フリーワード検索
海水魚の記事
サンゴの記事

2020.09.21 (公開 2019.02.22) 餌・添加剤

藻食性魚類に適した餌~ハギ・アイゴ・カエルウオなどに与えるべき餌をご紹介

藻食性魚類に適した餌~ハギ・アイゴ・カエルウオなど

海藻や藻類をおもに捕食する「藻食性魚類」は、水槽に生えるコケなどを食べてくれるため人気があります。しかし水槽内でも餌となるコケがなくなると餓死してしまうこともあります。そのため、藻食性魚類専用の餌が必要になります。

さらに藻食性魚類によって与えるべき餌も違ってきます。藻食性魚類の種類ごとに、どんな餌を与えたらよいのかをご紹介します。

藻食性魚類とは

▲パウダーブルーサージャンフィッシュ。ニザダイ科は藻類を好み食べる

藻食性魚類とは、学術的な分類体系ではなく、おもに藻類を中心に食している魚をいいます。

ひとくちに「藻食性魚類」といってもニザダイやアイゴのように海藻から付着藻類(コケ)などなんでも食するものや、カエルウオの仲間などのように海藻ではなく付着した藻類を好んで食べるものなど、いろいろな魚がいます。また同じ科の魚であっても、藻類食であるものとそうでないものがいたりします。例えばイソギンポ科のカエルウオは岩や水槽の壁面、ガラス面に付着した藻類を好んで食べますが、同じイソギンポ科のセダカギンポはサンゴの表皮などを捕食し、ニセクロスジギンポなどのように魚の鱗や鰭、皮膚を食いちぎって食べてしまうような魚もいます。

コケ取りとして入れられている魚も、コケが無くなると餓死してしまいます。そのためちゃんと餌を与えるようにしましょう。とくにカエルウオなどは常に岩礁域で餌のコケを食んでいます。そのため水槽でも餌を多く与えたいところです。

藻食魚と他魚の混泳

藻類食の魚は概ね気性が荒く、動物プランクトン食性のハナダイの仲間や遊泳性ハゼの仲間など、おとなしい魚との混泳には適していないことが多いといえます。これはプランクトンのようにどこにでも存在するというものでなく、藻類が生育する条件というのがある程度限られているためです。そのため、藻類食性の魚は縄張りをつくりたがるのです。とくにスズメダイの仲間とニザダイの仲間は大きな水槽でないと混泳はさせにくいといえます。とくに同種もしくは近縁種同士では激しく争うような種も多いです。カエルウオの仲間も争うことがあるので小型水槽では1匹だけにとどめた方が無難でしょう。

藻類食魚類のための餌

ここで紹介する配合飼料のほかにもさまざまな配合飼料が各社から販売されていますが、ここでは日本国内で手に入りやすいものをピックアップしてご紹介します。

キョーリン メガバイトグリーン

メガバイトはキョーリンから販売されている配合飼料です。名前の由来は「最高の食いつき」ということで、メーカーの自信が現れている配合飼料と言えます。肉食中心の魚用の「レッド」と、藻類中心に捕食する魚用の「グリーン」があり、「レッド」と「グリーン」では餌の配合量が違います。それぞれに「S」「M」「L」の3種のサイズがあります。Sサイズは小型のカエルウオやハギやアイゴの幼魚、これらがある程度のサイズになればMサイズを与えます。Lサイズは大型ハギやヤッコなどに最適です。

レッド・グリーンに最も多いのはフィッシュミール(魚粉)で、レッドはオキアミ・イカ・シルクワームの順に多く配合しますがグリーンではイカ、アルファルファ、オキアミ、ノリの順番に多く配合しているようです。これらはいずれもSサイズのもので、MサイズとLサイズでは若干配合量が異なります。

キョーリン 海藻70

海藻70は、キョーリン メガバイトグリーンをベースにした藻食魚向け商品です。「70」というのは、海藻を約70%の割合で配合しているということで、海藻を好む魚に最適といえます。海藻を食さないカエルウオの仲間もこの餌であればよく食べてくれるので藻類食の魚にとっての万能フードといえるでしょう。

ノリを強化配合し、海藻粉末、小麦粉、フィッシュミール、オキアミミールも配合しています。消化しにくい小麦粉が配合されているため、藻類食が強い魚用といえます。海水魚専門店であればどこでも置いてあるため、入手性に優れた餌です。サイズはメガバイトと異なり「S」と「M」の2種類で「L」はありません。飼育している魚のサイズに合わせて選びましょう。

