2018.12.11 (公開 2018.12.09) 海水魚図鑑
クロユリハゼの飼育方法~やや臆病な性格で混泳・飛び出しに注意
クロユリハゼは遊泳性ハゼの代表的な種です。観賞魚店で購入できるだけでなく、千葉県以南の太平洋岸で採集することもでき、観賞魚としてよく飼育されている魚です。
しかしながらやや臆病な性格をしており、ほかの魚との混泳には注意が必要な魚です。また水槽から飛び出してしまうおそれもあり、フタは必需品です。本記事では、クロユリハゼを上手に飼育するためのポイントや、混泳の注意点をまとめています。
標準和名 | クロユリハゼ |
学名 | Ptereleotris evides (Jordan and Hubbs, 1925) |
英名 | Blackfin dartfish、spottail gudgeonなど |
分類 | スズキ目・ハゼ亜目・クロユリハゼ科・クロユリハゼ属 |
全長 | 約12cm |
飼育難易度 | ★★☆☆☆ |
おすすめの餌 | メガバイトレッド、冷凍イサザアミ |
温度 | 25℃ |
水槽 | 45cm~ |
混泳 | 臆病な性格なので強い魚、肉食魚との混泳は禁物 |
サンゴ飼育 | 可 |
クロユリハゼってどんな魚?
クロユリハゼはあまり派手ではありませんが、落ち着いた色彩が美しい魚です。分類学的にはスズキ目・ハゼ亜目・クロユリハゼ科(オオメワラスボ科のクロユリハゼ亜科とする場合あり)の魚で、この科には本種のほか、ハタタテハゼやオグロクロユリハゼなど、いわゆる「遊泳性ハゼ」の仲間のほとんどすべてが含まれています。
英語名ではBlackfin dartfish、spottail gudgeonなどの名前で呼ばれています。前者は成魚の背鰭と臀鰭の色彩に、後者は幼魚の尾部にある黒色斑にちなみます。全長は12cmほどになります。
遊泳性ハゼの飼育方法の基礎については、こちらもご覧ください。
ほかの遊泳性ハゼについてはこちらもご覧ください。
クロユリハゼに適した飼育環境
水槽
クロユリハゼは全長12cmほどですが、最低でも45cm水槽で飼育したいものです。複数飼育することを考えるならば60cm水槽のほうがよいでしょう。幼魚のうちは45cm未満の小型水槽で複数飼育も可能ですが、成長するにつれて大きめの水槽が必要になります。大きくなっても深刻な争いをすることはないので、その点では楽といえます。
水質とろ過システム
クロユリハゼは比較的水質悪化にも強めですが、できるだけきれいな水で飼育したいものです。おすすめは上部ろ過+外部ろ過槽の併用、もしくはオーバーフロー水槽です。小型水槽では小型外部ろ過槽を使用して飼育することもできますが、酸欠に陥りやすいのでシャワーパイプを使用するなどの工夫が必要です。飛び出してしまうこともあるので、隙間ができやすい外掛けろ過槽を使用する場合は隙間埋めをするなどして飛び出しを防ぐようにしましょう。
クロユリハゼはサンゴを捕食したりすることはありませんので、ベルリンシステムなど、サンゴ水槽でも飼育できます。ただしベルリンシステムで飼育するのであれば、魚は少なくしておかなければなりません。
水温
水温は原則として25℃をキープするようにします。水温は一定であることが重要で、水温の変動が大きいようだと、たとえ丈夫なクロユリハゼであっても病気になってしまうおそれがあります。
ライブロック・サンゴ岩
クロユリハゼをほかの魚と混泳させるのには必需品といえます。臆病なクロユリハゼがほかの魚に追われるなどしたときに隠れられるような場所を作ってあげるようにします。ただし、しつこく追い回すようなスズメダイや大型のクマノミ、メギスなどとの混泳は避けた方がよいかもしれません。
フタ
クロユリハゼの仲間はどの種も臆病で、なにかに驚くと岩陰に隠れたり、飛び出したりすることがあります。飛び出してしまうともうそのまま水槽に戻れずに死を待つのみなので、そのような事故を防ぐためにもフタはしっかりとしなければなりません。
クロユリハゼに適した餌
クロユリハゼは基本的に動物プランクトンを捕食しています。水槽でもコペポーダなどを水流に乗せて流してあげれば喜んで食べてくれるはずです。ただし、このようなプランクトンフードは水を汚すので注意が必要です。状態さえよければ配合飼料もすぐ食べてくれるはずなので、出来るだけ早く小粒の配合飼料を与えるようにします。
また、強い魚がいるようだと、クロユリハゼはずっと隠れ家にかくれたまま、出てこないこともあります。そのような状態だと、餌もあまり食べないので、混泳相手にも注意する必要があります(後述)。
