2020.09.25 (公開 2019.05.24) 水槽・器具
海水魚水槽に熱帯魚用ソイルを使ってはいけない理由
あるYoutuberの方が海水魚を小型水槽にぎゅうぎゅうに入れて炎上した、ということがありました。しかし、私が驚いたことは水草用のソイルを海水魚水槽用に使用していたところでした。
水草水槽に使うソイルは絶対に海水水槽では使用してはいけません。海水魚水槽では、一般的にサンゴ砂やアラゴナイトサンドなどを使用します。なぜ、海水水槽ではソイルを使ってはいけないのでしょうか。
ソイルとは
▲淡水魚水槽で使用していたソイル
ソイル(Soil)というのは「土」「土壌」、もしくは「土地」といった意味があります。アクアリウムにおいては一般的には水草水槽用の土壌を指すことが多いです。その名のとおり天然の土からできていることが多く、それに活性炭や水草の栄養となる物質などを混ぜて焼き固めるなどしてつくられることが多いです。
形状は小さく茶色い球のような形のものが多く、大きさや色にもバリエーションがあります。普通の土と違って丸みを帯び、土中の通水性をよくするなどの効果もあり、淡水の水草レイアウトではマストアイテムといえるでしょう。
ソイルがもたらす影響
pHが下がる
▲淡水魚でもアルカリ性の水を好む魚は底にサンゴ砂を敷く
ソイルにはpHが下がるような性質をもつものが多いです。pHとは「水素イオン濃度」のことで、水質を測る指標のひとつとなります。pHが7.0が中性で、それ以上ではアルカリ性、それ以下が酸性となります。
なぜpHが下がるような性質を持っているかというと、水草水槽に似合うカラシンの仲間、エンゼルフィッシュ、ディスカス、ベタ、小型のカワスズメ(シクリッド)の仲間(ドワーフシクリッド、アピスト、ラミレジなど)は概ね弱酸性の水を好むことが多いからです。
一方海水魚はアルカリ性の水を好み、pHはできれば8.0~8.3くらいで安定させたいところです。pHを海水魚飼育可能な数値で安定させるために、サンゴ砂やアラゴナイトサンドを使用するようにしましょう。また、淡水魚水槽でもマラウィ湖やタンガニイカ湖にすむカワスズメ科やシノドンティスなど、アルカリ性の水を好む魚を飼育するときにはサンゴ砂などを使用し弱アルカリ性の水にします。
pHが上がらない
数あるソイルの中には中性付近でpHを安定させるような商品もあります。ではそのようなものを使用していいか、といいますと、使用してはいけません。海水魚は中性ではなく、アルカリ性の水を好むからです。pHはなるべく8.0~8.3くらいの高い数値にしておきたいところです。
海水魚に適した底床は?
海水魚水槽には基本的に土は入れません。最適の底床は「サンゴ砂」です。サンゴ砂はただ白くて綺麗なだけではなく、pHを安定させるなどの効果もあるからです。また大粒のサンゴ砂はろ過槽に入れ、ろ材としても使用することができます。また、アラゴナイトサンドと呼ばれるものも同じく海水魚に適した底砂です。
早く海水魚水槽を立ち上げたいというのであれば、バクテリアが付着しているライブサンドを使用してもよいでしょう。ただし開封したら長期保存はできませんので注意が必要です。また、ライブサンドを使用してもすぐ魚をたくさん入れられるわけではありません。
海水魚用の黒い砂
海水魚水槽で黒い底砂を使う理由
▲共生ハゼの種類によっては色を引き立たせるなら黒い砂の方がよいかもしれない
ソイルは茶色や黒っぽい色のものが多いです。海水魚水槽ではサンゴ砂を使用することが多いのですが、白っぽい砂を使うと体色が変わってしまうような種もいます。海の中では内湾の泥の中に生息するような一部の共生ハゼは、白い砂の環境で飼育すると体が白っぽくなり、ハゼ本来の色合いが楽しめないこともあります(飼育には影響ありません)。
種類
海水魚水槽で使える黒い砂である「グレイコースト」(シーケム)という商品はソイルと異なり海水魚水槽でも使用できる黒っぽい砂です。しかも「カルシウムやマグネシウムを豊富に含む」「pHの低下を抑制する」、といった、海水魚やサンゴにとって嬉しい効果があります。淡水魚水槽でも使用できるとのことですが、上記のようにpHの低下を抑制するため弱酸性の水を好む魚や水草には使わない方がよいでしょう。
このほか、マルカン・ニッソーの「プレミアムサンド」のような商品もあります。このプレミアムサンドは淡水・海水両方に使えますが、グレイコーストのようにpHの低下を抑制したりする効果はありません。大磯砂も海水魚水槽に使えないわけではありませんが、pH低下を抑制できないので何らかの手段でpHを上昇・安定させなければなりません。それができれば日本沿岸で採集した魚を飼育するのに似合いそうです。また魚水槽はサンゴ水槽よりもpHが低下しやすいので注意が必要です。
まとめ
- 海水魚飼育に熱帯魚用のソイルは使ってはいけない
- ソイルは土を焼き固めるなどしてつくられる
- ソイルの多くは水を弱酸性にする効果があり海水魚には使用できない
- 海水魚で黒い砂が欲しいときは必ず海水魚用のもの、もしくは海水魚水槽でも使えるものを使う