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2020.11.05 (公開 2018.03.04) 海水魚図鑑

クマノミとイソギンチャクの相性~水槽内で共生を楽しみたい

クマノミといえば、イソギンチャクとの共生が有名です。このサイトを閲覧されている方の中にも、クマノミとイソギンチャクの共生を夢見て海水魚飼育をスタートした、という方がおられるかもしれません。

ただ、クマノミとイソギンチャクにも「相性」というものがあります。クマノミの種類によって、好むイソギンチャクと、あまり好まないイソギンチャクがあります。好む種類のイソギンチャクとはすぐ共生してくれることが多いのですが、あまり好まない関係だとなかなか共生してくれないこともあります。クマノミとイソギンチャクの共生を水槽で楽しむにはどうすればよいでしょうか。

イソギンチャクに入るクマノミ

▲クマノミの仲間はみなイソギンチャクと共生する

クマノミの仲間(スズメダイ科・クマノミ亜科)の魚はどの種もイソギンチャクと共生しています。しかしその依存度はクマノミの種類によって異なります。

例えばクマノミなどはイソギンチャクから離れて泳いでいることも多いのですが、カクレクマノミなどはイソギンチャクへの依存度がかなり高く、海の中ではイソギンチャクの周りをなかなか離れようとしません。

なぜイソギンチャクの中に入るの?

クマノミと同じスズメダイ科の魚は多くの種が小型で常に肉食の魚から狙われています。クマノミは捕食者から身を守るためにイソギンチャクの中に隠れるのです。イソギンチャクは強い刺胞毒を持ち、魚を好んで食べますが、クマノミの仲間は体表から出す粘液のおかげでイソギンチャクの毒にやられません。

クマノミが入るイソギンチャク

▲ハードコーラルに身を寄せることもあるがサンゴがストレスを感じることも

クマノミの仲間はどの種もイソギンチャクと共生しますが、イソギンチャクはどの種もクマノミと共生するか、というとそうではありません。

主にクマノミの仲間が共生するのは、

  • センジュイソギンチャク
  • シライトイソギンチャク
  • ハタゴイソギンチャク
  • イボハタゴイソギンチャク
  • タマイタダキイソギンチャク
  • ジュズダマイソギンチャク
  • ロングテンタクルアネモネ

以上のような種類です。ただし、これらのイソギンチャク以外のイソギンチャクとは全く共生しない、というわけではなく、クマノミの種類によってはヘアリーディスクなどにも入ることが知られています。

またハードコーラルの仲間であるナガレハナサンゴやアワサンゴに寄り添うこともあるのですがこれらのサンゴはクマノミがすり寄ることでストレスになるおそれがありますので注意が必要です。

初心者でも飼育しやすいイソギンチャク

イソギンチャクは比較的飼育が難しい生物です。

まず餌やサンゴが飼育できるレベルの光が必要なこと、水質に比較的うるさいこと、高水温に弱いこと、そして動き回ることです。

イソギンチャクは強い毒をもち、触れてしまったりイソギンチャクに上に乗られたサンゴを殺してしまうことがあります。最悪のケースはオーバーフローパイプに詰まってしまうことで、水槽の水をあふれさせてしまうこともあります。

センジュイソギンチャクやハタゴイソギンチャクは初心者にはやや難しい種類で、逆にサンゴイソギンチャクなどは比較的容易ですが、よく歩き回るので注意が必要です。どうしてもイソギンチャクの飼育が難しいようでしたら、「いそぎんちゃくん」などの人工イソギンチャクを使用して共生している「雰囲気」をつくるのもよいでしょう。ただし人工イソギンチャクにも100%入る、とは限りませんので要注意です。

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クマノミとイソギンチャクの相性

▲カクレクマノミはハタゴイソギンチャクを好む

クマノミの仲間の種類によって好むイソギンチャクと、あまり好まないイソギンチャクがいます。たとえばカクレクマノミはハタゴイソギンチャクやセンジュイソギンチャクなどを好みますが、それ以外のチクビイソギンチャクや、サンゴイソギンチャクなどとは全く共生しないということはありませんが、共生するのに時間がかかることもあります。

以下、海水魚店でよくみられるクマノミと、共生するイソギンチャクについてまとめました。

カクレクマノミ・クラウンアネモネフィッシュ

▲シライトイソギンチャクと共生するカクレクマノミ

カクレクマノミとクラウンアネモネフィッシュ(以下:ペルクラ)は非常に近い種類で、しばしば混同されています。映画「ファインディング・ニモ」に登場するクマノミは、カクレクマノミではなくペルクラの方だとされています。どちらの種もまさに海水魚のアイドル。採集されたもの、ブリードもの、いずれもよく出回っており、海水魚としてはもっとも流通量が多い魚ともいえるでしょう。

