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2018.09.14 (公開 2018.07.27) 海水魚図鑑

ハナビラクマノミの飼育方法~混泳時の注意やイソギンチャクとの相性など

ハナビラクマノミ

ハナビラクマノミは薄いピンク色の体が特徴のクマノミです。クマノミの中では比較的おとなしい性格ですのでほかの魚と混泳させるのにも適している種類です。

もちろんスズメダイ科の魚ですので、丈夫で飼育しやすい魚です。

標準和名 ハナビラクマノミ
学名 Amphiprion perideraion Bleeker, 1855
英名 Pink anemonefish, False skunk-striped anemonefish など
分類 スズキ目・スズキ亜目・スズメダイ科・クマノミ亜科・クマノミ属
全長 10cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッド冷凍イサザアミ
温度 23~26度
水槽 45cm以上
混泳 気が強い魚とは注意が必要
サンゴ飼育 ナガレハナサンゴの類や、ハナガササンゴ、アワサンゴなどは注意

ハナビラクマノミってどんな魚?

ハナビラクマノミ

ハナビラクマノミは和名の通り、「花びら」を思わせるピンク色の体で、背中に白い縦線があり、鰓蓋周辺にも白い横帯があるのが特徴のクマノミの仲間です。

背中に白い線があるクマノミは他にも何種かいます。よく似たセジロクマノミは鰓蓋周辺の白い横帯がないので本種と容易に見分けられます。30種類ほどが知られているクマノミの仲間ではあまり見られないピンク色の体がきれいなため人気が高い種類です。

ハナビラクマノミに適した環境

水槽

ハナビラクマノミは大きいもので10cmに達します。小型水槽での飼育も可能ですが、できれば45cm以上の水槽を用意して飼育したいものです。60cm水槽であれば安定して終生飼育することができます。

水質とろ過システム

クマノミの仲間は丈夫で比較的硝酸塩の蓄積にも耐えますが、水が黄色くなってしまっているような状態ではよくありません。定期的な水替えとしっかりしたろ過システムをあらかじめ構築して飼育することが大事です。

オーバーフロー水槽での飼育がおすすめですが、上部ろ過槽や外部ろ過槽、外掛けろ過槽などでの飼育も可能です。ただし、外部ろ過槽や外掛けろ過槽はろ過能力が足りなくなりやすいので注意しなければなりません。

水温

23~26℃が適温で、理想は25℃です。それ以上の水温でも飼育はできますが、色があせるなどの影響が出てしまうことがあります。また病気の予防には水温が一定していることも重要なので、夏はクーラー、冬はヒーターを使用して水温をなるべく一定に保つように心がけます。

フタ

何かに驚いて飛び出してしまう事故がおきることもありますので、ガラスブタはきちんとしましょう。

ハナビラクマノミが好むイソギンチャク

ハナビラクマノミのイソギンチャクの共生

クマノミの仲間はどの種もイソギンチャクと共生することでよく知られています。ただ、どんなイソギンチャクとでも共生する、というわけでなく、ハナビラクマノミは主にセンジュイソギンチャクや、シライトイソギンチャクなどに入りますが、飼育下ではロングテンタクルなど、他のイソギンチャクと共生することもあります。

しかし、イソギンチャクは飼育が難しいので、初心者にはおすすめできません。また刺胞毒で魚やサンゴを弱らせたり、動き回ってオーバーフロー配管やろ過槽に水をおくるポンプのストレーナーに詰まってしまったりするなどの事故を起こして壊滅的な被害をもたらすおそれもあります。

どうしてもイソギンチャクとハナビラクマノミとの共生を楽しみたいのであれば、信頼できる観賞魚店でアドバイスをしてもらったほうがよいでしょう。このほか、最近はカミハタの「いそぎんちゃくん」などイミテーションのイソギンチャクも市販されています。このような商品を使用してもよいでしょう((ただし、必ず入るというわけではありません)。

なお、ハナビラクマノミはイソギンチャクがなくても飼育自体に支障はありません。

ハナビラクマノミに適した餌と添加剤

ハナビラクマノミは通常のクマノミと比べておとなしいとはいえ、スズメダイの仲間ですので餌付きはよいです。

配合飼料は最初からフレークフード、ペレットフードいずれもよく食べてくれます。繁殖を考えるのであればDHAやEPAなどの脂肪酸を含んだ栄養価の高い冷凍餌などを与えるようにしますが、このような餌を与えると水が悪くなりがちなので与えすぎには注意しましょう。もちろん高い能力をもつろ過装置を使用することが前提となります。

