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2020.09.22 (公開 2019.11.01) 海水魚図鑑

ロウソクギンポの飼育方法~コケはあまり食べないが丈夫で飼いやすい

ロウソクギンポは日本から西太平洋のサンゴ礁に生息するカエルウオの仲間です。熱帯性で関東近辺の潮溜まりでは採集できないのですが、紀伊半島以南の太平洋岸で採集でき、飼育も容易です。食性は雑食性とされ、藻類なども食べますが、水槽のコケを食べさせるのであればロウソクギンポよりもカエルウオやタネギンポのほうがずっと優秀です。今回はロウソクギンポの飼育方法をご紹介します。

標準和名 ロウソクギンポ
学名 Rhabdoblennius nitidus (Günther, 1861)
分類 スズキ目・ギンポ亜目・イソギンポ科・カエルウオ族・ロウソクギンポ属
全長 8cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトグリーンなど
温度 25℃前後
水槽 45cm以上
混泳 同じくらいの大きさの魚と混泳できる
サンゴ飼育 サンゴの状態が悪くなるとサンゴに悪影響をおよぼすことも

ロウソクギンポってどんな魚?

ロウソクギンポはイソギンポ科・カエルウオ族・ロウソクギンポ属の魚です。カエルウオ族の魚ですので、広義の「カエルウオ」になりますが、カエルウオとは見た目がだいぶ異なります。

まず体には細長い白色斑が多数入ります。これは水中で見ると青白く見えとて美しいです。また頭部には体側のものよりも大きい円形の白色斑があるなど、カエルウオの仲間では独特の雰囲気です。眼の上には細長い皮弁があるのも本種の特徴で、眼も大きく非常に可愛らしい魚です。

ロウソクギンポ属は5種が西―中央太平洋から知られており、ポリネシアなどに多い仲間ですが、日本からはロウソクギンポのみが紀伊半島以南の太平洋岸、長崎県、九州西岸、琉球列島に分布しています。海外では中国、台湾、西太平洋に生息しています。なお、FishbaseでロウソクギンポとされているJ.E.ランドール博士撮影の個体は頭部の斑紋や体側の斑紋、産地(ピトケアン)から考えるとロウソクギンポとは明らかに異なります。Rhabdoblennius rhabdotrachelusかもしれません。

雌雄の見分け方

▲ロウソクギンポの雄。頭部が黒いのが特徴

雄は頭部や腹鰭などが黒っぽくなりますが、雌は黒くなりません。カエルウオやタネギンポなどは頭部正中線上に皮弁がありますが、ロウソクギンポでは雌雄ともにそのような皮弁は見当たりません。したがって皮弁がないから雌、ということはいえません。一方雌雄ともに正中線があるシマギンポとはこの点で容易に見分けられるということになります。

シマギンポとの見分け方

▲シマギンポ

ロウソクギンポはたまに海水魚専門店で販売されていますが、たまにシマギンポをロウソクギンポとして販売している海水魚店があるので注意が必要です。シマギンポは細長い斑紋(赤い矢印)があり、ロウソクギンポと間違えられやすいのかもしれません。

しかし、ロウソクギンポは顕著な正中線皮弁は雌雄ともにみられず、シマギンポは先ほど述べた正中線皮弁が雌雄ともにあることや、胸部に大きな白色斑があることが特徴で、容易に見分けることができます(ただしロウソクギンポの雄も胸鰭基部に黄色い不明瞭な斑紋が出ることあり)。食性についてはシマギンポの方が藻類をよく食べてくれるので、コケを食べさせることを考えるならシマギンポのほうがよいかもしれません。

ロウソクギンポ飼育に適した環境

水槽

全長は大きくても8cmほどであまり泳ぎ回る魚というわけではなく、小型水槽でも飼育できますが、初心者には45cm以上の水槽が安心でしょう。60cm水槽で飼育するのがおすすめです。

水質とろ過システム

比較的水質悪化には耐えられる種類ですが、できるだけ綺麗な水で飼育したいものです。小型水槽であれば外部ろ過槽と外掛けろ過槽を使用するのがベター、60cm水槽では上部ろ過槽が最適です。サンゴには概ね無害なので、ベルリンシステムなどサンゴを飼育するためのシステムで飼育することもできますが、このようなものはサンゴをメインに飼育するためのシステムで、魚を多く入れられるシステムではありませんので、注意が必要です。

水温

水温は25℃前後をキープしましょう。浅い潮溜まりに生息しており、比較的高い水温や低い水温にもある程度耐えることができますが、水温変動が大きいのは望ましくありません。

