2018.09.10 (公開 2017.12.25) サンゴ図鑑
クサビライシの飼育方法~「芽」さえあれば増やせるサンゴ
クサビライシは独特な形をしたハードコーラルです。しかも岩などに固着せず、自由生活をおくるという他のサンゴにない特徴をもっています。飼育もそれほど難しくなく、若干栄養塩が蓄積されるような環境でも育ちます。
クサビライシってどんなサンゴ?
クサビライシの仲間は大きくなると岩に固着せず、自由生活をおくるというユニークな特徴をもっているハードコーラルです(ずっと固着生活をおくるものもいます)。円盤や山のような形をしており、種類によって形状が異なりますが、どの種も「クサビライシ」として販売されています。名前の「クサビラ」とはキノコの古語で、その形に由来するのでしょう。
色彩はオレンジ、グリーン、ベージュなどの単色のものや、グレーで縁辺のみが鮮やかな紫色のものなどバリエーションが豊富です。特にオレンジやグリーンのものなどは青色LEDのもとで鮮やかに輝きます。
クサビライシの仲間
クサビライシの仲間にはマンジュウイシなどのような単体性のサンゴと、多数の群体からなるイシナマコなどの種類がいます。いずれも飼育方法はあまり変わりません。
▲クサビライシ科のサンゴ。イシナマコあたりのように思われる。
ただしクサビライシの仲間でもパラオクサビライシ(下写真)という種類のサンゴは飼育が難しいサンゴとして知られています。
▲独特な触手が特徴的なパラオクサビライシ
この種はクサビライシの仲間でも特にきれいな水を好み、ミドリイシなどと同様の上級者向けのサンゴといえます。
クサビライシに適した飼育環境
水槽
ベテランアクアリストであればクサビライシを小型水槽で飼育することも可能ですが、初心者であれば水質が安定しやすい45cm以上、できれば60cm水槽で飼育するのが望ましいといえます。イシナマコなどは大きいものが多く、90cm以上の水槽で飼育したいところです。
水質
クサビライシはハードコーラルとしては硝酸塩の蓄積にも強い方ではありますが、できるだけ綺麗な水で飼育してあげたいものです。定期的な水替えを行いましょう。
光
蛍光灯、LED、メタルハライドランプで飼育可能ですが、スポットタイプのLEDブルー球を当てると非常に美しい色彩になります。メタハラを使用するときは光が強すぎないように置き場所に注意します。
水流
全く水流がない環境では上手く飼育できませんが、逆に強い水流がクサビライシに直接、長時間当たるのもよくありません。弱すぎない水流が間接的に当たるくらいが望ましいでしょう。
水温
基本的にカクレクマノミなどの熱帯性の海水魚や、多くの好日性サンゴ同様25℃前後で問題ありません。もちろん水温が安定していることも重要です。
クサビライシの置き場所に注意
▲直接砂の上に置くのは望ましくない
クサビライシはよく「砂の上に置くことができるサンゴ」といわれていますが、直接砂の上に置くのはおすすめしません。砂の上にクサビライシやオオバナサンゴなどを置いてしまうアクアリストは多いのですが、サンゴの下になっている部分には水の流れが当たらなくなり、硫化水素が発生することもあります。
「砂の上にサンゴを置いてしまったら死んでしまった」
「どかしたら底砂が黒っぽくなっていて硫黄のニオイがする」
以上のようなことであれば硫化水素が発生した可能性が高いといえます。
強い照明を使用しており、底の方に置きたい!というときは、砂の上にライブロックやサンゴ岩を置き、その上にクサビライシを置くようにします。そのライブロックやサンゴ岩もライブロックスタンドの上に置くようにすれば完璧でしょう。なお海の中でもクサビライシは砂の上というよりは、サンゴの岩の上などにいることが多いようです。
クサビライシの餌と添加剤
