2020.09.23 (公開 2017.08.22) 海水魚飼育の基礎
海水魚・サンゴ飼育に重要な「砂」の種類と役割
海水魚の飼育において底砂は重要です。
砂は魚に休息場所を、バクテリアには定着して増殖するための場所をあたえます。さらに底面がむき出しにならず見た目もぐっと変わるなど、メリットは大きいものです。ただし砂は扱いを誤ると水槽崩壊を引き起こしますので、注意が必要です。
具体的な砂底の種類とその役割を解説します。
サンゴ砂
海水魚の飼育にはサンゴ砂が最もよく使われています。サンゴ砂はその名の通りサンゴの死骸がもとになっている砂です。
パウダー状のものから粗い粒のものまでさまざまな大きさのものが市販されています。粗い粒のものはろ過槽に使用されていることも多いです。
使用する前にこのように一度砂を水で洗ってから使用します。ただし、サンゴ砂の中にはライブサンドといい、バクテリアがついているものも販売されています。そのような砂は真水で洗ってはいけません。
パウダー状の砂
粗い砂
※「No.」が大きくなるほど、砂の目が粗くなります。
ライブサンド
サンゴ砂にバクテリアを付着させたものをライブサンドと呼びます。ライブサンドを使用すると水槽が早く立ち上がるので、「水槽に早く魚を入れたい!」と思っている初心者の方にはおすすめです。
ただしこのライブサンドをいれても即、多くの魚を入れられるわけではないことを理解しておく必要があります。
多くのサンゴ砂は水槽に入れる前に一度水道水でよく洗う必要がありますが、このライブサンドは付着しているバクテリアが死んでしまう恐れがありますので絶対に水で洗ってはいけません。また一般的なサンゴ砂よりも高価なのもデメリットといえます。
アラゴナイトサンド
サンゴ砂と似たような印象を持ちますが、緩衝力が強く、pH(水素イオン濃度)が低下しやすい魚中心の水槽に最適です。
またKH(炭酸塩硬度)も低下しにくくなり、微量元素も多く含むためサンゴ水槽にも適しています。サンゴ砂同様、微生物が付着しライブサンド化させた商品もあります。使用する前には一度水で洗いますが、ライブサンドは砂を水であらってはいけません。
熱帯魚用のソイルは使用しない!
熱帯魚の飼育には「ソイル」が使われることがあります。これはSoil、つまり土のことで、とくに水草水槽に最適です。しかし、このソイルには水草の栄養になるものが含まれていたり、水を弱酸性(海水魚はアルカリ性)に傾けるなどの作用をもっていますので、絶対に使ってはいけません。詳しくはこちらの記事をご参照ください。
底砂を敷いた方がよい魚
海水魚メインの飼育で水槽の底に砂を敷いた方がよいのは、砂の中の餌を探して捕食したり、砂の中で睡眠をとったり、砂に穴を掘ったりする魚を飼育するときです。
ベラの仲間
ベラの仲間には夜、岩陰で眠るものと、砂の中で眠るものがいます。砂の中に眠るものは底に砂を敷いておく必要があります。よく観賞魚店では砂に潜るベラを砂を敷かないでストックしていることがありますが、そのような状態ではオグロベラなどデリケートな種は口などを傷つけることがあり、短命になりやすいといえます。
ベントスハゼの仲間
▲アカハチハゼはサンゴの上にも砂をばら撒くことがある
オトメハゼやミズタマハゼなど、口に砂を含んで砂中の生物を捕食するハゼの仲間です。これも人気のある海水魚のひとつですが、アカハチハゼなどの一部の種はサンゴの上にも砂をばら撒いてしまうおそれがあり、注意が必要です。また巣をつくるために砂をかなり動かしてしまうこともあります。
ヒメジの仲間
▲ヒメジ科のオジサン。ヒゲで砂の中の餌をさがす様子を楽しめる
名前がユニークなオジサンや、黄色が綺麗なマルクチヒメジ、多色で鮮やかなインドヒメジなど、ヒメジの仲間もよく販売されています。下顎にあるヒゲで、砂の中の餌を探す様子がユニークです。
ただしマルクチヒメジは比較的大型になり、成魚は他の魚を捕食するおそれもありますので飼育には注意が必要です。またこの仲間は白点病などにも比較的罹りやすいので注意します。
チンアナゴの仲間
▲チンアナゴは水族館の人気者
チンアナゴやニシキアナゴなどは砂の中に体の大部分を埋めていることが多く、パウダー状の砂を敷き詰めてあげたいものです。他の魚よりも厚く敷くとよいのですが、厚く敷きすぎると硫化水素が発生しやすいなどの問題もありますので注意が必要です。またチンアナゴ以外のアナゴ科魚類や魚類のウミヘビの中にも砂に潜ったりするものがいます。
フグの仲間
▲フグの仲間は砂中に潜っていることも多い
