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2022.09.27 (公開 2018.09.24) 海水魚図鑑

フタホシキツネベラの飼育方法~エビや同種同士との混泳は危険

フタホシキツネベラ

フタホシキツネベラは、黄色い体が鮮やかなベラの仲間です。ベラの仲間では結構気が強く、同じ仲間同士ではよく争うので混泳には注意が必要で、甲殻類も捕食するため一緒にはできません。その一方、飼育は簡単で初心者にもおすすめのベラといえます。タキベラの仲間で夜間は砂に潜らず、岩の中で休息します。

標準和名 フタホシキツネベラ
学名 Bodianus bimaculatus Allen, 1973
英名 Twospot hogfish
分類 スズキ目・ベラ亜目・ベラ科・タキベラ亜科・タキベラ属
全長 8cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッドS など
温度 23~25℃
水槽 60cm~
混泳 気が強いので大人しい魚との混泳は避ける
サンゴ飼育 可。ただし強い照明での飼育は避ける
そのほか 飛び出すおそれあり。フタは確実に

フタホシキツネベラってどんな魚?

フタホシキツネベラ

体側に二つの斑紋があることから名前がついた

フタホシキツネベラはスズキ目ベラ科の海水魚です。ベラ科は非常に種類が多いのですが、本種はその中のタキベラ亜科・タキベラ属に含まれます魚です。標準和名、学名のうち種小名bimaculatus(二つの斑とかいう意味)、英名はいずれも体側の二つの斑点にちなみます。

タキベラ亜科の魚は背鰭棘数が多いこと、側線が連続することなどが特徴で、イラ、キツネベラ、キツネダイ、ホグフィッシュ、コブダイなどを含み、大きいものは1mを超えるような大型種もいます。タキベラ属はタキベラ亜科の中では最も魚種数が多い属で、約50種を含みインド-太平洋域、東太平洋、大西洋いずれの海域にも生息しています。英名Hogfishは「ブタ魚」とか「イノシシ魚」とかいう意味ですが、おそらく顔つきに由来するものでしょう。

ただし比Fishbaseのコモンネームで「Hogfish」とされているものはラクノライムス属というまた別の属に含められる種類です。このほか西大西洋(アメリカ東海岸)には英名でPigfish(ブタ魚)とよばれるもいますが、これはイサキ科クロホシイサキ属の魚であり、関係はありません。

ベラの仲間は雌雄により色彩が大きく異なるものが多いのですが、フタホシキツネベラは雌雄による色彩の差はほとんどありません。ただし海域によるバリエーションは知られ、一部の地域の個体は赤みを帯びた色になることが知られています。幼魚は鰓蓋の暗色斑は不明瞭で、体側に暗色の縦線が入ります。

フタホシキツネベラの飼育に適した環境

フタホシキツネベラ

水槽

タキベラ属の中にはタキベラやキツネベラなど、50cmを超える大型種がいます。フタホシキツネベラはあまり大きくなりませんが遊泳力はそれなりに強いため、できれば60cm以上の水槽を用意してあげたいものです。ほかの魚と混泳させるのであれば90cm以上の水槽が適しているでしょう。

水質とろ過システム・照明

ベラの仲間のなかでもかなり丈夫な魚ですがさすがにアンモニアや亜硝酸が検出されてしまうようではいけません。きちんとしたろ過槽を用意する必要があります。上部ろ過槽やオーバーフローろ過槽を使用するか、外部ろ過槽とほかのろ過槽との併用が望ましいでしょう。

フタホシキツネベラを飼育するのであればミドリイシなどを飼育するためのベルリンシステムなどで飼育することもできますが、そのようなシステムでは魚を多めに入れられません。また強化照明のもとでは褪色してしまうこともありますので250Wのメタルハライドランプの下での飼育はおすすめできません。

水温

熱帯性の魚ですが水深30m~50mほどのやや深い場所で見られる種です。25℃でも飼育できますが、23℃前後のやや低めの水温で飼育したほうがよいかもしれません。

フタ

ベラの仲間は遊泳性が強く、勢い余って水槽から飛び出してしまうこともあります。そうなると干からびて死んでしまいます。そのためフタはしっかりとしなければなりません。

本種はキュウセンの仲間とは異なり、夜間の睡眠時や危急時に砂に潜ることはありません。そのため砂を敷かなくても飼育できますが、サンゴ水槽で飼育する場合はバクテリアの増殖や水質維持のことを考えると砂はあったほうがよいでしょう。その一方サンゴを飼育しないで、魚を混泳させた水槽では逆に砂がない方がメンテナンスも容易になりますので、おすすめです。

ライブロック・サンゴ岩

フタホシキツネベラは夜間岩のすきまなどで眠る習性がありますのでサンゴ岩やライブロック、飾りサンゴなどで夜間の休息場所を作ってあげるようにします。

またフタホシキツネベラに限らず、タキベラ属の魚は気が強いものが多いですので、他の魚がフタホシキツネベラに追いかけられたとき、逃げ隠れることができるように考えながら岩組を組むとよいでしょう。

フタホシキツネベラに適した餌

動物食性で甲殻類を主に捕食します。飼育下では状態がまともで、水温や水質が適正であればすぐに配合飼料を食べてくれるはずなので餌付けは楽です。

どうしても配合飼料を食べない場合は冷凍したエビやイカ、ホワイトシュリンプなどの餌を与えるのもよいですが、この手の餌の与えすぎは水を汚しますので注意が必要です。

フタホシキツネベラの入手方法

深場に生息するため磯で採集することはできません。そのため観賞魚店で購入することになります。

タキベラの仲間としては入荷量は多い方で、価格も比較的安価、だいたい3000~4000円前後で購入できます。分布域は広く、相模湾以南の太平洋岸、西インド洋からマーシャル諸島までのインド-西太平洋に生息していますが、観賞魚としてはインドネシアなどから入ってくることが多いです。

