ハタタテダイの飼育方法~ツノダシとの違い・餌・混泳の注意など | 海水魚ラボ

ハタタテダイの飼育方法~ツノダシとの違い・餌・混泳の注意など

ハタタテダイは背鰭がよく伸び、体には縞模様があり、尾鰭や背鰭軟条部が黄色になり、まさしく「熱帯魚」といった雰囲気をもっています。

このハタタテダイをうまく飼育するにはどうすればよいのかまとめました。

標準和名:ハタタテダイ
学名:Heniochus acuminatus (Linnaeus, 1758)
分類:スズキ目・スズキ亜目・チョウチョウウオ科・ハタタテダイ属
全長:20cm

ハタタテダイってどんな魚?

▲ハタタテダイとチョウチョウウオ属との違い

ハタタテダイはチョウチョウウオ科の魚です。しかしトゲチョウチョウウオやスダレチョウチョウウオなどが含まれるチョウチョウウオ属とはまた別の属である「ハタタテダイ属」に属しています。

ハタタテダイ属の魚は背鰭の第4番目(まれにほかの棘ものびていることもある)の棘がほかのチョウチョウウオの仲間よりも明らかに長く伸びるのが特徴です。チョウチョウウオ属の種のうちトゲチョウチョウウオ、レモンチョウチョウウオ、セグロチョウチョウウオは背鰭鰭条が少し伸びていますが、これは棘条ではなく軟条が伸びているのです。

英語名はPennant coralfish、英語でも長く伸びる背鰭を旗と見立てたのでしょう。日本では青森県などでもまれに獲れますが、千葉県および兵庫県日本海側以南の海で採集することができますが、関東などではほとんど越冬できず、冬には死んでしまう、いわゆる「死滅回遊魚」です。

ハタタテダイとよく似た魚とその見分け方

ハタタテダイは、ツノダシや、同属のムレハタタテダイと混同されることがしばしばあります。これらの魚とハタタテダイとを区別する方法をご紹介します。

ハタタテダイとツノダシとの見分け方

ツノダシは映画「ファインディング・ニモ」でも「ギル」という役で登場し人気が高い海水魚です。

見た目はハタタテダイにそっくりではありますが、ハタタテダイはチョウチョウウオ科の魚であるのに対し、ツノダシはニザダイに近いツノダシ科の魚で、ニザダイ科の中に含めている図鑑もあるほどです。なおツノダシの飼育は少々難しく、あまり初心者向きの海水魚とはいえません。

両者の見分け方は、吻(口)と、尾鰭を見るのが簡単です。ハタタテダイは吻に模様がなく、ツノダシは吻に橙色の模様があります。ハタタテダイの尾鰭は黄色いですがツノダシの尾鰭は黒く、後縁に白い縁取りがあります。

ツノダシも広い範囲に分布する種で、日本においては青森県八戸~九州までの太平洋岸、山口県の日本海岸、琉球列島に分布し、海外では南アフリカからペルーまでのインド-太平洋の熱帯・亜熱帯域に広く分布しています。磯や岸壁で採集することも可能ですが大型の個体ばかりで、稚魚はほとんど見られません。

英語名はMoorish idol、「ムーア人の偶像」という意味です。

ハタタテダイとムレハタタテダイとの見分け方

ハタタテダイにそっくりなものに、ムレハタタテダイという魚がいます。同じチョウチョウウオ科・ハタタテダイ属の魚です。

ハタタテダイとムレハタタテダイは非常によく似ていますが、背鰭棘数がハタタテダイは通常11であるのに対し、ムレハタタテダイでは通常12(まれに13)であること、ハタタテダイでは臀鰭の黒色域が最も長い軟条まで及ばないのに対しムレハタタテダイでは最も長い軟条まで達すること、などの特徴によりこの2種類は区別されますが、慣れないとこの2種の区別は難しいかもしれません。両種とも全長20cmに達する大型種です。

ムレハタタテダイは海ではその名の通り群れていることが多く、集団で定置網に入ったりすることがあります。飼育方法などはハタタテダイとほぼ同様です。

従ってこれ以降は、ハタタテダイとムレハタタテダイの両方の飼育方法について解説します。なお、ハタタテダイ属の魚はインド-中央太平洋に8種類(日本にはそのうちの6種類)がいますが、他の種類はそれぞれ飼育方法が若干異なりますので、それらはまた別の機会にご紹介します。