隠れ家

▲ライブロックの孔中に隠れるロウソクギンポ

隠れ家としてはサンゴ岩やライブロックを入れておくとよいでしょう。ロウソクギンポの場合、サンゴ岩にあいた孔中に隠れることを好むようです。ですからロウソクギンポが隠れられるほどの深さのある孔が多く開いたものが最適といえます。

フタ

ロウソクギンポは常に水中におり、カエルウオやタネギンポほどは飛び出すことはないのですが、それでも驚くと飛び出してしまうことがありますので、フタをしっかりしておきましょう。

ロウソクギンポに適した餌

▲ロウソクギンポ

ロウソクギンポは雑食性で、植物質の餌、動物質の餌問わず色々餌を食べてくれます。愛用しているキョーリンの餌では藻類などを好んで捕食する魚に適した「メガバイトグリーン」や「海藻70」だけでなく、動物食魚用の「メガバイトレッド」なども食べてくれます。

ただ、ロウソクギンポもガラス壁面のコケを捕食してくれますが、ガラスにつくコケを食べてもらうためにカエルウオの仲間を入れるのならば、ロウソクギンポよりもカエルウオタネギンポヤエヤマギンポなどのほうがずっと優秀といえます。

ロウソクギンポをお迎えする

ロウソクギンポは海水魚店で販売されていることがあります。しかし海水魚店で「ロウソクギンポ」という名前でシマギンポやホホグロギンポなどの別種のイソギンポ類を販売していることもあるので注意が必要です。購入するときは、あまりにも小さなもの(頻繁に餌をやる必要がある)、背肉が落ちている(痩せている)、体表や鰭に傷やただれなどがあるものなどは選ばないようにしましょう。

紀伊半島以南の潮溜まりに見られ、採集することもできます。干潮時、ひざくらいの深さになるタイドプールでも普通に見られます。泥っぽい場所にはあまり見られず、死サンゴやゴカイがいた穴の中に潜んでいることが多いです。片手に手網を構え、もう片方の手で穴から追い出すようにして捕まえるとよいでしょう。

ロウソクギンポとほかの生物との関係

ほかの魚との混泳

▲餌を待つタネギンポとロウソクギンポ。左はクモギンポ

ロウソクギンポはほかの魚を捕食することはなく、さまざまな魚と混泳できます。同種同士は小型水槽での混泳は避けるべきですが、あまりほかのカエルウオと争うことは多くはなく、混泳させやすいといえます。食性が雑食よりだからでしょうか。

このほか混泳可能な魚はカクレクマノミ、ヤッコの仲間、各種ハゼの仲間、ハギ、アイゴ、小型ベラ、テンジクダイ、ハナダイ、ネズッポなどです。細身の体ですので、本種を食べてしまう恐れがあるバスレットやハタなど、肉食魚や体形が似ていて喧嘩早いメギス類、同じく気性がはげしいスズメダイの大きいのとの組み合わせは不適です。

サンゴ・無脊椎動物との相性

健康なサンゴとの飼育は問題ありませんが、弱って骨格が見えているサンゴにコケが生え、そのコケを食べるときにダメージを与えることもあり、ロウソクギンポをサンゴと飼育する際には常にサンゴを状態よくキープしておきたいものです。またイソギンチャクなどは魚は食べられてしまうこともあり(とくにハゼ類やカエルウオは捕食されやすい)、一緒に飼育するべきではありません。

甲殻類はクリーナーシュリンプやサラサエビ類、小型のオウギガニ、サンゴヤドカリなどであれば問題ありません。ただしクリーナーシュリンプと言ってもオトヒメエビは強いハサミで小魚を襲うことがあり、よくありません。ほかにイセエビなど大型になるエビ・カニ・ヤドカリの類は一緒に飼育しないようにしましょう。

ロウソクギンポ飼育まとめ

  • 広い意味でのカエルウオの仲間
  • カエルウオほどにはコケを食べてはくれない
  • 雄は頭部や腹鰭が黒くなる
  • 小型水槽でも飼育できるが、初心者は45cm以上の水槽が理想
  • 外部ろ過槽はろ過不足になりやすく要注意
  • ベルリン水槽などでの飼育もできる
  • 高水温にも耐えられるが水温は25℃を保ちたい
  • フタはしっかりしておく
  • 雑食性でさまざまな餌を食べる
  • 紀伊半島以南の磯で採集できる
  • 「ロウソクギンポ」として販売されていても別種の可能性もあり注意
  • ほかのカエルウオなどとの混泳もできる
  • 弱ったサンゴをさらに弱らせることがあり要注意
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