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2020.12.04 (公開 2018.02.04) 海水魚図鑑

ナンヨウハギ(ドリー)の飼育は難しい!白点病にかかりやすく初心者におすすめできない

ナンヨウハギ

ナンヨウハギは、熱帯魚らしい青と黄色の色彩が特徴で、映画「ファインディング・ニモ」に登場する「ドリー」のモデルになったことでもおなじみの魚です。

アクアリスト、特に「これから海水魚飼育を始めたい」という初心者に人気の魚ですが、ニザダイの仲間はクマノミなどに比べると飼育がやや難しいものが多く、衝動買いすると失敗しやすい魚といえます。

標準和名 ナンヨウハギ
学名 Paracanthurus hepatus (Linnaeus, 1766)
英名 Palette surgeonfish, Blue surgeonfish など
分類 スズキ目・ニザダイ亜目・ニザダイ科・ナンヨウハギ属
全長 30cm
飼育難易度 ★★★☆☆
おすすめの餌 海藻70メガバイトグリーン
温度 24~26度
水槽 60cm以上(将来的には90cm以上必要)
殺菌灯 必要
混泳 同種同士は注意が必要
サンゴ飼育 可だが弱ったサンゴはつついてしまう

ナンヨウハギってどんな魚?

ナンヨウハギはニザダイ科の魚です。ニザダイ科の魚はテングハギ属・ニザダイ属・クロハギ属・サザナミハギ属・ヒレナガハギ属、そしてナンヨウハギ属の計6属・83種が知られています。ナンヨウハギ属はこのナンヨウハギのみが知られています。

ニザダイ科の他の多くの魚と同じ、鮮やかな色彩が特徴です。

初心者は注意

ナンヨウハギとカクレクマノミの混泳事例

映画「ファインディング・ニモ」やその続編「ファインディング・ドリー」に登場する人気者で、そのコラボを再現してみたくなる気持ちはよく分かります。しかし、マリンアクアリウムをはじめたばかりの初心者にはおすすめしません

その理由が以下4点です。

  1. 成長が早く、すぐ大きくなるので小型水槽では持て余しやすい
  2. 性格がきつい
  3. 病気になりやすい
  4. 鰭の棘に毒がある

ナンヨウハギの分布域とバリュエーション

ナンヨウハギの分布域は東アフリカからライン諸島、ハワイ諸島(島田,2013)までのインド-中央太平洋の広い範囲におよび、日本でも沖縄などのサンゴ礁で普通にみることができます。

太平洋とインド洋産では色彩に差があります。太平洋産のものは尾の付近を除き、体全体が青っぽいのに対し、ケニア便などで来るインド洋産の個体は腹部が黄色に染まり「イエローベリー」などと呼ばれます。飼育方法はあまり変わらないのですが遠隔地から来るのでお値段は高めです。

棘に注意

ナンヨウハギの棘の毒

ナンヨウハギの鰭の棘には毒があると言われており、素手で触らないようにしましょう。このほかに毒はないようですが尾鰭の付け根付近に非常に大きな棘があり、刺されると大けがをすることもあります。なるべく素手で触らないようにしましょう。

ナンヨウハギに適した飼育環境

水槽

60cm水槽でも飼育できないことはありませんが、成魚は水槽内でも20cmを超える大きさになること、遊泳性が強いこと、大食いで多くの排せつをして水を汚すことからできるだけ大きな水槽で飼育してあげたい魚です。

できれば90cm以上の水槽で飼育したいところです。設備を整える重要性についても、初心者にとってハードルが高い理由となります。

水質とろ過装置

ニザダイ類はどの種も綺麗な水を好みます。水が汚いとHLLEやその他の病気を発症してしまうおそれがありますので、しっかりとしたろ過装置を使用する必要があります。

外掛け式や外部式ろ過槽よりも、ろ過の能力が高い上部ろ過槽が適しているといえますが、オーバーフロー水槽にしてサンプをろ過槽にすればほかのろ過装置と比較して圧倒的大容量のろ過スペースを確保することができます。このほかサンゴを飼育するためのナチュラルシステムやULNSシステムなどを使用してもよいでしょう。

ライブロック

ライブロックの陰で眠るナンヨウハギ

▲ライブロックの陰で眠るナンヨウハギ

ナンヨウハギは夜間、サンゴの隙間やライブロックの中で眠る習性があります。魚混泳水槽であっても、ライブロックやサンゴ岩などを入れて寝床を作ってあげるようにしましょう。夜間は体を横たえて眠ることもあり驚かされるアクアリストも多いようです。