英語名はFalse moorish idol、つまり「偽のツノダシ」という意味になります。南アフリカから中央太平洋に分布し、ハタタテダイの分布しないハワイ諸島にも見られます。日本では千葉県以南の太平洋岸に多く生息しています。

ハタタテダイの飼育に適した環境

ハタタテダイもムレハタタテダイも基本的には丈夫な魚ですが、海水魚としては比較的デリケートな魚のグループであるチョウチョウウオの仲間なので、しっかりした飼育設備が求められます。

水槽

60cm水槽でも飼育できないことはないのですが、できれば90~120cmのオーバーフロー水槽で飼育したいものです。オーバーフロー水槽では多くの水量を確保できるため水質が安定しやすいためです。

ろ過槽

60cmの規格水槽に上部ろ過槽、もしくは上部ろ過槽と外部濾過槽の併用でも飼育できないということはないのですが、オーバーフロー水槽のサンプ(水溜め)でろ材を使用した方式で飼育するのが一番簡単と言えます。

この方式であればほかのろ過槽と比べても圧倒的な量のろ材を入れることができ、高い生物ろ過の能力が期待できるからです。

水温

水温は20~28℃で、22~25℃がベストと言えます。もちろん水温が安定していることが重要で、白点病にかかりやすいチョウチョウウオの仲間を飼育するのにもっとも重要なことのひとつといえます。

ヒーター・クーラー、いずれも24時間365日稼働させるようにして予期せぬ水温の突然の上昇や下降に注意します。

紫外線殺菌灯を必ず準備する

チョウチョウウオ飼育には絶対に装備したい器具が「紫外線殺菌灯」です。

これは水が通る筒状のケースの中に紫外線を照射し殺菌をおこなうというもので、病気の予防に役立ちます。ただしこの器具を動かすときには適合する径のホースと水中ポンプが別途必要になり、この水中ポンプと殺菌灯そのものが出す熱により水温の上昇を招くことがあります。クーラーは余裕をもって大型のものをセレクトするようにします。

ハタタテダイに適した餌・添加剤

ハタタテダイにおすすめの餌

ハタタテダイは雑食性、それも動物プランクトンを中心とした食性をもっているため、極端に大きな個体でなければ餌付けはチョウチョウウオ科の魚としては容易です。

最初から配合餌を食べる個体を購入する方法もありますが、環境が変わってしまうと餌を食べなくなることもあります。

配合飼料はフレークよりも粒状のもののほうが細い吻をもつチョウチョウウオ科の魚にはよいでしょう。食べなければ、コペポーダやホワイトシュリンプなどの冷凍プランクトンフードを水流に乗せて与えるとよいでしょう。他にアサリや甲殻類などを冷凍して与える方法もあります。アサリを与えるときは病原菌に感染するのを防ぐためいったん冷凍したものを与えます。これはほかのチョウチョウウオの仲間も同様です。

添加剤

ヨウ素や微量元素、ビタミンなどはハタタテダイにとっても重要な成分ですので、なるべく添加してあげたいものです。

またチョウチョウウオ類の餌に添加する添加剤としてブライトウェルの「エンジェリクサー」という製品を添加するのもおすすめです。カイメンと同じ比率のアミノ酸で、餌の嗜好性やタンパク質の摂取率をアップさせるというものです。

ハタタテダイを入手する

ハタタテダイを入手するには、自分で採集する、観賞魚店で購入する、の二通りの方法があります。

ハタタテダイの採集・釣り

▲ムレハタタテダイの群れ

ムレハタタテダイは夏の終わりから秋にかけて、太平洋側はもちろん、年によっては日本海岸でも岸壁で見られることがあり、長い網を使って掬うようにして採集します。

ある程度大きく育った個体は釣りで採集します。ただし釣りで採集できるような大きめの個体はなかなか配合飼料には餌付きにくいので注意して下さい。なお針を飲み込んでしまった個体は飼育には向きません。

採集できるシーズンは7~10月ですが、紀伊半島の南部や四国の太平洋岸ではそれより遅い時期に採集することもできます。先ほども述べたとおり関東では越冬できないのですが、上記の地域では明らかに越冬した個体と思われるものが採集されることもあります。

ハタタテダイを販売店から購入する

ハタタテダイを購入するときは6~8cmくらいのよく成長して餌を食べている個体をおすすめします。それより小さいと体力がなく、逆に大きいと配合飼料に慣らすのに時間がかかるため、チョウチョウウオ類を初めて飼育するのに適していません。

