2020.07.10 (公開 2020.07.10) 海水魚図鑑
イザヨイベンケイハゼ(フルムーンリーフゴビー)の飼育方法~隠れがちだが飼いやすい
イザヨイベンケイハゼはハゼ科イレズミハゼ属のハゼで、海水魚店では英語名からフルムーンリーフゴビーとも呼ばれています。同じ属の魚にはイレズミハゼやベンケイハゼなどもいますが、本種はこれらの種類とは大きく異なり、白っぽい体に黒い横帯が複数本入ります。丈夫で飼育しやすく、サンゴ水槽でも飼育できますが、引きこもって隠れがちでなかなか出てこないのが難点といえます。今回はイザヨイベンケイハゼの飼育方法をご紹介します。
標準和名 | イザヨイベンケイハゼ |
学名 | Priolepis nocturna (Smith, 1957) |
英名 | Blackbarred reefgoby, Full-moon reefgobyなど |
分類 | 条鰭綱・スズキ目・ハゼ亜目・ハゼ科・イレズミハゼ属 |
全長 | 3.5cm |
飼育難易度 | ★☆☆☆☆ |
おすすめの餌 | メガバイトレッドなど |
温度 | 25℃ |
水槽 | 45cm~ |
混泳 | 性格が強い魚とは避けたほうがよい |
サンゴとの飼育 | いろいろなサンゴと飼育できるが捕食性が強いのは不可 |
イザヨイベンケイハゼって、どんなハゼ?
▲イザヨイベンケイハゼ。トップ画像の個体とは模様がだいぶ異なっている
イザヨイベンケイハゼはこのサイトでもかつてご紹介したイレズミハゼと同じ、イレズミハゼ属の種類です。ただし色彩はイレズミハゼとはだいぶ異なり、白い体に黒い横帯が頭部から尾柄にかけて数本(4本前後。眼下のものは含まない)入るのが特徴です。体の色合いはおおむねこのようなものなのですが、模様には若干の変異があります。分布域は西インド洋のセイシェルから南太平洋マルケサス諸島にまで及び、分布域による違いというのもあるかもしれません。あるいはこれらは将来別種となる可能性もあるかもしれないです。なお、第1背鰭棘はイレズミハゼと同様に若干伸びています。
イレズミハゼ同様隠れがちで、なかなか出てこないこともありますが、慣れれば観察しやすい場所に出てくることもあるので、気長に待ちましょう。
イザヨイベンケイハゼに適した飼育環境
水槽
たいへん丈夫で飼育しやすく、小型水槽でも飼育はできますが、安定して飼育するなら45cmくらいの水槽は欲しいところです。ほかの魚と混泳するなら60~90cm水槽で飼育するとよいでしょう。小型水槽でほかの魚と混泳する場合は温和で同じくらいの大きさの魚と組むようにし、カクレクマノミなどは避けたほうがよいでしょう。60cm水槽でカクレクマノミと飼育するときはサンゴ岩などを使いしっかりと隠れ家を作らなければなりません。
水質とろ過システム
丈夫で飼育しやすいイザヨイベンケイハゼですが、できるだけきれいな水で飼育してあげたいものです。ろ過槽は小型~45cm水槽であれば外掛けろ過槽と外部ろ過槽を使用するのがおすすめです。外掛けろ過槽はろ材を入れるスペースが狭いのですが、酸素を取り込みやすく、外部ろ過槽は逆に酸欠になりやすくろ材を入れるスペースが広いという特徴があります。60cm以上の水槽であれば上部ろ過槽かオーバーフローシステムが最適です。
サンゴには無害な魚であり、ベルリンシステムなどでの飼育もできます。そうなればオーバーフロー水槽がよいでしょう。ただしベルリンシステムで飼育するのであれば魚はたくさん入れられないので注意が必要です。
水温
水温は25℃前後で問題ありません。おおむね22~27℃くらいであればうまく飼育できるのですが、水温の変化が大きすぎる(朝22℃、昼27℃)になると体調を崩してしまいやすいので、ヒーターとクーラーの両方を使用して温度を一定に保つようにします。
隠れ家
▲岩の下に隠れるイザヨイベンケイハゼ
