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2020.06.17 (公開 2017.09.06) サンゴ図鑑

海藻の飼育方法~照明や水質環境のまとめ

淡水魚飼育では魚だけを飼育する水槽のほか、水草と小魚を飼育した「水草水槽」がありますが、海水魚飼育においても、海藻を中心に飼育した「海藻水槽」というのもあります。ただし、海水魚飼育では海藻というよりは、サンゴを中心に飼育する人が多く、海藻を観賞用として飼育する人はあまりいません。

それでも手をかければ非常に美しい海藻水槽をつくることができます。海藻はただ見た目を楽しむだけでなく、水槽の栄養塩を吸収したり、プランクトンや魚の隠れ家を作ったりするなどの役割があります。海水水槽でも緑の美しい水景を楽しむことができます。

「海藻」と「海草」

漢字について疑問を抱いている方も多いと思います。淡水の「水草」に対し海水では「海草」ではないのか?たしかに「海草」という生き物もいますが、これはアマモやスガモなど少数派で、これらは淡水の水草に近い被子植物の仲間とされます。一方海藻はいわゆる「」の仲間であり、水草や海藻とはかなり異なる分類群です。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

海藻は、一般的に「褐藻」「緑藻」「紅藻」の大きく三つのグループに分けられます。

褐藻

▲千葉県の磯に見られる褐藻の仲間

ホンダワラの仲間、アミジグサの仲間などがいますが、観賞用としてはメジャーなものではありません。ホンダワラは海面に浮かぶ「流れ藻」の一種としても知られ、海面を漂うホンダワラの下には多くの生き物が集まります。北の海から温帯の海にすむコンブやワカメなどは食用としてよく知られます。

緑藻

▲アオサの仲間とアミメハギ

その名の通り緑色をしたものが多いです。アオサの仲間やミル、クビレズタなどの食用種を含みます。マリンアクアリウム向けの海藻としてはもっともよく販売されているもので、飼育が容易なものも多く、水槽の環境によっては邪魔なくらいに育ちます。イワズタの仲間や、サボテングサの仲間を含みます。イワズタの仲間であるクビレズタは「ウミブドウ」の別名でお馴染みです。

紅藻

▲ガラガラの仲間と思われるもの。サンゴのように見えるが海藻の一種

「紅藻」という名前のとおり赤っぽい色彩のものが多いです。食用にされるノリの仲間や、テングサ、オゴノリなどの食用とされる種類を含みます。一部の種は観賞用としても販売されますが、緑藻にくらべると飼育はやや難しいといえます。まれにライブロックから生えてくるものもありますが、それらは飼育しやすいとされます。

水槽飼育に向く海藻

海藻には育てるのが容易なものも、逆に難しいものがあります。今回は初心者にも飼育が容易な緑藻類、2タイプをご紹介します。

イワズタの仲間

▲イワズタの仲間であるクビレズタ

観賞用の海藻としてはもっとも多く出回るものです。クビレズタやセンナリズタ、ヘライワズタ、タカツキズタなど種類も多く、多くの種類が飼育しやすいので海水魚初心者にもおすすめといえます。クビレズタやヘライワズタなどは環境が合えば爆発的に増えます。

海藻は寿命で溶けてしまうことがあります。溶けるときは全体がなくなってしまうのですが、このイワズタの仲間はランナーを伸ばして増えるので、こまめにランナーを切って、一気に溶けるのを防ぐようにしましょう。

サボテングサの仲間

ウチワサボテングサ、ヒロハサボテングサなど何種類か販売されています。またライブロックなどに活着していることもあります。丈夫で飼育が簡単なものが多く、初心者にもおすすめの海藻といえます。増えすぎたら間引くとよいでしょう。

海藻飼育に適した水槽

水質

海藻は硝酸塩やリン酸塩などを吸収します。ある程度栄養塩があるところに多いのですが、これらが少ないサンゴ水槽でも飼育可能です。ただし海藻が大きく育ちすぎるとサンゴの成長を阻害したり、果てはサンゴを覆いつくすこともあるので、サンゴ水槽において海藻、とくにウミズタの仲間を飼育しようとするならしっかりトリミングすることが大切です。