フグの仲間は種類によって異なりますが、クサフグなどのように海底の砂の中に体を埋めたりしているものがいます。そのような種類を飼育するには、砂を敷いて休息できるようにしてあげましょう。
ジョーフィッシュ(アゴアマダイ)の仲間
ジョーフィッシュも愛嬌ある表情や、水槽内でも容易に巣作りの様子を観察できるため、ファンが多い魚です。砂を掘って穴状の巣をつくるため、水槽に砂は必須です。またスズメダイの仲間など活発な魚がいると、ストレスになり巣から出てこないことがあります。
テッポウエビと共生ハゼ
▲共生ハゼ飼育にはパウダー状の砂と粗めのサンゴ砂を組み合わせる
テッポウエビと共生ハゼの共生を楽しむにも、砂が必要です。砂はパウダー状をベースにしますが、その上に目の粗いサンゴ砂を少々敷いてやります。そうするとテッポウエビが目の粗い砂を使って器用に巣を作ります。
魚種別~おすすめの底砂
▲魚と陰日サンゴを飼育している水槽。餌を多く与えるため汚れがたまりやすい
▲底砂を敷かないで魚を飼育している例
ジョーフィッシュやハゼと共生するテッポウエビと飼育するときは、パウダー状のサンゴ砂をメインに、粗めのサンゴ砂を混ぜるようにします。複数の粒の大きさからなる砂を混ぜてジョーフィッシュやテッポウエビが巣を作りやすいようにしましょう。
ベラの仲間はパウダーでも粗めでも構いませんが、カミナリベラの仲間やオグロベラの仲間などの比較的繊細な種は細かいパウダー状のものを選ぶようにします。ヒメジの仲間もデリケートな幼魚はパウダー状のものを選択するとよいでしょう。クロイトハゼなども、パウダー状の砂が適しています。しかしいずれの場合も厚く敷いてはいけません。ベラの仲間の巨大なものをのぞき、4~5cm位で十分です。
それ以外の魚は概ね砂を敷かなくても問題なく飼育できるものが多いです。砂を敷かないと排せつ物や食べ残し、あるいはデトリタスなどを簡単に取り除くことができるメリットがあります。大型のヤッコのように排せつ物の量が多い魚、あるいはチョウチョウウオのように白点病にかかりやすい魚を飼育する際には砂を敷かないことも多くあります。
サンゴ飼育における底砂の役割
サンゴ水槽では底砂を必要とすることが多いです。ミドリイシなど飼育が難しいサンゴを飼育するためのベルリンシステムにおいては、パウダー状の底砂を厚めに敷くことにより微生物が増殖し低酸素状態で脱窒を行うなど、重要な役目を果たします。またpHが下がらないようにするなどのメリットもあります。
サンゴ水槽で砂を厚く敷くときは、サンゴの配置にも注意する必要があります。オオバナサンゴやクサビライシなど、サンゴ砂の上に直接置いている事が多いのですが、サンゴの下方では水の流れがなくなり、硫化水素が発生してサンゴが死んでしまうことがあります。サンゴは砂の上でなく、なるべくライブロックやサンゴ岩の上に置くようにします。
敷きすぎに注意
砂を厚く敷きすぎると、砂の層の下方で魚やサンゴに猛毒の硫化水素が発生してしまうおそれがあります。
また、サンゴを飼育しないならば、砂を厚く敷いてしまうとただゴミやデトリタス(粒子状の有機物)、砂を敷く必要のない魚種を飼育する際は、厚く敷くことは勧められません。砂の中には病気の原因となる微小な生物も潜みますので、底砂を頻繁にいじるようなことは避けるべきです。ただし全く砂が動くことがないとコケが生えたりすることもありますので、マガキガイや小型のゴカイなどを砂中に住ませるようにしたいところです。
コケやシアノバクテリアなどが生えるというときはマガキガイに砂を攪拌してもらいましょう。
海水魚水槽では基本的にろ材を用いたろ過が行われていることが多いのですが、そのような方法ですと酸性に傾きやすいといえます。バッファー材などを用いて、pHを安定させるようにしましょう。
砂の寿命
▲魚が多い水槽では砂を浅く敷くという方法も
砂は永遠に使えるわけではありません。年月が経つと砂の中にデトリタスが多数堆積してしまい、砂の中の水が動かなくなってしまいます。そうなると砂を全部交換してしまうのがベストといえます。
大体ベルリン水槽で4年をめどに全部換えるとよいのですが、魚が多数いる水槽ではデトリタスの蓄積が早くなるため、もっと早めに換える必要があるといえます。
海水水槽における「砂」まとめ
- サンゴ砂、アラゴナイトサンドを飼育したい生き物にあわせてセレクト
- 早く立ち上げたいならライブサンドをおすすめ
- ライブサンドは水道水で洗わない
- ベラ、ハゼ類、ジョーフィッシュ、チンアナゴなど砂が必要な魚も
- サンゴ水槽には砂を敷く
- デトリタスの蓄積に注意
- 硫化水素の発生にも注意
- 砂は頻繁にいじらない
- 何年に一度か砂をすべて取り除く