カミナリベラの飼育方法~磯採集で出会える小型のベラ

カミナリベラは派手な色彩をしたベラの仲間で、熱帯魚、と思われがちですが温帯性のベラの仲間です。夏から秋にかけて関東の磯でも小さな群れで見られる種で、ニシキベラやホンベラなどとならび、磯採集ではもっともよく見られるベラの一つといえます。ついつい持って帰りたくなるものですが、本種はややデリケートなところもあって長期飼育が難しいので注意が必要です。中級者向けのベラといえるかもしれません。

標準和名 カミナリベラ
学名 Stethojulis terina Jordan and Snyder, 1902
英名 Japanese ribbon wrasse
分類 条鰭綱・スズキ目・ベラ亜目・ベラ科・カンムリベラ亜科・カミナリベラ属
全長 14cm
飼育難易度 ★★★☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッドなど
温度 25℃
水槽 60cm~
混泳 おとなしい魚や自分より小さな魚と組み合わせたい
サンゴとの飼育 多くのサンゴと組み合わせられる

カミナリベラってどんな魚?

▲カミナリベラ幼魚

カミナリベラはベラ科・カミナリベラ属の魚です。この属の魚はアフリカ東海岸からハワイ諸島までのインド-中央太平洋に広く分布する熱帯性の魚でありますが、このカミナリベラは温帯性の種類で、関東近辺の磯でも越冬していると考えられます。ほかのベラの仲間と同様、雌雄で色彩や模様の差が大きい種類です。雄は緑色っぽく、雌はグレーで頭部付近が薄ら赤みを帯びる色彩が特徴です。幼魚はグレーがメインで赤みがかかっていたり、青みがかかっていたりしており、これが同じ種類かと驚くこともあります。なお、雄は従来は「ニジベラ」と呼ばれていました。

派手ないでたちで観賞魚として飼育されることもありますが、同様に派手なベラであるキュウセンほどは大きくならないためか、食用にはなりません。

カミナリベラ属の魚たち

▲カミナリベラ属のオニベラ。上が雄、下が雌

カミナリベラ属の魚はKuiter(2015)によれば11種が知られています。この11種のうち日本に生息するものはカミナリベラ、アカオビベラ、ハラスジベラ、オニベラ、スミツキカミナリベラの5種で、そのうちスミツキカミナリベラは琉球列島、伊豆-小笠原諸島、和歌山県などに生息する日本固有種です。そのほかの種はブルーラインドリボンラス(インド洋産のアカオビベラ似の種)、ベルテッドラス(ハワイ特産の種)、ノーフォークリボンラス(スミツキカミナリベラそっくりで同種と思われた、フィジーやノーフォークなどに分布)、マルケサンリボンラス(マルケサス諸島)がおり、このほかに3種からなるカミナリベラのコンプレックスがいます。

いずれの魚も観賞魚としての入荷はめったにありません。ただし希少な種というわけではなく、オグロベラなどの混じりで入ってくることもわずかにあるようです。また、沖縄からハラスジベラやオニベラが来たり、近海産のカミナリベラが流通することもあります。

カミナリベラのそっくりさん

カミナリベラのコンプレックスには3種がいます。そしてそれらは地理的に分布がわけられているようです。学名・英語名・分布の順に紹介します。分布域の太字は基産地です。

1.Stethojulis interrupta Cut-ribbon wrasse 南アフリカ~オーストラリア、インドネシア

2.Stethojulis zatima Full-ribbon wrasse フィリピンからマレーシア、インドネシア

3.Stethojulis terina Japanese ribbon wrasse 日本・朝鮮半島・台湾・中国

1.の種はインド洋やオーストラリアに広く分布しているタイプです。日本に分布するカミナリベラは本種の亜種とされていたことが多く(後述)、体側中央部にラインがないのが特徴ですが、眼の下の線は主鰓蓋の後端にまでとどいていません。その一方雌の色彩は日本のものにもよく似ていて、日本のものとうり二つな個体もいます。また、雄の体側に太い横帯がでることもあります。

2.の種は東南アジアに多く生息するもので、「フィリピンのカミナリベラ」は大体これです。雄は体側のラインが途切れず、胸鰭基部付近の黒色斑のほか、鰓蓋後方にもう一つ小さな黒色斑があり、雌の個体は頭部から胸鰭にかけての蛍光イエローがきれいで、頭頂部付近も薄ら黄色くなります。雌は黄色い線からスミツキカミナリベラと間違えられることもあるようで、おそらく「魚類写真資料データベース」に掲載されているフィリピン・ボホール産の「スミツキカミナリベラ」とされているものはこの種の雌のようです。

3.は日本に生息するカミナリベラです。雄の眼の下の線は鰓蓋後縁にまでとどき、体側の青いラインは体側中央部にはありません。雌の体側下半部の斑点は点状で体側に黒色線があるのが特徴ですが、雌は1.の種にも極めてよく似ており、同定が難しいです。

ただしKuiterの意見には異論もあり、これらの3「種」には亜種レベルの違いしかないともいわれています。またFishbaseでは、2.の種は1.の種のシノニムとされているようです。今回は暫定的に3種としています。