ヒカリ (Hikari) ひかりプレミアム海藻 70 S サイズ

ヒカリ (Hikari) ひかりプレミアム海藻 70 S サイズ

1,192円(05/08 12:06時点)
Amazonの情報を掲載しています

海藻70についてはこちらで詳しく解説しています。

アクアリウムシステムズ アラカルト(天然海藻)

フランスのアクアリウムシステムズ(日本における代理店はナプコリミテッド)の餌で、フランス近海産の海藻を乾燥させたものです。パッケージを開封してそのまま与えてもよいのですが、おすすめはまずビーカーなどにこの餌を入れて海水を加えてから与えることです。

さまざまな海藻をブレンドした「ミックスドフレーク ミニ」、「ミニ」よりもやや大きめの海藻をブレンドした「マキシ」、紅藻をそのままの形でパックした「レッド シーウィード」、紫色の海藻をシート状にした「パープル シーウィード」の4種類があります。

天然の海藻をそのままパッキングしたものでミネラルが豊富なこと、汚染の少ない海域で採集されていることがメリット、デメリットは魚の種類によってはなかなか食べないこと、この商品を置いているお店が多くないことなどがあります。

アラカルトシリーズをもっと知りたい方はこちら。

クビレズタ(ウミブドウ)

標準和名はクビレズタといいますが、ウミブドウという名前で販売されていることが多いでしょう。暖かい海を好む海藻(緑藻)の仲間です。人間の食用としてもよく知られる本種ですが、生き餌として海水魚専門店でも販売されています。ハギの仲間やアイゴの仲間などは海藻を好んで捕食しますが、カエルウオの仲間は食べません。海藻水槽でコケ取りをしてもらうのであれば、カエルウオの仲間にお任せするのがベターでしょう。明るい照明の水槽であればすぐ増えますので、家庭でも簡単に生産できる藻食魚用フードといえます。一方条件がピタリと合った環境のもとではサンゴを覆い尽くすほど増えてしまうなどのデメリットもあります。

アクアリウムで飼育される藻食魚

ニザダイ(ハギ)の仲間

キイロハギ

▲人気の高いキイロハギ

アクアリウムの世界でよく知られた藻食魚といえば、映画「ファインディング・ドリー」の主役としても知られているナンヨウハギや、鮮やかな黄色がきれいなキイロハギを含むニザダイの仲間でしょう。

ニザダイの仲間は多くの種がサンゴ岩に付着した藻類や海藻を主食としています。そのためライブロックやサンゴ岩に付着したコケを食べてくれ、海藻も食べてくれます。海藻が繁茂して困っているときには最適ですが、海藻を観賞のために飼育している水槽には全く向いておらず、アミジグサなど海藻の種類によっては食べないこともあります。また弱ったオオバナサンゴなどをつつくような個体もいるので要注意です。歯の形は両側が鋸歯状になっているもの(クロハギ属)や、口内側に倒すことができ先端の片側が鋸歯状のもの(サザナミハギ属)、細く尖った歯をもつもの(テングハギ属)などがあります。

背鰭の棘には毒がある種がおり、このほか尾にも大きなカミソリのような棘があるので刺されると大けがをするおそれもあります。そのため素手で掬わないように注意します。性格はかなりきつく、ほかの魚を追いかけまわすこともあります。

アイゴの仲間

▲ヒフキアイゴ

アイゴ科のヒフキアイゴも海水魚水槽でよく飼育される藻食魚といえます。ほかヒメアイゴ、マジリアイゴ、ゴマアイゴなど色々いますが、みな藻類を中心とした雑食性の魚です。アイゴの仲間は分類学的にはニザダイの仲間に近く、コケをよく食べてくれますが、海藻も好んで食べてしまいますので、海藻水槽には向きません。

このほかにも甲殻類や動物プランクトンなどを捕食していますが、個体によってはサンゴをつつくこともあり、オオバナサンゴやオオタバサンゴなど大きめのポリプを持つLPSとの飼育は要注意といえます。また鰭棘に毒があるので、ニザダイ同様手で掬ってはいけません。性格はニザダイ系よりはおとなしめといえます。