▲ハタタテダイの大型個体は餌付きにくいことがある。要注意

ちなみにこの個体も残念ながら餌付くことなく死んでしまいました。初心者は信頼できる海水魚店で購入するのが安心です。

▲ハタタテダイの選び方

ハタタテダイは比較的コンスタントな入荷がある魚ですので、入手は難しくないはずです。

基本的にはフィリピンやインドネシア、沖縄などから来るほか、日本近海のものも販売されています。注意するべきポイントは上記の通りですが、入荷した日にちなどを聞いておき、入荷したばかりのものはなるべく避けるようにします。

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ハタタテダイの混泳

ハタタテダイと他の魚との混泳

▲長い鰭を持つ魚はハタタテダイにつつかれるおそれあり

ハタタテダイと他の魚との混泳は注意が必要です。ハタタテダイは意外ときつい性格をしており、他の長い鰭をもつ魚をつついてしまうこともあります。

なおクマノミやベラ、スズメダイなどとの混泳は問題ないことが多いです。大型ヤッコとの混泳も楽しむことができます。水族館はサメやエイのいる巨大な水槽に大きなハタタテダイを泳がせていることもあります。

大型水槽であればハタタテダイ同士の混泳も不可能ではないですが、長い自慢の背鰭を互いに突いてしまい、鰭は短くなってしまうことが多いようです。

ハタタテダイとサンゴ・無脊椎動物との相性

▲サンゴとの飼育はやめたほうがよい

いくら動物プランクトンが主食といってもチョウチョウウオの仲間ですのでサンゴとの飼育はやめたほうがよいでしょう。

甲殻類との飼育は可能で、スカンクシュリンプを入れておくと体表につく寄生虫を食べてくれます。ただし白点病の原因となる原生生物は食べてくれませんので注意します。クリーニングしない小型のエビの仲間などはつついて食べてしまうこともあり、一緒に飼育するのは避けます。

ハタタテダイの病気対策

ハタタテダイは丈夫で餌付きやすく、比較的飼育しやすい種ではありますが、本種もチョウチョウウオ科の魚類であり、白点病などの病気になりやすいといえます。殺菌灯の設置も有効ですが、水を悪くしないこと、水温を一定に保つことのほうが大切です。

白点病に罹ってしまったら硫酸銅で治療するのがよいといわれますが、硫酸銅は劇物であり、量を少し間違えると魚が死んでしまうおそれもありますので、あまりおすすめしません。グリーンFゴールドなどの魚病薬で治療するのが望ましいといえます。量はお店の人に相談して、きちんと守ることが大事です。

白点病のほか、まれにリンフォシスティス症にかかることもあります。白い点があり白点病ににていますが白点が大きくなっていくので区別できます。できるだけ小さいうちに剥がしてやるとよいでしょう。

ハタタテダイを食する

▲左上の個体がハタタテダイ

ハタタテダイといえば観賞魚なのですが、焼物などにして美味しいので、食用にもされています。これは2014年1月に三重県の定置網で漁獲されたもの。

見た目がまさに「熱帯魚」なのですが、塩焼は脂がよく乗っており美味です。このほかにも煮つけや揚げ物などでも美味しいと思われます。実は本種に限らず、チョウチョウウオ科の魚は美味なものが多く熱帯域ではよく食用とされているのです。

横に2匹写っている、黒い縞模様があるカゴカキダイも黄色い体が綺麗なのでしばしば観賞魚として飼育されていますが、こちらも脂がよく乗っており食用魚としての評価も極めて高いものなので、釣ったら食してみることをおすすめします。

ハタタテダイの飼育まとめ

  • 背鰭の棘が長く伸び「熱帯魚」らしい魚
  • 吻の模様や尾鰭の色などでツノダシと区別できる
  • ハタタテダイに酷似するムレハタタテダイは大きな群れをつくる
  • 60cm水槽での飼育も可能だが、大型のオーバーフロー水槽が欲しい
  • 安定した水温、しっかりしたろ過、殺菌灯で病気を予防
  • 殺菌灯は水温上昇を招くので注意
  • 大きな個体でなければ餌付けは難しくない
  • 採集・購入いずれも可能。入荷直後の個体や傷のあるものは避ける
  • 鰭の長い魚の鰭をつつくことがある
  • サンゴとの飼育はNG
  • もし病気がでたら魚病薬を使用するが、できるだけ予防につとめる