カミナリベラ飼育に適した環境

水槽

一般的に、潮溜まりで手網で採集できるのは幼魚で、小型水槽で飼育することもできますが、水槽内で成長することも考えれば、少なくとも60cm以上の水槽で飼育するのが適しているといえます。とくに初心者には小型水槽は難しい面があるので、60cm水槽で安定して飼育するようにしたいものです。

水質とろ過システム

水質にはあまりうるさいというわけではありませんが、汚い水で飼育するのはよくありません。外掛けろ過槽、外部ろ過槽、上部ろ過槽いずれのろ過槽で飼育できますが、パワー不足の外掛けろ過槽、酸欠に陥りやすい外部ろ過槽はほかのろ過槽と併用したほうがよいでしょう。

カミナリベラはサンゴには無害ですので、サンゴを飼育するのに適したベルリンシステムでの飼育も可能です。ただしベルリンシステムで飼育すると魚は多く入れることができなくなります。

水温

カミナリベラは温帯性の魚ですが、水温25℃ほどでの飼育も可能です。もちろんほかの魚同様水温の急変があると病気になるなどのリスクもあるため、なるべく一定に保つように心がけたいものです。

底砂

カミナリベラはキュウセンやホンベラなどと同様砂に潜るタイプのベラで、夜間の睡眠時や危急時には砂に潜る習性があります。必ず目の細かい砂を敷いてあげましょう。ただし砂は敷きすぎるとデトリタスのたまり場になったり、硫化水素が発生することもあるためよくありません。幼魚であれば5cmくらいでも十分でしょう。

カミナリベラに適した餌

ベラの仲間は海では甲殻類やゴカイ類などを捕食しています。カミナリベラも同様の食性ですが小さなものはあまり大きな餌を食べることができないので口に入る餌を与えるのが重要です。小型の個体は比較的餌付けがラクで、小粒の配合飼料であればすぐに慣れてくれます。大きい個体でなかなか粒餌を食べない時は冷凍のホワイトシュリンプなどをあげるようにします。ただし、冷凍の餌は水を悪くしてしまうことがあるため、ほどほどにしましょう。とくにろ過システムがまだ完成していない立ち上げ初期には要注意です。

カミナリベラの入手方法

▲三浦半島で採集したカミナリベラの幼魚

▲福岡県の日本海岸で採集したカミナリベラ

カミナリベラが飼いたいというときは自分で採集するのが一番といえます。7~10月ごろまで、干潮時の磯の浅瀬で採集することができます。あるていどのサイズまで成長したものは釣りにより採集できますが、釣りではホンベラやニシキベラほど多くは釣れません。房総半島以南の太平洋岸に見られますが、新潟県以南の日本海岸でも見ることができます。瀬戸内海の播磨灘での採集例もあるようです。

また、近海モノを扱うお店ではカミナリベラを扱っているところもあります。その際は体表や口に傷がないか、白い点がついていないか、体を岩などに頻繁にこすりつける(寄生虫がいることがある)ような動作をしていないかどうかチェックしたいところです。またできるだけ砂を敷いてある水槽で飼育されているものを選ぶようにします。

ほかの生物との相性

ほかの魚との混泳

▲いけない混泳例。強いスズメダイのような魚がいると短命に終わることも

同じように砂に潜る習性があるベラの仲間のホンベラ属やカンムリベラ属の魚と比べると臆病なところがあり、無理な混泳をさせると弱ってしまうおそれがありますので注意が必要です。とくにカミナリベラの幼魚と、スズメダイなどの強い魚と混泳させると、おびえてしまい、寝床である砂の中から出てこなくなってしまうこともあります。本種を長期飼育したいのであれば、できるだけ大人しい魚と組み合わせ、組み合わせる魚もできるだけカミナリベラよりも小さなものを選びましょう。

サンゴ・無脊椎動物との相性

サンゴとの相性は概ね問題ありませんが、イソギンチャクの仲間は捕食性が強いのでできるだけ避けたいところです。浅場に生息する魚ですのでソフトコーラルやミドリイシなどが似合うでしょう。ただし、サンゴに準じた扱いをされることがある、ケヤリムシやカンザシなどのゴカイ類はつついて捕食してしまうおそれがあります。

甲殻類は種類によっては食べてしまうおそれがあります。クリーナーシュリンプやサンゴヤドカリなどは問題ないですがサラサエビやペパーミントシュリンプなどは要注意です。逆にオトヒメエビやイセエビ、大型のヤドカリなどには捕食されてしまうこともありますのでこの組み合わせもいけません。

カミナリベラ飼育まとめ

  • 雄はカラフルだが温帯性のベラの一種
  • ややデリケートでベラの仲間では飼育しにくい
  • 熱帯性の近縁種はなかなか観賞魚店では見られない
  • 60cm水槽で飼育したい
  • 25℃でも飼育できる
  • 幼魚の場合砂は5cmほど敷いておく
  • 幼魚配合飼料をよく食べる
  • 大きいものは餌付きが悪いことも。最初はホワイトシュリンプなどを与える
  • 夏から秋に磯で採集できる
  • デリケートなためとくに幼魚期は強い魚との混泳は避けたほうがよい
  • サンゴには無害なので多くのサンゴと飼育可能
  • イソギンチャクやオトヒメエビなどとの混泳はだめ

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