イザヨイベンケイハゼが落ち着ける隠れ家をできるだけ用意してあげたいところです。サイズによっては「ハゼ土管」などでもよいのですが、ライブロックやサンゴ岩などが無難といえるでしょう。またレイアウト変更をしたりするときはイザヨイベンケイハゼがライブロックやサンゴ岩、アクセサリーの中にいないか確認しましょう。最悪の場合岩の下敷きになって死んでしまうということもありますので、十分に注意します。
なお、岩の下にかくれていることが多い本種ですが、このように腹を下に向けていることのほか、腹を上に向けて天井に張り付いていることもあります。これはイレズミハゼなどにも見られる行動です。
イザヨイベンケイハゼに適した餌
▲ピペットでハゼのいそうな場所に給餌するのがおすすめ
イザヨイベンケイハゼは動物食性ですが、配合餌にもすぐ慣れてくれます。沈降性の配合飼料を与えます。小型のメガバイト レッドSは落下スピードが遅く、イザヨイベンケイハゼのいるスペースに落ちる前にほかの魚に食べられてしまうこともあります。このようなときは餌を海水に漬けて、ピペットを使用しイザヨイベンケイハゼのすみかに撒くようにして与えるとか、そのような工夫をして与えることが重要です。コペポーダやホワイトシュリンプなど、冷凍のフードも食べますが、このような餌は水を汚してしまうことがあるので、注意が必要です。とくにサンゴ水槽では冷凍餌与えすぎに注意が必要です。
イザヨイベンケイハゼをお迎えする
イザヨイベンケイハゼは日本ではまれな種で水深もイレズミハゼよりも若干深めなので、購入してお迎えすることになります。価格もイレズミハゼよりも高価で、5000円以上の値段で販売されていることも多いです。
基本的に丈夫で状態よく入ってくることが多いのですが、お店にきてすぐの個体は避けたほうが賢明です。また、体や鰭に傷や赤いただれがあるもの、鰭がボロボロになっているもの、白い点や膜が体を覆うものなどは避けるようにしましょう。
イザヨイベンケイハゼとほかの生物との関係
ほかの魚との関係
イザヨイベンケイハゼは多くの魚と協調性があり、我が家ではハタタテハゼやイトマンクロユリハゼ、カクレクマノミ、キンセンイシモチなどと90cm水槽で混泳させていました。ただし大きく力の強い魚(スズメダイの大きいのなど)や、メギスの仲間など気性が激しい魚、肉食性の強い魚とは組み合わせてはいけません。またカクレクマノミも意外と気が強いところがあるため小型水槽ではできるだけ避けるべきでしょう。
小型水槽で飼育していたときはイレズミハゼと飼育していたこともありましたが、あまり争わずにすごしていました。
サンゴ・無脊椎動物との相性
サンゴにはいたずらしないためほとんどの種と組み合わせることができます。ただしウチウラタコアシサンゴやイソギンチャクの大きいものなどは魚を食べてしまうことがあり、とくにハゼのなかまは捕食されやすいといえます。ただし一般的に「タコアシサンゴ」として販売されるナガレハナサンゴの仲間とは問題ないようです。またディスクコーラルやマメスナギンチャクの類は問題ないことが多いです。
甲殻類については大型のエビ、大型のカニ、大型のヤドカリはいけません。一般的なクリーナーシュリンプ、サンゴヤドカリなどは問題ないことが多いですが、オトヒメエビは大きなハサミをもち、動きが鈍いハゼなどの魚を捕食してしまうことがあるので、一緒に入れるのは避けましょう。
イザヨイベンケイハゼ飼育まとめ
- イレズミハゼと同じ属であるが色彩や模様は大きく異なる
- 丈夫で飼育しやすく小型水槽でも飼育できる
- ほかの魚と混泳するなら60cm以上の水槽がおすすめ
- 小型水槽での飼育では外掛けろ過槽と外部ろ過槽が最適
- 60cm以上の水槽なら上部ろ過槽かオーバーフロー水槽がおすすめ
- 水温は25℃前後をキープする
- サンゴ岩やライブロックに隠れることも多い。存在を忘れないように
- 配合飼料をよく食べてくれる
- お店に来てすぐのものや体・鰭にただれがあるものなどは購入してはいけない
- おとなしい魚と混泳させたい
- サンゴには無害だが捕食性がつよいものとは組み合わせないほうがよい