水温

海藻は種類によって異なりますが高水温には弱いものもいます。とくに温帯性の種や大西洋産の種は高水温に注意します。初心者向けのクビレズタやタカノハズタ、サボテングサの仲間は27℃前後まで耐えられるのを確認しているのですが、水がきれいな環境でないと難しいかもしれません。

照明

海藻も太陽からエネルギーを得ていることを考えると、照明による光が必要になります。

しかし、浅瀬にすむミドリイシを飼育するのに必要なほど強い光が必要になるというわけでもありません。比較的安価なLEDライトでも十分海藻を飼育するのに必要な光を供給できます。

筆者は海藻飼育の照明には「ゼンスイLEDライト」や、「グラッシーレディオ」などの商品を使用しています。「グラッシーレディオ」にはいくつかの商品がありますが、「ディープ」や「コーラル」など深場を再現した光よりは「リーフ」や「アクア」などの照明の方が適しているかもしれません。

海藻に必要な餌と添加剤

海藻は餌を捕食することはありませんが、添加剤を用いることにより容易に育てることができます。海藻は鉄分の添加が重要とされますが、鉄分の過剰添加はさまざまなコケの発生を招きますのでよくありません。

微量元素(トレースエレメント系)の添加剤にも鉄分は含まれていることが多いですので、そのような製品を使うことをおすすめします。鉄分の添加剤は海藻の数が多い時だけ添加するようにします。

このほかにすべての生物に必要なヨウ素を添加するようにします。なお、水草向けの肥料などは海藻には使用してはいけません。

他の生物と海藻の相性

サンゴと海藻の相性

▲ヨレズタと思われる海藻が繁殖し、覆われてしまいそうなタバネサンゴ

サンゴ水槽に海藻を入れていることもあります。海藻は栄養塩などを吸収してくれるため、それらの蓄積を嫌うサンゴ水槽に入れられていることも多いのです。ただし、海藻の成長速度はサンゴのそれよりもずっと早いため、サンゴを覆ってしまうこともあります。適度に間引くことが大事です。

オーバーフロー水槽のサンプに海藻を入れておく方法もあります。別途照明器具が必要になってしまいますが、それでもサンゴを飼育する上で海藻に栄養塩を吸収させるメリットは大きいのです。その海藻を水槽から取り除けば、栄養塩を水槽から取り除くことができます。

魚と海藻の相性

▲ニザダイの仲間と海藻は相性が悪い

ニザダイ科の魚や、それに近縁の仲間であるアイゴ科の魚は海藻を好んで食べます。またヤッコの仲間も海藻を好んで食べるものがいます。

カエルウオの仲間も藻類を好みますが、この仲間は付着性の藻類をこのみ、海藻の表面につくコケを食べてくれます。その他のカクレクマノミなどのクマノミ類、ベラの仲間、ハゼの仲間、テンジクダイの仲間、ハナダイの仲間との相性は概ね良好です。

海藻水槽に小型魚を入れると、小型魚は海藻を隠れ家として利用します。プランクトン色の魚は、海藻の中を餌場とします。海藻には様々な微生物やプランクトンが潜み、魚はそれらの生き物を捕食します。

海藻飼育まとめ

  • 海藻は3つのグループがあり、緑藻が飼育しやすく初心者にも適する
  • イワズタの仲間はランナーで増える
  • サボテングサの仲間は丈夫で飼育は容易
  • 水温の上昇には注意
  • 光は必要だが強くなくても飼育可能
  • 添加剤は微量元素とヨウ素。海藻が多い場合は鉄分を
  • 鉄分を供給する場合は過多にならないように注意
  • サンゴ水槽でも飼育可能。すぐ増えるのでサンゴを覆うことも。適度に間引く
  • ニザダイやアイゴは海藻を食べる
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