添加剤はヨウ素や微量元素などを添加するほか、繁殖を考えるのであればビタミンやミネラルなども添加したいところです。もちろんサンゴやイソギンチャクも飼育するのであれば、それらの生物に必要な添加剤を添加する必要があります。

ハナビラクマノミの選び方

野生個体と養殖個体

ハナビラクマノミは野生個体(ワイルド、もしくはWC個体)、と養殖個体(ブリード、もしくはCB個体)が販売されています。前者は文字通り海で採集された個体で、後者は業者が飼育下において繁殖させたものです。近年は業者だけでなく個人のブリーダーがクマノミの仲間の繁殖に成功した!という例も多いです。

なお私が飼育しているハナビラクマノミは養殖のもので、この個体を購入した「コーラルタウン」によれば、これはカミハタの養殖個体とのこと。カミハタといえば殺菌灯「ターボツイスト」、スキマー付きろ過槽「海道河童」などで有名ですが、この会社はもともと卸業でコイの養殖をしていた会社で近年はクマノミなどのブリードも行っています。

ハナビラクマノミを選ぶポイント

ハナビラクマノミの選び方

ハナビラクマノミの選び方

ハナビラクマノミはココスキーリング諸島からサモアまでの東インド-太平洋のサンゴ礁域に分布しますが、野生個体の産地としては他の魚と同様で、フィリピンやインドネシアなどの東南アジアから入ってきます。このほか沖縄産の個体も流通します。はじめてハナビラクマノミを飼育するのであれば、養殖のものが最適ですが、輸送時間の短い沖縄産のものも元気よくお店に届く可能性が高いためおすすめといえます。

選び方としては、ほかの魚とおおむね同じで、鰭がぼろぼろのもの、赤くにじんでいるもの、白い点がついているものは選んではいけません。背中に肉がついていない(痩せている)ものもだめです。ほか、眼が濁っていたり動くものに反応しないもの、口に傷がついているもの、体表の一部が明らかに白く濁っているものや赤くただれているものなどは絶対に避けます。また水槽の隅でじっとしているものも避けた方がよいでしょう。

入荷してからどのくらいお店にいるのか、聞いてみるのも重要です。クマノミの仲間はトリコディナという、死亡率の高い病気にかかることもあるからです。この病気は入荷直後のまだ不安定な時期に発生することが多いのです。ですから長くお店にいるものを購入することをおすすめします。

ハナビラクマノミの病気とその対策

クマノミの仲間は慣れてしまえば非常に丈夫で飼いやすいですが、白点病、トリコディナなどには注意が必要です。白点病は恐ろしくはありませんがトリコディナは恐ろしい病気です。

この病気は魚の体表にトリコディナという原生動物が付着し、付着した場所は色が薄くなったり白っぽくなったり、薄い膜がはったようになります。死亡率の高い、恐ろしい病気といえます。不幸にもかかってしまったら早急に淡水浴を行い治療する必要があります。

輸入されたばかりの魚が感染することも多く、予防方法としては入荷して時間が経った丈夫な個体を選ぶことです。

ハナビラクマノミと他の生物との混泳・相性

ほかのクマノミとの混泳

ハマクマノミとハナビラクマノミとの混泳を避けたい

ハマクマノミ(右下の赤い2匹)との混泳はできれば避けたい

ハナビラクマノミはクマノミの仲間でも特に温和な種類で、ほかのクマノミとの混泳は注意しなければなりません。とくに標準和名クマノミや、真っ赤な色彩が美しいハマクマノミ、スパインチークアネモネフィッシュなどとの混泳はできるだけ避けるようにします。これらの種類は性格がかなりきつめだからです。

観賞魚店のストック水槽やデモ水槽ではハマクマノミなどと一緒に飼育されていることもありますが、観賞魚店では(営業中は)常時誰かが水槽をチェックでき、おびえている場合やけがをしているときは別の水槽に入れて隔離することができます。