水温

他のサンゴ礁にすむ魚と同様、水温25℃前後で飼育するのが望ましいと言えます。もちろん水温が一定に保たれていることが重要です。温度が頻繁に大きく変動するような環境では白点病などの病気が発生しやすくなります。とくに白点病にかかりやすいナンヨウハギを飼育するときは温度が安定していることは重要といえます。

ナンヨウハギの選び方・購入

ナンヨウハギの選び方

ナンヨウハギは自分で採集することも不可能ではありませんが、一般的な入手方法は海水魚専門店での購入です。観賞魚店への入荷数は決して少なくはないのですが、人気のある魚のためすぐ売り切れてしまうこともあります。また価格も4000~6000円と安くはありません。

フィリピンやインドネシアから輸入されることが多く、インド洋産のイエローベリーはあまり入ってきません。サイズは500円玉くらいのサイズから20cmくらいのものまでさまざま。

そしてナンヨウハギは同種同士で争います。よく「3匹●●円!」といった売られ方がされていますが、小型水槽では激しく争い1匹しか残らないので複数購入はおすすめできません。

ナンヨウハギは極めて遊泳性が強い魚ですが、あまりにも忙しない泳ぎ方をしているものや、泳ぎながら壁面や岩などに鰓の周辺や体をこすりつけたりするものは寄生虫がついている可能性があり、避けるようにします。もちろん入荷したばかりの個体なども避けた方が賢明です。

ナンヨウハギの好む餌

海藻70

海では動物プランクトンや藻類を好んで食べていますが、ニザダイの仲間は概ね藻類などを食べる植物食性だと考えましょう。

ニザダイやアイゴ、大型ヤッコのように植物食性の強い魚類に適した配合飼料が各メーカーから販売されています。写真の「海藻70」はキョーリン製の人気配合飼料「メガバイト グリーン」をベースに海藻を強化しているおすすめの餌です。このほか海藻をフリーズドライした餌や、海藻を海苔状にした餌も販売されています。

ナンヨウハギは大食いで、餌をあげればその分大きく成長します。小さな個体は大変かわいらしく、大きくならないように餌の数を極端に減らしたくなりますが、障害が出てくることがあるためよくありません。

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ナンヨウハギの病気とその対策

殺菌灯ターボ

殺菌灯は病気予防に有効

ナンヨウハギはカクレクマノミやハタタテハゼ、スズメダイと比べると病気に罹りやすく初心者にはやや難しい魚といえます。飼育にあたっては殺菌灯を設置しておくことが安心材料に繋がります。中でもかかりやすい病気は以下3つです。それぞれ病気の症状と具体的な対策をまとめていきます。

  • 白点病
  • リムフォシスティス
  • HLLE

白点病

白点病は原生生物の一種により引き起こされる病気です。体に小さな白い点々がついたり、消えたり(魚体から離れたり)します。最初は1~2個ほど体表についていますが、次第に増えていき、酷いものは体に多数付着してしまうようになり魚が弱って死んでしまいます。

ナンヨウハギを始めとするニザダイの仲間、チョウチョウウオの仲間がかかりやすい病気で、他の魚に感染することもあります。

治療

最初1~2個ほどの白点がついているだけであれば様子見です。原因の生物が魚体から離れたときに水かえして取り除いたり(もちろん水温が変動しないように注意)、殺菌灯を使用して原因の生物を殺すこともできます。

白点がなかなか消えず、数が多くなったら薬品を用いて治療します。銅イオンを使用して治療するのが主流でしたが、銅イオンは使い方を誤まると魚を殺してしまうことも多いので、特に初心者であれば「グリーンFゴールド」などの魚病薬で治療するようにします。淡水浴はあまり効果がありません。

予防

紫外線殺菌灯の使用が効果的ですが、それを使用していても水が汚かったり、温度が上がったり下がったりするようでは予防できません。殺菌灯だけでなく、きれいな水をキープし、温度をできるだけ一定に保つようにしましょう。

餌に添加剤を添加するなど工夫して、抵抗力を高めたりするのも病気対策には有効です。しかしながら最も重要なのは綺麗な水をキープし、環境の変化を抑えることです。

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リムフォシスティス

ウィルス性の病気で、白い粒が魚の皮膚や鰭につく病気です。白点病とは違い、粒が同じ場所についていて、どんどん大きくなっていく病気です。口周辺の皮膚につくこともあり、そうなると餌を食べられなくなりますので、早めに対処することが重要です。

進行は遅く伝染性も低いので、安全に対処できます。

治療

治療薬もあるのですが、病魚をバケツなどに隔離して淡水浴を行い、鰭や体表についた粒を爪の先などで取り除いてあげるとよいでしょう。もし粒が大きくなってしまい、剥がした際に出血してしまうようでしたら、「エルバージュ」などをバケツに少量溶かしたりするとよいでしょう。