カエルウオの仲間

イソギンポとヤエヤマギンポの混泳

▲ヤエヤマギンポ

カエルウオの仲間はサンゴ岩やライブロックなどに生えるコケを主に捕食します。そのため水槽には「コケ取り」として入れられることもありますが、コケを餌にするだけでは長生きさせることができません。そのため藻食魚専用の配合飼料を与える必要があります。

海藻は食べないので海藻水槽での飼育もできます。ただし種類によってはサンゴの表皮などを食べてしまうようなものもいますので、そのようなものはサンゴ水槽で飼育してはいけません。また藻類を好んで捕食するものは水槽から飛び出してしまうものも多いので水槽にはしっかりフタをしておきましょう。同種同士では争うこともありますが、カエルウオを捕食してしまう魚や生息地の水温が大きく異なる魚をのぞき、多くの種の魚と混泳可能です。

ブダイの仲間

▲アオブダイの幼魚

ブダイ科の魚のうちアオブダイ属、ハゲブダイ属、イロブダイ属の魚はサンゴ岩などに付着した藻類を主食としています。歯の形は鳥のくちばしのような形状をしているものが多く、藻類などを死サンゴごと削るようにして食べるものが多いですが、甲殻類なども多少は食しています。

カンムリブダイなど、ブダイの種によっては生きた造礁サンゴをかじってしまうようなものもいます。ただブダイの仲間は大型に成長しますし、遊泳力も強いので、成魚まで育てるには巨大な水槽が必要になります。カンムリブダイは大きいもので1mを超えるようなサイズにまでなりますが、観賞魚店でもよく見られるイロブダイも50cm(最大80cm)くらいになることを考えると初心者が飼育してよい魚とはいえません。

ヤッコの仲間

▲大型ヤッコは海藻も食べる

ヤッコの仲間は雑食性ですが、付着藻類などをよく食べます。配合飼料に餌付いた中・大型ヤッコにもたまには海藻や海藻を強化配合した配合飼料を与えたいものです。種類によっては海藻水槽に入れられないほど海藻を好んで食べることもあります。

スズメダイの仲間

▲クロソラスズメダイの成魚

スズメダイの仲間も藻類を好んで捕食します。イシガキスズメダイの仲間(ルリホシスズメダイ、ハクセンスズメダイなど)、ルリスズメダイの仲間(一部。ミヤコキセンスズメダイ、ネズスズメダイなど)、クロソラスズメダイの仲間(クロソラスズメダイ、セダカスズメダイなど)は藻食性が強いといえます。

藻類を好んで食べる魚は気性が荒いものが多いのですが、スズメダイの仲間はとくに気性が荒いので注意が必要です。温和なスズメダイの仲間であるデバスズメダイやヒメスズメダイなどのスズメダイ属の魚(成長すると性格がきつくなることもある)、オキナワスズメダイの仲間はプランクトンを捕食していますが、藻類はプランクトンのように漂っているものではなく、藻類を好んで食べるスズメダイの仲間は藻類がよく生えているところに縄張りをつくるのです。とくにクロソラスズメダイではそれが顕著で、好物のイトグサという藻類が生えている場所を守り侵入してくる魚を追い払い、ほかの海藻などを取り除いたりすることもあります。

しかしクロソラスズメダイは常に藻類だけを食べている、というわけでもなくほかの餌も食べています。写真の個体も喜界島でオキアミを餌に釣れたものです。飼育下でもオキアミやイトグサを与える必要はないのですが、できるだけ藻類を中心としたベジタリアンメニューを考案してあげましょう。

ボラの仲間

▲ボラの仲間は雑食性

ボラの仲間は雑食性で、水槽にはえたコケも食べてくれるなど藻類食性の一面もあります。コケ取りとして入れられることもあるボラの仲間ですが、やや大きくなったり、あまりコケを食べなくなってしまうなどデメリットも多いです。しかし銀色の体がきれいであり、性格もおとなしいです。しかし水槽から飛び出して死んでしまうこともあるため、フタはしっかりします。また気性が荒い魚との混泳には不向きです。