一方、家の水槽では常時誰かが家にいて水槽をチェックできる、というわけでもなく、このサイトを見ていただいている方の中には飼育経験の浅い方も多く、予備の水槽などを持っていない方もいると思われます。ですから家の水槽で安易に、観賞魚店のマネをするのは危険といえます。

ペアにしたい場合は小ぶりの個体を2匹一緒に入れておくとペアになってくれる可能性が高いです。クマノミの仲間はもともと雄が存在せず、もっとも大きいものが雌になります。ただしカクレクマノミと異なり、2匹を一緒にいれてもなかなかペアにならないこともあるようです。

クマノミ以外の魚との混泳

ハナビラクマノミの混泳事例

我が家のサンゴ水槽での混泳例。マニアックな魚が多い…

ハナビラクマノミは多くの海水魚と混泳を楽しむことができますが、本種を捕食してしまうおそれがあるものや、高水温に弱い魚とは一緒に飼育できません。

毒を出すおそれのあるハコフグやフグの仲間、大きくなり気性の荒いミツボシクロスズメダイなどとの混泳も避けた方がよいでしょう。小型のベラ、ハゼ、テンジクダイ、ヤッコ、アイゴなどとであれば混泳可能です。

サンゴ・無脊椎動物との相性

夜間ソフトコーラル(ナガレカタトサカ)の間で眠るハナビラクマノミ

夜間ソフトコーラル(ナガレカタトサカ)の間で眠るハナビラクマノミ

ハナビラクマノミはソフトコーラル、ハードコーラルどちらがメインの水槽でも飼育可能ですが、注意点があります。

ウミアザミ、トサカ、スターポリプなどソフトコーラルとの関係は概ね良好です。イソギンチャクのいない水槽でウミキノコやトサカなどと飼育していると、夜間にハナビラクマノミがこれらのサンゴの合間で眠ることがあります。

ソフトコーラルとの関係は問題ありませんが、ハードコーラルとの飼育は注意が必要です。ナガレハナサンゴの類や、ハナガササンゴ、アワサンゴなどとの相性はあまりよくありません。ハナビラクマノミがイソギンチャクと勘違いしすり寄ってしまうとこれらのサンゴにダメージを与えてしまうおそれがあるからです。我が家ではオオバナサンゴ、オオタバサンゴ、カクオオトゲキクメイシ、シコロサンゴ、ウミバラなどのハードコーラルと飼育していますが、これらのサンゴとの関係は概ね問題ないようです。ハナガササンゴやアワサンゴと同じハマサンゴ科のハマサンゴもポリプが長く伸びるわけではなく大丈夫のようです。

甲殻類はハナビラクマノミを傷つけるものはいけません。イセエビや大きなカニの仲間、リーフロブスター、セミエビなどの類はできるだけ避けます。クリーナーシュリンプは概ね問題ありませんが、オトヒメエビは小型のクマノミを捕食してしまうことがありますので避けた方が無難です。

貝類はチョウセンサザエ、タカラガイ、マガキガイなどの掃除屋さん、シャコガイやムシロガイなど色々な種と飼育できます。一方ナマコの仲間は水槽の掃除屋さんとしてよく飼育されていましたが死んだり弱ったりすると魚に致命的な「サポニン」という毒を放出してしまいますので、初心者の方は避けた方が無難です。

ハナビラクマノミの飼育まとめ

  • ピンク色の体がきれいなクマノミの仲間
  • 60cm以上の水槽で飼育したい
  • 水温は25℃をキープ
  • センジュイソギンチャクやシライトイソギンチャクと共生する
  • ロングテンタクルなどのイソギンチャクに入ることもある
  • 初心者は人工イソギンチャクを使用するという手も
  • 配合飼料をよく食べる。繁殖を考えるなら脂肪酸豊富な冷凍餌も
  • 初心者には養殖個体が最適
  • 入荷して間もない個体は購入を避ける
  • トリコディナを発症したら淡水浴
  • ほかのクマノミとの混泳は注意
  • 夜間はソフトコーラルの中で眠ることもある
  • ハナガササンゴやアワサンゴ、ナガレハナサンゴとの相性はよくない
  • 大型の甲殻類やオトヒメエビ、ナマコなどにも注意
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