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2020.09.26 (公開 2018.04.23) 海水魚図鑑

ヘコアユの飼育方法~ユニークな姿の人気者だが初心者には難しい

ヘコアユの写真

標準和名 ヘコアユ
学名 Aeoliscus strigatus (Günther, 1861)
英名 Razorfish, shrimpfish, Coral shrimpfishなど
分類 トゲウオ目・ヨウジウオ亜目・ヘコアユ科・ヘコアユ属
全長 15cm
飼育難易度 ★★★★☆
おすすめの餌 冷凍コペポーダ
温度 24~26度
水槽 60cm以上かつ水深45cm以上
混泳 ヘコアユ同士、イシヨウジなどは可。それ以外は不可。
サンゴ飼育 可、しかしイソギンチャクは不可

ヘコアユってどんな魚?分類

ヨウジウオ亜目・ヘコアユの分類

ヘコアユはトゲウオ目・ヨウジウオ亜目の魚です。ヨウジウオ亜目はヨウジウオ科・ヤガラ科・ヘラヤガラ科・カミソリウオ科・サギフエ科・ヘコアユ科からなり、どの科の魚も魚らしからぬユニークな体形が特徴です。なお胸鰭の大きなウミテングも奇妙な姿をしていますが、この魚はヨウジウオ亜目ではなくトゲウオ亜目の魚とされています。また、近年の研究ではヒメジ科やネズッポ科の魚もヨウジウオの仲間に近いという結果がでていますが、さらなる研究が必要と思われるためここでは言及しません。

ヘコアユ科の魚はそんなヨウジウオ亜目の魚の中でもサギフエ科に近縁とされており、とくに稚魚のうちはよく似ています。

食用になるのはサギフエ科・ヘラヤガラ科・ヤガラ科くらいのもので、日本において一般的に食用となるのはヤガラ科の2種しかいませんが、ヤガラ科のアカヤガラは高級魚としてしられています。一方その他の殆どの種は食用にはなりませんが(タツノオトシゴは漢方薬の材料)、飼育して楽しい人気者が多くそろっています。しかしその仲間の多くは初心者には飼育が難しいものですので、他の魚を飼育し経験を積んでから挑戦したいものです。

ヘコアユの体

ヘコアユの体の仕組み

ヘコアユは頭を下にして泳ぐ変わった習性をもちます。和名も頭を下に泳ぐところから来ています。ヘコは逆さ、アユは歩む、というところから来ているといわれています。危険が迫ると体を水平にし普通の魚のように泳いだり、ウニの仲間のガンガゼや、そのほかのサンゴの隙間に隠れたりします。

英名はカミソリ魚、エビ魚という意味で形からのイメージですが、標準和名で「カミソリウオ」という魚もおり混同しないように注意します。

ヘコアユの成魚

ヘコアユの成魚

色彩的には成魚は透明感がある白っぽい体ですが、幼魚は茶褐色です。海藻や枯葉などに擬態しているものと思われます。上の写真の個体はまだ幼魚の色が残っている感じです。

ヘコアユの近縁種「ヨロイウオ」

ヘコアユとヨロイウオの違い、見分け方

ヘコアユ科の魚は世界で2属4種が知られていますが、日本ではそのうちの2属2種が知られています。もう1種の日本産種であるヨロイウオCentriscus scutatus Linnaeus, 1758は背鰭の棘が不可動、つまり動かすことができないので、ヘコアユと見分けることができます。

この2個体は模様が異なり区別可能に見えるかもしれませんが、海の中では似たような模様をしているこの2種を見分けるのは難しいです。Wikipediaのヘコアユの項目では体側の縦帯の有無で同定できるとありますが、生時はヨロイウオにも体側の帯があり、この特徴で見分けるのは難しいです。

ヨロイウオはヘコアユよりもやや南方系で、沖縄でも数はあまり多くない稀種といえます。観賞魚として流通する話も聞きません。水深80m以浅の海底に生息し、底曳網漁業で獲れることもありますが、食用にはなっていません。なお和歌山県や高知県などで食用とされる「ヨロイウオ」といえば多くの場合、ヘコアユ科の魚ではなく、キンメダイ目の魚であるマツカサウオのことをさすので注意が必要です。

ヨロイウオは全長19cmほどになり、全長15cmほどのヘコアユよりも大きめのようです。ヨロイウオ属のもう一種オオヨロイウオC. cristatus (De Vis, 1885)は日本には分布していませんがアラフラ海やオーストラリア北部・東部から知られており、大きいものでは30cmにも達し、ヘコアユ科としては最大の種です。ヘコアユ科にはこれら3種のほか紅海から東アフリカ沿岸に、体側に黒色点があるヘコアユ属のスペクルドシュリンプフィッシュAeoliscus punctulatus (Bianconi, 1854)が知られています。

ヘコアユに適した飼育環境

水槽

60cm水槽でも複数飼育可能です。ヘコアユは頭部を下に向けて泳いでいることが多いため、水槽は深さがあるものを選んだ方がよいかもしれません。たとえば60×30×36cm水槽ではなく、60×45×45cm水槽を選ぶ、といった具合です。

ろ過槽

ヘコアユの餌には冷凍のコペポーダなどが適していますが(後述)、このような餌は水を汚しやすく管理が大変です。これを考えるとろ過槽の選び方も重要になってきます。

外部ろ過槽を使用する場合は酸欠の予防と好気性バクテリアへの酸素供給のため外掛け、または上部フィルターやプロテインスキマーと併用するとよいでしょう。とくにプロテインスキマーは酸素を供給するだけでなく、残餌を水槽から取り除いてくれるのでおすすめです。