クサビライシは光合成をする好日性のサンゴですので、光だけでの飼育も可能です。しかし給餌をしたほうが共肉がよく膨らむので、粉末状や液状のコーラルフードを与えるとよいでしょう。陰日性のサンゴではないですので、たまに与えるくらいでちょうどよいです。
一方ハードコーラルなので添加剤は重要です。定期的な水かえでも元素の補充ができますが、カルシウム、ストロンチウム、マグネシウム、ヨウ素は添加した方がよいでしょう。「リキッドリーフ」など複数の元素がふくまれている添加剤もおすすめです。
カルシウム・ストロンチウム・マグネシウム・ポタシウム(カリウム)を供給する添加剤
ヨウ素添加剤
クサビライシの購入時のポイント
▲縁辺が上がってしまっている個体はNG
共肉がよくふくらんでいて、骨格の一部が見えていないものがよいでしょう。骨格の一部が見えてしまっているもの、クサビライシの縁辺が上がっているのはダメージを受けている可能性がありやめた方がよいかもしれません。
クサビライシと魚との相性
▲ベントス食のハゼとの飼育は注意
基本的に水槽の底の方にレイアウトしたいサンゴといえます。砂を口にくわえてまき散らすオトメハゼやアカハチハゼなどのベントス食ハゼの仲間、キュウセンなどのように睡眠時や危険が迫った際に砂に潜るベラの仲間との飼育は不可能ではないのですが注意が必要です。砂がクサビライシにかかっていないか、チェックしましょう。
一緒にしてはいけないのはヤッコの仲間、とくにサンゴ食のソメワケヤッコやゴールデンエンゼルなどと飼育することはやめたほうがよいしょう。もちろんチョウチョウウオ科の魚も厳禁です。
遊泳性ハゼ、クマノミ、スズメダイ、ハナダイ、ニセモチノウオ、テンジクダイ、ゴンベなどさまざまな魚と組み合わせが楽しめます。ただし、ニザダイやアイゴなどの魚はまれにLPSをつつくことがありますので注意しなければなりません。
クサビライシと他のサンゴとの相性
クサビライシは浅いサンゴ礁域に生息しているサンゴです。ミドリイシやコモンサンゴなどのSPS、同じLPSの仲間であるキッカサンゴやキクメイシなど、色々なサンゴと組み合わせやすいですが、メタハラ250Wなど強い光を必要とするSPSと飼育するなら、やや光が当たりにくい陰になるような場所においておくとよいでしょう。もちろん他のサンゴと接触するような事態は避けたいところです。
クサビライシの芽~繁殖・増やし方
クサビライシはミドリイシやトサカのように「枝打ち」をして増やすことはありません(カットして増やすことはできない、というわけではありませんが、ふつうはしません)。
クサビライシは小さい頃は固着性で、岩に付着しており「クサビライシの芽」などとよばれていますが、ある程度の大きさになると岩から外れるというユニークな習性をもちます。岩についていた芽の方はまた同じように成長し、またある程度の大きさになったら岩から外れます。この芽さえあればクサビライシをたくさん増やすことができます。
一方ワレクサビライシという種類は、縁辺が割れて勝手に増殖していくというユニークな特徴をもったサンゴです。飼育水槽内でもどんどん割れて増殖していきます。
クサビライシの飼育まとめ
- その名の通りキノコににたユニークな形のハードコーラル
- 小さいうちは固着性だが大きくなると岩から離れて自由生活をする
- 色彩の変異が大きく、オレンジやグリーンのものは青色LEDのもとで美しく輝く
- 硝酸塩の蓄積にも比較的耐えるが、できればきれいな水で飼育したい
- 光は強くなくてもよい。水流は弱すぎず強すぎず
- 水温は25℃前後で安定していることが重要
- 砂の上に直接置くのはおすすめしない
- 骨格が見えているもの、縁辺が上がっているのはやめたほうがよい
- ベントスハゼやベラなど砂を巻き上げる恐れがある魚は注意
- チョウチョウウオやサンゴ食性のヤッコなどとは飼育しない
- 他のサンゴとの接触は避ける
- 「芽」があればクサビライシは簡単に増殖できる