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2020.09.22 (公開 2019.11.11) 海水魚図鑑

セグロマツカサの飼育方法~配合飼料もよく食べ丈夫で飼いやすい

セグロマツカサはイットウダイ科アカマツカサ属の魚です。アカマツカサの仲間はどの種も赤みを帯びた色をしていて同定するのは難しいのですが、このセグロマツカサは紫から灰色っぽいという特徴的な色彩をもち、ほかのアカマツカサの仲間とは容易に見分けることができます。昼間はサンゴ礁域の物陰をゆったり泳ぎますが、夜間は積極的に餌を捕食するようです。

標準和名 セグロマツカサ
学名 Myripristis violacea Bleeker, 1851
英名 Violet soldierfish, Lattice soldierfishなど
分類 条鰭綱・キンメダイ目・イットウダイ科・アカマツカサ亜科・アカマツカサ属
全長 20cm
飼育難易度 ★★☆☆☆
おすすめの餌 各種配合飼料。食べない時はまず生の餌を与える
温度 25℃前後
水槽 90cm~
混泳 口に入らないサイズの魚は飼育できる
サンゴとの飼育 水質を悪化させやすいので注意

セグロマツカサって、どんな魚?

▲セグロマツカサ

セグロマツカサは、キンメダイ目イットウダイ科アカマツカサ属の魚です。「マツカサ」といえば発光魚として知られるマツカサウオを思い浮かべる方もいるかもしれませんが、マツカサウオはキンメダイ目マツカサウオ科の魚で本種とはやや異なるグループです。なお、本種の和名について「アカマツカサウオ」などと記述しているものもありますが、これは誤記です。

英名Violet soldierfishは体色からでしょう。latticeは格子という意味で体側に大きな鱗がびっしりと並ぶ様子を格子に見立てたのでしょうか。soldierfishは兵士の魚、という意味ですがアカマツカサ亜科の魚の総称としても使用されているようです。びっしりと鱗が並ぶのを甲冑をまとった兵士に見立てたのでしょうか。

イットウダイ科の魚

▲イットウダイ亜科は大きな棘をもつ

▲アカマツカサ亜科の鰓蓋に大きな棘はない

セグロマツカサが含まれるイットウダイ科の魚は日本からは40種ほどが知られますが、この仲間は二つのグループに分かれています。イットウダイのグループ(イットウダイ亜科)と、アカマツカサのグループ(アカマツカサ亜科)です。イットウダイ亜科の魚は前鰓蓋骨隅角部に強大な棘がありますが、アカマツカサのグループにはそれがありません。

難解なアカマツカサ属

▲アカマツカサ属のいろいろ

アカマツカサ属は世界で28種が知られ、うち日本には15種が分布していますが、この仲間の分類は極めて難解で、写真だけでは同定できないことがほとんどです。アカマツカサ属の魚は体側の鱗の数から2つのタイプに分けられるようですが、このほかにも胸鰭腋部の鱗の有無や両眼の間隔など、確認や計測が必要になります。

その中ではアカマツカサ属の中でもセグロマツカサは鱗(側線有孔鱗数)は27~29と少なく、背中が紫~灰色っぽい色彩で特異なもので、水中での判別は容易といえます。しかし飼育していると赤みが強くなる感じがします。沖縄ではこの仲間のアカマツカサをミンタマーアカイユとよび食用とします。刺身などは美味ですが鱗が非常に大きくて捌きにくい魚です。

セグロマツカサ飼育に適した環境

水槽

セグロマツカサは全長20cmほどになります。60cm水槽でも飼育できないことはないのですが、90cm水槽での飼育が理想的です。できれば単体の水槽ではなく、後述の理由からオーバーフロー水槽での飼育がおすすめです。

水質とろ過システム

水質悪化には比較的耐えるほうのようですが、ろ過槽はオーバーフロー水槽が最適です。これはセグロマツカサは採集して飼育しても、最初は配合飼料を食べてくれないケースがあり、その間は魚の切り身やエビ、イカなどの生の餌を与える必要があるからです。セグロマツカサはサンゴを食べるような魚ではなく、ベルリンシステムなどサンゴ水槽での飼育も可能ですが、餌の与えすぎには十分気をつけなければなりません。またセグロマツカサを水槽に入れたら、小魚やエビは入れられなくなってしまいます。