クロユリハゼの入手方法
クロユリハゼは自分で採集して入手することも、購入して入手することもできます。
自分で採集する
▲クロユリハゼ(上)とサツキハゼ(下)
日本では千葉県以南の太平洋岸にも死滅回遊魚として流れ着くことがあり、自分で採集することも可能です。
同じように細い体つきの遊泳性ハゼであるサツキハゼと見間違えられることもあります。クロユリハゼとサツキハゼの見分け方は、尾の付け根で、クロユリハゼの幼魚は尾柄の腹方に黒色斑があり、サツキハゼでは尾柄中央から尾鰭にかけて楕円形斑が入ります。クロユリハゼは成長すると黒い斑紋は消えてしまうようです。
また採集できる場所もクロユリハゼは岩まじりの砂底やサンゴ礁の浅瀬に生息するのに対し、サツキハゼは内湾の堤防にあるカキ殻の周辺に見られます。網を入れるとクロユリハゼは素早く群れで逃げ回りますが、サツキハゼは危険が迫るとカキ殻の中に隠れることが多いです。
観賞魚店で購入する
クロユリハゼは海外にも広く分布し、その分布は東アフリカから中央太平洋に及びます。ただし、実際に日本の海水魚店に入ってくるのはフィリピンやインドネシアなど東南アジア産の個体です。値段は高価ではなく、おおむね2,000円以下で購入することができます。しかしそれゆえ雑な扱いを受けていることもあるので、購入前に魚をしっかり観察しましょう。
入荷日を聞くことも重要ではありますが、入荷してから長くても背肉が落ちてやせ細った個体などはやめたほうが無難です。また同じ水槽に強めのヤッコやスズメダイなど強い魚がいるところも避けたほうが無難です。
クロユリハゼと他の生物との相性・混泳
同種・同属同士の混泳
同種同士の混泳、ほかのクロユリハゼ属魚類(ゼブラハゼ、オグロクロユリハゼなど)との混泳も概ね問題ありません。ただし大きさはできるだけそろえておきたいところです。ハタタテハゼやアケボノハゼなどとの飼育も大丈夫です。
他の魚との混泳
▲スズメダイやメギスの仲間との混泳はできるだけ避けたい
クロユリハゼと他の魚と混泳させるときは、気が強い魚との混泳は禁物です。とくにスズメダイ(クマノミ含む)やメギスの仲間は気が強いためクロユリハゼとの混泳にはあまり適していません。ハタやバスレット、ゴンベの仲間は魚食性が強く、混泳してはいけません。
テンジクダイの仲間は種類にもよりますが、オオスジイシモチやシボリなど、肉食性の強いものとは混泳させないようにしましょう。イトヒキテンジクダイやキンセンイシモチなどであれば混泳できますが、できるだけ同じサイズ、もしくはクロユリハゼの方を大きくするとよいでしょう。
共生ハゼの仲間は水槽の底にいることが多く、クロユリハゼ科と混泳されることもありますが、共生ハゼが大きすぎるとクロユリハゼの仲間が餌になることもあるので注意が必要です。クロユリハゼの幼魚と飼育するのであれば、ヤシャハゼやヒレナガネジリンボウ、ヤノダテハゼ、ヤツシハゼといった、同じように温和な共生ハゼとの組み合わせが無難といえるでしょう。
ベラの仲間はホンベラ属、ニセモチノウオ、タキベラ属などは小型であっても性格がきついのでなるべく組み合わせない方がよいでしょう。大きめの個体であればイトヒキベラやクジャクベラの類とも混泳できますが、大型になる種を避け、マッコスカーズラスやラボックスラスなど小型種と混泳させるとよいでしょう。
カエルウオ、小型のハナダイ、ヨウジウオ、ネズッポ類などとは安心して組み合わせられますが、それらの魚ともサイズを合わせて混泳するようにしましょう。
サンゴ・無脊椎動物との相性
▲イソギンチャクは魚を捕食するので危険
サンゴや無脊椎動物には無害なので色々なサンゴと組み合わせられますが、ウチウラタコアシサンゴなど捕食性の強いサンゴやイソギンチャクとは組み合わせない方が無難です。甲殻類も温和なクロユリハゼを襲うことがあるので注意した方がよいでしょう。とくに幼魚は色々な生物に狙われやすいので注意が必要です。
クロユリハゼの飼育まとめ
- 遊泳性ハゼの代表的な種
- 最低でも45cm、複数飼育や混泳なら60cm水槽が必要
- おすすめは上部ろ過槽。外部ろ過槽は酸欠に、外掛けろ過槽は隙間からの飛び出しに注意
- 水温は25℃をキープすること
- ライブロックやサンゴ岩で隠れ家を作る
- 飛び出すおそれがあるのでフタは確実に
- 餌は小粒の配合飼料を与える
- プランクトンフードは与えすぎないように
- 採集でも購入でも入手できる
- 肉食魚や強すぎる性格の魚とは混泳を避ける
- サンゴに対しては無害
- イソギンチャクや甲殻類などに捕食されるおそれあり。とくに幼魚は注意