購入するときの注意点はほかの魚とはあまり変わりません。鰭がぼろぼろのものや溶けているもの、体に白い点がついていたり赤くただれているもの、吻に傷があるものなどはもちろん避けた方がよいでしょう。

このほか本種はやや深場で見られる魚ですので水圧の急変のよる減圧の影響がでるおそれがあるので泳ぎがおかしい、眼がでている、などの個体は避けた方が賢明です。もちろん入荷直後の個体もやめましょう。減圧の影響が後々出てくることも考えられるからです。

フタホシキツネベラの混泳

同種同士の混泳

同種同士では激しく争いますのでフタホシキツネベラ同士や、近縁種との混泳は避けた方が無難といえます。これはほかのタキベラ属魚類にもいえることです。

ほかの魚との混泳

フタホシキツネベラの混泳事例

▲ベラ同士の混泳は十分に注意したい

性格はきつめな方ではありますが、大きなスズメダイやメギス(ニセスズメ)などには負けてしまうこともあるため注意が必要です。小型ヤッコや大きめのハナダイなどとの組み合わせが無難でしょう。写真のように複雑にサンゴ岩やライブロックを組み合わせれば、ハタタテハゼなど比較的おとなしい遊泳性ハゼとの飼育もできます。

その一方、同じベラの仲間はかなり激しく追い回すことがありますので注意が必要です。隠れ家を豊富にし、混泳するベラはフタホシキツネベラよりも大きめの個体をセレクトするとよいでしょう。ただしその場合もノドグロベラやオグロベラのような臆病な種はやめたほうが無難です。

サンゴ・無脊椎動物との相性

フタホシキツネベラのサンゴとの相性

▲サンゴには無害

サンゴにはいたずらをすることはありませんので、サンゴ水槽での飼育も可能です。生息環境を考えますと浅場のミドリイシよりは深場ミドリイシやLPSとの飼育が向いているといえます。タキベラの仲間で、本種のようにやや深場に生息するものは明るすぎる環境では色があせたり日焼けすることもあるため、浅場のミドリイシを飼育するためのメタルハライドランプ多灯はよくないとされています。

甲殻類は大好物なので一緒にいれてはいけません。ただしオトヒメエビやイセエビの類など、大型の甲殻類には逆に食べられてしまうおそれもありますので注意しなければなりません。本種のように夜間砂に潜らないベラとの混泳はとくに注意するべきといえます。

ほかの黄色いベラとの比較

コガネキュウセン

コガネキュウセン

▲コガネキュウセンの雄

黄色が美しいベラといえばフタホシキツネベラのほか、このコガネキュウセンが思いつきます。フタホシキツネベラは体色が赤みがかっているものもいますが、コガネキュウセンは全身真っ黄色で背鰭に黒色斑があります。雄は頭部に緑色の線が入りますが、雄雌、幼魚で大きな色彩の変化はありません。インド洋からたまにやってくる腹部が白っぽいものはインディアンカナリーラスと呼ばれる別種です。

フタホシキツネベラとコガネキュウセンの飼育方法の大きな違いとしては砂を必要とするか否か、ということがあげられます。フタホシキツネベラは夜間岩陰で休息するため砂を敷かなくてもよいのですが、コガネキュウセンはホンベラ属の魚で、夜間は砂の中で休息します。そのためパウダー状の砂を少し厚めに敷いてあげるとよいでしょう。

コガネキュウセンも大きく育ったものはフタホシキツネベラ同様性格がきつめですので、ほかの魚との混泳には注意が必要です。また甲殻類は好んで食べてしまいます。ヤマブキベラほど遊泳性は強くなく、この種も60cm水槽があれば終生飼育可能です。

詳しい飼育方法などはこちらもご覧ください。

ヤマブキベラ

ヤマブキベラ雌

▲ヤマブキベラの雌

ヤマブキベラの雌は黄色い体が美しく、標準和名もこの雌の体色に因んでいます。しかし性転換を行い雄になるとド派手な色彩に変貌します。

この種はニシキベラ属の魚で、遊泳力が強い魚です。そのため小型水槽での飼育はしにくいといえます。また全長も20cmを越えますので、最終的には90×45×45(cm)水槽でも狭くなってしまいます。

性格は協調性があり、スズメダイの仲間や大小問わずヤッコの類、チョウチョウウオ、カクレクマノミ、ハギの仲間などとの混泳を楽しむことができますが、やはり甲殻類は好んで食べてしまいます。夜間はフタホシキツネベラと同様、岩陰で休息しますので魚混泳水槽であれば底砂を敷く必要はありません。

フタホシキツネベラの飼育まとめ

  • 黄色っぽい体色が特徴のタキベラ仲間。ただし色彩には若干の変異も
  • 60cm以上の水槽で飼育したい
  • 丈夫ではあるが綺麗な水を好む
  • 砂に潜らないので魚混泳水槽では砂を敷く必要はない
  • サンゴ岩やライブロックなどで夜間の休息場所を作りたい
  • やや深場の魚で減圧の影響には注意が必要。入荷してすぐの個体の購入は避ける
  • 強すぎる光は好まない
  • やや性格がきつめ。ほかのベラとの混泳は注意
  • 同種同士では激しく争うおそれも
  • サンゴ水槽での飼育は可能
  • 甲殻類は食べてしまうおそれありなので同じ水槽で飼育するのは避ける
  • 逆にオトヒメエビなどはフタホシキツネベラを襲うおそれもある
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