水温

水温は25℃前後(23~27℃くらい)で飼育するようにします。丈夫な魚ではありますが、いくら丈夫とはいっても水温が激しく上下するようでは病気になってしまうこともあるので注意が必要です。

隠れ家

アカマツカサの仲間は昼間は岩陰に隠れ、夜間は隠れ家の外にでるという習性があります。水槽にまだ慣れていないうち、とくにヤッコなどの性格がきついタンクメイトがいるときは隠れ家を入れておくとよいでしょう。ただし隠れ家を入れていても、慣れた個体は昼間でも水槽を遊泳していることが多々あります。

セグロマツカサに適した餌

セグロマツカサは動物食性が強いですが、最初餌を食べないことがあります。最初のうちは冷凍のホワイトシュリンプを与えますが、それだけでは栄養不足に陥りやすいためイワシミンチやイカも与えるようにし、さらに配合飼料もその中に混ざるように与えます。

ただし配合飼料に慣れても、我が家の経験上ではこのむ餌には偏りがあり、ある種の配合飼料を食べても、ほかの魚がこのむ配合飼料を食べない、ということもありました。もし観賞魚店で販売されていたのであれば、どの配合飼料を食べていたか、購入する前に聞いてみるとよいでしょう。

セグロマツカサをお迎えする

▲釣りで採集された個体

セグロマツカサは海水魚専門店で販売されます。分布域は広く東アフリカからトゥアモトゥ諸島まで(ハワイにはいない)の広い範囲に及びますが、主な産地は沖縄、マニラなどで高価な魚ではありません。先述したように同定はやや難しいため「アカマツカサ」もしくは「アカマツカサSP.」として販売されていることもあります。ほか赤紫色の濃いマルマツカサやアカマツカサと酷似したヨゴレマツカサなど、同定が困難な魚はひとまとめに「アカマツカサ」として販売されています。基本的に丈夫な魚ですが、体に傷があったり、鰭がぼろぼろ、溶けているようなもの、傷があるもの、白点が鰭などに付着しているものなどは選んではいけません。また背肉が落ちているものも回復が難しいので避けます。

日本では屋久島以南に分布しており、採集することもできます。夜間、防波堤などで小さい針に餌をつけて釣るとよいでしょう。釣れたら防波堤などにおかず、丁寧に針をはずしてバケツの中で泳がせます。我が家で飼育している個体も沖縄で採集した個体になります。

セグロマツカサとほかの生物との相性

ほかの魚との混泳

▲セグロマツカサとヤノリボンスズメダイの混泳。下にクマノミの姿も

セグロマツカサは動物食性の魚ですが、口に入らないサイズの魚であれば多くの魚と混泳することができます。ただし口に入るような小さなハゼなどとの混泳は避けましょう。

我が家の水槽ではスズメダイの仲間と混泳していますが、スズメダイとの混泳については、おとなしい種類(スズメダイ属やリボンスズメダイ属など)を入れること、ソラスズメダイ属などの性格がきつい種と混泳するならスズメダイのほうを小さくするなどの工夫が必要です。ただし混泳には少なくとも90cm以上の水槽が必要になります。

サンゴ・無脊椎動物との相性

サンゴには基本的には害を与えず、サンゴ水槽での飼育を楽しむことができますが、やや大きくなる魚ですので、遊泳スペースは確保しておきたいものです。甲殻類は好んで食べますのでエビ類との混泳は避けましょう。ヤドカリの類は問題ないことが多いですが、絶対に食べないということはいえません。

セグロマツカサ飼育まとめ

  • アカマツカサに似ているが背中が暗い色で体も紫~灰色っぽい
  • 60cmでも飼育できるが90cm以上の水槽が理想
  • オーバーフロー水槽での飼育が最適
  • 水温は25℃前後をキープする
  • 隠れ家を入れてあげたい
  • 動物食性で最初は配合飼料を食べないこともある
  • 配合飼料を食べても特定のものしか食べないことも
  • アカマツカサの名前で販売されていることもある
  • 体表や鰭に傷や白点があるもの、鰭が溶けているものは選ばない
  • 背肉が落ちているものも避ける
  • 多くの魚と混泳できるが、口に入る小型のハゼは食べてしまうことも
  • 甲殻類も食べてしまうことがあるので注意
  • サンゴには無害
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