャンプ力が強いというわけでもないですので、あまり神経質になることはありませんが、ちゃんとフタをしておいて飛び出しを防ぐようにします。

底砂

ヤエヤマギンポだけを飼育するのであれば底砂をあまり必要としません。魚水槽なら砂を敷かないか、ごく薄く敷くようにします。サンゴ水槽ならもう少し厚めの方が良いでしょう。他の魚やサンゴに合わせるとよいでしょう。

個人的には砂を薄く敷いてあげるのがおすすめです。砂を厚く敷くとさまざまなものが蓄積され、硫化水素などが発生するおそれもあり、これはおすすめしません。

ヤエヤマギンポに適した餌

ヤエヤマギンポを水槽の「コケ取り」として入れている水槽もありますが、それだけではヤエヤマギンポの腹を満たすことはできません。必ず植物質の餌も与えるようにします。植物質の配合飼料は各観賞魚用品メーカーから販売されていますが、カエルウオの仲間にはフレークよりもペレット状の沈むものを与えるようにするとよいでしょう。

日本においてはキョーリンから出ている「海藻70」という餌が使いやすく、多くの観賞魚専門店においてあるのでお勧めです。成魚はMサイズが良いでしょう。

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▲ヤエヤマギンポの故郷であるサンゴ礁の浅瀬

分布は広く、東アフリカからサモアまでのインド-中央太平洋の熱帯・亜熱帯域にすみます。日本では南西諸島に分布します。南西諸島では浅い潮溜まりや礁湖(イノー)の中にもみられ、自分で採集することも可能ではありますが、基本的には観賞魚で購入することになります。

カエルウオの仲間のうち、ヤエヤマギンポを含む藻食性のカエルウオの仲間を選ぶのにおいて最も重要なポイントは腹部です。腹部がふっくらしているような個体を選び、ぺったんこになっている個体は避けるようにします。また正面から見て体がぺらぺらでがりがりのものは絶対に危ないです。背肉が落ちている個体もやめましょう。

他のサンゴ礁域の魚と同じく、主にフィリピンやインドネシアなど東南アジアから来ますが、本種は沖縄から来ることもあります。

沖縄のものは状態よく来ることが多いのでお勧めです。東南アジアのものでも長く飼育されているようなものはおすすめですが、痩せているものはやめたほうがよいでしょう。注意すべきなのはヤエヤマギンポは観賞魚店の販売水槽のコケ取り要員として入れられていることがあること。そのような水槽では非売となりますので、別の水槽にいる状態よさそうな個体を探します。

ヤエヤマギンポとほかの生物との相性

ほかの魚との関係

▲多くの魚と一緒に飼育できるのも魅力のひとつ

ヤエヤマギンポがよくコケ取りに用いられる理由としては、さまざまな魚と組み合わせることが出来るからというのも理由のひとつ。性格は弱すぎず、かといって強すぎるものでもないのでさまざまな魚と組み合わせられます。ただし、スズメダイの大きいのは本当に気が強く、モンガラカワハギは他の魚もばりばり食ってしまいますので、おすすめできません。

他のカエルウオの仲間との組み合わせは、同じ属のものを避けるようにします。とくに同属同種は避けるようにします。ヤエヤマギンポと同居させるのであれば、大きめのカエルウオを1匹とかにして喧嘩を防ぐようにします。また成魚のサイズに違いがあるような魚種と組み合わせるのもよいでしょう。

サンゴ・無脊椎動物との相性

▲サンゴを食べることはないが、逆に食べられないように

ヤエヤマギンポはサンゴを食べるような魚ではありませんので、サンゴ水槽でも飼育可能です。ただし大きなエレファントイヤーやイソギンチャクの仲間などは、カエルウオなどの魚を食べてしまう恐れがあるので、警戒します。陰日サンゴのなかにも動きが遅い魚を食べてしまうものがいますのでそういうのを組みわせるのを避けます。

ヤエヤマギンポと海藻との相性

▲海藻についたコケを食べるヤエヤマギンポ

主に藻類を捕食しますが、ニザダイやアイゴなどと違い、海藻はあまり食べないので海藻水槽にも入れることができます。海藻に付着する藻類なども食べてくれるようです。ただし高水温に対してあまり強くない海藻を育てるのであれば水温はあまり高くない方が好ましいです。25℃前後の水温を保つようにしましょう。

ヤエヤマギンポ飼育まとめ

  • カエルウオの仲間ではやや大きくなる
  • コケを食べてくれる
  • 丈夫で飼育しやすい
  • 45cm以上の水槽で飼育する
  • フタはしっかりしたい
  • 水温は25℃前後を確実にキープ
  • コケだけでは死んでしまうので配合飼料もしっかり与える
  • 多くの魚と混泳できる
  • サンゴ水槽での飼育も可能

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