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2020.09.25 (公開 2019.07.12) 海水魚図鑑

サツキハゼの飼育方法~内湾で採集できる温和な遊泳性ハゼ

サツキハゼは、ハタタテハゼやクロユリハゼなどとおなじ、クロユリハゼ科の遊泳性ハゼです。観賞魚として販売されていることはめったにありませんが、千葉県以南の太平洋岸から琉球列島の内湾に生息しており、そのような場所では採集することができます。臆病な性格をしていますが丈夫で飼育しやすく、長いものでは5年ほど生きます。今回はサツキハゼの飼育方法をご紹介します。

標準和名 サツキハゼ
学名 Parioglossus dotui  Tomiyama, 1958
英名
分類 条鰭綱・スズキ目・ハゼ亜目・クロユリハゼ科・サツキハゼ属
全長 5cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッドなど。小さい個体にはパウダー状の餌を頻繁に
温度 25℃
水槽 35cm~
混泳 肉食性の魚とは組み合わせられない
サンゴとの飼育 サンゴには無害だがオーバーフロー水槽での飼育は要注意

サツキハゼってどんな魚?

▲サツキハゼ

▲同属のヨスジハゼ。尾部に黒色斑がなく、黒色帯が明瞭

サツキハゼはクロユリハゼ科・サツキハゼ属の魚です。この科の魚にはハタタテハゼ属のハタタテハゼやアケボノハゼ、クロユリハゼ属のゼブラハゼなど、海水魚店ではふつうに見られる魚が多く含まれていますが、サツキハゼ属の魚はあまり海水魚店では見ることができません。ややマイナーな遊泳性ハゼの仲間です。

サツキハゼの形態的な特徴としては、身体つきが細長く、第2背鰭軟条数が16~18軟条、臀鰭軟条数は16~18軟条(どちらもクロユリハゼ属の魚よりもやや少なめ)であること、尾鰭に黒色斑があり、その形状は前後に細長いことなどがあげられます。日本には同じサツキハゼ属魚類が11種いますが、多くの種は琉球列島の河口、内湾、マングローブ域に生息しており、本州~九州に見られるものは本種とベニツケサツキハゼくらいです。ベニツケサツキハゼは尾鰭の黒色点が丸く、その後方が伸びないのが特徴です。

沖縄の内湾ではヨスジハゼという近縁種が採集できます。サツキハゼに似ていますが、尾鰭基部に黒色斑がなく、太くて明瞭な黒色帯が腹部にあります。

サツキハゼに適した飼育環境

水槽

▲60cm水槽で飼育しているサツキハゼとハタタテハゼ

とても丈夫で飼育は容易、35cmほどの極小サイズの水槽でも飼育することができます。しかし、初心者が上手く飼育するのであれば45cm水槽が欲しいところです。安定して飼育するのであれば60cm水槽が有利でしょう。

水質とろ過システム

丈夫で飼育しやすく、水質悪化にもある程度耐えられますが、できるだけ綺麗な水で飼育してあげたいものです。

小型水槽であれば外掛けろ過槽と外部ろ過槽、60cm水槽であれば上部ろ過槽がおすすめです。オーバーフロー水槽では、大変小型である本種はフロー管からサンプ(水溜め)に落ちてしまいやすいので、何らかの対策が必要です。ろ過能力が高くおすすめのオーバーフロー水槽ではありますが、本種の飼育には向いていないかもしれません。

水温

日本の温帯域にも広くみられる魚ですが比較的高めの水温に耐えられます。しかしできるだけ一定の水温で飼育したいものです。25℃前後の水温で飼育してかまいませんが、水温の変動が大きいと、いくら丈夫なサツキハゼといっても病気になることもあります。常に一定の水温をキープするようにしたいものです。

隠れ家

サツキハゼは大変に臆病なので、サンゴ岩やライブロックなどを複雑に組み合わせて隠れ家を作ってあげましょう。臆病で隠れ家から何日も表に出てこないこともあります。海では内湾のカキやその殻が多いところに見られ、危険が迫ると一斉にその殻の中に逃げ込みます。

フタ

たいへん丈夫な魚ではありますが、飛び出して死んでしまう事故をおこしてしまうことはありますので、フタはきちんとしましょう。また、小さな隙間から外へ飛び出してしまうおそれもありますので、プラ板などで隙間を埋めるようにします。とくに外掛けろ過槽や外部ろ過槽を使用した場合はそのような隙間ができやすいので、注意が必要です。