どちらもイソギンチャクへの依存度が高い魚です。ハタゴイソギンチャク、センジュイソギンチャク、シライトイソギンチャクなどと共生しています。ただし観賞魚店で「シライトイソギンチャク」として販売されているのはチクビイソギンチャクなど別種であることが多いので注意が必要です。このほか、ロングテンタクルアネモネやサンゴイソギンチャクなど、自然下では入らないようなイソギンチャクにも飼育下では入ることがあります。なお、クマノミの仲間を飼育するのにイソギンチャクは必ずしも必要としません。

ハナビラクマノミ

▲イソギンチャクと共生するハナビラクマノミ

ハナビラクマノミは背中が白く、鰓蓋付近に白い横帯がある可愛いクマノミです。英語ではピンクアネモネフィッシュと呼ばれており、和名も英名も可愛い種です。性格もクマノミやハマクマノミなどと比べて温和です。

海中ではセンジュイソギンチャクやシライトイソギンチャク、ハタゴイソギンチャク、ロングテンタクルアネモネといったイソギンチャクと共生しています。

セジロクマノミ

セジロクマノミは、ハナビラクマノミに似ていますが鰓蓋の白い縦線を欠くのが特徴です。ハナビラクマノミなどと同様やや温和の種類です。ハタゴイソギンチャク、シライトイソギンチャクやセンジュイソギンチャクといったイソギンチャクと共生していることが多い種でいつもイソギンチャクのそばにいます。インド洋にはよく似たスカンクアネモネフィッシュが生息しています。

トウアカクマノミ

トウアカクマノミは全長13cmにもなる大型種です。褐色の体、頭部の白く太い横帯、そして背中の大きな白色斑が特徴ですが海域により若干の色彩変異が知られています。性格はやや強め。

イボハタゴイソギンチャクなどのイソギンチャクと共生しますが、このイソギンチャクはかなり毒性が強くクマノミ以外の魚を殺して食べてしまうことがあります。トウアカクマノミ自体は他のイソギンチャクにも入ります。

クマノミ

本州の磯でもおなじみの人気種「クマノミ」です。イソギンチャクへの依存度はカクレクマノミなどの種ほどには強くなく、イソギンチャクから離れたところを泳いでいることも多い種です。

さまざまな種類のイソギンチャクと共生します。サンゴイソギンチャク、シライトイソギンチャク、センジュイソギンチャク、ジュズダマイソギンチャク、チクビイソギンチャクなどあまり選り好みせず共生してくれることも多く、イソギンチャクとクマノミの共生を楽しみたいアクアリストにもおすすめといえます。ただ性格はきつくほかのクマノミを含む小魚との混泳には適しません。

ハマクマノミ

ハマクマノミも全長10cmを超え、大型になるクマノミです。赤い体に白い横帯というきれいな色彩ですが性格がかなりきついので注意が必要です。他のクマノミは駆逐されてしまうおそれもあります。日本では奄美大島以南に多く分布し、琉球列島ではごくふつうに見られるクマノミの仲間です。

タマイタダキイソギンチャクなどのイソギンチャクと共生することが多い種類ですが、他のイソギンチャクにも入ります。

スパインチークアネモネフィッシュ

▲サンゴイソギンチャクに入るスパインチークアネモネフィッシュ

1属1種のクマノミで、名前は頭部に大きな棘があるところにちなみます。雌雄で色彩に違いがあり、雌は大きく黒っぽい色彩、雄は小ぶりで赤い体が特徴です。ハマクマノミ以上に気が強いので飼育の際は注意が必要です。マロンクラウンフィッシュという名前で流通することもあります。標準和名ではないようですが、シロミスジという名前もあります。フィリピン以南の西太平洋と東インド洋のサンゴ礁に分布しています。

主にサンゴイソギンチャク系のイソギンチャクに入りますが他の種類のイソギンチャクにも入るようです。

イソギンチャクと共生するそのほかの生物

▲イソギンチャクモエビ

イソギンチャクと共生する生物はクマノミだけではありません。エビの仲間のイソギンチャクエビやイソギンチャクモエビ、ヤドカリに近い仲間であるアカホシカニダマシなどの種類もイソギンチャクと共生していることがよく知られています。このような生物を購入しイソギンチャクと共生させるのもよいでしょう。

またクマノミがすむイソギンチャクと共生するわけではありませんが、カニの仲間であるキンチャクガニの仲間は、手にカニハサミイソギンチャクという小型のイソギンチャクをもち、危険がせまるとイソギンチャクを振り回して敵を追い払うという習性が知られています。

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