ケブカガニの飼育方法~ふかふかの毛をもつカニの仲間

ケブカガニはインド-西太平洋に生息するカニの一種です。体中に毛が生えており、サンゴ礁域に生息する藻類の仲間に擬態しているようです。丈夫で飼いやすく、食用となるケガニほどは大きくならないため、観賞用として飼育するのに向いていますが、サンゴを傷つけたり、岩組をひっくり返してしまうこともあるので注意が必要です。今回はこのケブカガニの飼育方法をご紹介します。

標準和名 ケブカガニ
学名 Pilumnus vespertilio (Fabricius, 1793)
英名 Hairy crub, Bad day hair crab, Teddy-bear crabなど
分類 節足動物門・甲殻上綱・軟甲綱・十脚目・抱卵亜目・短尾下目・ケブカガニ科・ケブカガニ属
全長 甲幅3~4cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッドMなど
※フレークは食べにくい
温度 20~27℃
水槽 35cm~
混泳 極小サイズの魚は襲われることも。クマノミなどとは問題ない
サンゴ飼育 注意が必要

ケブカガニって、どんなカニ?

ケブカガニはインド-西太平洋のサンゴ礁域に生息するカニの仲間です。鋏脚・歩脚や甲の部分に大きな毛が生えているのでほかの多くのカニと見分けることができます。サンゴ礁域の潮溜まりでは普通に見られるカニです。小さな茶色い毛状の藻がはえているサンゴ礁域のタイドプールでは、これによりほかの生物から身を守る手段となります。ようは擬態の1種といえるでしょう。また、深海性の甲殻類では毛の部分に細菌を住ませてその細菌を捕食するゴエモンコシオリエビのような生物もいますが、このケブカガニはどうでしょうか。

ケブカガニの分類

▲ケガニ(クリガニ科)。ケブカガニの仲間ではない

従来ケブカガニはオウギガニ科の中に含まれてきましたが、現在は独自の科(ケブカガニ科)に含まれています。この仲間は歩脚や鋏脚、甲に毛が生えていることが多いのが特徴で、日本にはケブカガニ属のカニにはほかにオオケブカガニやトゲケブカガニ、オオケブカモドキなどが知られています。種類は多く全世界では150種以上が知られている模様です。

なお、毛が生えているカニ、といえばケガニですが、ケガニはクリガニ科のカニでケブカガニとは大きく異なる分類群のカニです。またケガニは北海道や東北、山陰など冷たい海にすむのもケガニとは大きく異なるところです。

食べてはいけない

▲ケブカガニ

南西諸島産のカニにはヒトを死に至らしめる強い毒をもつものがいることが知られています。毒ガニといえばスベスベマンジュウガニが有名ですが、ウモレオウギガニというはより大きく、甲羅の幅が8.5cmをこえるなど味噌汁に最適なサイズで実際に食べたことにより死亡するという事故が発生しています。このような毒をもつカニはユウモンガニ、イワオウギガニ、ツブヒラアシオウギガニなどがいますが、どうやらケブカガニにも同様の毒性をもつ可能性が指摘されています。したがって名前や見た目はケガニに似ており美味しそうですが、食べてはいけません。

オウギガニ類の中でも「爪の先端が黒いのは有毒」といわれますが、無毒で食用とされていても爪の先端が黒いもの(マツバガニなど)、逆に有毒の種とされていても爪が黒くないのもいるなど、あまりあてになりません。厄介なことに、同じ種類でも有毒のものと無毒のものがいます。毒をもつ仕組みはほかの海にすむ有毒生物の多くと同様、食物連鎖によるものです。

マリンアクアリウムとカニ

マリンアクアリウムで「カニ」といえばライブロックの中に潜んでいて夜間に歩き回り、ライブロックやサンゴ岩の上のサンゴを落下させてしまうこと、種類によっては小動物や小魚を捕食してしまうことから、あまり歓迎されません。

しかしひとくちに「カニ」といっても種類は大変多く、中にはカリブ産のノコギリイッカクガニ(ウミケムシ対策)やエメラルドグリーンクラブ(バロニアなどの海藻対策)のようなお役立ち系のカニもいます。このほかオウギガニ科の小型種や、カラッパの類、大西洋産のキャリコクラブ、イソギンチャクをハサミに持つキンチャクガニの仲間、サンゴガニなど綺麗なものや独特の習性をもつカニは観賞用として流通されることがあります。