サツキハゼに適した餌

餌は配合飼料を食べてくれます。最初のうちは岩の隙間などに隠れがちで、なかなか出てきてくれません。そのため本種が隠れていそうな場所に餌をスポイトなどで撒いてあげます。注意したいのは餌の大きさで、あまり大きな餌は食べられません。あまりに小さいのはメガバイトレッドのSサイズでも大きすぎることがあり、そのような個体にはパウダーフードを与えるようにします。なお、そのパウダーフードは海水魚用である必要があります。たとえばどじょう養殖研究所の製品では「グロウ」(淡水魚用)ではなく「シグマ・グロウ」を与えるようにします。

このほか冷凍のコペポーダもよい餌になります。ただしこれだけ与えるのでは栄養のバランスが崩れることもあるので、おすすめできません。また、冷凍餌は水を汚すこともあるため、与えすぎは注意が必要です。とくに小型水槽では気をつけなければなりません。

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サツキハゼの入手方法

サツキハゼは観賞魚店ではほとんど見ることができません。飼育したいのであれば自分で採集する必要があります。内湾の防波堤、カキ殻がたくさんある場所におり、そのような場所で網を振り回せば採集できます。カキの殻ごと掬いとって、その中に生息するサツキハゼだけをとる方法もありますが、いずれにせよカキの殻やゴミなどを防波堤に放置したりすることのないよう注意しましょう。またカキの殻は鋭く、手を切ったり網をズタズタにしてしまうおそれもあります。またカキの種類によっては漁業権が設定されていることもあり、注意しましょう。

小さい個体は内湾の磯でも採集できますが、この際網の目が大きいと、網の目から抜け出てしまうことがありますので注意が必要です。

ほかの生き物との関係

サツキハゼ同士・ほかの遊泳性ハゼの混泳

▲サツキハゼとクロユリハゼ(右上)との混泳例

サツキハゼ同士は水槽内でも複数飼育ができます。45cm水槽でも5匹ほど泳がせることができます。群れで飼育する様子を楽しむことができるでしょう。また、ハタタテハゼやクロユリハゼなど、他の遊泳性ハゼとの混泳もできます。

サツキハゼとほかの魚との混泳

臆病な性格ですので、できれば最初のうちはサツキハゼだけを飼育するようにするとよいでしょう。慣れればほかの魚がいても隠れ家から出てきてくれます。ただし、本種を駆逐するようなスズメダイの仲間などとは一緒にしない方がよいでしょう。メギス、ゴンベの仲間は性格がきついだけでなく、サツキハゼを捕食してしまうこともありますので、一緒に飼育してはいけません。もちろん、オコゼやアンコウなど、明らかな肉食魚との混泳もだめです。また底生のハゼでも肉食性が強いものはサツキハゼを捕食してしまうことがあるので危険です。

サンゴ・無脊椎動物との関係

基本的にサンゴには無害ですが、イソギンチャクなど捕食性がつよい生物には食べられてしまうことがあるので注意します。小型のディスクコーラルや、マメスナギンチャクなどとの飼育は可能です。また先述したようにオーバーフロー水槽では飼育しにくい面もあり、オーバーフロー水槽でシステムが組まれることが多いベルリンシステムでの飼育もしにくいといえます。そうなると当然ミドリイシなど水質に敏感なサンゴとの飼育も向いていないということになります。

甲殻類はオトヒメエビや大型のエビ・カニ・ヤドカリはサツキハゼを襲うこともあるためだめです。小型のサンゴヤドカリやケブカガニなどとの飼育は可能でした。

サツキハゼの飼育まとめ

  • ハタタテハゼやゼブラハゼと同様クロユリハゼ科のマイナーな種
  • 全長5cmほどの小型種
  • 小型水槽でも飼育できるが、初心者は45cm以上の水槽で飼育したい
  • 小型水槽なら外掛けろ過槽と外部ろ過槽の両方を使用、60cm水槽は上部ろ過槽がよい
  • オーバーフロー水槽での飼育はサツキハゼがサンプに落ちるおそれあり
  • 臆病なので隠れ家を多数入れる
  • 飛び出すおそれあり、フタはしっかりする
  • 配合飼料をよく食べる。極小個体にはパウダー状の餌を
  • 販売されていることは少なく自分で採集するしかない
  • 同じ遊泳性ハゼの仲間との混泳ができる
  • 強い魚との混泳には向かない。肉食魚はだめ
  • サンゴには無害だがミドリイシなどとは組み合わせにくい
  • イソギンチャク、甲殻類の大型のものはサツキハゼを捕食することも
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