藻類を好んで食べる無脊椎動物

フシウデサンゴモエビ(サロンシュリンプ)は危険

▲フシウデサンゴモエビはサンゴの共肉を食べることも

藻類を好んで食べるのは魚だけではありません。無脊椎動物も藻類を好んで食うものがいます。中には水槽に発生した厄介な事象に効果があるものも多くいます。アシナガモエビ、フシウデサンゴモエビなどはコケ取りとして入れられることがありますが、とくにフシウデサンゴモエビはLPSの共肉をむしってしまうようなものも多く、また肝心のコケも食べてくれるものとくれないものがいます。

このほか甲殻類では一部のヤドカリやエメラルドグリーンクラブも藻類食が強いです。我が家ではクビレズタなどと一緒にイソヨコバサミやツマジロサンゴヤドカリなどを飼育していますが、海藻には害がないようです。一方、エメラルドグリーンクラブはほかの生き物が食べないバロニアの仲間も食べますが海藻も食べてしまうので海藻水槽には入れられません。

軟体動物の一種アメフラシは海藻などを食べていますが、高水温に弱いこと、つつかれるなどの刺激をうけると紫色の液を放出するため、海水魚との飼育には向かないところがあります。

魚種別:与えるべき餌

ブダイの仲間と藻類食のスズメダイは飼育経験が少なくデータがないので省略させていただきました。今後飼育を行いデータを蓄積します。

ニザダイ(ハギ)の仲間―メガバイトグリーン・海藻70・アラカルト・ウミブドウ

ニザダイの仲間は海藻も付着藻類も好んで捕食しますので、どのような餌でも食べてくれるありがたい魚たちです。アラカルトも海藻70もよく食べてくれますが、入手しやすくさまざまな原料を含む海藻70に餌付かせたいところです。またニザダイの仲間は甲殻類も捕食するため、たまにメガバイトレッドなどの餌をあげてもよいでしょう。

アイゴの仲間―メガバイトグリーン・海藻70・アラカルト・ウミブドウ

近縁のニザダイ同様に海藻類や付着藻類を食べるため、メガバイトグリーン、海藻70、アラカルト、ウミブドウいずれの餌もよく食べてくれます。また甲殻類などの底生小動物も若干捕食しており、メガバイトレッドなどもたまに与えるとよいでしょう。

カエルウオの仲間―メガバイトグリーン・海藻70

カエルウオの仲間は小型藻類を食べますが、海藻類を食べないので、アラカルトや海藻を水槽にいれてもなかなか食べてくれません(ただし海藻に付いた藻類を捕食することはあります)。一方、海藻を主成分とした配合飼料である海藻70やメガバイトグリーンは好んで食べてくれますので、カエルウオの餌にはこれらの餌を選択するのがおすすめです。

ヤッコの仲間―メガバイトグリーン・海藻70・アラカルト・ウミブドウ

ヤッコの仲間では海藻を好んで食べるものと、あまり食べないものがいます。例えば我が家で飼育しているアブラヤッコ属の魚のうち、アカハラヤッコは一緒に飼育している海藻を食べてはいないのですが、海藻70をあげると喜んで食べています。一方、ケントロピーゲ亜属でウミブドウを美味しく食べるアブラヤッコは海藻やアサリをばくばくと食べているものの、海藻70はあまり食べてくれません。

ボラの仲間―メガバイトグリーン・海藻70

ボラの仲間はコケやデトリタスを食べるので、海藻は食べません。海藻水槽でもボラの仲間を飼育することはできるのですが、それは乾燥させた海藻そのまんまの「アラカルト」は食べないということになります。メガバイトグリーンや海藻70といった配合飼料はよく食べ、よく成長してくれます。小さいうちは口も小さくて大きい餌は食べにくいことがありますので、手ですりつぶすなど配慮が必要なこともあります。

藻食性魚類に適した餌 まとめ

  • 藻類食魚類とひとくちにいっても種類は多い
  • 海藻や付着藻類を食うものや付着藻類を食うが海藻は食わないものもいる
  • 概ね気性は荒い。とくにハギの仲間やスズメダイの仲間は混泳注意
  • 海藻系配合飼料や海藻そのものを餌として販売している
  • ニザダイ(ハギ)やアイゴは海藻も海藻系配合飼料も食べる
  • カエルウオは海藻は食わないが海藻系配合飼料はよく食べる
  • ヤッコの仲間は種類によって食べる餌が異なる
  • ヤドカリやモエビの仲間なども藻類を捕食する
  • 種類によってはサンゴや海藻を食するものも
フリーワード検索
海水魚の記事
サンゴの記事
    もっと読む