くわしくはこちらをご覧ください。

ケブカガニ飼育に適した環境

水槽

ケブカガニは甲羅の幅が3~4cmほどで、脚も含めると6cm前後です。35cmほどの小型水槽でも飼育することができます。初心者でも飼育できますが、水質や水温の管理はしっかりしなければなりません。

水質とろ過システム

小型水槽ではろ過の種類が少なく、外掛けろ過槽や小型外部ろ過槽などが選択肢になります。予算に余裕があれば「グラステリアAGS」や「ニッソー クロスミニ」などの小型オーバーフロー水槽もよいでしょう。

魚との飼育もできますが、そのようなときはしっかりとしたろ過が必要になります。60cmなら上部ろ過槽、次に外部ろ過槽と外掛けろ過槽を組み合わせるという選択肢になります。もちろん予算があるならオーバーフロー水槽にしてサンプでろ過をするのが最適といえます。

水温

浅いタイドプールにいることが多く、30℃近くの高温にも耐えられるようですが、水がきれいな場合に限ります。一般には20~27℃くらいの水温をキープするように心がけましょう。

ライブロックとサンゴ岩

ケブカガニはライブロックやサンゴ岩の小さな隙間の中に隠れる習性があります。飼育下でもケブカガニが隠れることができる場所を用意してあげたいものです。ただし昼間はその中に隠れてあまり出てこないことが多いです。小豆大くらいのサンゴ砂を敷いておくとその中に隠れていることもありました。

ケブカガニに最適な餌

ケブカガニの食性は雑食性と考えられます。水槽では魚の残り餌などもよく食べてくれますが、ケブカガニにも餌がいきわたるよう、沈降性の強いペレットフードにするなどの工夫が必要になります(フレークフードは食べにくい)。

添加剤としてはヨウ素は甲殻類の脱皮にも重要な成分とのことで、添加しておくのが望ましいでしょう。サンゴ水槽で飼育するのであれば、当然そのほかサンゴに必要な元素も必要になります。

ケブカガニをお迎えする

▲夜のサンゴ礁域潮溜まり、岩孔から出てきたケブカガニ

近海もの、沖縄ものの魚に強いお店で扱っていることもありますが、自分で採集するのが手っ取り早いでしょう。

相模湾以南に分布していますが、基本的には熱帯性の種類です。沖縄で採集できるほか宮崎県や高知県など黒潮の当たる場所の潮溜まりでも採集したことがあります。夜間もしくは早朝に潮溜まりを歩いていることがあり、昼間は大きな岩をどかしたら出てくることがあります。ケブカガニはトゲアシガニやミナミイワガニなどのようにすばしっこく逃げるカニというわけではないので、見つけたら採集は容易です。

ケブカガニとほかの生物との混泳

魚との関係

ケブカガニは魚水槽で飼育することもできますが、あまりにも小さいピグミーゴビーの類や弱った魚を食べてしまうこともありますので、注意が必要です。ちょっと育ったスズメダイやクマノミの仲間などとであれば問題ないことが多いです。ただし大きくなるベラの仲間やモンガラカワハギの類などはカニを襲って食べてしまうことがあり、そのような魚とは一緒に飼育することはできません。

サンゴ・無脊椎動物との関係

ケブカガニは鋏脚の力が強く、それによってレイアウトをくずされてしまうおそれがありますので、サンゴはライブロックやサンゴ岩などに専用の接着剤でしっかり固着させる必要があります。またソフトコーラルなどを傷つけたり、貝を食べてしまうこともあるので、注意が必要です。筆者はソフトコーラルとイボヤギの入っていた水槽で飼育しましたがとくに害は見られませんでした。しかし、食害してしまう可能性は否定できません。柔らかいソフトコーラル(スナギンチャク系含む)との飼育はとくに注意が必要です。

ケブカガニ飼育まとめ

  • 体に小さな細かい毛が生えたカニ
  • 食用になるケガニとは全く異なる仲間
  • 丈夫で飼育しやすく小型水槽でも飼育できる
  • ろ過能力には注意したい
  • ライブロックやサンゴ岩で隠れ家をつくる
  • 配合飼料は沈降性のものがよい。ヨウ素も添加したい
  • クマノミやスズメダイなどとの混泳ができる
  • 肉食の魚とは混泳できない
  • サンゴ・無脊椎動物との飼育は注意が必要

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