予防

イサキの仲間のクロオビダイ(ポークフィッシュ)は魚の外部寄生生物を食べる習性があり、リムフォシスティスの粒も食べてくれるようです。またホンソメワケベラも捕食することがあるようです。いずれにせよ個体差があり、100%食べる保証はありません。

HLLE

Head and Lateral Line Erosionの略で、日本語に訳すと「頭部および側線浸食」という病気です。「頭皮欠損」ともよばれるように頭皮が剥がれてしまうという病気です。発症しても直ちに死に至るような病気ではありませんが、発症してしまうと皮膚に穴があき痛々しい姿になってしまい、海水魚の魅力を大きく下げてしまいます。ナンヨウハギを始めニザダイの仲間や中・大型ヤッコに多くみられる病気です。

治療

HLLEの発症の原因としては、微量元素が足りない、ビタミンが足りない、銅などを使用した、活性炭を使用した、などさまざまな原因が考えられます。ビタミン不足であれば、ビタミンを添加したり、活性炭を使用しているのであれば活性炭を抜くのもよいでしょう。もちろん水が汚いのはよくありませんので、きちんと水替えをすることも重要です。

予防

特に活性炭によって引き起こされる可能性が高いといわれますが、ビタミン不足や水質悪化でも発症することがあり、それらの原因を取り除くようにします。

また、さまざまな病気に共通する事柄として、汚れた水では病気が発生しやすいということがあげられます。プロテインスキマーや強力なろ過槽を用い、定期的な水かえをサボらないようにして、常にきれいな水をキープするように心がけましょう。

ナンヨウハギの混泳

同種同士の混泳

自然の海ではニザダイの仲間の群れを見かけますが、水槽内では猛烈に争うので同種同士の飼育は避けた方が無難といえます。極めて巨大な水槽で、他の大型魚と一緒に組み合わせるのであればナンヨウハギを複数飼育することも不可能ではないのですが、あまりおすすめできません。

ほかの魚との混泳

ナンヨウハギの混泳事例

ナンヨウハギの幼魚はまだおとなしい方ですが、成長するにつれて性格がかなり強くなり弱い魚を追い回したりするようになります。

特にハタタテハゼやハナゴイなど温和な魚との飼育は避けるようにして、体が大きい、あるいは気が強めの魚と飼育するようにします。大型ヤッコ、小型ヤッコ、小~中型のベラの仲間、アイゴなどはもちろん、小型のスズメダイやクマノミの仲間など、意外とさまざまな魚との組み合わせが可能です。

ナンヨウハギとカクレクマノミの混泳

ナンヨウハギとカクレクマノミの混泳事例

冒頭から繰り返しになりますが、ナンヨウハギとカクレクマノミの混泳は決して「不可」ということはありません。しかし、十分に海水魚の基礎を学び、ここにまとめたナンヨウハギの性質について理解した上で飼育する必要があります。

サンゴ・無脊椎動物との相性

ナンヨウハギはサンゴ礁に生息する魚で、ミドリイシが健康に育つサンゴ水槽で飼育すると鮮やかな色彩が維持されやすい魚です。ただし個体によっては弱ったサンゴをつついてしまうおそれがあります。

ミドリイシやソフトコーラルを多数入れた水槽で飼育するのがおすすめです。ただしナンヨウハギは大食漢でそれなりの量の排せつをするため水を多めにかえたり、大きめのプロテインスキマーを使用するようにしましょう。

本種に限らずニザダイ科の魚や、ニザダイ科に近い仲間のアイゴの仲間は植物食性が強いため、海藻水槽では飼育することはできません。別の水槽で海藻を育てて餌にしているアクアリストもいます。

ナンヨウハギの飼育まとめ

  • 映画でもおなじみの人気種だが初心者には難しい
  • インド洋の個体は腹部が黄色
  • 鰭棘に毒があり尾鰭付け根にも大きな棘がある。素手で触らない
  • 終生飼育するには90cm以上の水槽が必要
  • 綺麗な水を好む。オーバーフロー水槽やナチュラルシステムの水槽で飼いたい
  • 水温は25℃ほど、安定していることが重要
  • サンゴやライブロックの陰で眠る
  • 植物質の餌を好む
  • 白点病、リムフォシスティス、HLLEなどの病気に罹りやすい
  • 水温の安定、きれいな水、殺菌灯の使用などで病気になる確立を減らせる
  • 気が強い魚、または大きめの魚と混泳したい
  • サンゴ水槽での飼育も可能。ただし弱ったサンゴをつつくことも
  • 海藻水槽での飼育は不可

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