水温

他の熱帯性海水魚と同様、25℃前後をキープするようにします。冬期はヒーター、夏季はクーラーを使用すればよいでしょう。海藻水槽であればもう少し低めの23℃くらいでもよいでしょう。25℃、23℃とどちらの水温でも飼育できますが、いずれにせよ水温が安定していることが大事です。

ヘコアユに適した餌

ヘコアユはその長い吻を見てもわかるように、大きな配合飼料は食べることができません。餌には冷凍のコペポーダが適しています。ホワイトシュリンプはヘコアユにとっては大きく食べにくいようです。

意外と大食漢でありこまめに与える必要があります。ただしプランクトンフードの与えすぎは水質の悪化につながるおそれがありますので注意が必要です。このあたりも初心者マリンアクアリストにはヘコアユの飼育が難しい理由といえます。

海藻を飼育する水槽で飼育すれば海藻の合間に潜むプランクトンを食べるため無給餌飼育も可能、と思われる方もいるかもしれません。しかしヘコアユは意外と多くの餌を必要とするため、必ずプランクトンフードも与える必要があります。

ヘコアユを採集する

沖縄県で採集したヘコアユの稚魚。親指の爪くらいの大きさで飼育は難しい

沖縄県で採集したヘコアユの稚魚。親指の爪くらいの大きさで飼育は難しい。

高知県の磯で採集したヘコアユ

高知県の磯で採集したヘコアユ。このくらいのサイズが飼育に適する

ヘコアユは日本では相模湾以南の太平洋岸に分布し、夏から秋にかけて和歌山や高知などでは漁港で採集することも可能です。経験上、磯よりは漁港で多くみられ、漁港にあるロープの周りなどに群れている姿も見かけます。

親指の爪くらいの大きさの稚魚はかわいいのですが、餌に難ありで飼育は難しいため、飼育には大きめの個体が適しています。

ヘコアユを購入する

ヘコアユの購入前に見るべきポイント

ヘコアユは観賞魚店で購入することもできます。海外では東アフリカからフィジーまでのインド-西太平洋に生息しており、観賞魚としてはフィリピンやインドネシア、沖縄などからやってきます。

海水魚店で購入する際は、体や吻に傷がついていないか、鰭に白い点などがついていないか、眼は動くものに反応するかなどチェックしましょう。とくに吻が傷ついていると餌を食べないこともありますのでしっかり見ましょう。

またスズメダイやヤッコなどと一緒に入っている水槽のヘコアユはなるべく購入を避けたいところです。これらの魚につつかれたりしてストレスを感じているおそれがあるからです。意外とデリケートな魚です。もちろん入荷してすぐの個体も選んではいけません。もし可能であればお店の人に餌をあげてもらって、よく食べているものを選ぶとよいでしょう。

ヘコアユと他の生物との関係・混泳

ヘコアユの混泳相手としておすすめのイシヨウジ

ヘコアユの混泳相手としておすすめのイシヨウジ

ヘコアユ同士の混泳は可能です。その一方、独特な姿から、他の魚と一緒に飼育するのにはあまり適していません。

泳ぎが活発なスズメダイ類(クマノミ類も含む)やチョウチョウウオ、ヤッコ(ヘコアユをつつくおそれあり)との混泳は避け、小型のネズッポ類やピグミーゴビー、あるいは同じようなプランクトン食性であり、スローな動きをする小型のヨウジウオ類がベストといえます。

スローな動きをする魚といえば、フグやハコフグの仲間が思いつきますが、これらの種は皮膚から毒を出したりヘコアユの体や鰭をつつくこともありますので避けるべきです。モンガラカワハギの仲間は強い歯でほかの魚をかじるのでこの仲間とも混泳は不可です。

ヘコアユとサンゴ・無脊椎動物との相性

LPSやソフトコーラルとの飼育がおすすめ。捕食性のつよいものは避ける

ヘコアユとサンゴとの飼育は基本的には問題ありません。ただしイソギンチャクやウチウラタコアシサンゴなどとの魚食性の生物との飼育はやめたほうがよいでしょう。

ミドリイシ水槽での飼育もよいですが冷凍餌の与えすぎは水質悪化につながりますので、清浄な水が必要なミドリイシとの飼育は要注意です。トサカやオオバナサンゴなど多くの種類のLPSやソフトコーラルの仲間は問題ありません。

エビやカニ、あるいはヤドカといった甲殻類はヘコアユを襲うこともあり、おすすめできません。同じヨウジウオ亜目の魚であるタツノオトシゴを飼育するのと同じような感覚で飼育することになります。またヘコアユがいる水槽に新たにサンゴやライブロックを導入する際にも、カニやシャコが潜んでいないかきちんとチェックしなければなりません。もっともこれはどのような魚を飼うにしても注意しなければなりませんが。

ヘコアユの飼育まとめ

  • ユニークな姿かたちのものが多いヨウジウオ亜目の一員
  • 頭を下にして泳ぐことが多い
  • 水槽は深さがあるものがよい
  • 給餌で水を汚しやすいのでろ過槽は強力なものを
  • プロテインスキマー設置は有効
  • 水温の安定も飼育には大切な要素
  • 意外と大食漢。冷凍コペポーダなどを与える
  • 自分で採集することもできる
  • 購入の際は個体や水槽をチェック
  • 他の魚との混泳は避ける。ヨウジウオや小型ハゼとの混泳は可
  • サンゴとの相性は概ね良好。ただし魚食性の強いものは禁物
  • 甲殻類との飼育は避ける。ライブロック投入時は注意
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